ある内科医の独り言

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2005.05.31
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リソース

リソース、日本語で言えば資源に当たる。石油資源などの枯渇が騒がれて久しく省エネなどといった言葉が生まれたが、こういった言葉があること自体、あらゆる資源は無尽蔵ではないことを示している。そしてそれは医療についても同じことがいえる。医療を行う上での資源は限られており、その資源をどれだけ有効に使うかが我々の責務であることは当然だろう。

最近、あちこちのブログで「切り捨て」というような言葉が散見されるようになった。確かに最前線で命を削って働いているんじゃないかと思われる重労働の中、こうした言葉が出てくるのも十分に理解できる。

現場の医師は限られた資源を最大限に利用しようとするし、患者さんもそれを期待している。しかし現実にはなかなかうまくゆかない。

有り余る医療資源とやらが本当にあるのかどうかは知らない。僕の周りには薬も機材も恐らく必要にして十分にある。しかし人的資源となると足りてはいないのが現状だ。

医者というのはお人好しが多いのか、目の前の患者さんを放っておくことができない人種が多い。お節介焼きともとれるが、時にこの性格が裏目に出ているように思う。

先日の「トリアージ」の件でも述べたが、もっとも多くの資源を使わねばならないのは赤だ。黒は確かに赤よりも重傷の場合があるかもしれないが、資源を注ぐべき対象ではない。

頭の中ではわかっていても、目の前にいる患者さんは病気や怪我に苦しめられている。そんな状態を天秤にかけて「切り捨て」ることなどなかなかできないが、それでも切り捨てが必要なときは確かに存在するだろうし、医療資源をより有効に生かすためにはそれも致し方ないことなのかもしれない。

医療者は平等でなくてはならない。これは古来から語り尽くされている規範である。しかしこれほどまでに医療が高度化・細分化している現在、その規範が守りきられていないのが現状だろう。決して守らなくていいといっているのではない。需要がある以上、供給する義務もあるだろうし、医師法第4章第19条にも正当な事由がなければ診察診療を断ってはならないと定められている。しかし何よりも「治したい」という一念が現在までの医療を牽引してきた大きな原動力でなかったかと思うのだ。

救急車一つとってもそうだが、最近色々と騒がれる事件や嘆きの中にはこうした資源の有用性が問題となっているような事案が多いように思う。元はといえば、患者さんの状態は「不平等」なのにそこに「公平な医療を」という概念を持ち込もうとしているからややこしいことになっているのではないか、と思えるのだ。

治したくても治せない、治してもらいたくても治してもらえない、そんな状況をどうやって理解し受容するのか。医療を行う側、受ける側ともに考え続けていかねばならない深い話題である。






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最終更新日  2005.05.31 08:28:04
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