七、救助作業



 「泳いでいる者を救助し佐世保に帰投せよ」との電信がはいったが、寺内
艦長は「我等は特攻隊だ。いまさら生きて帰れるか」といって全速を出して
沖縄へ向かった。しかし、大本営からの「作戦中止、人員救助の上帰投すべ
し」との指令が来て、さすがの艦長もやっと泳いでいる者がいる海域に艦を
直航させ、救助作業の命を下した。

 隣の駆逐艦磯風は機関室を撃破され航行不能になる。敵潜水艦がうごめく
中を雪風が決死的に横づけする。磯風の丸々太った少尉が裸になり、勇敢に
も海中に飛び込みもぐって、艦底が修理可能か調べたら、応急修理も不能で
あることが判明。そこで磯風の乗員を雪風に移乗させ、夕暮れせまる頃、雪
風の主砲で磯風を処分することにした。遂に涙をふるって発砲したが、雪風
の主砲も至近弾のため照準が狂い命中しない。そこで雪風が世界に誇る九三
式酸素魚雷で、いままで生死を共にした僚艦磯風を撃沈した。その時の我等
の胸中、ただ悲憤の涙が頬を濡らすのみであった。


yukikaze


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