雫の水音

雫の水音

14章~水王の国~


渦潮の隙間を見つけることができ、
水の国【リビュース】の港に着いた

船員も同客の人も魔物の影響で1週間停泊することになった。



「ふむ、さて此れからどうする物かな?」
シェイクは上辺だけの発言をした。

「もしかして?付いて来たいって言うんじゃないですか?」
翔は言った。

「良くわかってるではないか!是非とも透明宮殿の中を見学してみたいと思ってな」
シェイクは笑みを浮かべていった

「透明宮殿?」

「知らないのか?リビュースの宮殿は水の中にあるんだよ。
この島自体は、ドーナッツ型で真ん中の湖の中に、レアクリスタルで作られた
宮殿があるんだよ。確か、レアクリスタルは2枚重ねると
その後ろが見えなくなるから透明でありながらプライバシーを守れる
宮殿が造られたんだな。」

翔はその時変に思った
「だけど、レアクリスタルには魔法も攻撃も効かないのに
なぜ宮殿が建てられたんですか?」

「それは、無の国の王家の人が手伝ったからだろう。無の国の王家は代々
レアクリスタルの形を自由自在に操れる能力を継承できるらしい。」
得意げに語った

「継承?」

「王家なんかは、決まった能力を継承できるんだ。正当な王には自分の人生の記憶を
死ぬ時に受け渡す代わりに、歴代の記憶を受け継げるらしい。」

「そうなのか…」
翔は、メルディアが死んだ事でアーニーにも能力と記憶の継承が行われる
のか?と思った。

「もう話終わったでしゅか~?町見てみたいでしゅ!」
ナナムーが翔の袖を引っ張っていった。

「じゃぁ、行くか。別に悪い事をしないんだったら付いて来てもいいよ。」

3人は港を出て空気の違いを感じた…
まだ、昼間で町の中は賑やかだよ思っていたが
真っ白の煉瓦で建てられた建物はその静けさをより一層引き立てた

「ゴーストタウンみたいでしゅね…」
ナナムーがぼそっと呟いた

「いや、人の気配はある。ただ気力を無くしてるみたいな…」
翔はそれだけではない様な気がした

「そうだね…まぁ、取りあえず宮殿に行けば何かわかるかもしれないね。」
静けさの中にシェイクの浮かれた声が場違いに響いた。


~宮殿入り口~

湖の真ん中に向かって水上を一本の道が通り
真ん中に入り口らしき建物が浮いていた。

一本の道を三人が通り
真ん中の建物に辿り着いた。

「何のようですか?」
水色の羽衣を纏った女性が門番のようだ。

翔は彼女に紹介状を渡した。

「翔様、ナナムー様と…こちらの方は?」
紹介状を読んだ女性は書かれていない人物に目を向けた

「連れの人です。」
「変なおじちゃん。」
「放浪の吟遊詩人さ。」
三人が同時に言った

「あ、あの…まぁ取り分け警戒は厳しくないのでお入りください。」
そういうと、建物のドアが開いた。

「あっ・・・町は何であんなに静かなんですか?」
翔は尋ねた。

女性は困った顔をして俯いたが口を開いた。
「実は、2年前に現王であるシルビア様に即位なされて
今年になり突然、法を厳しくなさったのです。
道理には反していない内容ですが、あまり綺麗過ぎる水に生物が住み難いように
私たちも苦労しているのです。」

「しかし、何故、人気がないんだ?」

「それは、消費税金が他の国に比べて100倍近くあり(その物の値段×20)
昼の間は男性の方は仕事に…女性も内職などで家の中にこもりっきりで
子供たちは学校で勉強をしてるわけです…
しかし、共働きをしても足りる訳がなく最近では
国外に出るものも少なくありません。
ただ、税金が高いだけに、土地代や医療費、教育費、所得税はただなのです。」

「個人的には、道理に反している気がするが・・・まぁ、仕方ないかもしれないな。」

「もう入っちゃうでしゅよ~」

3人は扉の奥に入り込んだ。 

ガタンッ!!

「なんでしゅか~」
ナナムーが床が下に移動し始めたので驚いた。

翔は、エレベーターを知っていたので驚く様子も無かった

宮殿の内部は本当に透き通っていた
キレイな湖の内部に光が差し込み
光の柱を避けるように魚が泳いでいる。
しかし、それ以外は何も見えない
どんなに奥に目を凝らしても透き通った水しか見えないのであった。

ガタンッ!
目の前のドアが開いた。

「翔さん、ナナムーさん、シェイクさんですね。どうぞこちらへ
シルビア様がお待ちしています。」

水色の衣に包まれた女性が3人を案内した。

長い廊下をまっすぐ進むと、赤い絨毯の先に
水色の髪をした、ラフな格好の翔よりも年上な感じの
青年が現れた。

「君達か!僕に何のようだ!」
いきなり、そっぽを向くような言葉に
ナナムーがプンスカ怒った

「な、な、なこの私との食事を差し置いて
話の方が大事なの!?」
シルビアに詰め寄って
顔面スレスレまで顔を近づけた

しかしシルビアは何も無いように前を向いていた

その時、三人の中でも年配の女性が喋った
「シルビア様、この方達に鏡の間に向かわせてはどうでしょうか?
魔物のがいるようですし。」

「鏡の間?」
翔は首を傾げた

「鏡の間は、この湖の北に位置し[直上の灯台]の地下にある
【聖なる土地】の一つで
海流等を操る宝玉が納められているのですよ。
しかし、水温を調整する力がおかしくなっている
みたいなのですが、魔物が巣くっているみたいなので
近寄れないのです。」
シルビアがおかしな表情をした

「念のため、調べてみたいんですが…
聖なる土地関連で大変な目に遭うことが多かったし…」
翔はシルビアの目を見ていった

「好きにしろっ!」

「うぅーん。よそ者が鏡の間に入るの?
だったら、私も行くわ!」
エプロンの少女がシルビアの腕を掴んだ

「お前が行くんだったら、私も行かないといけないだろ!」

「いいじゃない!一緒に付いていきましょ!!」


鏡の間入り口

「ヨロシクー!!名前言ってなかったわね。
私、ケルシーよ!得意武器は調理具~!!
シルビアは双剣~!!」
ケルシーは何事も無かったかのように言った

「ヨロシクーって…」
翔は呟いた。

ナナムーはシルビアが嫌いらしく
着いて行かないと言い出した
シェイクは、音楽を演奏するだけだが
着いて行くと言い出し
翔は嵐のような会話の中心で呆然とし
気付いたら、灯台についていたも同然だった

「ここからは、気を引き締めるんだ。」
シルビアは相変わらず、突き放す言い方をしていた。



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