1991年は5月のミニアルバム『MARS』の後、10月に哀愁のバラードシングル『ALONE』をリリース。この曲も、前作『LADY NAVIGATION』に続きミリオンヒットとなり、B’zはバラードもいけるということを世間に印象付けることとなりました。この『ALONE』は、今でもB’zのバラードの代表的な1曲として有名ですね。 そして11月末にリリースされたのが5枚目のアルバムである今作『IN THE LIFE』。前作『RISKY』で得た自信を胸に、ロック部分の比重はとりあえず前作を下敷きにする程度にとどめ、ポップ方向に大きく深化・拡大した作品となっています。歌モノ・ジャパニーズポップスへと大きく傾倒し、全体を通して非常に聴きやすい内容。全10曲がバランスよく奇麗にまとまった一枚。1曲1曲もクオリティーが高く、シングルが『ALONE』1曲しかないなんて信じられないほどの出来ですね。今でも、ポップ派のファンの中にはこのアルバムを「最高傑作」と位置付ける人もいます。
イントロから出だししばらくまで、AEROSMITH『WHAT IT TAKES』をほぼ完コピです。似てるなんてもんじゃなくて、ほとんどそのまま。B’zのパクリ問題の最大の元凶とも言えそうです。ちょっとヤリすぎ。 ただ、哀愁漂うサビメロや歌詞・歌唱がまた良いんですよね。素直に褒めることが出来ないのがなんとも(笑)。
前曲で感傷的になった後、雄たけびのようなワイルドなシャウトで幕を開ける8ビートナンバー。適度なポップとロックのバランスが素晴らしいですね。 歌詞もキレキレ。これ、しばらく気が付かなかったんですが、歌詞の「IN THE WILD LIFE~♪」ってところから見ても、アルバムのタイトル的なトラックかも。そう思って聴くと、またアルバムも違った表情に見えてきたりします。
アルバムより1ヶ月早くリリースされた9thシングル。夕暮れ時がよく似合うバラードです。とにかく、曲も詞も、胸をジ~ンと熱くさせますね。泣けます。コンサートビデオ『''BUZZ!!'' THE MOVIE』の中での、稲葉さんがピアノを弾きながら歌う姿も印象的。 「ALONE 僕らはそれぞれの花を 抱いて生まれた 巡り逢うために」は名フレーズ。 ここに収められているのは、シングル版とは違い、「I was born~♪」のコーラスから始まるバージョンです。
歌モノとしての傑作『IN THE LIFE』を作り上げたB’zは、徐々にルーツであるハードロックをサウンドに取り入れていきます。 この6作目のアルバム『RUN』は、ポップな『IN THE LIFE』と自由奔放な『The 7th Blues』の間の過渡期のバランスの良い作品という印象が強いのですが、今になって考えてみると『IN THE LIFE』からこの『RUN』へというのも結構な飛距離がありますよね。 前作で作り上げたポップサウンドに、ハードロックを注入したような作品で、時系列に聴いていけば、このアルバムを「ロックアルバム」と感じずにいられないのも至極当然なことでしょう。 しかし、ここでのサウンドの変化は驚くほど素直に受け入れられ、やはり、ハードロックと言えども、メロディーの良さや、ブラスなどを取り入れたB’zサウンドの質の良さととっつきやすさが期待通りのレベルであることを示したと言えるでしょう。 ここでロックサウンドに自信を持ったB’z。もうこの後は、1995年末あたりまで、何を出しても大ヒットの無敵状態が続くことになります。 この『RUN』、楽曲自体も格好いいものが揃っていますが、アルバムとしての流れもよく、ラスト3曲で徐々にゆるやかに終わっていくのも聴き心地が良いです。 初心者にもオススメできる名盤でしょう。
この時期のシングルの2nd-beatは傑作・佳作揃いですが、この曲もファンには人気があります。 『OFF THE LOCK』あたりからの手馴れた歌謡ロックサウンドですが、こういった作風も久々ですね。そして、やはりこの曲を語る上で外せないのはその歌詞でしょう。「嫌いだ」と歌い出すラブソングはなかなかありません。それでいて「好きだ好きだ」と連呼する数多のラブソングよりも、よっぽど説得力がありますからね。
(記:2008.5.4)
8thアルバム 『LOOSE』 (1995.11.22)
制作集団「B・U・M」解体後のB’zは、ブルース・HR路線を貫いた1994年の活動で蓄えた重量感は芯にしながら、それ以前のポップな作風も取り入れ、一回りパワーアップしたバランスの良いサウンドを提示するに至りました。 この1995年の『ねがい』・『love me, I love you』・『LOVE PHANTOM』という3シングルは、まさにそうした新生B’zサウンドを象徴するに充分なナンバーで、従来のファン、新規ファン、『The 7th Blues』で離れていたファンと、その全てに訴えかける魅力を備えていたように思います。こうして、楽曲の充実ぶりは過去最高と言えるほどになり、セールス面でもミリオンは当たり前、『LOVE PHANTOM』は当時歴代最高の初動95万枚を売り上げるなど絶頂期を迎えた1995年のB’z。この年11月に発表された8thアルバムが今作『LOOSE』です。
3枚のシングルナンバーと同様、アルバム曲のほうも、HRとしての要素もポップスとしての要素も広く取り入れてスケールアップした充実のB’zサウンドが楽しめます。 ハワイでレコーディングしたという『消えない虹』・『drive to MY WORLD』なんかは、なるほど開放的な空気感が曲にも反映されています。また、『ねがい』をライブアレンジで収録したり、過去の代表曲『BAD COMMUNICATION』のアコースティックアレンジ(こちらは前年のツアー『The 9th Blues』で披露されていたバージョンが原型)を収録してみたり、ガチガチに縛られることなく、自由な雰囲気で制作された作品だということが伝わってきますね。これも、今作のテーマに掲げた「B’zは二人である」というメリットが発揮されたということでしょう。チープなお遊び曲『BIG』なんていうの曲もあったり。本当にバラエティ豊かです。
B’zのオリジルアルバムでは歴代最高となる300万枚を超えるヒットとなったわけですが、それだけ売れたのも納得できるパワーを兼ね備えた作品です。 ひとつ難点を言うなら、アルバム後半の流れが少し弱いかな。曲が悪いっていうんじゃなくて、前半~中盤のあまりの充実ぶりで、通して聴いていると、後半がややインパクト薄いように感じてしまいます。『love me, I love you』と『LOVE PHANTOM』を離れた位置に置けば、また違った感触だったと思うんですけどね。
曲も歌詞も、映画のワンシーンかのような美しさと儚さに富んでいます。B’zの特徴のひとつである歌謡曲的なメロディーラインの要素と、幻想的なストリングスアレンジ、主張する面と脇役に徹する面とを兼ね備えた松本孝弘のギター、そして無常を歌い続ける稲葉浩志のヴォーカル。これらが高次元で融合した傑作。コンパクトな構成でポップスとして機能しながらも豊かなスケールを持った楽曲に仕上がっているのが、いかにもこの時期のB'zらしい。前作『The 7th Blues』収録の『赤い河』の進化・発展型ともいえるかもしれません。 香港の人気投票では1位となり、現地で発売された『B'z The Best ''Treasure''』には、ボーナス・トラックとしてこの曲が収録されています。
18thシングル。テレビ朝日ドラマ『Xファイル(第1シーズン)』主題化。アルバム先行シングルとして10月11日にリリースされると、当時歴代最高の初動95万枚を記録。その後もセールスを伸ばし、『愛のままにわがままに~』に次いで、B’z史上2番目のヒットシングルとなりました。 この曲が初めて披露されたのは、『B’z LIVE-GYM Pleasure’95 BUZZ!!』。吸血鬼に扮した稲葉さんが、間奏中に高さ数十メートルのセットの上に移動し、曲の終わりと共に地上へダイブ。飛び降りた瞬間に会場は暗転。しばしの悲鳴の中、次曲『ねがい』で稲葉さんがマラカスを振りながらオチャメに登場してくるという、非常に凝った演出がなされました(笑)。一連の模様は、ビデオ/DVD『BUZZ!! THE MOVIE』で見ることが出来ます。 それにしても、1分20秒に及ぶオーケストラのイントロ。そして、神秘的なピアノ、「You must know what I am」というコーラス(呟き)に続いて、切り裂くような松本さんのギター、雪崩のような稲葉さんのシャウトが一気に滑り込んでくるスピード感は、B’zの代表曲と呼ぶに恥じない完成度。最後の最後まで、息つく暇をもたせません。この曲で、B’zはひとつの頂点を極めたかなという感は確かにあります。メロディーだけとってみれば、「ど演歌」だったりするんですけどね(笑)。「いらな~い、なにも~」ってゆっくり歌ってみると、いかにこの曲が日本人的なメロディーで出来ているかがわかります。小林幸子が歌ったっていいのよ。アレンジ面での完成度の高さに反比例して(?)、歌詞のほうは「二人でひとつになれちゃうことを~」の「なれちゃう」なんていう言い回しなんかが、別冊角川でも酷評されていたように少し気になるところではありますが…。全体的には、さすがに聞き飽きてきたので、個人的にはそろそろ再録音を希望する曲だったりします。
9.敵がいなけりゃ
★★★
これは、時期的には『MOTEL』の頃に作られた楽曲で、今作中では例外的にB・U・Mのメンバーによって制作されています。『BAD COMMUNICATION (000-18)』もそうだけど、こうした楽曲がポーンと入ってるのも、ある意味今作がルールに縛られずに作られたアルバムだということの表れでもありますね。 楽曲は、どこかセルフパロディー的な匂いもするブラスロック。過去のナンバーの焼き直しのようにも聴こえてしまいますが…。ただ、マーチ風のドラムというのは新たな試みですね。歌詞は、『Out Of Control』を彷彿とさせるジャーナリズムへの反発&皮肉。