NO-NAMEの隠れ家

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B'z(1)

作品レビュー

1stアルバム
『B'z』
(1988.9.21)



わずか10分間のセッションで結成が決まったというB'z。これまでソロのギタリストであった松本孝弘が始めてヴォーカルを迎え入れての楽曲を製作し、それまでほとんど経験もなくいきなりプロになった稲葉浩志が作詞を手がける、というあまりにもあまりな見切り発車でのスタートでした。そんな若き二人が刻んだB'zの第一歩。
キャッチコピーは「最先端から加速する」。
ジャケットには、どでかく「B'z」の文字が、そしてご丁寧に発音記号まで書いてある。確かに一見しただけではなんて読めばいいかわかりませんもんね。それから、二人の後ろに、わかりづらいですが何体ものマネキンが並んでいます。

このアルバム、今こうやって振り返って聴いてみると実に面白いですね。単純におかしくて笑えるって意味でもあるんだけど、それ以上に、その後のB'zを知っているだけに、ダイヤの原石を見ているようでとても興味深いです。
もともと松本さんはTMNのバックミュージシャンも務めていたし、その影響も十分すぎるほどあったのでしょう。「コンピューターをうまく使って、逆にヴォーカルやギターの人間的な良さを引き出したい」という松本さんの言葉通り、ヴォーカル・ギター以外は全て打ち込みのサウンド。
こうしてデビューから数年間のB'zは、「TMフォロワー」としてのイメージを背負って活動していくことになります。

1. だからその手を離して ★★☆

今や押しも押されもせぬ地位を築き上げたB'zのデビューシングル。このアルバムと同時発売でした。
いや、これ、世間で言われているほど悪い曲じゃないと思います、はい。
打ち込みドラムとスクラッチ、それに松本さんによるギターのイントロ。音の厚みもないし、松本さんのギターもいかにも遠慮しがち。そして稲葉の「夢見ごこちのイージタァーイッ」というナヨナヨ感溢れるヴォーカルで脱力満点という…そんな出だしなんですが、Bメロからサビに向かっていく絶妙なスリル感とか、今でも結構ドキドキしてしまいます。
稲葉さん、ほんとに声変わったよなぁ…。その後を知っているだけに、この違和感は後追いファンにとっては本当にすごいんじゃないかと思います。カルチャーショック。
歌詞については、「いきなりデビュー曲で『あっち行け』と歌った人はめずらしい」と誰かが言ったとおり、最初の段階から作詞家稲葉としてのアイデンティティーが少なからず感じ取れるような、そんな世界観をつくりあげています。「しゃしゃりでる」とか「がんじがらめ」なていう単語を歌詞にもってきたり(そしてこの「がんじがらめ」は、10年近く経って『FIREBALL』で再登場する)、「おまえはまだ路地から目をぎらつかせて」なんてフレーズは、稲葉の歌詞が開花する予見を早々と見せ付けていたわけです(?)
日本語英語チャンポンな歌詞は、BOOWYとかにも通じるいかにもこの時代のものなのですが、結構分析しがいがあるように思えてしまいました。おそるべし。

2. Half Tone Lady ★★★

いかにもな打ち込みで固めたポップナンバー。この曲はコーラスの使い方が上手いですね。後のB'zサウンドの重要なポイントとして、ぶ厚く重ねられたコーラスというのが挙げられますが、それがここで早くも見られます。あと、90年代前半にまで多く見られる女性コーラスも。終わり方もきれいです。

3. ハートも濡れるナンバー ~stay tonight~ ★★☆

最初期のナンバーとしてはなかなか注目できる曲です。
後にリメイクされることにもなる濡れたナンバー。ダークな雰囲気がカッコイイです。少々バブリーで気恥ずかしいですが。全体の構成として間延びしているように思えるのが難点。

4. ゆうべのCrying ~This is my truth~ ★★☆

もう少しだけ昔だったらニューウェイブとでも言われていたであろう、どこか儚さまで感じられるような打ち込みノスタルジックナンバー。いや、TMチックと言えばそれまでなんですけどね。冒頭のウィスパー風のヴォーカルも含めて、初期ならではのB'zでは極めて異色のサウンドが聴ける一曲。サビの歌詞でのスペースをたっぷりとった英語のはめ方なんてのも、今だったら絶対にありえませんね。

5. Nothing To Change ★★☆

B'z全楽曲中で唯一、作詞が稲葉さんの手によるものではない曲。時々、B'zの紹介で、「ヴォーカル稲葉は全楽曲の作詞を手がける」なんて書いてあったりするけど、厳密にはこの曲は違うわけです。「背中合わせのBroken heart」なんて、稲葉さんのセンスじゃないなぁって思いますね。
ロマンチックなイントロやひら歌部分と、硬派なサビとの対比が印象的な初のバラード。間奏の持っていき方とかは、まだまだ未完成。

6. 孤独にDance in vain ★★

そしてこちらは唯一作曲が松本さんではない曲。これも間延びしてるように思えるなぁ。せっかく雰囲気はカッコイイだけに残念。
開始直後の「ラフなヘアースタイル ショーウィンドでキメて」というフレーズにはまいりました。これを精一杯にカッコよく唄っちゃうあたりがなんとも80年代。

7. It's not a dream ★★

輝かしきこのデビューアルバムの中でも、一番の失笑を買うナンバーがこの曲。演奏が始まるやいなや、「ホゥ!!」という稲葉の軽快なシャウト。「みんなで盛り上がろう」系の曲なんですが、見事に空回りしてるような。
直訳すると「夢じゃない」というタイトルは、この曲のずっと後にB'zの代表曲の一つとなる『ultra soul』のサビフレーズへと繋がっていきます。根本的な姿勢は変わらないんすね。。

8. 君を今抱きたい ★★☆

B'zが結成後初めてつくったというオリジナル曲が(確か)これ。
このアルバムの中では一番聴きやすい曲ですね。サビメロは今でも十分に通用すると思います。あとは、まぁしょうがないんですが、演奏がまだまだといった感じ。それさえ追いつけば、もっともっと評価が高くなっていたと思います。いかにも原点といった印象を抱くナンバー。

9. Fake Lips ★★

一番最後にヘヴィなナンバーが来ます。この曲がラストに来るってのは非常に重要なポイントだと思うんですが。TMばりの打ち込みダンスミュージックをやりつつ、結局のところ二人の音楽的趣向の根底にはロックがあって、それが少しだけ見え隠れする。ここにこの曲があるってのは、二人のHR志向をちらつかせているかのようで面白いです。
とは言え、完成度から言えばこの曲もまだまだですが。低音で進行する絡み付くようなメロ、うねりをあげる(!)稲葉さんのシャウトなんかは、ここまでの8曲があるからこそ、最後に出来た彼らの本質の表れ。野生のエナジーですよ、これこそが(適当)。
そうそう、歌詞の「僕のネーム、チャートに入れて」はダブルミーニングですね。

総合 ★★

とうことで、駆け足で見てきました。B'zの最初の一歩。これだけ聴くと、後に日本を代表するアーティストになるとはとても予想がつきませんね。「これは○○の原型だ!」とか、「こういうところから今の姿の片鱗が覗える!」なんてのも、今を知っているから言えるわけで。当時であっても、自分が何も知らないでこれを聴いたら、次回作を聴いてみたいなとは思わなかっただろうなと思います。今を知っているからこそ、色々な意味で「面白い」一枚だと思います。ラスト2曲なんかは、是非リメイクして聴きたいです。
ファンならこれも楽しんでもらいたいな、と。ただし!初心者がこのアルバムから入るのは絶対にやめましょう(笑)。
(記:2006.3.21)









2ndアルバム
『OFF THE LOCK』
(1989.5.21)



デビュー作から、ちょうど8ヵ月後にリリースされた2ndアルバム。
シングル・アルバム同時発売でのデビュー後、ライブも行わず更に曲作りに専念したB’z。「ライブはすべて自分達の曲で出来るようになってから」という思いがあったようで、今回のアルバム曲は必然的にライブを意識したアップテンポなナンバーが増え、前作よりも
ポップで元気なサウンドになりました。
また、歌詞も、前作で多かった抽象的な言葉が多いリリックから、具体性がありスートリーもはっきりとしたものに変わってきて、イメージが沸きやすくなりました。
サウンド・歌詞の両面から、曲のキャラ立ちがはっきりして、カラフルで楽しくなり、いわゆるJ-POPっぽいアルバムに仕上がっています。
1stより格段に聴きやすいアルバムです。いや、この成長はなかなか素晴らしいですよ。

1. 君の中で踊りたい ★★☆

2ndシングル。
とにかく、初期3作のアルバムまでのB’zはダンスサウンドがキーワードなんですが、このシングルはタイトルにもある通り、それがもうモロに。いやぁ、若いなぁ。
このシングルも1stと同じく、アルバムと同時発売です。
1stを経て、ダンスサウンドもやや手馴れた感じのする今作。途中にラップをはさんだりと、単純にならない工夫がしてあります。終盤の「踊りた~い♪」と「I WANNA DANCE~♪」の二つのメロディーが重なるあたりもなかなか。とは言ったものの、Aメロの譜割りにおさまらない日本語の居心地の悪さが気になります。このあたりはまだまだ駆け出しといった感じ。

2. HURRY UP! ★★☆

彼女が泣きながら飛び出していった男友達に、まだ遅くはないから急いで追いかけろと諭すという歌詞。とにかく、これだけ細かく具体的な状況を描いてストーリー性を持たせた歌詞は前作では皆無だったので、とても新鮮です。なにより曲の世界に入りやすい。で、曲のほうも歌詞に合わせてテンポ良し。B’zらしいギターソロも取り入れられるなど、後のB’zにつながるエッセンスが盛り込まれた曲です。

3. NEVER LET YOU GO ★★★

不倫をテーマにした湿っぽいバラード。不倫について歌った曲は、後にも何回か出てきますし、稲葉さんのお得意のテーマの一つです。終盤に感情的になっていくヴォーカルも聴き所。

4. SAFETY LOVE ★★★

シングル『君の中で踊りたい』の2nd-beatにも収録。
1st-beat以上にキャッチーなナンバーで、むしろこっちをメインにした方がなんて思ってしまうわけですが、この時期のTMフォロワーの、ダンスサウンドのB’zという観点から見ると、やっぱり『君の中で踊りたい』に落ち着くのかな。
初めて大々的にブラスセクションが入った記念すべき(?)曲。B’zといえばブラスですもんね。この曲のポップさもこのアレンジのおかげ。

5. GUITAR KIDS RHAPSODY ★★★☆

大陸的なメジャーサウンドにのせて、ギター少年だった青春時代を回顧するというミディアムナンバー。いいですね、こういうの。このアルバムでは一番好きな曲です。

6. 夜にふられても ★★★

疾走感あふれるドライビングナンバー。夜の高速が浮かんできます。元気なドラム、キラキラしたシンセ、甘酸っぱい歌詞…いやぁ、若いっていいなぁ。
ラルクの『Driver’s High』を初めて聴いたとき、真っ先に浮かんだのがこの曲でした。似てるっ。

7. LOVING ALL NIGHT ★★☆

ポップな曲が並んだこのアルバムで極めて異彩を放つのがこの曲。無国籍感漂う雑踏の音から始まり、艶めかしくやたらセクシーな歌詞、途中には稲葉さんのいやらしい語りまで入って、なんというか、アダルトなナンバーです。
まだ未完成な感じはしますが、この曲だけだいぶ志向が違います。

8. OH!GIRL ★★★

そして再び青春真っ盛りポップ路線に戻ります。これはもう問答無用といった感じで。ファンに人気で、初期のライブでは重要な位置も占めていたアイドルポップナンバー。いやぁ、若いっていいなぁ(笑)。
ストレートに熱い想いを綴った歌詞もまた人気の秘訣でしょう。バックのギターフレーズはBON JOVIの『BORN TO BE MY BABY』からの借用でしょうね。

9. ROSY ★★★

初期の隠れた名曲として挙げる人もいるバラード。遠距離恋愛、それも国境を越えた恋を切なく歌い上げています。転調がまたフックになっていて泣けるんですよね。佳作。

10. OFF THE LOCK ★★

フワフワしたBGMをバックに稲葉さんが一言二言歌い、「OFF THE LOCK!」とシャウトするだけというSE。鋭く張りのある声にハッとさせられ、まさに心の鍵を外されそうになるわけなんですが、わずか数十秒のこの曲がカラオケに入っているのがまたすごい。

総合 ★★☆

B’zの音楽が更にポップな方向に広がりを見せた一枚。今聴いてもそれなりにいける!?










1stミニアルバム
『BAD COMMUNICATION』
(1989.10.21)



B’zの名前を世に知らしめた初期の代表作。3曲の作品ということでマキシシングルに思われがちなのですが、ミニアルバムという扱いですね。当時はマキシなんてまだ主流じゃありませんでしたからね。
有線から火がついた表題曲『BAD COMMUNICATION』。じわじわと人気を上昇させ、この作品、最高12位ながらオリコン100以内に163週もランクインするという超ロングセラーとなり、累計118万枚を売り上げました。
楽曲はどれも7分以上という長尺の打ち込みダンスサウンド。キャッチコピーの「エンドレスで、かまわない。止めるまで、DANCE空間」が示す通りです(笑)。

1. BAD COMMUNICATION ★★★

印象的なサビが有名なこの曲。バージョンを変えて何度も再演・再録されていますが、オリジナルバージョンが聴けるのはこのミニアルバムだけ。
長い演奏時間を、有意義に使って遊んでいます。稲葉詞もナンパ全開。
ディスコ色が強い中で主張する松本さんのギターというサウンド面でのバランスが絶妙。ラストのサビのリピート部が格好いいなぁ。

2. OUT OF THE RAIN -OFF THE LOCK STYLE- ★★

1stアルバムに収録されていた『君を今抱きたい』の英語詞リメイクバージョン。ディスコサウンドにアレンジされていています。
1コーラス分丸々イントロのようなもので、確かに部屋をダンス空間にするのになら適しているでしょうが(笑)、曲単位で聴くとさすがに長い。
稲葉さんの歌唱力も原曲よりは上がっていますね。英詞だと活き活きしているようにも感じる!?

3. DA・KA・RA・SO・NO・TE・O・HA・NA・SHI・TE -OFF THE LOCK STYLE- ★★

デビューシングルの英語詞リメイクバージョン。サビの「だ・か・ら、その手を、離して~♪」だけは敢えて日本語のままで残してあって面白いです。また、途中にはラップが挟まれるなど、ちょっと凝っています。ただ、やはりこれも長い。

総合 ★★

B’z初期の代表作。ディスコサウンドは、今聴いてもそれほど面白くないかもしれませんが(笑)
ジャケット、若いですね。










3rdアルバム
『BREAK THROUGH』
(1990.2.21)



21日リリースにこだわっていたこの時期のB’z(笑)。
ミニアルバム『BAD COMMUNICATION』での手応えをつかんでの3rdアルバムです。
タイトル通り、吹っ切れた感があり、色々なタイプの曲に挑戦していて、とにかくアイデアを貪欲に取り入れ、なんでもやってみようとする姿勢が感じ取れます。
ディスコロックからギターポップ、懐メロ路線から、果てはラップ・ヒップホップ調まであって、B’zのアルバムというより、J-POPの縮図のようにも思えてきます。
2枚のアルバム、そして『BAD COMMUNICATION』からの流れを良い具合に受け継ぎ、打ち込みに関してはそれまでに比べて小慣れた印象があります。
ある意味、初期のダンスサウンドの集大成的な作品かもしれません。

1. LADY-GO-ROUND ★★★☆

3rdシングル。例によってアルバムと同時発売。
前2作のシングルに比べて、メロディーの流れも馴染みやすいし、歌詞も魅力的。なかなかの傑作ではないでしょうか。
稲葉詞のアイデンティティーが表れてきていて、女性とのめぐり逢いをメリーゴーラウンドに例えてしまうのは彼らしい恋愛哲学的歌詞の先駆け。
「よりどりみどり」「次はどんな人」と歌いながらも結局は「やっぱり君がいい」と戻ってきてしまう歌詞が母性本能をくすぐる!?
百人一首から引用した「こひしかるべき」「かみのまにまに」といったフレーズもなんとも印象的です。
ロマンティックで日本情緒も感じられ、かつ哲学的なこの歌詞、痛快です。
女性コーラスも好印象。初期の中ではお気に入りのシングルです。

2. B・U・M ★★☆

1曲まるまるラップのショートチューン。「B・U・M」とは、B’zの制作スタッフの名前で、決意めいた内容を英詞で歌っています。

3. BREAK THROUGH ★★★

タイトルナンバーは、ポジティブで明るい自らへの応援歌。
ギターポップという印象で、サビは単純ですが、イントロのギターだけで、とりあえず満足できます(笑)。

4. BOYS IN TOWN ★★★

これもアップテンポなナンバーで、サビは覚えやすいですね。街の少年達の将来への(贅沢な)希望を、楽しげに歌った1曲。青春ですねぇ。
サビはずっと『Sunday』って歌っていると思っていたのですが、『Someday』だったんですね(笑)。
終盤「もっともっと気持ちいことしたい♪」でのトーキングスタイルのヴォーカルが印象的。

5. GUITARは泣いている ★★★

ライブで見かける観客席の女性への憧れを歌ったバラード。泣きメロが炸裂します。
ただちょっと暗いうえに尺が長い。ここまでアップテンポな曲が多かっただけに、アルバムの流れを一度落ち着いたものにしています。

6. LOVE&CHAIN ★★★☆

今作中最もディスコロック色が強い曲ですが、アレンジが今までよりも洗練されており、耳当たりも心地よいです。
この曲でも歌詞は哲学的なことを歌っていますね。
途中に語りを入れるなどの余裕も見せています。

7. となりでねむらせて ★★

不穏なシンセから始まるポップナンバーで、絶妙な人気を誇ります。個人的にはメロディーがイマイチ乗れなくて好きじゃないんだけど。
女性にとっては母性本能をくすぐられ、男性は共感できるような歌詞が人気の秘訣か!?

8. HEY BROTHER ★★★

この時期だからこそ出来た珍曲。ヒップホップですかぁ(笑)。
ここでの「BROTHER」はまさにお兄さんのこと?要は「彼女つくれよ」ってことをお兄さんに対して歌っているのですが、歌詞も歌い方も随分とファンキーに炸裂していて凄いです。

9. 今では…今なら…今も… ★★★☆

「和」を感じる懐メロ路線。街で偶然昔の恋人とすれ違い、感傷が胸をめぐる…という歌詞がまた良いですね。なかなかの佳作。

10. SAVE ME!? ★★

あからさまにジミヘンの『Purple Haze』をパクっているのですが、まぁ、終盤で実際に「Purple Haze!!」って叫んでるし、お遊びということで許してあげましょう的な1曲(なんじゃそりゃ)
このアルバム中で最もギターが主張しているし、まさに好きなものをそのままやってるぞ感がわかります。
最後の「僕のものに~♪なりなさい!!」という急に歌から説教に転じる稲葉さんも強烈に印象的(笑)。

11. STARDUST TRAIN ★★★

奇麗なイントロから力強いバッキングに変わる疾走感あるラストナンバー。時間と情景の変化・心情描写をうまく取り込んだ歌詞が良いですね。
隠れ人気も高いようです。

総合 ★★☆

打ち込みを基盤としながら、様々な曲調に手を伸ばしています。今では絶対に聴けないようなタイプの楽曲も。










4thシングル
『BE THERE』
(1990.5.25)



レコード会社を移籍し、初の単発リリースとなったシングル。『BAD COMMUNICATION』効果もあってか、初のTOP10入りを果たすと、この曲も長くチャートに座るロングセラーとなり、次作からいよいよ始まるB’z快進撃の基盤を作るヒットになりました。

1.BE THERE ★★★☆

さて、この曲といえば何と言ってもイントロですね。「ビビビッ!!」っていう。ヘッドフォンで聴くと、耳をくすぐるような感触がなんとも快感です。これは、編曲の明石さんのアイデアだそうで。
テンポ感あるサビに、夜の街を思わせるアレンジメント。変わっていく様々なものの中で、変わらない君にそこに居て欲しいという歌詞もマッチしていて独特の雰囲気に包まれたナンバーです。

2.星降る夜に騒ごう ★★

カップリングはポップな1曲。ベタベタの打ち込みには今聴くと失笑をせざるを得ないし、歌詞もやたら張り切っているのがおかしいです。「東京タワー貸しきり」なんて、いくらかかるのでしょうか。
「君はマドンナ、僕はスーパーマン」っていう歌詞も初期のノリで面白いですね。二度と同じような曲は聴けないだろうなぁと思っていましたが、最近では逆にありそうなのがコワイ(笑)。

(記:2006.4.10)










5thシングル
『太陽のKomachi Angel』
(1990.6.13)



B’zにとって記念すべき、初のオリコン1位に輝いたシングル。そしてこの曲から現在に至るまでシングル連続初登場1位の記録は継続中です。
B’zの快進撃はここから始まります。

1.太陽のKomachi Angel ★★★☆

平然とつけているようですが、このタイトルはスゴイ。「小町」という単語を「Komachi」とローマ字表記にすることで、あたかも英語のような感覚でぶちこんでいます。で、今回はそれが違和感なくリズムに溶け込んでいますからね、言葉の魔術師・稲葉の本領がいよいよ発揮されてきたというところでしょうか。
「いざ今宵酔わん」って歌詞もすごいし、「やや乱れてYo!Say, yeah, yeah!」など、もはや普通の状態とは思えないノリです。
「情熱的な口唇にはバラが似合うよ」「きっかけは錯覚でもいいから季節を二人で越えてみたい」なんていうナンパな口説き文句もザッツ稲葉。
情熱的なラテンサウンドとデジタルビートの融合。そして古風さとナンパ詞の融合。連続1位記録の始まりふさわしい珍作。
ベースラインが印象的ですね。ギターソロも熱い!!
ライブでも盛り上がりそうなお祭りソングです。

2.Good-bye Holy Days ★★☆

こちらは夏の終わりを感じさせるムーディーなバラード。のんべんだらりとした印象ですが、そこまで悪い曲じゃないかも。お洒落な感じですね。
歌詞のストーリーは『太陽のKomachi Angel』からつながっているととれなくもないですね。










2ndミニアルバム
『WICKED BEAT』
(1990.6.21)



英語詞でディスコロック調にアレンジした4曲を、ノンストップで収録したミニアルバム。リリース意図がイマイチよくわからないのですが、この作品が初期ダンスサウンドのラスト作となります。

1.I Wanna Dance Wicked Beat Style ★★☆

『君の中で踊りたい』の英語詞リメイクバージョン。
サビの「踊りた~い、君の中で~♪」の部分は日本語詞のままになっています。
時代を先取りしたようなサンプリングも施してあります。

2.Komachi-Angel Red Hot Style ★★★

1週間前にリリースされた最新シングル『太陽のKomachi Angel』の英語詞リメイクバージョン。
まぁ、当たり障りないアレンジですが、この曲のコミカルな魅力を楽しめるのは日本語詞の方かなと思います。

3.Bad Communication E.Style ★★★

こちらは原曲に忠実なアレンジのままの英語詞バージョン。この曲は英語詞の方がハマっていますね。稲葉さんのヴォーカルが活き活きしています。
まぁ、「いつでもMakin’Love~♪」っていう原曲の方も、アレはアレでいいんですけど(笑)。

4.Lady-Go-Round "W-40" Style ★★★☆

百人一首の部分は日本語詞のまま(笑)。
アレンジは原曲より洗練された印象で、キャッチーなサビが更に映えていますね。

総合 ★★

初期ダンスサウンドのB’zの清算。オケは原曲より洗練されているし、遊びの余裕も見せています。ただ、今となってはあまり好んで手を伸ばすことのないアルバムかなぁ。
ジャケットは怖いです(笑)。










4thアルバム
『RISKY』
(1990.11.7)



シングル『太陽のKomachi Angel』で初の1位を獲得、翌週、初期ディスコサウンドのシメとしてのミニアルバム『WICKED BEAT』をリリースしたB’z。
この年10月3日には6thシングル『Easy Come, Easy Go!』、10月24日には7thシングル『愛しい人よ Good Night…』と、タイプの違ったシングルを相次いでリリース。ミディアムの歌モノにロッカバラードと、ダンスサウンド以外もイケるということをアピールします。セールス面でも『太陽の~』に続いてこの2作品も共にチャート首位を獲得。B’zは更に勢いを増します。そして同年11月7日にリリースされたのが4枚目のオリジナルアルバムとなる今作『RISKY』です。
今作では、これまでの三枚のアルバムで見せたようなダンスサウンドから、ある部分では更にロック色を強め、またある部分では更にポップスとしての要素を押し出し、初期のTMNフォロワーというイメージからの完全なる脱却を図っています。
稲葉さんの歌詞も、テーマ・言い回し・単語の選び方に至るまで、独自のセンスが爆発。稲葉独特の歌詞というのも、B’zのひとつの魅力として顕現しました。
これまで使われなかったアイデアが相当な勢いで噴出しているこのアルバム、まさにリスキーな挑戦であったと言えます。しかし、その賭けは功を奏し、「B’zらしさ」がここで形成されるに至ったのです。
延べ130週に渡ってチャートインするロングヒット、169万枚を売り上げ、アルバムとしてはB’zにとって初のチャート1位も獲得しました。
今聴くと、ちょっと音質・演奏ともにちょっと音がショボイけれど、トリッキーな楽曲群と、アルバム全体から感じられる勢いというのは、類まれなるものがあります。
アルバムとしての聴き心地は、前半が非常にテンションが高く、それゆえ後半の楽曲がやや印象に残りにくい部分もありますね(『愛しい人よ Good Night…』が完全に流れをそこで止めている)。その後の作品と同列に聴くと、ちょっと影のある作品といったイメージも。
いや、しかしながら、B’zにとっては非常に意味の大きいターニングポイントとなったアルバムでした。今のB’zで再録したらすごいことになりそう。

1.RISKY ★★

ギターによるインスト。なかなかいやらしい雰囲気で良いですね。「RISKY Where Do We Go?」のセリフから2曲目へのつながりもGood。B’zではその後も多く見られるようになるパターンですが、こういったイントロ的な1曲目の存在というのは今作品が初です。

2.GIMME YOUR LOVE ~不屈のLOVE DRIVER~ ★★★☆

ということで実質的な1曲目。ハネたブラスロックで、稲葉さんがヒップホップばりにシャウトしまくります。「うっ!」とか「あぅ!!」とか(笑)。
歌詞は、年上の女性にいいように扱われる心境を、情けなさとコミカルさを両立させて描写しながら、明日への決意も含ませていて上手い。「二人ガードレールとCRUSHしてもなんかおまえだけ助かりそう」という歌詞がこの二人の関係のすべてを表しているような気がする(笑)。
サウンドへの歌詞のはめ方も、アバンギャルドと巧妙さの絶妙なバランスで成り立っていて唯一無比の稲葉詞世界を確立。
一時期まではライブでもよく演奏されていたようですが、最近は演ってないですね。聴きたいなぁ。

3.HOT FASHION ~流行過多~ ★★★

前曲から間髪入れずに続くハイテンポナンバー。ここでも軽快なブラスセクションがポップな楽曲を色付けています。
テンションの高さも特筆モノで、恐らく一般人では最後まで息が続かないであろうサビを軽々と歌いこなしてしまう稲葉さんがすげぇ。間奏の稲葉フェイクも面白いです(笑)。

4.EASY COME, EASY GO! ~RISKY STYLE~ ★★★★

6thシングル。現在までファンに親しまれている名曲ですね。
アコギ主体のミディアムナンバーで、打ち込みダンスサウンドから脱却した歌モノとしての楽曲では初のシングルです。優しいメロディーも印象的。女性を励ます歌詞も、フレーズひとつひとつが心に染みます。
ライブでは稲葉さんがアコギを持って演奏したりしてリラックスした雰囲気の中でとても盛り上がりますね。
ここに収録されているのは、パタパタした音が特徴的な「~RISKY STYLE~」。
アルバムには馴染んでいるかもだけど…、シングルのほうがいいや(笑)。

5.愛しい人よ Good Night… ★★☆

7thシングル。シングルでは初のバラード曲。
静と動を対比させたロッカバラード風のアレンジメントに熱い歌詞と、バラードの王道を行っています。
出だしのメロディーなんか良いですね。サビメロより好きです。終盤の、静かになるサウンドと「道往く車の風を切ってく音と~♪」という歌詞の織り成す見事な静寂感も、この曲の中で特筆すべきポイントです。
ただ、曲全体として冗長な感も。サビがのんべんだらりとしすぎている上にベタベタだから、ただでさえ長い演奏時間以上に「長い曲」というイメージを持たれてしまうかも。良くも悪くも、初期のバラードといった感じですね。
ここまで心地よく進んできたアルバムの流れがこの曲で完全に止まっているのが笑えます。

6.HOLY NIGHTにくちづけを ★★★

松本さん曰く「ずっとやりたかった」というモータウン風ナンバー。
「この街は二人のため~♪」という歌詞が、2番・3番で「世界は二人のため~♪」「宇宙も二人のため~♪」と展開していくのが面白いです。

7.VANPIRE WOMAN ★★★

最初期を引きずった打ち込みサウンドをベースにややハードなアプローチもしています。
出だしのヘンな音も、オトナの女性を吸血鬼に例えたこの曲の不気味さを表現するのに一役買っているかな。まぁ、そうは言ってもサウンド面では強烈に引き付けられるような所もないんだけれど、この曲は歌詞が面白いですね。独特のキレ具合を見せていて、「一男去ってまた一男」「百聞は一夜に如かず」と迷言連発。言葉遊びに溢れた稲葉ワールドになっています。
前奏や間奏での、坪倉唯子(Being系女性シンガー)演じるバンパイアウーマンと稲葉さんとの掛け合いも聴き所。失笑必至。

8.確かなものは闇の中 ★★★☆

B’z全楽曲の中でもトップを争うほど地味な曲。ですが、聴き返してみたら、ムーディーでなかなか良かったです。
お得意の不倫テーマのミディアムナンバーで、歌詞も『NEVER LET YOU GO』や『STARDUST TRAIN』など、今までの不倫をテーマにした楽曲以上に悲壮感が漂っています。

9.FRIDAY MIDNIGHT BLUE ★★

今作中ではかなりロックテイストの強めな楽曲ですが、サビはポップに仕上がっていて、B’zなりの歌謡ロックの原型と言えるかもしれませんね。
歌詞はモチーフは面白いんだけど、登場人物と稲葉の主観がメチャクチャに混ざり合って、聴いていて混乱。まだ整理しきれていない印象です。

10.It’s Raining ★★★★

ムーディーなサウンドに乗せて、ひたすら電話越しの相手と稲葉さんが語るという、なんかあらためて紹介文にすると壮絶な内容の1曲ですな、こりゃ(笑)。
聴いてみればどんな曲かわかります。
癒し系ですね。こんなのもありでしょう。雰囲気的にも良く出来ているし。

総合 ★★★

B’zらしさの原型を作り上げた記念碑的なロングセラーアルバム。










8thシングル
『LADY NAVIGATION』
(1991.3.27)



1991年最初のリリースは、暖かくなってきた季節に丁度良い、明るく爽やかなナンバー。ジャケットの二人もやたら爽やかで印象的(笑)。
松本孝弘生誕30周年記念シングル(本人談・笑)。
表題曲『LADY NAVIGATION』はカネボウのCMソングとして起用され、シングルではB’z初のミリオンセラーとなりました。

1.LADY NAVIGATION ★★★☆

「N、A、V、I~♪」のコーラスから始まる軽快なポップナンバー。今聴くと音はペラペラ。『RISKY』から『MARS』へとロック方面へ少しずつサウンド比重を傾けていった当時のB’zからすると、一度ここで初期のダンサブルな路線にバックして足を踏み入れながら、ポップな方面へとサウンドを突き進めたというところでしょうか。口ずさみやすく覚えやすいサビでヒット性十分ですね。
それにしても、歌詞がブッとんでいます。「NAVIGATION」のスペルをそのまま一字一字歌った「N=A=V=I=G=A=T=I=O=N」もスゴイですが(しかも当時これを若き稲葉がクネクネ踊りながら歌っていた)、「地球にはじける頬」「ブラウンの瞳に映るのはいつでももぎたてのベジタブル」「艶やかな口唇からこぼれる言葉はすべてあなただけの詩(ポエム)」などなど、マジなのかギャグなのかわからないキレキレの稲葉詞が炸裂しています。テーマとしては、女性賛歌なのかナンパなのか微妙なところですね(笑)。
実はこの曲、マストアルバム『Mixture』用の楽曲制作時に「Mixture style」が作られてしまったなんていうエピソードも。本来『Mixture』は、2枚のベスト盤『Pleasure』・『Treasure』から漏れた曲の中から選曲され、再録やミックス変更を行ったものが中心となって収められているのですが、はじめは誰も『LADY NAVIGATION』が『Pleasure』に収録されていることを指摘せず、再録した後でそのことに気付いて結局お蔵入りになったそうです(笑)。

2.Pleasure’91 ~人生の快楽~ ★★★★

カップリング曲という境遇ながら、ファンからの人気も高く、B’zにとっても重要な楽曲となったナンバー。この後、この『Pleasure』という言葉がB’zのツアータイトルとして定着していくことになります。この楽曲も、ライブで演奏される度に歌詞の一部が変更され、『Pleasure’○○』として歌われています(CD化されているのは、オリジナルであるこのバージョンと、『Pleasure’98』)。1998年にリリースされたB’z初のベストアルバムのタイトルも『Pleasure』となりました。
駆け抜ける松本さんのギターに乗せて、止まらない時間の流れの中で生き抜くということに対する悲哀と、それでも生き抜こうとする想いを歌うヴォーカルがリスナーに訴えかけてきます。物悲しく演奏されるアウトロのピアノソロもまた泣かせます。










3rdミニアルバム
『MARS』
(1991.5.29)



名曲『孤独のRunaway』と、英語詞リメイクの3曲を収録したミニアルバム。2曲目に置かれたタイトルトラック『Mars』は、詩の朗読のみの場つなぎ的小品。
リメイクされた3曲は、いずれも原曲よりハードなアレンジを見せており、B’zのルーツを作品に表出させた形になっていますね。
忘れがちなミニアルバムですが、特にB’z初心者には忘れずに聴いておいてほしい一枚。

1.孤独のRunaway ★★★☆

非シングルながら、ドラマ主題歌にも起用され、初期の名作としてファンに人気のナンバー。ベストアルバム『Treasure』収録曲を決めるファン投票でも結構良いところに食い込んだし、その後マストアルバム『Mixture』では、よりハードになって再演もされました。
のっけから来るサビメロの「JUST A RUNAWAY~♪止めないでよ~♪」というフレーズはインパクト強し。派手に曲を彩るホーンセクション。ギターも痛快に動き、聴きやすいメロディーと適度にハード色を押し出したサウンドという、まさに『RISKY』の延長上にあるような1曲で、歌詞もB’zらしい旅立ち推奨ナンバー。「愛を殴ってみよう 義理を蹴飛ばしてみよう」というフレーズには驚きましたね。

2.Mars

ギターアルペジオに乗せて、稲葉さんが詩の朗読をするだけという、不可解極まりない1曲。まぁ、場つなぎ的なトラックだということで。深く考えたら負けです(笑)。
『It’s rainig』に続いて、稲葉フェチにはたまらない、かも。

3.Loving All Night ~Octopus Style~ ★★★

2ndアルバム収録曲の英語詞リメイクバージョン。元々ハードロック色を覗かせていた原曲を更にハードに演じることで、格段に格好良く仕上がっています。稲葉さんの喘ぎ声もエロくてよろし。

4.Love & Chain ~Godzilla Style~ ★★★

ギターが押し出されたアレンジに。歌詞も原曲とは違ったストーリーを持っていて面白いです。訳してみましょう。
それにしても、稲葉さんのシャウトはまんまスティーブン・タイラー。

5.LADY NAVIGATION ~Cookie & Car stereo Style~ ★★★☆

この時点での最新シングルの英語詞リメイク。アレンジが厚くなり、ゴージャスなサウンドで演奏されています。
これらの英語詞リメイク3曲のサブタイトルにはそれぞれちゃんと意味があるということをどこかで聴いたんですが、どんなんだったかなぁ。忘れました(汗)。

総合 ★★★

英語詞楽曲+ハードなアレンジというスタイルでの演奏で、楽曲はどれも原曲より活き活きしているように感じます。B’zがいかにルーツを日本市場向けのスタイルに寄せることに苦労していたかが覗えるかも。是非聴いておきましょう。
(記:2007.3.15)


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