NO-NAMEの隠れ家

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DEEN(1)

作品レビュー

1stアルバム
『DEEN』
(1994.9.14)

1stアルバムです。
DEENは、1993年3月のデビューシングルの『このまま君だけを奪い去りたい』がいきなりのミリオンとなるこれ以上ない滑り出しで、いきなりトップアーティストとなりました。それから1年半、5枚のシングルをリリースして、ようやくのアルバムリリースとなった本作ですが、待ちに待たせた甲斐もあってか、見事このアルバムもミリオンセールスを達成。1stシングルと1stアルバムが共に100万枚を売り上げた史上初めてのアーティストとなったのです(現在では、KinKi Kidsや倉木麻衣、CHEMISTRYなども達成)。
このアルバムのリリース時には、第3形態である、池森秀一(Vo)、山根公路(Key)、田川伸治(G)、宇津本直紀(Dr)というメンバー編成。この4人のDEENが、最も愛着があるというファンも多いでしょうね。
さて、クオリティーのほうですが…う~ん、どうなんでしょ(笑)。
ヴォーカルの池森さんは、元々R&Bやブラックミュージックに興味があり、DEENの一連のヒットシングルのc/wで、自身の趣味に傾倒したナンバーを披露していたり、現在では、DEENの音楽自体がAOR色に染まっているのですが、今回のアルバムでもややその匂いがうかがい知れるような面もあります。
そのようなR&B風ナンバーと、大衆向けのポップナンバーがブレンドされた一枚という印象を受けるのですが、シングル曲に比べるとアルバム曲は肝心の質の方がちょっと…。印象に残りにくいです。
そもそも、シングルで「DEEN」のサウンドを世間にアピールしていた楽曲と、ここに収録されている楽曲は、あまりにカラーが違いすぎますよね。知らずにアルバムを買ったファンは裏切られた感もあるかもしれませんね。
売上のわりには、内容としては期待はずれかもしれません。

1.瞳そらさないで ★★★★☆

5thシングル。1994年6月22日リリース。
くるおしいほど爽やかな曲。この曲で「DEEN=さわやか」というイメージが完全に定着しましたね。『ポカリスエット』CMソングとして多くの人の耳に触れたことも影響してか、デビューシングル以来のミリオンに到達しました。この曲の大ヒットも、このアルバムのセールスに大きく影響したでしょう。
それにしても、「今のままでは視野が狭くなるし 何かが終わってしまいそう」なんて言う女なんているのか!?(笑)。
そこらへんどうなんでしょ、泉水さん。
ちなみに、このシングルから、池森秀一(Vo)、山根公路(Key)、倉沢圭介(Dr)、田川伸治(G)というDEEN第2形態へと変遷します。田川さんの加入。

2.FOR MY LIFE ★★☆

作詞作曲ともに池森さん。編曲は池田大介。シンセサウンドの明るいトーンのナンバーですが、池森さんらしいR&Bなノリも垣間見れます。まぁ、曲自体はどうにもねぇ…。そこまで悪くはないですが、印象薄いです。

3.Keep on Dancin’ ★★☆

作曲は山根さんと古井弘人(現・GARNET CROW)で、編曲は大島康祐。いかにも大島さんの仕事だなという感じの煌びやかなシンセのダンスナンバーで、やはりシングル作とはかけ離れたサウンド作り。これまた特に印象に残る曲ではないです。

4.いつかきっと…… ★★★

栗林誠一郎によるマイナー調の切ないナンバー。

5.思いきり笑って ★★★

織田哲郎作曲による王道路線のバラード。良質なメロですが、アレンジが薄く、眠くなります。これは『キセキ』バージョンの方が断然良いですね。

6.Memories ★★★

3rdシングル。1993年9月22日リリース。
シングルとしてはダンスサウンドのブラックな異色作なんですが、このアルバムではむしろハマっていますね。この曲の後もこっちの路線に行かなくてよかったなぁ。

7.このまま君だけを奪い去りたい ★★★★

1993年3月10日リリースの1stシングル。
デビュー曲にしてミリオンヒットとなった、静かながら熱く燃える情熱を感じさせるようなバラード。作詞は上杉昇、作曲は織田哲郎。やはりこの曲の良質なメロディーと、サウンドに対する池森さんのヴォーカルの抜群な相性には感嘆させられます。
しかし、こういったタイプの曲がむしろアルバムに少ないのには驚きましたね。
ちなみに、デビュー時のDEENは池森秀一(Vo)、山根公路(Key)の2人組ユニットとしてスタート。シングルのジャケットにも2人で写っていますが、この曲の追加生産分から中居辰磨(G)、倉沢圭介(Dr)を加えた4人バンド体制へとなったようです。
相変わらずのBeingらしい見切り発車ですね(笑)。

8.広い世界で君と出逢った ★★★

これも織田哲郎の作曲。まぁ~…普通としか言いようがないような。そんな曲。

9.FOREVER ★★

ブラックミュージック丸出しの趣味に走ったナンバーで、作詞作曲とも池森さんで、編曲は大島さん。『Memories』のc/wとして収録されていました。
DEENとしてのデビュー前から池森さんソロの楽曲として存在していたナンバーで、コンピレーションアルバムにも収録。
メロもいいと思うし、こういうのはきらいじゃないですが、ちょっとゴチャゴチャしていてアレンジの的が絞りきれて居ない印象です。

10.恋が突然よみがえる ★★

作曲が山根さんで、編曲は古井さん。この2人って、以前一緒にやってたんですか?
曲はいたって普通のポップソング。

11.永遠をあずけてくれ ★★★☆

4thシングル。1993年11月28日リリース。
作曲は栗林誠一郎。クリスマスソングで、唄い上げるようなヴォーカルが ムーディーなアレンジと相まって美しく冬を描いています。
良質なメロディーはさすが栗林さん。1コーラスが長い曲なので、最後にサビの繰り返しがない構成はプラスに働いていると思います。

総合 ★★










2ndアルバム
『I wish』
(1996.9.9)

シングルは沢山出すのにアルバムを出さないDEEN。今回の2ndアルバム、実に前作から2年ぶりなのですが、この間には、シングルを6枚もリリース。1stアルバムに続いて、待たせに待たせてのアルバムとなりました。1年半前のシングルが入っていたりします。
この時点での最新シングル2作品が十数万のセールスに終わった点を思えば、ここでの61万という売り上げは成功ではないでしょうか。
しかしながら、今回は、アルバムリリースを伸ばしたのが失敗した例かな。もっと早く出していれば数字も伸びたでしょうけどね。

さて、長いインターバルを経ての作品ということで、当然アルバム全体に占めるシングルの割合は高く、11曲中、半分以上の6曲がシングル曲。冒頭からいきなりシングル曲4連発が来ます。
これには、「知ってる曲ばっかだよー。」となってしまうかもしれませんが、そういった事情を別にして考えれば、アルバムとしての完成度は高いです。シングル曲が多いということは、それだけのクオリティーに達した曲が多いということ。
更に今作で初お目見えとなった5曲は、どれも水準に達した出来だし、ラストのバラード3連発なんか、まさにDEENの魅力だと思いますね。
楽曲も、前作で多く見られたシンセ系のナンバーは影を潜め、グッとロック比重が強まり、バンドとしてのDEENの音楽が確立されました。
それが何よりも嬉しいです。
DEENのキャリアの中でも名盤と位置づけることができる一枚かと思います。

1.LOVE FOREVER ★★★☆

8thシングル。『少年』と両A面で、1995年12月11日リリース。
初の田川伸治作曲ナンバー。作詞は、FIELD OF VIEWなどでもたまに名前を見かける山本ゆりさん。
曲構成が凝っていますよね。最初は静かなアレンジから、素直にサビに行かず、2コーラス目にバンドサウンドが盛り上がって、疾走状態になってからサビに突入するという。都合サビは2回しか歌われないのですが、僕はこれで正解だったと思います。
アップテンポですがメロディーが切なく胸が痛くなります。
未練たっぷりの心情を描いた歌詞も、この曲に見事にマッチしていますね。

2.SUNSHINE ON SUMMER TIME ★★★

10thシングル。1996年7月1日リリース。
作曲は宇津本さん。
ここまでDEENの曲を聴いてきたファンとしては、ちょっとド真ん中を狙いすぎていて新鮮味が感じられなくもないです。で、それは売り上げにも表れていたようで、ガクッと下がって12.6万枚。陽気で明るい曲なんですけどね。
この曲に関しては、聴くよりも自分で歌ったほうが楽しいということに最近気付きました(笑)。

3.Teenage dream ★★★★

1995年3月27日リリース。
この年最初のリリースとなった6thシングルは、作詞に坂井泉水、作曲に栗林誠一郎を起用。
哀愁を帯びたサウンドに、細かく人間関係が描かれた歌詞が一体となり、 ノスタルジックな魅力を引き立てた佳曲です。都会に出てきた人なんかは、共感するところがあるのではないでしょうか。
アコースティックからやがて重厚なバンドアレンジに展開する音作りが良いですね。さすが葉山さん。
1stアルバムで多く見せられていたブラック志向の曲は、この時期にもあるのですが、あくまでc/wに収録する程度にとどめて、シングル表題曲ではバンドサウンドの主張を押し出したのが成功でしたね。

4.ひとりじゃない ★★★☆

9thシングル。1996年4月15日リリース。
アニメ『ドラゴンボールGT』の主題歌として覚えている人も多いのではないでしょうか。
さすがは天下の織田哲郎。疾走感がある風通しの良いポップロックナンバーを作ってくれました。
こういったバンドアレンジがDEENサウンドの主流になってきたのは嬉しいかぎりですね。

5.Sha・la・la・la ~I wish~ ★★★

やっと出ました、アルバムオリジナル曲。
作詞作曲ともに池森さん。編曲名義はDEEN。
ダンサブルで、みんなで楽しくいこうってな感じのナンバーです(笑)。

6.果てない世界へ ★★★

ホーンアレンジが元気なノリの良いナンバー。
作曲は山根さん。A、B、サビという流れもとても礼儀正しく丁寧に出来ています。

7.素顔で笑っていたい ★★★

前作『SUNSHINE ON~』からわずか1ヶ月の1996年8月5日にリリースされた11thシングル。
売り上げのほうは、前作でコケたのが痛かったのか、13.6万枚とこちらも伸び悩み。
確かに地味なんですが、地味ながらも味わい深い曲なんですよね。
やはり、メロディーが良いし、池森さんの歌声も癒しを与えてくれますね。
曲順に嫌われたかな、今作では。

8.Crazy for you ★★★

今アルバム中、最も異彩を放つのはこの曲。マイナー調で、ややもするとダークなアレンジとも言えるナンバー。アウトロでのソウルフルなコーラスが気になりました。
作曲は宇津本さん。

9.君の心に帰りたい ★★★☆

シングルカットされていてもまったく不思議ではない、DEENの王道といった感じのバラード。作曲は山根さんで、編曲は古井さん。
盤石のサウンドに、歌い上げる池森さんのヴォーカルも泣かせてくれます。

10.ありったけの笑顔 ★★★

アコースティックな音色の、ハートウォーミングなミディアムナンバー。
作曲は宇津本さん。
個人的には影の薄い印象なんですが、好きな人は好きなんじゃないでしょうか、この曲は。

11.少年 ★★★★

バラード3連発のラスト、そしてアルバムのトリを飾る、山根・田川の共作によるこの曲は、DEEN屈指の名バラード。
バンドアンサンブルは心地いいし、池森さんの心のこもった歌声も響くものがあります。この温かさは、DEENならでは。ノスタルジックでとても美しい曲です。
『LOVE FOREVER』と両A面でシングルリリースされました。

総合 ★★★★










ベストアルバム
『SINGLES +1』
(1998.3.18)

2ndアルバム『I wish』のリリース後、初の全国ツアーを行ったDEEN。その後は充電期間となり、DEENにとって久々のCDリリースとなった12thシングル『君がいない夏』が1997年8月27日に発表されました。同年12月には今でも名曲として名高い13thシングル『夢であるように』、翌98年2月には、14thシングル『遠い空で』を発表。
そして3月、DEENにとって初のベストアルバム『SINGLES+1』がリリースされました。
シングルの売り上げは、一時のバブル期からは相当落ちていたとは言え、『夢であるように』がゲーム主題歌として知名度を挙げていたことも手伝い、売り上げは78万枚を記録。
収録内容は、タイトル通り、全シングルを年代順に並べ、最後に新曲として長野オリンピックの公式サポートソングとなった『銀色の夢 ~All over the world~』が収録されています。
当時最新のシングル3作品、そしてオリジナルアルバムから漏れていた2作のシングルが、アルバム初収録となっています。

1.このまま君だけを奪い去りたい ★★★★

2.翼を広げて ★★★★

2ndシングル。1993年7月17日リリース。
1stアルバム『DEEN』への収録は見送られたので、今回がアルバム初収録。
売り上げは57万枚。
作詞・坂井泉水、作曲・織田哲郎によるこの曲は、ブルージーなバラードであり、旅立ちソング。
じわじわと感動を呼び起こしてゆき、最後にはビーイング勢のコーラス部隊も加わって壮大に締めます。
リリース順なのでこの位置なのですが、やっぱりラストっぽい曲ですね。

3.Memories ★★★

4.永遠をあずけてくれ ★★★☆

5.瞳そらさないで ★★★★☆

6.Teenage dream ★★★★

7.未来のために ★★★☆

7thシングル。1995年6月19日リリース。
池森・宇津本コンビによる作曲。ボビー・バレンタイン監督のお気に入りがこの曲だとか!?
普通に良い曲路線を突っ走ったようなポップなアレンジが利いたナンバーで、オリコン1位にも輝きました。
何故か2ndアルバム『I wish』に収録されなかったので、今回がアルバム初収録。
売り上げは52.4万枚。

8.LOVE FOREVER ★★★☆

9.ひとりじゃない ★★★☆

10.SUNSHINE ON SUMMER TIME ★★★

11.素顔で笑っていたい ★★★

12.君がいない夏 ★★★★☆

作詞・作曲は小松未歩。メロデイーはスタンダードで上質。さすが小松未歩といったところ。
アコースティックな音色から徐々に力強さを見せていく曲調は隙がなく、どこか懐かしさが涙を誘います。 日が差し込むようなサビ入りのアレンジメントは美しいし、歌詞もノスタルジックで良いですね。
上手くは言えないですが確かに名曲です。DEEN最高傑作の候補として挙げられるのではないでしょうか。
売り上げは落ち目だった上に、前作からのリリース間隔が開いたせいもあってか、オリコン最高位は10位止まりで、売り上げは13.8万枚。んー、もうちょっといってほしかった。

13.夢であるように ★★★★

作曲クレジットは「DEEN」。今までの集大成といった感じです。代表曲の一つですね。
メロディーの良さは、最高レベル。モヤモヤした霧がまいたようなサウンドが、この曲の失恋を描いたやるせない歌詞と相乗効果を上げています。グッとくるものがありますね。
最高位は13位ですが、ロングヒットとなり、売り上げは23.1万枚とやや回復。それでもこの曲のクオリティーから言えば、もっといってもおかしくなかったけれど。

14.遠い空で ★★★

作曲クレジットに、小松未歩と共に吉江一男さんという人がいるのですが、まったく知りません。どなたでしょうか。
集大成『夢であるように』の次のシングルは、意外とあっさりしていて肩透かしをくらったような感じもなくはなかったのですが。
でも、やっぱりメロが良いですね。
DEENの魅力である穏やかさや温かさをじっくりと堪能できる落ち着いたナンバーになっています。
ベスト1ヶ月前だったせいもあってか、売り上げは6.8万枚と過去最低。

15.銀色の夢 ~All over the world~ ★★★

今回唯一の新音源。長野オリンピック(そういえば、ありましたね)の公式サポートソング。
作曲は山根さん。編曲は池田大介。
アコギや手拍子によって和気あいあいとした雰囲気が伝わってくるポップナンバー。まぁ、いたって普通です。

総合 ★★★★

とにかくお腹いっぱいになりました。
楽曲のクオリティーの高さは見事。どの曲も良質なナンバーです。こうやって見てみると、DEENはなんだかんだ言って、シングル曲では一般向けで、レベルの高い楽曲を発表し続けてきたんだなと思います。突飛な曲は、『Memories』くらいだし。
力強いバンドサウンドと、池森さんの温かみのあるヴォーカル。穏やかで心地よさを与えてくれる楽曲の数々には、このグループ独自の強みがあったと思います。
こういった音楽が好きな人なら、持っておいて損はない一枚です。
(記:2006.1.15)










3rdアルバム
『The DAY』
(1998.12.16)

ベストアルバム『SINGLES+1』に続いて、この年の5月27日には15thシングル『君さえいれば』をリリース。名曲『君がいない夏』に続く小松未歩の手によるシングルとなったこの曲は、風通しの良いバンドサウンドが心地良いアップテンポなナンバー。アニメの主題歌にも起用されました。
このシングルの後、B-GramからBERGへと移籍を果たしたDEEN。11月18日にリリースされた移籍後初シングルとなった16th『手ごたえのない愛』では、更に強靭に攻め立てるハードなサウンドを見せました。
そして12月に入ってリリースされたのがこのアルバム『The DAY』です。オリジナルアルバムとしては3作目。
織田哲郎・栗林誠一郎といったBeingのヒットメーカーは既に前に出てくることはなくなってきており、新星・小松未歩がそのメロディーメーカーぶりを発揮して、シングル楽曲2作を手掛けています。織田・栗林時代と、大野愛果酷使の2000年代以降。この狭間の時期を支えたBe作家の筆頭は彼女でしょう。
さて、それはそうと、そんな小松未歩によるシングルの2曲以外は、ここに収められた楽曲は全てDEENのメンバー自らによるペンになっていて、編曲もDEEN名義が増えてきました。
いよいよ、DEENも商業バンドとしての殻を破ったように感じます。
突き抜けるようなロックナンバーが中心の爽快な一枚。これまで以上に軽やかに、自由に羽を伸ばしているように感じます。
オープニングの小品『ONE DAY』を経て、『love me』・『手ごたえのない愛』・『GRAVITY』と続いていく前半はエネルギッシュにこちらを引っ張ります。
『love me』はもともとはシングル『君がいない夏』のc/wに収録されていたナンバーで、このアルバムに合わせて再レコーディングを行って収録に至りました。湧き上がるような力強く爽快なロックサウンドが彼らのエネルギーをそのまま反映しているようです。
『手ごたえのない愛』は、前述の通り作詞・作曲は小松未歩。編曲は、初めて徳永暁人が務めました。ロックテイストの強いこの曲は、アルバム中、あるいはDEEN全楽曲中でも最も激しい部類に入るナンバーと言えそう。サビはスリリングでかなり強烈なインパクトを放っています。レトロな雰囲気をもった間奏もいいスパイスになっていますね。
続く『GRAVITY』も激しいサビが印象的。前曲から間髪入れずに「揺れて迷って追いかけて~♪」というフレーズがインパクト大。
そして5曲目に置かれた『VOYAGE』。笛の音から始まり、最後は壮大な「ラララ~」のコーラスでフェイドアウト。間奏のピアノの音が格好良いですね。大自然・宇宙を感じさせるようなナンバー。こういった曲から、DEENの音楽の幅が広がったことを確認できます。
『Guilty ~消えることのない罪~』は、彼ららしい安心して聴けるバラード。こういった曲の説得力は、Beingの先輩T-BOLANとまではいかないですが、DEENも相当なもの。池森さんの声は吸引力がありますね。今回はこういったバラードはアルバム中にこの1曲だけなので、中盤に置かれたこの曲の存在はより一層大事に感じられます。
そしてミディアムナンバーが続き『逢いにいくよ』。2曲も同じようなテンポの曲が続くので退屈という見方もあるようですが、個人的にはこれは単体で聴いても退屈になる曲だと思うぞー(笑)。むしろ前曲が終わった後のこの曲のイントロの音色は美しくて良い。イントロだけね(笑)。「あ~い~に~ゆ~く~よ~♪」というダラーっとしたサビのメロディーはどうにも苦手。
アップテンポの『眠ったままの情熱』、田川さん作曲の『さよなら』(このアルバムでは最も印象に残りづらい楽曲かも)と来て、シングルの『君さえいれば』。なんかこの曲って可哀想な扱いですねぇ。ベスト後の初シングルでありながら、この曲のリリース後にレコード会社を移籍することとなり、なんとも中途半端な位置に置かれることとなってしまいました。このアルバムでの曲順も微妙だし(笑)。
11曲目の『君のいないholiday』は、SMAP『君は君だよ』を彷彿とさせるビートリィなイントロのアレンジが心温まります。曲全体もほのぼのとした雰囲気。彼女は友達同士で旅行、久々の自分だけの休日を満喫しながらもどこか寂しさを感じてしまう、という歌詞もgoodです。
ラストはアカペラ『A day in my life』で穏やかに幕を閉じます。
このように、全体的にはアップテンポな楽曲が多い印象の一枚ですが、中盤には彼ららしいバラードの良作『Guilty ~消えることのない罪~』といった楽曲もありますし、最初と最後をアカペラチックな楽曲でまとめたところもマル。
一部の曲を除いてはクセも強くないので、気軽にプレイボタンを押せるような聴きやすい一枚ですね。中盤以降をもうちょっと何曲か削っても良かったようにも思いますが。尺としては、コンパクトな印象はないんだなぁ。
全体としては、ベスト後初のアルバムとして、心機一転のDEENを感じさせる内容となっています。

1.ONE DAY ★★
2.love me ★★★
3.手ごたえのない愛 ★★★
4.GRAVITY ★★★
5.VOYAGE ★★☆
6.Guilty ~消えることのない罪~ ★★★☆
7.逢いにゆくよ ★★☆
8.眠ったままの情熱 ★★★
9.さよなら ★★
10.君さえいれば ★★★
11.君のいないholiday ★★★☆
12.A day in my life ★★★

総合 ★★★

爽快なロックナンバーが中心に。メンバーによる楽曲制作の比重が一気に高まり、新たなDEENを感じさせる3rdアルバム。










17thシングル
『遠い遠い未来へ』
(1999.3.25)

1999年最初のリリースはこの曲。長い間アルバム未収録で、聴くには8cmシングルを探すしかありませんでしたが、表題曲『遠い遠い未来で』は2008年にリリースされたベストアルバム『DEEN PERFECT SINGLES+』でようやくアルバムに収録されました。
カップリングの『晴れた空の下、きみつれて』は、依然アルバム未収録で、現在では入手困難。
収録された楽曲は、どちらも『The DAY』からの路線である生音が主張するバンドサウンドを聴かせてくれるミディアムナンバーです。

1.遠い遠い未来へ ★★★

ザックリと重厚なバンドサウンドにピアノを絡めたオケが良いですね。Bメロで絡んでくるコーラスといい、どこかビートリィな雰囲気も。Aメロ・Bメロとサビとが乖離している印象ですが、それも狙いなのかも。
どちらかというと、とっつきやすさよりも、聴き込むことで味わいが増してくる類の曲だと思います。
作詞は現・GARNET CROWのAZUKI七、作曲は大野愛果という両新人を起用。
当時アルバム収録が見送られた理由ですが、このあとのDEENはセルフプロデュースとなりBeingとも徐々に疎遠になっていくだけに、Be作家まかせのこの曲は抹消したい過去だったかな…というように考えてしまいます。

2.晴れた空の下、きみつれて ★★★☆

鬱な雰囲気から始まり、どうしちゃったのというような感じのこの曲ですが、それゆえ美しく広がるサビへの展開はドラマチックに感じられます。で、最後はまた鬱モードへ戻るんですけどね(笑)。
全体的にこの時期のDEEN特有のバンド感が支配している感じで、万人向けではないですが好きですね、この曲も。

(改:2008.6.14)










企画シングル第1弾
『Classics One WHITE Christmas time』
(1999.11.25)

1999年はシングルを多数送り込んだ充実した一年でした。3月の『遠い遠い未来へ』に続き、7月には18th『JUST ONE』、11月3日は19th『MY LOVE』と立て続けに素晴らしいバラードをリリース。
多作なこの年のシメとしてリリースされた今作は、「Classics」と題した企画シングル。リリースから1ヵ月後に迫ったクリスマスに向けて、ウィンターソングで統一された収録内容です。

企画シングルとして、売り上げはともかく、内容は充実の出来。池田大介の手によるストリングスのインスト作品を挟み、歌入りの4曲を並べる構成は、シングル扱いの今作ですが、雰囲気的にはミニアルバムを聴いている感じと言っても問題なさそう。楽曲はどれも期待を裏切らない完成度です。
メイン楽曲の『Christmas time』は、池森さんの優しさとこちらに訴えかけてくるような力強さを兼ね備えたヴォーカルが相変わらずの説得力をもつDEEN王道バラード。コーラスワークが見事に冬を描き上げています。
『The Room』は、作り込まれたサウンドが感嘆モノの、こちらも完成度の高い隠れた名曲。
密閉されたR&Bテイストに、冬を感じさせるアクセントをつけたアレンジメントが素晴らしい。こちらは独りきりのクリスマスを描いていて、歌詞もサウンドにマッチしていますね。
『このまま~』は、オリジナルの重厚なサウンド以上に、池森さんの歌声の包容力がより伝わって暖かみのあるサウンドになっていると思います。暖炉の前で聴いていたいですね。
『永遠を~』は、アカペラでのアレンジ。非常によく合いますよね。元々こういったアレンジに適した曲調なのでしょう。後のセルフカバーベスト『キセキ』においても、この曲はアカペラチックなアレンジメントで再演されていますが、ここに収録されたバージョンも良質な出来で、しみじみ良いです。

1周が20分程度と短いのに、内容の濃さはなかなか。手軽に聴けて満足出来るのが良いですね。
なお、この作品かぎりでドラムの宇津本さんが脱退。DEENは3人編成となります。

1.CHRISTMAS TIME ~morning light~ (評価なし)
2.Christmas time ★★★☆
3.The Room ★★★☆
4.CHRISTMAS TIME ~twilight breeze~ (評価なし)
5.このまま君だけを奪い去りたい ~Acoustic version~ ★★★☆
6.永遠をあずけてくれ ~Millennium a capella version~ ★★★☆
7.CHRISTMAS TIME ~evening snow~ (評価なし)

(記:2006.12.27)










4thアルバム
『'need love』
(2000.5.24)

初のセルフプロデュース作品。2000年最初のリリースとなった20thシングル『Power of Love』と、前年の『JUST ONE』・『MY LOVE』を収録。前年末の『Christmas time』は企画シングルのため、またこちらも前年リリースの17thシングル『遠い遠い未来へ』は提供曲のため、それぞれ収録を見送られています。
ドラマーの宇津本さんが前年で脱退したため、彼がドラムを叩いているのは、『JUST ONE』・『MY LOVE』、そして『すてちまえ!』の3曲のみ。
3人になったDEEN、また、セルフプロデュースの作品ということで、前作『The DAY』とはまた違った空気を感じることができるアルバムです。
冒頭の『Power of Love』での、これまでになかったノリ、軽くヒップホップの要素も取り入れたこのパーティーチューンにはシングルリリースされた当時から驚かされました。『Soul inspiration』・『YOU GATTA KICK』と言ったロックナンバーも、前作のドライブ感あるロックサウンドとはまた毛色が違います。タイトルからして彼ららしくない『すてちまえ!』では、ファンク調に挑戦。徹底した横ノリが新鮮です。
そうした新境地の楽曲がある反面、『MY LOVE』・『JUST ONE』・『蒼い戦士たち』などは、DEENの真骨頂とも言えるバラードナンバー。他にも和のテイストを感じさせる『風の中に…』・『Long Distance』など、ミディアムナンバーの数が揃っています。爽快なロックサウンドの印象が強かった前作とは一転して、アルバムが生音を中心にした暖かで穏やかなイメージに包まれているのも、こうしたバラードナンバーのおかげ。特に『MY LOVE』は、本当に演奏が素晴らしいです。彼らのバラードの最高峰かもしれません。
このアルバム特有の佇まいがなかなか良いです。完全自主制作というのも意義が大きい。ただ、売り上げのほうは、人気低下に歯止めがかからず、5.9万枚にとどまりました。

1.Power of Love ★★★
2.Soul inspiration ★★★
3.MY LOVE ★★★★
4.風の中に… ★★★
5.YOU GATTA KICK ★★☆
6.すてちまえ! ★★★☆
7.Long Distance ★★★
8.愛があるから ★★
9.ひとりぼっちのAnniversary ★★☆
10.起き上がれよBOY ★★★
11.JUST ONE ~Break 4 Style~ ★★★☆
12.蒼い戦士たち ★★★

総合 ★★★

(記:2007.6.25)










企画シングル第2弾
『Classics Two SEPIA 秋桜 ~more&more~』
(2000.9.13)

Classicsシリーズの第2弾。今作は「秋」がテーマです。全編を通してアンプラグドで統一された一枚になっています。
冒頭の田川さんによるスパニッシュギターのソロで幕を開けて、メイン楽曲の『秋桜 ~more&more~』はアコースティックでありながら硬質なサウンドで、どこか冷酷さももった曲。続く『恋人よ、夢も嘘もすべて』も、同様のサウンドです。こちらはアップテンポですが、やはり暗い感じがつきまといます。
続いて、既発曲のニューバージョン。『未来のために』は、アレンジは変わってもこの曲のメロディーのもつ普遍性は変わらないことを確認できます。『ひとりじゃない』は、サブタイトル通りのボサノヴァ。サビではファルセットを利用するなど、サウンド・歌い方の双方ともに大きく変わっていますが、この曲もメロディーの良さは変わりません。BGMとしても良いです。
最後は、『秋桜』のRepriseで終わります。
前作は超えていないと思いますが、統一感がありますし、手軽に聴けます。季節モノとして楽しみましょう。

1.秋桜 (Solostuck) ★★★
2.秋桜 ~more&more~ ★★★
3.恋人よ、夢も嘘もすべて ★★☆
4.未来のために (Sing-along Version) ★★★
5.ひとりじゃない (Bossa Nova Style) ★★★
6.秋桜 (Reprise) (評価なし)

(記:2007.6.28)










バラードベストアルバム
『Ballads in Blue The greatest hits of DEEN
(2001.6.6)

バラードベストです。ファン投票での上位13曲に、新曲『Blue eyes』とそのインスト、そして『瞳そらさないで』のニューバージョンを加えた16曲を収録。選曲はシングル曲からが多いですね。DEENはシングルでもバラードが多いグループなので、必然的にこうなってしまうのでしょうが、それゆえ新鮮味には欠けます。特に、アルバム前半は8曲のうち5曲が、3年前のベストアルバム『SINGLES +1』にも収録されています。お馴染みの曲が連発されるので、ちょっとお腹いっぱい。アレンジも似たようなバンドサウンドが続きますしね。1曲1曲のクオリティは文句なしで良いのですが、こう続けて聴かされると…。
『JUST ONE』に始まる9曲目からの流れのほうが洗練されていて良いですね。セルフプロデュースに転じてからのDEENは、同じバラードでも、ある面ではそれまでの常套バンドサウンドに収まらない手段で、ある面ではすっきりした聴きやすいアレンジで、しっかり心に響く楽曲を作っているように思います。『JUST ONE』・『MY LOVE』の2曲を、Beingスタッフがアレンジしていた頃の楽曲と比べると、そんなことを思わされました。

21stシングルの『哀しみの向こう側』は、アルバム初収録。カップリングから選出された『いつか僕の腕の中で』・『日曜日』の2曲は、「~Ballads in Blue style~」として新録音で収録。ドラムが機械的な響きになっていたり、空気感は後のDEENのAOR傾倒を予見させるものに。これもこれで新鮮です。また、『瞳そらさないで』もテンポを落としたニュー・アレンジで収録。
ラストは新曲『Blue eyes』。アルバム『’need love』の空気と、R&B・ソウルテイストが絡んでいてカッコイイです。
『遠い遠い未来へ』は、結局このアルバムにも収録されず。いまだにシングルオンリーの楽曲となっています。

この年のCDリリースはこのバラードベストでおしまい。そして、翌2002年のDEENは、カバー曲を出し続けることとなります。

1.Blue eyes ~Introduction~ ★★★
2.いつか僕の腕の中で ~Ballads in Blue style~ ★★☆
3.このまま君だけを奪い去りたい ★★★★
4.君の心に帰りたい ★★★☆
5.翼を広げて ★★★★
6.君がいない夏 ★★★★☆
7.夢であるように ★★★★
8.Teenage dream ★★★★
9.JUST ONE ★★★☆
10.MY LOVE ★★★★
11.哀しみの向こう側 ★★★
12.少年 ★★★★
13.蒼い戦士たち ★★★
14.日曜日~Ballads in Blue style~ ★★★
15.瞳そらさないで ~Smooth Blue Mix~(featuring Vocal 7th Beat) ★★☆
16.Blue eyes ★★★☆

総合 ★★★☆

(記:2007.7.4)


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