NO-NAMEの隠れ家

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Cocco

作品レビュー

2ndアルバム
『クムイウタ』
(1998.5.13)

1.小さな雨の日のクワァームイ ★★
2.濡れた揺籃 ★★★
3.強く儚い者たち ★★★☆
4.あなたへの月 ★★★
5.Rose letter ★★★
6.My Dear Pig ★★★☆
7.うたかた。 ★★★
8.裸体 ★★★
9.夢路 ★★★☆
10.SATIE ★★★☆
11.Raining ★★★☆
12.ウナイ ★★★★

総合 ★★★★

僕はCoccoを甘く見過ぎていた。普通のガールズポップ感覚で手を伸ばしたら、とんでもない!!なんつーか、凄かったです。物凄く自分の世界観を持った人。と言うより、Coccoの経験・感情・思想…そういったものが、そのまま音楽になっています。自己がそのまま楽曲に反映されているのです。音楽そのものがCoccoなんですね。シンガーソングライターと言うと、如何にして作り物をホンモノに見せるかということに力を注ぐタイプが居る一方、もう一方では如何に自己をストレートに表現するかということに重きを置くタイプが居るわけです。Coccoは後者に分類されがちなのですが、この人の場合、音楽というフィルターを通して自己表現しているのではなく、そのまま「彼女=音楽」になっている、そんな感じがします。曲作りでアタマを悩ませるている様子が全然想像できないです。彼女の情念…悲しみや怒り、絶望、憎しみ、そういったものが、そのまま音楽として形になっているのです。ストレートに自己表現をしようとして、さんざんアタマを悩ませたあげく、結局嘘っぽくなってしまう、そんな人達が多い中、彼女の楽曲は本当にリアリティがあります。それもそのはず、だって、楽曲は彼女そのものなんだから。
…って、ムズカシイ話はこのくらいにして。でも、本当に凄いんですよ。彼女の歌声のみによる、小品ながら存在感のある『小さな雨の日のクワァームイ』を経て、爆音ハードロックの『濡れた揺籃』。彼女がこんなロッカーだとは知らなかった。他にも『あなたへの月』・『裸体』…。轟くサウンドに乗せて、彼女の恨み、復讐、悲しみ、憎しみ、絶望…、そういったものが、時には鋭くシャウトされ、歌われていきます。『裸体』なんて、近親○姦を思わせる歌詞だし…。怖い。サウンド面では、ハードなもの以外にも、バンドサウンドのバラード『夢路』、ファニーな『My Dear Pig』なんてものがありますが、どれも歌詞は彼女らしいもの。『My Dear Pig』なんて、この邪気のないサウンドに乗せて歌われるのが、大切に育てたブタを殺して食べるまでですからね…。怖いって…。だいたい、ヒットしたシングル曲の『強く儚い者たち』も、CMにも使われた爽やかなサビで「飛魚のアーチをくぐって宝島が見えるころ~♪」と来て、続く歌詞が「あなたのお姫様は誰かと腰を振ってるわ」ですからね。凄い衝撃!
美しいのが、『SATIE』。この曲も、歌詞は見方によっては物凄く絶望的なのですが、アコースティックな音の響きは絶品。アルバムの流れのハイライト『Raining』をラス前に経て、幻想的で子守唄のような『ウナイ』で締めくくる流れは絶品。それまでの楽曲で歌われてきた彼女の情念が、全てここに収束されていくような感があります。アルバムとしては、ちょっと雑然としている印象のあったそれまでの流れも、この終盤の並びを聴いてしまうと納得。
この時の彼女の全てが詰まっていると言っても過言ではない、Coccoそのものを感じさせる一枚。彼女を聴くなら、まずはこのアルバムでしょう。
(記:2007.6.19)


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