+詩+87







Ю俺のマザーグースを聴けЮ







コレはある村の言い伝えだよ





小鳥さん


小鳥さん


小鳥さんのさえずる声は

とても美しく

聞く者を魅了する




聞き惚れて気がついたら


病に苦しむ者は元気になって

泣き止まない赤ん坊はすやすやと眠り

悩み事があって落ち込んだ者には次へ進む勇気をくれた

心が冷たくなっている者は春が訪れたように温かな人間になったそうだよ




小鳥さんは歌い続けたよ

みんなのため

みんなのため


役に立てるのなら

必要としてくれるためなら


毎日のように


歌って

歌って



けどある日、


小鳥さんは声が出なくなった


歌いすぎで喉を痛めたのかな?




村の人は小鳥さんにまた歌ってもらいたかったから

ずっと北に住む魔女の所に駆け込んで

村の大切な宝と引き換えに小鳥さんを診てもらう事にした



何としてでも小鳥さんを助けてもらいたかった



また小鳥さんの歌を聴きたかったから


けど


小鳥さんの声が出なくなってしまった原因は結局分からなくて


魔女はそのまま去ってしまった


そうと分かったら村のみんなは

小鳥さんを相手にすることは無かった

もう用なしだ、そう言って

もう誰も小鳥さんの所に行かなくなった




小鳥さんは一人になった




寂しがり屋な小鳥さん


毎日毎日泣いていた




声は出ないけど沢山沢山涙を流した




涙はやがて泉となって

小鳥さんの住む木を囲んだよ




更に誰も近寄らなくなって日がたった





ある日の事


小鳥さんの住む木の下から声が聞こえた

とても素敵な歌だった


だから小鳥さんは顔をのぞかせた




其処には小さな男の子がいたよ

水面の上に立っていた、不思議な不思議な男の子

男の子はすぐさま気がついた

「こんばんわ 君は誰?」



小鳥さんは声が出ないから木に彫ってある自分の名前を指差した




「小鳥さんって言うんだ 僕は、」

そう言って壊れたバイオリンを取り出した

「音楽隊の一員さ 道に迷ってしまったんだ」

音楽隊なら、何で壊れた楽器を持っているの?

それでは歌えないだろう


声の出ない小鳥さんは身振り手振りで聞いてみた



「この楽器から、普通に演奏したら音は出ないかもしれないけど

けどこの楽器が歌いたがっているんだ

だから音で音楽を演奏するんじゃなくて

楽器の心が演奏をするんだ」




そう言って小さな男の子は壊れたバイオリンを演奏したよ


さっき聴こえた、素敵な素敵な音楽が聞こえたよ


小鳥さんは、気がついたら泣いてた



でもソレは、いつも流していた冷たい涙じゃなくて

温かい温かい涙だったんだ





「小鳥さん、君も歌おうよ」


小鳥さんも一緒に歌ったよ

音の無い歌を





気がついたら森に住む動物や、村の人たちが其処に集まっていたよ

前みたいに、みんな体と心が安らいだ



みんな温かい心を取り戻したよ




歌が終わったら、拍手喝采。


みんな小鳥さんに謝った

ごめんねって



このことを気付かせてくれた、

其処にいる小さな小さな男の子のおかげだったんだ、

小鳥さんはまた手振りで答えた




けど後ろを見ると男の子はいなくなっていた


壊れたバイオリンを残して


この村で暫く村のみんなのために歌っていた小鳥さんは




他の世界の人たちにも歌を聞いてもらうため、

そして小さな男の子にありがとうを言って、バイオリンを返すために




旅に出ることにしたよ


世界を回った小鳥さん





少年に再会した後、小鳥さんは男の子のいる音楽隊に入ったよ


音の無い音楽を演奏する不思議な不思議な音楽隊


冷たい涙を温かい涙に変える―不思議な不思議な音楽隊







© Rakuten Group, Inc.
X
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: