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2006/06/05
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この作者の作品は初めてなのだが,

森谷明子の「れんげ野原のまんなかで」(2005)

を読んだ。

本州の中央部,首都圏の外れにある秋庭市(人口8万)の,北部の野原のまんなかにある秋庭市立秋葉図書館を舞台に起こる,ちょっとだけ非日常的な事件と謎が展開する連作短編。

秋庭市立であるのに「秋葉」図書館であるいわれに象徴される舞台設定や,ススキ野原からレンゲ野原に変わる情景設定などもふくめて全体がきれいにまとまっている。

謎解きもおもしろいし,憧れから現実に相手を変えていく主人公の恋心あり,図書特に児童書の薀蓄あり,何よりも地主のおっさんのキャラがよくて……

ではあるのだが,どうにも「きれいにまとまっている」を越えないのだ。

「よい人」が集まりすぎて,現実感を感じられないところにその理由があるような気がする。

主人公の文子はかなり優秀な司書(になりつつある進行形)のようだが,その先輩の日野は専門的知識に加え,アジア系,非アルファベット系言語にも強く,県内中の図書館から頼りにされる司書,「探偵役」の能勢がさらにそれ以上優秀な司書。
こんな3人が予算が少なく辺鄙な場所にあり蔵書6万冊(開架部)の図書館に顔をそろえるなんて(あればよいとは思うが)できすぎの感がある。
事件をきっかけに図書館に通うようになる少年にしても,情報誌の記者にしても,ある事件の「犯人」にしても……

その他みなさん,「よい人」かつ「優秀な人」ばかりの印象が残り,全体としての印象がかえって薄くなってしまったような気がする。

と,いろいろ書きはしたが,さわやかな読後感を残す本であり,オススメの1冊であることにはかわりはない。

森谷明子の他作品についての日記は,フリーページ  読了本(日本)  (森谷明子)からごらんください。

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Last updated  2006/06/05 12:09:31 AM
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