雑記~愛息と過ごす日々の戯れ言~

雑記~愛息と過ごす日々の戯れ言~

エッセイ講座・課題用(補足分)



息子の入院

 息子が発病したのは、幼稚園入園を目前にした、二〇〇五年三月中旬のことだった。
 一日登園の日に、熱を出してお休みした。病院で診てもらったが、インフルエンザではなく、熱の出る風邪という診断。しかし、土曜夜、体温計の数字が四十を超えた。
 翌日、休日診療の大きな病院へ行った。一時間待って診察した当番医は「明日、かかりつけ医に行って」。藪以下のタケノコ医者だと思った。
 翌週は、毎日のように、病院に行った。木曜日、レントゲンを撮り、採血もした。生まれて初めて手の甲から点滴をした。細い血管に、採血と点滴で二度も刺され、大きな声で泣いた。終わったとき、看護師さんが針痕に、絵のついた小さなテープを貼ってくれた。
 翌朝、結果を聞きに行くと、「ひどい貧血です。炎症反応もあります。紹介状を書きますから、すぐ市民病院へ行ってください」と言われ、義父と共に向かった。
 処置室から追い出され、待合室にいると息子の泣き叫ぶ声が聞こえる。「シール下さい。シール下さいぃ~!」。病院スタッフは、ご褒美のシールを欲しがっているとしか思わなかっただろう。私にはわかった。早く針を抜いて、止血テープを貼ってくれという懇願だったのだ。願いはかなえられず、長い時間点滴をしていた。
 感染防止のため隔離の必要があるが、この病院では対応できない、と言われ、県立小児医療センターへ移動することになった。
 紹介状のあて名に【血液腫瘍科】とあった。  「白血病化もしれない」と思った。  病室の準備ができたと案内されたとき、それは確信に変わった。髪の抜けた、丸い顔の子供たちばかりが、そこにいた。「がん病棟」であることは、一目瞭然だった。
 ヘモグロビン値が五しかなかったので、入院翌日、早速輸血をした。白い顔、白い唇を見て、私は毎日、子供のどこを見ていたのか。母親失格と。自分を責めずにはいられなかった。


© Rakuten Group, Inc.
X
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: