雫の水音

雫の水音

11章~フローリア~


ロデルトはププミューという奇妙な動物を追いかけていった。
翔とナナムーは、ロデルトの後を走っていった。

軽く呼吸が苦しくなってたころ
森の奥に家が見えた。
ププミューは、その家の前に立ち止まった。

「ここでしゅかね?」
ナナムーが、家のドアをノックした。

「はーい。何方ですか?」
少女の声がドアの奥で聞こえてきた。

ガチャ

静かにドアが開かれた
ププミューは、少女がドアから出てきた瞬間
飛びついた。
少女は擽ったそうな仕草をして
ププミューを床に置いた。

「どうなされたんですか?こんな所に人が来るなんて珍しい…」

「実は…」
ロデルトは一通り説明をした・・・

少女は何か思い当たったように、話し始めた
「今、私のおじい様が病気で奥の部屋で寝てるんですけど…
多分それかもしれないです…
森の奥の洞窟に薬の材料があるんですけど
魔物が多くてとても近寄れないんです。
動物たちに、その事を話していたから…」

ナナムーは急に目を輝かせた
「お姉ちゃんは、動物と話せるんでしゅか?」

「えぇ、動物以外にも…」
少女はナナムーの目の高さにしゃがんで微笑んで見せた

「って、ことはププミューが薬の材料を取ってこれそうな
旅人を探してたってことだな。」

「しかし、私、旅人を雇うほどお金ないですよ」
少女は俯いた。

「お金は取りませんよ。」
翔は少女に言った

「ありがとうございます。えっと、自己紹介がまだでしたね。
私は、フローリア。」
フローリアは軽くお辞儀をした。

「俺は翔。」

「珍しい名前ですね。翔さんですか。」

「ぼきゅは、ナナムーだよ!!」
ナナムーは、さっきからフローリアの周りを回ってる
ププミューを追いかけながら言った。

「ナナムーちゃんっていうんですね。よろしく」

「俺は、ロデルトだ。」

「ロデルトさんですか。
あ、えっと何もないですけど
入ってください。」

家の中は、殆ど全て木で作られていた。

「ちょっと、待ってて下さいね」
フローリアは、部屋の奥に入っていった。
時々、咳き込んでいる音がして
その度に、フローリアが部屋から出てきて
咳の聞こえる部屋に走っていくのが見えた。
しばらくすると、コトコトと
いい香りが部屋の中を満たした。

「ハーブティーとクッキーです。お口に合わないかもしれないですけど」
といって。4人分のハーブティーとクッキーを運んできた

「はひがほぉ。おへぇちゃん」
ナナムーは直ぐにクッキーを口に突っ込んで
いった。

「おいしいですね。ハーブティーもクッキーも」
翔は、ティーカップを置いた。

「ありがとうございます。ハーブは庭で育てたものなんです。」

そして、みんなが、ハーブティーを飲み終わった後に
フローリアが話し始めた

「えっと、森の奥の洞窟なんですが、私もついて行きます。」

「おいおい、お譲ちゃん。魔物がいるんだろ?」
ロデルトが無理だと言わんとばかりに言った

「でも、皆さん場所がわからないでしょ?
お礼も出来ないですし」

「クッキーとハーブティーで十分なお礼ですよ。
ププミューたちに道案内を頼めるんじゃないんですか?」

「でも…」
フローリアは俯いた

「わかった、俺の後ろから離れるなよ。」
オデルトは笑っていった

「ありがとうございます。」
フローリアは嬉しそうに笑った。


そして翌日・・・

「洞窟まではスグですが、中が広いので気を付けて下さい。
昔は、凶暴な魔物がいなかったみたいなんですけど、8年前の戦争を期に
魔物が増えたみたいなんですよ。」

と、言って。
4人と、沢山の動物が列を成して
洞窟まで進んでいった。

「皆さんここで待っていてください。」
動物たちに、フローリアは語りかけた。
すると、洞窟の前で動物たちはおとなしくなった。

「ふぅ、どうなるかと思ったよ。動物たちと一緒に洞窟に入る事になったらと思うと・・・」
ロデルトは頭を掻きながら言った

「そうですね」
翔は丁寧に答えた。

「早きゅ、入ろ~」
ナナムーはウキウキした様子だ。

そして、4人は洞窟の中に入った。

中は、人工的に改良されている部分はあるが
明かりはなく、フローリアが松明に火をつけた。

「お姉ちゃんも、魔法使えるんでしゅね」
フローリアが、指から火を出して火を点けていたので
ナナムーがいった。

「私は、初歩的なものしか出来ませんよ」
フローリアは、トゲを精一杯隠したかのような
冷たい言葉で答えた。

「おい!お喋りしてると危ないぜ。」
ロデルトの剣が翔の顔をすれた。

ズシュ!と鈍い音とともに。後ろで倒れる音がした。

「ここの敵はこんなものか、まぁお前らは油断するなよ」
オデルトは笑いながら言った。

「はい、オデルトさん。」
翔は、一瞬の出来事で戸惑っていたが
何とか、返事をすることが出来た。


洞窟の奥に進むにつれ、足場は悪くなったが
ロデルトはまるで、宙に浮いてるかのように
すばやい動きで、魔物を倒していった。
翔、ナナムーは何もすることなく
魔物が倒されることが大半だった。

「ありました。これです!」
少し前を歩いていたフローリアが道の途中で
しゃがんで言った。

フローリアの周りだけが、松明の火で照らされていた。
3人が、フローリアに近づこうとしたとき。
火の照らされている部分に
大きなツメがキラキラ光った。

「フローリアさん!危ない!!」
翔が叫んだ。

「えっ?!」
フローリアが振り向こうとしたそのとき。

大きなツメが振り翳された。

ザシュ!

静寂な洞窟の中を、肉が引き裂かれ血が飛び散る音が
響き渡った。

しかし、引き裂かれたのは、ロデルトだった。

「ロデルトさん、しっかりして下さい。」
フローリアは泣きそうになりながら言った。

「うぅ・・・応急処置を頼…む…」
ロデルトは背中を裂かれ
意識が朦朧としている様子だ。

「この野郎!」
翔は、剣を魔物に振り翳した。

キンッ!

金属とツメのぶつかり合う音が反響した。

「ケッケッケ!人間め、俺様のツメに剣が効くと思ってるのか!」
暗闇の中、魔物が言った。

『ファイア!』
翔は、剣を持ってない方の掌に特大の炎を作り出した。
辺りは、炎によって照らし出された。
魔物は気づかなかった
ナナムーが魔物に向かって手を構えていたのを…

『蝕まれし月の如く、汝の身を喰らえ…ルナエクリプス』
ナナムーの掌から、黒い球が放たれた。

黒い球は、魔物の体にぶつかった

シュゥゥー…

魔法が、霧となって消えた

「我が、ガーゴイル族に闇の力が通じると思ってたのか!」
甲高い声で魔物が言った。

確実に倒せたと思って、油断していた翔に
魔物のツメが襲い掛かった。

ヒュン!!
風を切る音がし
ドサッ!と魔物が倒れた。
胸には剣が突き刺さっている。
ロデルトの剣だ。

「ロデルトさんが、剣を投げて、意識を失って…」
フローリアが泣きながら、翔に言った。

「わかった。ここは危険だから、早く薬草を採って
ここから出よう。外には動物もいるんだろう?」
フローリアを宥めようと翔が言った。

フローリアはコックリと頷いた。


帰りは、ロデルトをおぶっていたので
危険な状況にもなったが、
なんとか出口にたどり着いた。
そして、動物たちに守られながら
森の小屋に辿りつくことが出来たのだった。



12章~前奏曲(プレリュード)


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