雫の水音

雫の水音

16章~常闇の死王~


スグに、奥にある装置の方へと足を進めていった。

「よかった…」
ケルシーは安堵の声を漏らした

「おかしいっ!」
シルビアは不意に叫んだ

「どうしたんだ?」
翔は、シルビアの元に近づいた

「何も、おかしな所が無い…正常に運行している。」

「もしかして、罠だったり?」
シェイクは微笑した

「その可能性もある、急いで出るとしよう。」

4人は急いで上の階へと上がった

ケルシーがドアを開けようとしたが
堅く閉ざされていた

「他に出口は無いのか?」

「最上階は外だが、立ち入り出来ない様にドアに鍵が掛けられている。」

「袋の鼠ってワケだ。」
余裕たっぷりの声でシルビアはいつもの笑顔を見せた

「私たちもゾンビになっちゃうじゃん!!」
ケルシーの顔は青ざめていた

「僕が思うに、これが罠なら敵は何らかの行動にでると思うんだけど?」

「そうか、その時に外に出るチャンスがあるかもしれないと…」

「だが、既に灯台内に何かを設置していた場合には外に出れないがな…」
シルビアがぼそっっと呟いた

「大丈夫だよ。罠だけなら、灯台に入れるだけで良い。
その灯台の中で戦闘を起こさせたのなら
相手は、こちらの体力の消費を狙っているはずだよ。
それに、向こうもお出まししたようだしね」
銀色の瞳が静かに光った

「おや…バレてしまっては仕方が無い。
私の名は、セラノス・ドル・グラノウドと申します。
お見知りおきを…」
黒のローブを纏った男は丁寧にお辞儀をした

「グラノウド!!?」
シルビアはその名前に反応した

「闇の国の王家の姓…最早聴く事は無いと思っていたが…」

「そう思うのが当然だと思いますよ。
先の戦争で闇の国は滅ぼされてしまったのですから。」
そう言うと、フードの奥で金色に目が光った

「まぁ、皆様方には何の恨みも無いのですが。」
セラノスはフードを取り外した
金色の目で周りを見る男性は
優しそうな顔とは逆に
邪悪なオーラを放っていた
そして、シルビアはその顔を見て
驚いた

「驚きましたかな?君の父が記憶しているのなら
私の顔を知っていると…」
フフっと笑みを溢した

「どういう事?」
ケルシーは言った

「説明してあげましょうか?」

シルビアは魂が抜けたように一点を見つめていた

~3年前~
「何が狙いだ…お主」
周りは荒野…
そして、兵隊や馬の死体が石ころのように
沢山倒れている

「王様…私めは貴方の命が欲しいだけです。
大人しくしいればこの女性も開放しますよ。」
セラノスは気絶をしている女性の顔を掴みそのまま上に上げた

「分かった。わしの命はお前にやるから放せ。」
シルビアの父は静かに言った

「それでは…」
セラノスは女性の頭を握りつぶした

シルビアの父は声が出ないまま涙を零していた

「肉体から魂を開放してあげました。」
セラノスは優しく、そして
絶望する姿を見て楽しむかのように笑った

そして…近づいて行き…

記憶はそこで終わっていた…
王位継承の日、今までの王の記憶を宿す…
シルビアは覚悟をしていた
しかし、それは
若き王には酷すぎる継承だった

「酷すぎるほどの悪趣味だな」
シェイクが不快そうな顔を浮かべた

「褒め言葉として受け取っておくよ。
さてと…」
今まで宙に浮いていたセラノスは床に
椅子から立ち上がるかのように
足をつき
手を前へと翳した



翔とシェイクは身構えたが、シルビア、ケルシーは構えられず
人形が子供に投げられた後のように
力なく地面に倒れた

「お二人さんとも、一緒に気絶すればよかったものを…」
セラノスは目を閉じた

2人はそれを見たと思った時
後ろから衝撃が走った

翔は、衝撃で口から血を吐き冷たい床に倒れた

翔は、薄れる意識の中
龍を呼ぼうとしたが
返事は無くただ暗闇へと堕ちていく
感覚だけに包まれた

ポロン、ポロン…

遠くから音楽が聞こえてきた


「いまさら何を?そんなもので私を倒せるとでも?」
セラノスは楽器を弾き始めたシェイクに言った

「音を甘く見てるといけないよ…」

音が床を空気を反響し空間全体を包み込んだ

「教えてあげよう。
言葉という音は、心を動かせる。
音楽は、安らぎを与え
雑音は、不快を与える
そして、世界の殆どは音で成り立っている…
心臓の鼓動、風や水の音…」
シェイクは静かに微笑んでいた。

「しばらく、体の構成を維持できなくなりそうだな…
ただ、この場から、君という雑音を無音に変え
3つの世界の楽器を失ってしまうよりかは
その方が良いだろう…」
シェイクは広がっていた音の空間を
セラノスの方へ縮小していった
セラノスは強大な気配を感じ
手から何かを放ち静かに呟いた

「任務完了…」

そして、シェイクと共に消えていった



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