ジョー・バイデン政権はウクライナに対し、射程距離300キロメートル、最大マッハ3のATACMS(陸軍戦術ミサイル・システム)を提供する可能性があるとアメリカのNBCは伝えている 。ロシア領内を攻撃する態勢を整えるということだ。ATACMSはすでにウクライナへ供給済みのHIMARS(高機動砲兵ロケットシステム)から発射できる。
NATOはすでにロシアとの国境近くにISR(情報、監視、偵察)網を構築、P-8やRC-135のような偵察機、あるいはRQ-4Bのような無人機などとATACMSをリンクさせ、昨年9月10日にはアントニー・ブリンケン国務長官がABCニュースのインタビューで、この兵器を近いうちにウクライナへ引き渡すと発言していた。これまでアメリカは旧式の中距離ATACMSしか提供していない。
オバマのクーデターはヤヌコビッチ大統領を排除することに成功したものの、ヤヌコビッチの支持基盤だった東部や南部では住民がクーデターを拒否、南部のクリミアはロシアの保護下に入り、東部のドンバスでは反クーデター軍が編成されて内戦が始まった。
その反クーデター軍にはネオ・ナチ体制を嫌った軍人や治安機関の隊員などが合流、クーデター軍は劣勢になり、 オバマ政権は新政権を支えるためにCIAやFBIの専門家数十名を顧問として送り込んだ 。そのほか 傭兵会社「アカデミ(旧社名はブラックウォーター)」の戦闘員約400名もウクライナ東部の作戦に参加 したと伝えられていた。 2015年になると、CIAはウクライナ軍の特殊部隊をアメリカの南部で訓練し始めた ともいう。
そうしたテコ入れでは戦況を逆転できないため、クーデター政権の戦力を増強しなければならなくなった。アメリカ/NATOはミンスク合意を利用し、武器弾薬の供給や軍事訓練などを実施、8年かけて戦力の増強を図った。その際、ドンバス(ドネツクやルガンスク)周辺に要塞線を築いている。少年少女が軍事訓練の対象になったが、その際、戦闘術だけでなく反ロシア感情も叩き込まれている。
こうした戦力増強策の甲斐なくウクライナ軍は壊滅状態にあり、日本や韓国はウクライナ支援を命じられた。クーデター体制が楽勝すると信じていたバイデン政権やEUのエリートは境地に陥り、核ミサイルを発射できるF-16やATACMSの供給が議論されているわけだ。
ロシアのウラジミル・プーチン大統領はクーデターの際に動かなかったことを後悔しているようだが、軍隊を動かしてアメリカ/NATOの動きを止めた場合、西側諸国は大きなダメージを受けず、ネオ・ナチも残っていたはず。
アメリカやイギリスの支配層は19世紀からロシアを征服して世界制覇を達成するという長期戦略を維持、侵略を諦めることはない。ダメージを受けていない米英やその属国はネオ・ナチを使い、新たな侵略作戦を立てるはずだ。核戦争の危険性がなくなることもなかった。
セシル・ローズはアングロ・サクソンを最も優秀な人種だと位置づけ、その優秀の人種が住む地域が増えれることは良いとしたが、その後継者たちも考え方は基本的に同じであり、その根底にあるのは優生学だ。