NO-NAMEの隠れ家

NO-NAMEの隠れ家

KAN(2)

作品レビュー…の続き

7thアルバム
『TOKYOMAN』
(1993.2.25)

前作『ゆっくり風呂につかりたい』発表後、ベストアルバム『めずらしい人生』を挟んで、オリジナルアルバムとしては1年9ヶ月ぶりとなる7作目。
これまでのアルバムと違い、ジャケットに自身の姿を押し出すのではなく、シンプルにまとめあげて、まずは見た目からして落ち着いた感じを聴き手に与えさせます。
そういった佇まいも手伝ってか、今作はアルバムとしての統一感が強く感じられる一枚になりました。もちろんコミカルでユーモアを感じられる曲も入っていますが、オトナな雰囲気を漂わせている印象が強いですね。歌詞もどちらかというと内面的なものを描いている傾向が強く、それゆえ、様々な方向を向いて描かれるカラフルさという点では他のアルバムより主張が弱いと感じられるかもしれませんが、この独特な雰囲気も、楽曲そのものの良さによってすべて聴き手に満足感を与えることに十分成功しているのではないでしょうか。
曲は実に粒揃い。どれも良質なメロディーとアレンジメント、そして彼らしい男心を綴った歌詞と、すべてが高い次元でまとまっています。
KANの音楽家としての資質の高さを感じるアルバムです。

1.丸いお尻が許せない ★★★☆

先行シングルとなった1曲目は、明るいオシャレなサウンドに乗せて、ひたすら性欲を歌いまくるという、もうKANとしか言いようがない愉快なナンバー。
サウンド自体は本当にカッコよく出来ていて、ブラックフィーリングも微妙に感じられるBメロから、明るいサビへ持っていく流れなんか、職人技だと勝手に思いますね。
こちらアルバムバージョンでは、終盤に「おしり~♪」というソウルフルで楽しげなコーラスも入っています(笑)。

2.まゆみ ★★★★☆

三ツ矢サイダーのCMソングとして起用され、KAN史上2位のセールスを記録したナンバー。知名度も『愛は勝つ』の次でしょうか。
ファンからの人気は『愛は勝つ』以上でしょう。数年前の『ミュージックステーション』の特番の中で、お気に入りの1曲として平井堅と矢井田瞳が偶然にも同じこの曲を挙げており、平井堅にいたっては「KAN好きにはルールがあって、『愛は勝つ』よりも『まゆみ』なんですよ~。」と力説!本当に熱心なファンだということがよく伝わってきました。
実力派アーティストの方々からも大絶賛を受けるこの『まゆみ』は、間違いなくKANの代表曲であり、名曲と言うことのできるナンバーです。
実はこの曲、聴いてみて気付かれた方もいるかと思いますが、元々は別の曲だった2曲をつなぎ合わせたものになっています。本当に上手いことハマったそうで。
ビートリーなピアノスタイルで始まって、淡々と進む歌を、『マジカルミステリーツアー』の印象的なピアノフレーズをはさんでサビへ持っていくという構成はお見事ですね。2コーラス目のサビ後になだれ込むブリッジ部分はカタルシス満点。そして再び最初のメロに戻る。メロディーの良さももちろんのこと、それに加えて構成が冴えてますね。
歌詞…なんですが、女性の名前を冠したこの作品、KANさん本人は「実在の人物のことを歌っている」としながらも、それについてあまり多くは語りたくないようです。表面的な部分の美しさが一人歩きしてしまっているけど、実はもっと最低な男の立場から歌った歌だからなんて言っていますが。
いやいや、しかし、一行一行に込められた健気な想いなんか、こちらにまでくるものがありますよ。やっぱりここでも上手いのがラストのフレーズで、「まゆみ 一番透きとおってて美しい水って何か知ってるかい」と来て、「まゆみ 恋をしてせつなくて がまんしてがまんしてこぼれた涙がきっとそうだよ」というのにも感涙必至ですが、そのあとにさらっとくる「こんなことしか言えない僕をゆるして」というラスト一行がまたいい。この余韻がね。知り合いのまゆみさんに、是非この曲を聴かせてあげてください。

3.香港SAYONARA ★★★

ボサノバ。流麗に流れていく歌詞もお見事。

4.Moon ★★★☆

意外にもKANさんの楽曲には珍しい、まさにバラードなバラード。やっぱり最初から最後までメロディーも手を抜いていないし、Cメロ部分のカタルシスもいいですね。

5.君がいなくなった ★★★★☆

思い出に浸り、虚無感を再確認するかのような、失恋後の心情をとことんやるせなく描いたナンバー。
とにかくメロディーラインが良いです。最高です。淡々とした曲調が、なんとも切なくて涙を誘いますね。
当時失恋後の僕は、本気でこの曲を聴くのが辛くてスルーしていた記憶があります(笑)。
「君がいなくなったときからぼくはただの人」というフレーズが、失ったものの大きさを、大げさなふりをせずに、さらりと伝えていてお見事です。

6.孔雀 ★★★☆

ダンスナンバー。マイケルなんだけど、メロディーはやっぱ日本なんですよね、これ。「恋なんてterrible」と「人生やってれば」という韻の踏み方は、この人はやはりただ者ではないと思いました。
中盤の間奏が、冗長な感じがしてしまうのが残念。ライブではここはダンスタイムなんだけど(笑)。CDで聴くとちょっと、ね。

7.Day By Day ★★★

シングル『言えずのI LOVE YOU』のc/wとして、すでに発表済みであったこの曲ですが、ライブツアーを終えて歌ってみたら、元より断然良くなっていたからとのことで、リテイクがアルバム収録されることになりました。ご本人曰く、「こういうこぶしだけの歌は、唄えば唄うほど変わるからね」。
こういうメロディーって、普通の商業作曲家には出てこない、ピアノマンとしてのKANさんだからこそっていう感じはありますよね。

8.TOKYOMAN ★★★★

八分音符の刻みが美しいタイトルナンバー。「明日のことなどだれにもわからない」。
歌詞中に出てくるパリの香織さんがKANさんのコンサートを見に来たのですが、本人の主張によって、その日だけこの曲の中の「昔俺に惚れてたのに」というフレーズを「昔俺が惚れてたのに」に変えて歌わされたってのはファンの間では有名な話ですね。

9.死ぬまで君を離さない ★★★☆

これも珍しくシリアスなバラード。歌詞の景色がイマイチ見えてこない面もありますが、真摯なメッセージは響きますよね、実際。
「君にとっての僕はいったいどんなんだろう~♪」と歌うCメロ部分もやはりカタルシス満点。

10.KANのChristmas Song ★★★

ケンタッキーフライドチキンのCMに起用されていたので、聞き覚えがある人もいるかもしれませんね。タイトル通りのクリスマスナンバー。アカペラです。
果たして、「君」は来たのでしょうか…。

総合 ★★★★










8thアルバム
『弱い男の固い意志』
(1993.12.10)

全作からわずか9ヶ月というスパンでリリースされたのですが、決して拙速という印象はなく、むしろ様々なタイプの曲がどれも高い完成度で並び、また、アルバムとしての雰囲気やまとまりも極上の出来となっています。
とは言っても、決して湯水のように曲が溢れ出ていたのではないらしくて、売れ線作家としてのプレッシャーからは解放されてきてはいたものの、同時にアーティストとしての自己評価が厳しくなり、悩みぬいた中で出来上がった作品であったと後に本人が語っています。
ポップセンスに磨きがかかった10曲は、どれも聴きやすく、弾き語りの『ラジコン』で始まって、弾き語りの『朝日橋』で終わるという構成がアルバムを優しい印象にしています。初心者にも特にオススメできる充実の一枚です。

1.ラジコン ★★★☆

美しいピアノで幕を開けます。KANさんの素朴な歌声がまた、この曲の魅力をひき立てていますね。

2.Cover Girl ★★★★

KANさんの曲の中では今までにあまりなかったタイプのポップロック。
イントロのギターの音が素晴らしい。と、僕は思います。サビにかかってくるコーラスも気持ちいいし、大陸的でスケール豊かなメロディーにも文句のつけようがない。
カタカナ言葉が並ぶフレーズも印象的です。歌詞のモデルは川原亜矢子さんだと、どこかでKANさんが言ってたような。

3.星空がcrying ★★★☆

淡々とした曲調の中に寂しさや切なさが溢れ出ます。
情緒溢れるミディアムナンバー。
ドラムの音が好き。

4.いつもまじめに君のこと ★★★

シングルリリースされたお洒落で上品なポップス。
飾らずに恋人へのメッセージのように綴られる歌詞は、KANさんの人柄が出ていて微笑ましいです。
「きっと最後にぼくたちは一緒に居るはずですから」で締められているのもいいなぁ。

5.甘海老 ★★★★☆

発売当初このアルバムの帯には、「異色の話題作『甘海老』を含む全10曲収録」なんて書いてありましたが(笑)。
話題になったかは別として、曲調、歌いまわしともに思いっきりマイケル・ジャクソンを演じてしまったこの曲は確かに異色です。
パロディーなんだけど、それがまた、おそろしいくらいに完成度が高いんだ(笑)。
前作の『孔雀』も似たような雰囲気だったけど、あれはまだ日本人好みのメロディーに仕上がっていました。今回は、モロですから(笑)
夜の街をうろつく女子高生達への警告メッセージソングとなっている歌詞も、ある種、男の心理をついていて傑作です。「甘海老みたいに 食べちゃうぞ」って(笑)。

6.STARS ★★★

美しいストリングスが光ります。
結婚を前にした女性への、男の視点からの優しい歌詞を綴った曲です。

7.焼肉でもいきましょうよ ★★★☆

はじけるような明るくアップテンポなナンバー。ほれちゃった気持ちをハイテンションに歌いまくります。「Wow wow wow」連発で、ちょっと落ち着きなさいって感じですが、終わりまで突っ走ります。焼肉、いきたいですね。

8.秋、多摩川にて ★★★★

まさにKANの真骨頂と言うべき流麗なピアノが奏でられる美しいナンバー。
かつての恋人を、変に暗くならずに思い出して「がんばれ」というメッセージを送ります。
名曲、ですね。

9.明るいだけのLove Song ★★★☆

「SMAPに提供するつもりで書いた」曲。「明るいだけのLove Song」といっておきながら、無理して「明るさ」を演じている感じがするというか、どこか裏に影があるように思えてしまうのは、僕の深読みのしすぎでしょうか。
『焼肉でもいきましょうよ』のほうが間違いなく明るいもんなぁ(笑)。
まぁ、それはともかく、これはこれでとても良くできているナンバーだと思います。

10.朝日橋 ★★★

ラストはピアノ弾き語り。
「朝日橋」は実在の場所です。いつものことながら、ラストを飾るこの曲は、ここまでで最も、切ないです。

総合 ★★★★










9thアルバム
『東雲』
(1994.11.26)

1994年のアルバム。「東雲(しののめ)」とは、闇から光へと移行する夜明け前に、 茜色にそまる空という意味。美しいタイトルだなぁと思ったのですが、江東区東雲(地名)でレコーディングしたのがタイトルの由来だとか。
パッと聴きは地味なアルバムですが、玄人受けする曲が多く、聴けば聴くほど味が出る一枚です。
曲調は相変わらず様々で、職人振りを見せつけられます。
『牛乳飲んでギュー』・『結婚しない二人』・『ホタル』など個人的にも好きな曲が多く入っているし、僕自身、このアルバムの佇まいがとても好きです。

1.Sunshine of my heart ★★★

17thシングルとして、このアルバムと同時発売。
いきなりダンサブルなイングリッシュコーラスから入る構成にオドロキ。なんだかKANさんじゃないみたい、と思いました、一聴して。
なんともハイテンションなんだけど、リズムが独特で最初はとっつきにくさを感じてしまうかもしれませんが、そこはKANさん。体に染みつけば、実に楽しい。大好きな人を手に入れた喜びを目一杯語った歌詞とベストなドッキング。こんなノリの曲、他の人じゃマネできませんね。
歌詞もウマいんですよね。日本語英語を上手く使い分け、独自の言い回しを見せてくれます。
「早稲田に慶応、なんと東大まで一気に合格(うか)った そんなfeeling」とか。「君の欲しいものを すべてshopping」して、「もっと大事なものがあるってこと」を気付かせるってのもいいですね。
外人でもそんな簡単にバンジージャンプしないでしょうけど(笑)。

2.牛乳のんでギュー ★★★★

イントロはビリー・ジョエルからの引用。なんか一気に体の力が抜けてグダーッとしてしまうようなブルース。
背の低い男の哀愁というのがね、泣きたくなるほど伝わってきます。でも、可愛らしいラブソングだなぁ、これ。いい詞ですよね。
最後の「ギュ~」もまた良いです。脱力感満点。

3.結婚しない二人 ★★★☆

知的で洗練されたポップス。KANさんの経験の賜物ですよね、こういう曲を書けるってのは。
なんか、知性派どうしのカップルのラブソングって感じで、好きです。歌詞中にKANさんとも親交の深い「ミスターチルドレン」が出てくるセンスも良いです。

4.West Home Town ★★

これはお得意の、と言った感じの、ハネたポップロック。そんでもって、ご当地ソング。KANさんの生まれた町である福岡を歌っています。
「親不孝通り」とか「山笠」とか、個人的にはよく知らないんですが、まぁ、同郷の人ならきっとニヤけちゃうでしょうね。
「14日に」・「16年も」・「18まで」・「20年後も」と、それぞれのコーラスの最初のフレーズを数詞で統一していて楽しませてくれます。
サウンド面に関してはそれほど好きじゃないですが。

5.東京に来い ★★★

後に19thシングルにカット。
もうビートルズです。「ランララ♪」のコーラスもまさに!!って感じで。演奏時間も短めで軽快な曲に仕上がっています。
「カフェド ロペ」は、KANさんファンなら一度は行ってみたい喫茶店。

6.悲しみの役割 ★★★☆

あぁ、悲しい。アコースティックでどんよりした空気がサウンドにも漂っているのですが、KANさんの声も曇り気味で、この曲の悲しさにますます拍車をかけます。
「結局は本当の意味で彼女には幸わせは来ない」
ピタリと不倫の本質を言い切ってしまったリリックもまた泣けるのです。

7.ホタル ★★★★

夏のエロティック&セクシー。ってどこかでどなたかが言っていましたが、まさにその通り。
滑らかで煌びやかで怪しげで…。そんなスローなダンスサウンドのこの曲。歌詞も、「ホタル」を巧みに比喩に用いながら、細やかに、艶やかに、ムード満点に描かれています。並べられた言葉の数々も職人技の域。
都会でホタルなんてもう見れないでしょうね。
いやはや名曲です。

8.Girlfriend ★★★

ややもすると退廃的な感もある異色のサウンド。マイナーロックとも言えるでしょうか。

9.すべての悲しみにさよならするために ★★★☆

アルバム発売2ヵ月後の1995年1月25日に18thシングルとしてリリース。
KANさん最後のトップ50ヒットだったかと思います。
重厚なロッカバラード。歌入れも何回も行われたそうで、手の込みようがわかります。丁寧に歌われていますね。
ラストのサビでの大きく音階が上がるフェイクが好きです。

10.星屑の帰り道 ★★★

このアルバムの落ち着いた佇まいを象徴するような、落ち着いたバラードで幕を閉じます。歌詞中の二人の関係がまた切ないです。

総合 ★★★☆










10thアルバム
『MAN』
(1996.5.27)

シンプルなジャケットを見るにつけ、また実際に聴いてみても、一見地味な印象のアルバムかもしれません。
しかしながら、よく聴いてみれば、1曲1曲は相変わらず作りこまれているし、曲のバリエーションも豊富。それでいてアルバム全体のバランスも良い雰囲気にまとまっているという、完成度の高さがわかります。
KANさんらしいエンドレスメロディーの泣きメロポップナンバーがあれば、ハネたポップロック、これまたKANさんらしくユーモラスに男の視点を描いた歌詞の曲もあれば、しっかりと弾き語りも収録されています。
『DISCO 80'S』は初挑戦のディスコナンバー。更にシングルリリースもされたタイトルナンバー『MAN』は、男としての想いを真摯な態度で書き上げた名曲。多くのアーティストにも影響を与えました。

KANさんというのは、こと音楽に関しては妥協をしない人です。常にその時の自分の最高の作品を届けようとしてくれます。また、ライブでの演出方法、楽曲の見せ方など、パフォーマンスに関しても、こだわりを持って、手を抜かずにやる人です。
それは、デビューから今作に至るまで一貫してとってきた姿勢であり、その地道で努力家な彼の姿に惹かれているファンも決して少なくないことでしょう。
特に、『愛は勝つ』フィーバーを経た90年代中盤以後のKANさんは、自らを職業音楽家と割り切り、徹底したプロ意識で完成度の高い作品を届けてくれています。
『MAN』で描かれた男性像は、KANという人間の生き方そのものを反映しているように思えます。
今作は、何気ないようでいながら、KANという唯一無比のシンガーソングライターの凄みを感じさせてくれる作品です。

1.涙の夕焼け ★★★☆

1曲目から、泣きのナンバーが来ます。
レコード盤をイメージしたノイズで始まるこの曲は、『REGRETS』・『愛は勝つ』・『ときどき雲と話をしよう』などKANさんの数々の名曲で見られるエンドレスメロディーのバンドサウンドで、別れを前にした状況を歌った涙なくしては聴けない失恋ソング。
それでも、聴き心地がポップに仕上がっているのが職人技。
サビへ入るときのドラムが印象的です。
「どこまでもみっともなくても どうしても君と別れたくない」…誰でも失恋するときはこういうものでしょう。
後に21stシングルにカット。

2.8 days A week ★★★☆

『HAPPY TITLE -幸福選手権-』収録の『OLD FASHIONED GIRL』を進化させたようなハネたポップナンバー。
こういう二人の関係、いいなぁ。可愛らしいです。

3.MAN ★★★☆

「MAN」として、女性と向き合う気持ちを誠実に綴ったロッカバラード。
この曲の精神性には、多くのアーティストが「影響を受けた」と後に語っています。
「男は誰にも どんな人にでも 守るべきものが二つ以上ある」というフレーズは、深いですよね。
サビは、後のミスチル『終わりなき旅』へとつながります。
2番のサビ後から雪崩れ込む「いつの日か~♪」のフレーズとコーラス、バンドアレンジは壮大です。構成も冴えています。
20枚目のシングルとして、アルバムと同時発売。カップリングはアルバム未収録です。

4.夏は二の腕発情期 ★★★★

そして、『MAN』のあとに来るのがこの曲だというのが、実にKANさんらしくて素晴らしい(笑)。
出だしから、「ニーノ、ニーノ♪」の連呼が楽しい、女性の「二の腕」への想いを歌い上げるポップロック。KANさんのフェチぶりがわかります。
終盤には、自身による「幸せだなぁ」のセリフも入ります(笑)。
AメロBメロもよく出来ていますし、いやはや、これ、かなり完成度高いんじゃないですかね。

5.今度君に会ったら ★★★☆

イントロの穏やかなピアノフレーズが印象的なバラード。メロディーの美しさといったら、もう。あくまで根底にあるのはスティービーワンダーですが、独特のこぶしを聴かせてくれます。歌詞も、素直に綺麗に描かれています。

6.DISCO 80'S ★★★

ディスコナンバーです。これは、もう、ご自身が体験した良き思い出をもとに描かれていると言っていいでしょう。
「果てしない思い込み」も「それはそれでエナジー」だったんですね。
で、結局、歳をとっても、「ところでお嬢さん 今夜ぼくと踊りませんか」と誘っちゃってます(笑)。
サウンドは、オマージュ色に溢れた良い具合の出来ですが、「ツバキハウス、カンタベリーハウス、ラジャコート、トキオそして玉椿」って、まったく知りません。僕ら世代だともう、ディスコって言われてもね、ピンと来ないです。

7.ひざまくら ~うれしい こりゃいい やわらかい~ ★★★

サブタイトルはドリカムを意識したとはホントか冗談か。ある意味、『MAN』とは対極に位置する曲で、男の甘え願望が全開しているコミカルな1曲。
一生懸命やるときゃやってるんです、でもちょっとくらいは甘えさせてくださいよ、みたいな。この二面性こそが、KANさんの作品群を表情豊かに彩る歌詞の最大の魅力。
サビの「酔っぱらった~」では、一気に力が抜けてしまいました。でも、平和のしるしに「ひざまくら」って、なんかいいですね。幸せそうです。

8.Autumn Song ★★★☆

神妙なピアノが聴き手の心を揺さぶります。『秋、多摩川にて』と同じようなタイプのピアノナンバーですが、漂う空気が今回はマジです。シリアスです。
今回は、たとえ君にとって正直な気持ちでなくても、この声に気付き涙してほしい…と、KANさんにはめずらしく、相手に嘘をつかせてまで、自らを救ってほしいという気持ちを吐露しています。
冷たい空気のまま盛り上がっていくアレンジメントも隙なく構築されています。

9.Mr.Moonlight ★★★☆

ブラックミュージック寄りのバラード。ソウルフルなコーラスも、この手の作品が初めてとは思えないほど綺麗にハマっています。

10.指輪 ★★★☆

かの名曲『君が好き胸が痛い』を髣髴とさせる感傷的なピアノ弾き語り。KANさんの生の歌声が響きます。声のかすれ具合もまたいいのです。

総合 ★★★★

ふと気付きましたが、そういえばこのアルバムは、失恋の歌が多いですね。ラスト3曲はすべて失恋ナンバーだし。
充実した楽曲を擁し、KANさんご本人にとっても最も納得度の高いアルバムとして挙げられています。










ベストアルバム
『The Best Singles FIRST DECADE』
(1997.9.3)










11thアルバム
『TIGERSONGWRITER』
(1998.3.5)

今度はレコード会社をワーナーに移籍。
約2年ぶりとなった11作目のアルバム。タイトルは、言わずもがな「シンガーソングライター」のもじりであり、自身が寅年生まれであることからとった「TIGER」とかけているのでしょう。
KANさんらしく、実にバラエティー溢れる楽曲が並んでおり、収録曲数は9曲と、昨今のオリジナルアルバムには曲を目一杯詰め込むという風潮からすると少ないですが、聴き終わったあとの満足感は、それを上回るものがあります。
KANさんのアルバムはどれもがバラエティー豊かなのですが、今回は、それが本当に顕著で、『Songwriter』・『月海』・『君を待つ』のような真面目な楽曲があれば、『Oxanne』・『ドラ・ドラ・ドライブ~』などのようなユーモラスな作品も入っています。そして『サンクト・ペテルブルグ』は、そういった真面目さとユーモアが同居してしまった傑作。これ1曲で、KANワールドの全貌がなんとなく見えてくる…かな!?
曲調の振れ幅という点から言えばこのアルバムがNo.1であると思います。
一つ一つの楽曲の演奏時間にしても、『長ぐつ』のようなシンプルで短めなナンバーがあれば、『Song of Love』のような長尺の曲まで、今回は以前にも増して自由なスタイルでの曲作りが行われていて、それがアルバムのカラフルな印象をより強いものにしています。
ちなみに、僕が二番目に買ったKANさんのアルバムです(一番は『TOKYOMAN』)。このアルバムを早い段階で聴いていて、本当によかった。

1.Songwriter ★★★★

前作『涙の夕焼け』のリリースから丁度1年ぶりの22ndシングル。1997年8月27日発売。
ファンを待たせましたが、それだけに、さすがKANさん、多くのファンにとって十分納得のいくであろう完成度の楽曲をリリースしてくれました。
まさしく自らを描いたこの『Songwriter』は、「これぞ」と言わんばかりの、リリカルなピアノが美しい名曲。
螺旋を描くような旋律、そして広大な景色が広がるようなスケール豊かな展開へと。ピアノでこれだけの表現力を見せつけるKANさんのSongwriterとしてのセンスに感嘆しつつ、過ぎていった時、そしてまだ見ぬ時への想いを包み込んだ歌詞に、また胸を締め付けられるような感触を覚えて、次の曲へ…。

2.長ぐつ ★★★☆

優しい印象で、メロディーメーカーぶりが光る1曲。
KANさんなりに、単純に、難しく、愛について語った歌詞も注目どころです。

3.サンクト・ペテルブルグ -ダジャレ男の悲しきひとり旅- ★★★★

アルバム先行リリースとなった24thシングル。1998年2月5日発売。
ポップで、適度にダジャレをまぶしつつ、ラブソングで、愉快で、どうしようもなく切ない、というKANさんじゃないと出来ないであろう1曲。
「『昔の呼び名はレニングラード…』『あ本当、フィンランドですか?』『いいえロシアです。』」…こんな歌詞をメロディーに乗せ、スムーズに歌いこなせてしまう人なんて、他に居るでしょうか。
「涙出るほど好きでした」から間奏への展開は、切なさがすごい。
KANの多面的な魅力をのぞげる傑作です。

4.SAIGON ★★★★☆

マイケル・ジャクソンの『Heal The World』をパロった1曲。
ヴォーカルも機械を使って微妙にピッチを上げ、それっぽくなっています。
しかし、決して単なる真似事に終わっているわけではなくて、ちゃんとKANさんなりの楽曲に仕上げているのだからすごい。完成度高いです。
「THE VOICE OF JAPAN」によるコーラスも迫力あります。

5.Oxanne ―愛しのオクサーヌ― ★★★

KANさんと日頃から親交の深いミスチル桜井和寿がギターとコーラスで参加しています。
この曲の存在はミスチルファンでも、あまり知られていないのでは?
それにしても、この時ミスチルはちょうど活動休止中だったので、桜井さんミスチル休んで何やってるの状態ですが(笑)。
曲調は、生音バンドサウンドのポップなロック。人妻への想いをノリノリでシャウトします。しかし、「エレガンドでスレンダー」で「コンサーヴァティヴでアンニュイ」な奥さん、いいですね(笑)。
ベンツの色以外はすべて実話だと言うから…まったくもう(笑)。
タイトルも巧いですねぇ、KANさんらしいです。

6.月海 ★★★★★

失恋後の、すべて失った心情を描くバラード。
君はもう戻らない。
美しき絶望…。

7.ドラ・ドラ・ドライブ大作戦 -トラ・トラ・トラどし大先輩-(特製ミックス) ★★★☆

23rdシングル。1997年12月25日発売。
タイトルからしておちゃらけていますが(笑)。
このバージョンでは、愉快な合いの手やコーラスが加わって、とても賑やかになっています。
ライブでは「ドイ・ドイ・ドイナカ大農場」バージョンなどと名前を変えて演奏されています(笑)。

8.Song of Love -君こそ我が行くべき人生-(英語版) ★★★☆

お馴染みエンドレスメロディーのミディアムナンバー。演奏時間は通常より長く、豪華な仕上がりを見せている大作です。
英語レベルは易しめで、簡単に訳せそうです。訳してみてもいいかもしれませんね。
ちなみに、タイトルで「英語版」と銘打ってありますが、日本語版は存在しません(笑)。

9.君を待つ ★★★

厳かな雰囲気の漂うピアノナンバー。
この曲を聴くと、四季のある日本に生まれて本当によかったという気持ちになります。
美しいです。季節の移り変わりも、この曲も。

総合 ★★★★☆

全9曲にKANさんらしいカラフルな魅力が全開している一枚。










12thアルバム
『KREMLINMAN』
(1999.4.21)

KANさんの12枚目のアルバム。
今回のKANさん、どうやらロックに目覚めてしまったようで(笑)、冒頭の『ロック試練の恋』や『Rock’n Soul in Yellow』・『WHITE LINE』・など、結構本格的なロック色の強いナンバーが並んでいます。
しかし、9曲中3曲もそういったナンバーがあるとさすがにやり過ぎ感もあって、アルバムとして見ると、ちょっとロックナンバーが前に出すぎていてアクが強いかなと。
『ゆっくり風呂につかりたい』以来の9曲作品ですが、ちょっとKANさんの幅広い魅力をアピールするには不十分だった気がします。KANさんのアルバムはどれも、雑多な曲調がバランスよくカラフルにポップに響くという作品なのですが、今回はロックナンバーに偏りすぎている印象があって。この人にはコンセプトアルバムや、雰囲気を意図的にまとめたアルバムは、必要ないように思います。
個々の楽曲はどれも評価できますが、実はアルバムとしてはあまり評価していない1枚です。

ちなみにこの頃、KANさんはプライベートでは結婚をしています。かなり困難な中での交際を実らせたそうで、週刊誌にも「KAN、愛は勝つ!!」なんて書き立てられましたが(笑)。
そんなこんなんで、歌詞も必然的にか、幸せな内容が増えています。

1. ロック試練の恋 ★★★

キャッチーなポップロック。ドラムが特に印象的な元気のいいバンドサウンドを聴かせてくれます。
サウンド的にはミスチルの影響を感じなくもないのは僕だけ!?
歌詞は、恋愛の困難さを歌っていて、往年の『適齢期LOVE STORY』を彷彿とさせます。

2. Solitude ★★★

1曲目からそのまま続くこの曲は、ピアノとストリングスが厳かで美しい小品。このアルバムのラストに収められている『紅のうた』が先に出来上がっており、そのラストのピアノフレーズからこの曲が派生したようです。
この曲も歌詞のラスト1行が泣かせます。

3. Rock’n Soul in Yellow ★★★

本格的なロックンロール。ギターがうなっています。クレジットには「Service Guitar : KAN」…マジっすか!?(笑)。
1曲の中に様々に練られたアイデアがつまっています。凝っているのはいいのですが、演奏時間が長く、アルバムの流れの中では冗長な印象を抱いてしまうのも事実。
1曲目、2曲目ときて、3曲目にコレってのはなぁ…。

4. Happy Time Happy Song ★★★★

26thシングル。
「これぞKAN!」というような、思わず口ずさみたくなるような優しくメロディアスで耳に残る旋律のビートリィーなナンバー。
ピアノで始まり、種々の楽器が加わっていく構成もお馴染みだし、張り巡らされたコーラスも心地よく、安心して聴ける良作ですね。
終盤の子供達との合唱もマル。キリスト教の幼稚園に通っていたことも影響しているのかな?(←ホントか!?)
歌詞もいい感じですね。幸せになれそう。
占術師と音楽家を比べ「でも どっち道 憂う背中を3000円で押す役目です」と結ぶのはお見事!!
途中、KANさんが敬愛するアーティストCHAGE&ASKAの『SAY YES』を模したコード進行とアレンジメントになったり、ちょっとしたこだわりも実に楽しい。
遊園地のように賑やかなアイデアが詰め込まれた1曲です。

5. 50年後も ★★★★

出ましたスティービー・ワンダー風の逸品。極上のラブバラードです。
ロックナンバーの多い中でアルバムの中心に据えられたこの楽曲はアルバムの流れから言っても重要な存在です。
この曲は、まさに現在の奥さんである桜子さんに向けて書いた歌詞であり、一部の女性ファンからは、単に楽曲の美しさに対してだけでなく涙が流されたようです(笑)。

6. WHITE LINE ~指定場所一時不停止~ ★★★

BON JOVIに影響を受けた(!)というハードロック。音圧高めです(笑)。
見事にアメリカンハードロックに仕上げていますが、ちょっとやりすぎな感もあって、何もここまで終始徹底しなくてもという印象(笑)。
およそKANさんらしくないサウンドですが、歌詞は彼らしいユーモラスなもので、なんと自身の交通違反の経験を題材にしてしまっています。ホント何でもアリですね。
終盤の「あなたのため?わたしのため?みんなのため?社会のため?世界のため?卍がため?四の字がため?」とエスカレートする歌詞に続いて、「アゥゥゥー!!」というシャウトも楽しいです(笑)。

7. 英語でゴメン ★★★☆

25thシングル。
キーボードのアレンジメントが美しいスタンダードなミディアムナンバーで、この曲も歌詞はラブソングに仕上がっています。
紳士的な想いを綴っていますが、サビでは相手への気持ちを「’Cause I love you~♪」と歌ったあとに「英語でゴメンね しかも歌で」と謝っています(笑)。「好きだよ」じゃなくて英語で歌うことによる照れ隠し。なんか可愛らしいですね。
2番になるとこの部分の歌詞はもっとすごくて、「But I know you love me too~♪」のあとに「英語でゴメンね しかも変な文で」と(笑)。
このセンス、KANさんですねぇ。

8. 車は走る ★★★★☆

KANさんと親交の深いアーティスト・槇原敬之を、曲調・アレンジ・歌詞の言葉使い・歌い方まで全て模してしまったオドロキの1曲(笑)。
何から何まで完全にマッキーになりきってしまっています。
単なるパロディーにとどまらず、ちゃんと一つのクオリティの高い楽曲として完成させているのもお見事。
歌詞のストーリーも、この曲の高評価のひとつの要因で、『君はうるさい』でも見られた、歌詞の内容とリンクさせたアレンジメントを経て、最後に聴き手を裏切る大ドンデン返し。いやぁ、ハッピーエンドっていいじゃないですか、うん♪
初めはあまりの似具合に吹き出してしまうこと間違いなしですが(笑)、是非とも歌詞にも注目して聴いてみてください。

9. 紅のうた ★★★

このアルバムの赤いジャケットが示すように、ソ連への憧れと、ソ連崩壊によりその地に立つことのできなかった悲しみ、そういった想いが込められているようなナンバー。
サウンドが聴き入る者の胸に高らかに響きます。

総合 ★★★

ロックナンバーの印象が強い一枚。










13thアルバム
『Gleam & Squeeze』
(2001.9.26)

1. 東京熱帯SQUEEZE ★★★★
2. Superfaker ★★★☆
3. カラス ★★★
4. CLOSE TO ME ★★★☆
5. Tiny Song ★★★
6. 猿と犬のサルサ ★★★★
7. 情緒 ★★★☆
8. 子羊 ★★★☆
9. ガラスの30代 ★★☆
10. 今年もこうして二人でクリスマスを祝う ★★★

総合 ★★★★


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