― 碧 虚 堂 ―

― 碧 虚 堂 ―

another time~letter~

『another time ~ letter ~ 』





 「ご苦労様~!」

 「お、郵便か」

 「ええ」

 「―――郵便物が届くの、久しぶりだなぁ。普段の2倍は郵便物が多いような…」

 「まぁね。空島に行っていた間、溜まってたのをいっぺんに届けてくれたみたい」

 「食べ物とかあったらヤバイぞ。腐ってねーだろうな?」

 「う~ん、どうかしら…」

 「ナミ!早く開けろ!」

 「ちょっとは待ちなさいよ、全く―――あ、ウソップに絵はがきよ。ハイ」

 「お!カヤとピーマン達の写真だ」

 「……てめェが話してたカヤってお嬢さん、また可愛くなったな」

 「ああ、確かにな。初めて会った時よりかは顔色も良くなってるじゃねーか」

 「そりゃあ、オレ様がカヤと村のピンチを救ったんだからな!元気も出るってモンだろ!」

 「クソ。こんな可愛い子が長っ鼻なんかとお知り合いとはなぁ……」

 「こっちはココヤシ村からだわ」

 「何だ、それ?食い物か?」

 「“みかんのジャム”ですって。いっぱい出来たから送ったって…手紙に。みかんならこの船に同じのがあるからって前にも書いたのに」

 「流石はナミさんのお姉さま!ジャムなら保存が利くからいつでも食べられて助かるよ」 

 「よし!直ぐに食うぞ!!」

 「保存に利くって話したばっかだろうが…」 

 「植物ってスゲーな!元は同じ木だから、どれだけ故郷を離れても船のみかんもジャムのみかんも味は変わらないんだな」

 「ええ。それに航海士さんが丹精込めて育ててるから、この“偉大なる航路”の気候でも美味しいのが出来るのね」

 「アラバスタのビビからは香辛料に服、皆にそれぞれ必要そうなものを送ってくれたみたい」

 「緊急物資のようだな。この船が万年金欠なのをビビは知ってるから」

 「……………」

 「どうかしたのか?箱の隅々まで確認して」

 「―――現金の郵送は物騒だから無理よねェ」

 「まだ諦めてなかったのか、10億ベリー………」

 「サンジ君はバラティエから」

 「調味料セット?アイツ等か。何だってんだ、急に……」

 「ヘェ。夜中にキッチンで紙とペン持ってウンウン唸って書いてた甲斐があったじゃねーか」

 「!!―――てめェ!何でそれを知ってやがる!?」

 「何だ、バラティエに手紙を出したのか。別に隠すようなこっちゃねーだろ」

 「うっせェ。隠したい事もあんだよ」

 「オレは空島から帰って来た事をドクトリーヌに報せようかな?」

 「それに比べて、ルフィとゾロは手紙も来ないし、自分でも出さないよな」

 「まぁな!」

 「別に、近況を報せたい相手も居ないからな」

 「便りが無いのが元気な証拠だってか?つまんねェ野郎だ」

 「あら、手紙を出す相手が居るなんて楽しいじゃない」

 「?」

 「自分の為だけに書かれた手紙を読む時間も、相手に何て言葉を綴ろうかと考える時間も素敵だと思うわ。手紙を待つ楽しみを知らない

私には羨ましいくらい」

 「オシ!そんなら皆でロビンに手紙を書いて出すぞ!!」

 「え?」

 「そしたらロビンも手紙が楽しみになるじゃねーか!」

 「態々、郵便で出してまた郵便で届けてもらうのか?」

 「おう!」

 「おおー!面白そうだな!!」

 「ケドな…毎日、面合わせてるってのに、何て書きゃ良いんだよ?」

 「ったく、これだから頭の中身まで藻なヤツは……」

 「あぁ?」

 「こーゆー時の手紙っつったら『ラブレターvv』に決まってんだろ!日頃、ロビンちゃんには明かせない、心に秘めた想いをだな―――」

 「てめェは年がら年中、秘めた想いとやらを曝け出してるだろうが。これ以上、アホを振りまいてどうすんだ」

 「んだと、コラ!」

 「オレは何て書こうかなぁ?ロビンには訊きたい事がたくさんあるんだ~」

 「手紙ってのは質問ばかりじゃ楽しくはないんだよ、チョッパー君」

 「そ、そうなのか??」

 「手紙は読んだ相手に『こんな嘘みたいな本当の話が!?』と驚かせるような話を書かなくていけないのだ。そんな訳で、オレはキャプ

テン・ウソップ様が果敢に挑んだ冒険記を綴った超大作を絵本風に……」

 「―――――」

 「ロビン?どうしたの?難しそうな顔して」

 「???」

 「―――ああ、ごめんなさい。皆から手紙を貰うと思ったら嬉しくて。何て返事を書けばいいのか、今から困ってしまったわ」 


End.





 2007.05.12



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