NO-NAMEの隠れ家

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B'z(2)

作品レビュー…の続き

5thアルバム
『IN THE LIFE』
(1991.11.27)



1991年は5月のミニアルバム『MARS』の後、10月に哀愁のバラードシングル『ALONE』をリリース。この曲も、前作『LADY NAVIGATION』に続きミリオンヒットとなり、B’zはバラードもいけるということを世間に印象付けることとなりました。この『ALONE』は、今でもB’zのバラードの代表的な1曲として有名ですね。
そして11月末にリリースされたのが5枚目のアルバムである今作『IN THE LIFE』。前作『RISKY』で得た自信を胸に、ロック部分の比重はとりあえず前作を下敷きにする程度にとどめ、ポップ方向に大きく深化・拡大した作品となっています。歌モノ・ジャパニーズポップスへと大きく傾倒し、全体を通して非常に聴きやすい内容。全10曲がバランスよく奇麗にまとまった一枚。1曲1曲もクオリティーが高く、シングルが『ALONE』1曲しかないなんて信じられないほどの出来ですね。今でも、ポップ派のファンの中にはこのアルバムを「最高傑作」と位置付ける人もいます。

1.Wonderful Opportunity ★★★☆

1曲目から、底抜けに明るいポジティブソング。ハネたリズムとホーンセクション、そして大黒摩季によるコーラスが印象に残ります。
韻を踏みまくった歌詞は、リスナーを元気付け、最後は「シンパイナイナイザッツライフイッツオーライ♪」と、凄い勢いでまとめます(笑)。でも、ちゃんと力が沸いてきますからね、見事なものです。
当時からしてみると異色作のこの曲がトップにくることで、いきなり『RISKY』の頃とは違った印象を受けますし、今作のポップな雰囲気を象徴しています。

2.TONIGHT (Is The Night) ★★★☆

これまた異色作。敢えて言うなら『ハートも濡れるナンバー』や『確かなものは闇の中』あたりで見られたムーディーな雰囲気ですが、もっとポップス寄りに作ってありますね。
サウンドだけでなく、歌詞中に描かれた小道具や描写もまたお洒落な仕上がり。
メロウでアダルトなナンバー。

3.「快楽の部屋」 ★★★

これはもうお得意の…といった感じのHR路線。『RISKY』からミニアルバム『MARS』を経て、徐々に表出されてきたB’zのルーツであるハードな楽曲ですが、今作もアルバム中ではこの曲くらいで、またしても小出しにとどめてあります。むしろ、総じてポップな今作中では、この曲は一つのアクセントとして機能していますね。
歌詞は、プライベートな「快楽の部屋」とライブ空間とをかけたダブルミーニング。

4.憂いのGYPSY ★★★★

イントロから出だししばらくまで、AEROSMITH『WHAT IT TAKES』をほぼ完コピです。似てるなんてもんじゃなくて、ほとんどそのまま。B’zのパクリ問題の最大の元凶とも言えそうです。ちょっとヤリすぎ。
ただ、哀愁漂うサビメロや歌詞・歌唱がまた良いんですよね。素直に褒めることが出来ないのがなんとも(笑)。

5.Crazy Rendezvous ★★★☆

冒頭のエンジン音は松本さんの愛車。
世間から見たら実にB’zらしい曲だと思うんじゃないでしょうか。歌謡曲+ロックという、これぞ商業的B’zサウンドですよね。派手なイントロから気持ちは嫌でも昂ぶりますし、楽曲は全体を通してスピード感があります。
歌詞は、恋心を抱く女性を「好きなんだからしょうがない」とムリヤリ深夜のドライブに連れ出すという危険極まりないものですが、相手が稲葉サンならオールオッケー!?(笑)。
時間と情景の移り変わりをポイントを抑えて描写している歌詞もこなれたもの。

6.もう一度キスしたかった ★★★★★

流麗なピアノ演奏によるイントロから幕を開けるこの曲は、その後ベストアルバムにも収録されることとなる名曲。
「メロディーに繰り返しが多いので、ストーリー展開する歌詞にした」という稲葉さんの判断がお見事。タイトルでもあり、1コーラスを締める「もう一度キスしたかった」というフレーズは、語られるシチュエーションが全て異なっています。1曲通して一つの恋の始まりから終わりまでが描かれ、繰り返される泣きの旋律に乗って語られる物語を追うごとに胸を締め付けられます。「燃え上がる想いははかなくて 逢えない日々がまた始まる」「約束は交わされることなく 揺れている恋は泡のよう」等等、印象的で切ないフレーズばかり。B’z流ラブソングの最高峰のひとつ。

7.WILD LIFE ★★★☆

前曲で感傷的になった後、雄たけびのようなワイルドなシャウトで幕を開ける8ビートナンバー。適度なポップとロックのバランスが素晴らしいですね。
歌詞もキレキレ。これ、しばらく気が付かなかったんですが、歌詞の「IN THE WILD LIFE~♪」ってところから見ても、アルバムのタイトル的なトラックかも。そう思って聴くと、またアルバムも違った表情に見えてきたりします。

8.それでも君には戻れない ★★★

アップテンポな曲が続きますが、元来この曲は切ないナンバーなんですね。そのわりには、ブラスのアレンジが元気過ぎてちょっと受け付けないです。この曲の良さを引き出すにはもう少し別の料理法が良かったのではないかなと。あまり単体でこの曲についてどうこう言われてるのって耳にしたがないですね。アルバムの流れからいっても、陰のある位置に収まっているこの曲、それが良かったのか悪かったのか(笑)。
Aメロのシャウトに近いようなヴォーカルの入りは格好いいですね。

9.あいかわらずなボクら ★★★

肩の力が抜けたアコースティックナンバーが登場。サポートメンバーの歌声を交えて、ほのぼのとした雰囲気で演奏されます。田中一光氏の「道なんていくらでもある~♪」という低音ヴォーカルが印象的。素朴な歌詞も良いですね。最後の「ハクション!!」は松本さん。

10.ALONE ★★★★

アルバムより1ヶ月早くリリースされた9thシングル。夕暮れ時がよく似合うバラードです。とにかく、曲も詞も、胸をジ~ンと熱くさせますね。泣けます。コンサートビデオ『''BUZZ!!'' THE MOVIE』の中での、稲葉さんがピアノを弾きながら歌う姿も印象的。
「ALONE 僕らはそれぞれの花を 抱いて生まれた 巡り逢うために」は名フレーズ。
ここに収められているのは、シングル版とは違い、「I was born~♪」のコーラスから始まるバージョンです。

総合 ★★★★☆

J-POPとしてのB’zのカラーを確立させた名ポップスアルバム。
(記:2007.3.19)










10thシングル
『BLOWIN'』
(1992.5.27)



1992年最初のシングルは、初期B’zの総決算とも言うべき楽曲となりました。多彩なアイデアをもとに纏められ、それでいて見事にポップに聴かせてしまうのにはウームと唸らざるを得ません。いや、そんなことすら考えずにただただ心地良く聴けてしまうのがまたね、素晴らしいです。
カップリングに収録された『TIME』も名曲。
B’zの実力を感じるシングルです。

1.BLOWIN’ ★★★★

非常によく考えて作り込まれた曲だなと感じます。多数のアイデアが取り入れられ、練り込まれています。そして、全体としてポップに仕上がっています。B’zの職人技が光る1曲と言えそう。
シンセによるイントロはサビメロをそのまま奏でているのですが、これがまた爽やかで心地良いですね。デジタルビートかと思いきや、Aメロではバックでアコギが鳴っていたりするのに驚き。Bメロを終えてサビへ突入する際の効果音は飛行機のエンジン音をサンプリングしたもの。このアレンジのアイデアは凄いですね。
また、2番のサビから連なってくる「風を受けて~♪」という新たなメロディーが存在感を放っています。これだけ唐突でいて、しかしそれが曲の重要なアクセントとして機能しているんだからなぁ。お見事。
歌詞についても、いきなり「ボロボロにKOされる夢を見て~」という印象的なフレーズで始まる稲葉ワールド。アブラが乗ってます。
10枚目のシングルにして、「B’zの音楽」として、これまでで最もはっきりとその存在感とアイデンティティーを示した楽曲であるのではないでしょうか。

2.TIME ★★★★

急ぎもせず、振り返りもせず、ただ淡々と流れる時の中で、失ったものへの嘆きと無常を歌った、落ち着きながらも熱のこもったバラード・ナンバー。
1番では「どうすれば時が過ぎる」、2番では「どうすれば時が戻る」と、正反対の事を歌っているにもかかわらず、どちらも主人公の心情が苦しいほどはっきりと伝わってきます。
また、「こんな晴れた日は二人で~」・「降り止まない雨の中を~」という歌詞の対比も見事に時間と場面の移り変わりを描いています。このへんも上手いですね。歌詞の良さも併せて味わってほしい楽曲。
稲葉さんの熱唱も、荒削りな印象もありますが、芯の強さを感じますね。

(記:2007.4.7)










6thアルバム
『RUN』
(1992.10.28)



歌モノとしての傑作『IN THE LIFE』を作り上げたB’zは、徐々にルーツであるハードロックをサウンドに取り入れていきます。
この6作目のアルバム『RUN』は、ポップな『IN THE LIFE』と自由奔放な『The 7th Blues』の間の過渡期のバランスの良い作品という印象が強いのですが、今になって考えてみると『IN THE LIFE』からこの『RUN』へというのも結構な飛距離がありますよね。
前作で作り上げたポップサウンドに、ハードロックを注入したような作品で、時系列に聴いていけば、このアルバムを「ロックアルバム」と感じずにいられないのも至極当然なことでしょう。
しかし、ここでのサウンドの変化は驚くほど素直に受け入れられ、やはり、ハードロックと言えども、メロディーの良さや、ブラスなどを取り入れたB’zサウンドの質の良さととっつきやすさが期待通りのレベルであることを示したと言えるでしょう。
ここでロックサウンドに自信を持ったB’z。もうこの後は、1995年末あたりまで、何を出しても大ヒットの無敵状態が続くことになります。
この『RUN』、楽曲自体も格好いいものが揃っていますが、アルバムとしての流れもよく、ラスト3曲で徐々にゆるやかに終わっていくのも聴き心地が良いです。
初心者にもオススメできる名盤でしょう。

1.THE GAMBLER ★★★

前作と比べると、随分と渋いオープニングナンバー。まぁ、それは冒頭のオルガンのせいでしょう。
長めに演奏されるオルガンの音色からハードロックに転じるイントロは迫力があって格好いいです。
軽快なブラスとうなるギター、気持ちよさげにシャウトするヴォーカルなど、生音ハードロックに転じた喜びが溢れ出るかのよう。
歌詞もテンションが高くパワフルです。

2.ZERO ★★★★

11thシングル。1992年10月7日リリース。
B’zにとって大きな転機となったシングルで、現在に至るまでライブでもほぼ毎回演奏されている定番ナンバーです。
今聴くと特に驚くことのないB’zサウンドですが、当時からの流れで聴くと、この曲でのハードロックに大きく傾倒したサウンドは冒険。
2番までサビが出てこない構成なども異色で、かなり危険なシングルリリースでしたが、勢いに乗っていたB’zには問題なくミリオンヒット。
音圧の強いハードなサウンドながら、歌メロはキャッチーだったり、ブラスセクションや間奏にラップを取り入れるなど、凝ったつくりで根底に流れるポップさがすんなり受け入れられた理由でしょうか。
ラップの聴き取りには、僕も昔は苦労しましたよ、えぇ(笑)。
この曲でB’zはハードロックを手の内に入れます。

3.紅い陽炎 ★★★☆

王道です。哀愁のロッカバラード。
決してこういったタイプの楽曲がこれまでのB’zに多かったわけではないけれども、王道と感じてしまうこの盤石の仕上がり具合は一体(笑)。
当時はそんなこと考えてなかったけど、今聴くと歌詞も深いですね、これ。
キーも低めで、この曲ならなんとかカラオケでもいけるかも。
B’zとバラードは演歌チックだと言われるようになるのにも大きく貢献した1曲です(嘘)。

4.RUN ★★★★

一瞬『BE THERE』かと間違うようなイントロからスタートするタイトルナンバー。
もちろん曲全体は『BE THERE』に似ているというわけではなく(当然)、ブラスセクションが元気なアップテンポでノリの良い応援歌。
シングルじゃないですが、結構有名な曲ですね。
明確にこれまでのB’z自身を描いた歌詞も印象的で、これまでに培ってきた経験から生まれる強い絆を確認し、今後への意欲的な姿勢を歌い上げます。
ところで、よくできた腕時計で「これは一生の何分の一か」なんて計れるんですかね?

5.Out Of Control ★★★

出だしからちょっと普通じゃない稲葉さんの凄いシャウトで始まるハードロック。
稲葉さん、世の中への不満大爆発です。すごい勢いです(笑)。

6.NATIVE DANCE ★★★★

イントロのベースは、BON JOVI『KEEP THE FAITH』からの引用ですかね。
ディスコロック+アフリカンといった感じでポップに仕上げた煌びやかでダンサブルな1曲で、ファンからの人気も高いです。
ダブルミーニングで稲葉さんらしい恋愛哲学的な歌詞も素晴らしいです。傑作ですね。

7.MR. ROLLING THUNDER ★★★

これもイントロが格好いいなぁ。実際当時のライブツアーはこの曲からスタートしたということで、鳥肌ものだったでしょうね。
サビはAEROSMITHからの引用ですかね(笑)
この曲もパワフルな野性味溢れるシャウトが拝めたりします。歌詞はやはりここでも唯一無比の稲葉節炸裂!!

8.さよならなんかは言わせない ★★★☆

卒業シーズンにピッタリのお別れソングですが、タイトルが示す通りヘンに暗くないのが良いですね。
曲調もほのぼのしていてみんなで歌えそうな暖かさがあるし、ラストのアカペラは染みます。
『ELEVEN』ツアーでのこの曲の演奏は、サプライズ選曲で驚きましたが嬉しかったです。

9.月光 ★★★★

奇麗なバラード。繊細な男心が表現豊かに描かれており、稲葉さんの作詞センスに驚嘆。
サウンド自体も美しく、「波のうねりのような~♪」からの盛り上がりは胸にくるものがあります。静と動のコントラストも見事な、バラードベストにも選ばれた名曲。

10.Baby, you're my home ★★★☆

ラストを飾るアットホームなアコースティックナンバー。渋い雰囲気ですが、暖かくて良いですね。歌詞のテーマは、後の『HOME』にも通じるものがあります。

総合 ★★★★★

聴きやすいロックナンバーが揃う文句なしの一枚。ラスト3曲の存在が聴き心地の良さを高めています。
(改:2007.4.7)










4thミニアルバム
『FRIENDS』
(1992.12.9)



アルバム『RUN』から、わずか1ヶ月ちょっとでリリースされたミニアルバム。
B’zにとってミニアルバムとは、シングル・アルバムとも違ったアプローチを展開する実験の場として用いられているものだと考えられます。過去の作品を振り返ってみても、ダンスサウンドで統一した『BAD COMMUNICATION』・『WICKED BEAT』、ルーツに戻りハードロックを展開した『MARS』と、どれも独立性の高い作品として仕上がっており、シングルやアルバムとしてリリースする前段階、あるいは企画としての楽曲発表の場として、コンパクトで手軽なミニアルバムは最適なのでしょう。
この『FRIENDS』は、冬を舞台に、ある男女の失恋、そしてそれからを楽曲を通して描いたコンセプチュアルな一枚になっています。全8曲を通して、あたかも小説のように描かれていくストーリーは、稲葉浩志の詩人としての才能や魅力にふれられるものとなっています。温もりのあるストリングスやアコースティックな音使いは、先にリリースされていたアルバム『RUN』とはとても似つかず、軽やかなB’zの職人気質も覗えると言ってもいいかもしれません。どの曲も冬ならではのムードに溢れています。
B’zの別の角度からの魅力が感じられる名盤と言っていいでしょう。

1.Friends ★★★☆

ストリングスによって奏でられるインスト。冬だからこその「温かさ」が感じられるメロディーラインが美しいです。

2.いつかのメリークリスマス ★★★★★

冒頭のオルゴール、温もりのあるアコギ、冬のイメージを豊かに想起させるシンセなど、美しく冬を描き出した名曲。メランコリックなメロディーは素晴らしいし、細かいキーワードによって具体的に描かれた歌詞も、聴き手に情景を浮かび上がらせることに成功しています。
歌詞はまさに、幸せだった「いつかのメリークリスマス」の回想であり、現実に帰った「たちどまってる僕のそばを~」の歌詞は、痛切なものがあります。
アルバムの収録曲であり、シングルでないにもかかわらず、毎年クリスマスの定番曲として流されているこの曲は、ある意味『LOVE PHANTOM』や『ultra soul』以上にB’zの代表曲であろうし、セールス面の凄さとは裏腹にコレと言った「定番曲」のないB’zだからこそ、僕はこの曲がそうなってくれることも嬉しく思います。
結構、B'zファン以外は、この曲が「シングルではない」ことを聞くと驚くようですね。

3.僕の罪 ★★★

ガシャンとガラスの割れる音が印象的なこの曲は、AORとも言える大人な雰囲気のナンバー。サビは覚えやすいメロディーですが、こんなムーディーな編曲はこのアルバムならではですね。サビにかかる女性コーラスが非常に良い味を出しています。

3.Love is… ★★★

次曲『恋じゃなくなる日』のフレーズを用いたインスト。

4.恋じゃなくなる日 ★★★★

なんてドラマティックな1曲でしょう。
再会した二人。昔に似た日々が続いていく。しかし、二人の関係は、もはや恋などではなかった。そしてその後に生まれてくるかけがえのない絆とは…。
印象的なサビメロのリフレインの中で展開されていくストーリーは、『もう一度キスしたかった』を彷彿とさせます。
ピアノやシンセが冬の寒さをより一層醸し出すし、空に突き刺さるかのようなラストの稲葉氏のシャウトも非常に印象的。
もしも『いつかのメリークリスマス』がなかったのなら、もっともっと評価されていた1曲だと思います。

5.SEASONS ★★★

インストナンバー。

6.どうしても君を失いたくない ★★★★

もう恋じゃない。そんな感情はまったくなかった。ただ、どうしても君を失いたくない。
恋人という絆が取り払われたあと、新たに生まれた始まり。
それこそが、『FRIENDS』。
…アルバムを通して描かれてきたストーリーは、ここでハイライトを迎えます。

7.いつかのメリークリスマス(Reprise) ★★★★

エピローグとして流れるインスト。本当に素晴らしいメロディーですね。

総合 ★★★★★

最後まで聴いたとき、アルバムタイトル『FRIENDS』の本当の意味がわかります。
わずか30分足らずの中に、美しく、悲しい、そして素敵なストーリーが描かれる一枚。
(改:2007.4.7)










12thシングル
『愛のままにわがままに 僕は君だけを傷つけない』
(1993.3.17)



長いタイトルで印象的なこの1作は、実はB’z最大のヒットシングル。でありながら、表題曲はベスト盤『Pleasure』に収録されるまでシングルオンリーで影の薄いナンバーでした。
2nd-beatの『JOY』も地味に良い曲。

1.愛のままにわがままに 僕は君だけを傷つけない ★★★

ストリングスを導入した洋風ロックナンバー。大仰なストリングスを唐突に切り裂くようなイントロがインパクト大ですね。
ストリングスがなかったらとてもベタなナンバーになりそうだったところ。本編とは一瞬アンバランスに思えるようでいてハマってます。この冒頭のアレンジは上手いなぁ。
歌詞はとても分かりやすくて、つまりは口説き曲。「太陽が凍り付いても 僕と君だけよ 消えないで」ってすげぇなぁ。

2.JOY ★★★

潤いのあるアレンジが爽やかなミディアムナンバー。コンパクトな曲構成も良く出来ていると思います。
女性への憧れを歌った稲葉さんの歌詞ですが、これには逆にリスナーが母性本能をくすぐられるのではないでしょうか。

(記:2007.5.10)










13thシングル
『裸足の女神』
(1993.6.2)



洋風な楽曲がメインのシングルが続きます。3ヶ月ぶりの13thシングル。前作に続いて、この曲も年間チャートでベスト5に入る大ヒットとなります。今作も表題曲はオリジナルアルバムに収録される機会を逃し、『Pleasure』が出るまではシングルオンリーの存在でした。

1.裸足の女神 ★★★

大陸的なBON JOVI風ロック。なんとも爽やかで、ライブでも定番の1曲となっています。特に、ラストで演奏されることも多いです。
歌詞は、B’zの楽曲ではよくある女性賛歌。稲葉さんにこんなふうに言われたら…、たまりませんね。

2.KARA・KARA ★★★

サビのメロディーのインパクト勝負な1曲。派手なホーンアレンジも、良いほうに作用しています。単純ゆえに飽きやすさのある楽曲ですが、たまに聴くと爽快です。
歌詞は、ストレートな性的欲求を歌ったもの。










7thアルバム
『The 7th Blues』
(1994.3.2)












15thシングル
『MOTEL』
(1994.11.21)



大作『The 7th Blues』を引っさげてのライブツアー『B’z LIVE-GYM ’94 The 9th Blues』も後半戦となった中でリリースされたシングル。楽曲はやはり『The 7th Blues』の流れを汲んでいます。

1.MOTEL ★★★★☆

イントロのアコギからしてほろ苦さの漂う名演。個人的には、B’zのシングル曲の中でも非常に好きなナンバーのひとつ。ブルージーなロッカバラードで、『The 7th Blues』~『The 9th Blues』という流れでとどまることなく深い部分へと進んでいったこの数年のB’zの活動を総括するような楽曲です。
聴き所はいくつもありますが、一番はアウトロのエンドロールが流れるかのようなコーラスと、この1・2年で格段に渋みを増した稲葉さんのシャウトとの絡みでしょう。

2.hole in my heart ★★★☆

交際する男女間の性格の齟齬を歌ったロックンロール。サビにはB’zらしくブラスも被さりますが、あまりそれが前に出てきている印象はなく、もどかしさと先には希望はないという歌詞も含めて、やはり暗さを感じてしまうのがこの時期ならでは。

(記:2008.5.4)










16thシングル
『ねがい』
(1995.5.31)



自身のルーツに立ち返り、やりたい放題にやった1994年のB’z。一部ファンからは「暗黒時代」とも呼ばれたこの時期を経て、再びB’zは転換点に立つこととなります。デビュー以来の制作集団であった「B・U・M」を解体し、「B’zは二人である」という原点に戻り、稲葉さん自身もアレンジに名を連ねるようになりました。
楽曲はそれまでのブルース/ハードロック路線から、ポップ寄りに引き戻され、より万人向けなものへと形を変えてきました。こうして1995年のB’zはセールス的にも絶頂期を迎えます。

1.ねがい ★★★

ピアノでスタートするイントロからして新鮮なこの曲は、ジャズの要素を取り入れた躍動感あるロックナンバー。「最終電車に揺られて つかまった手すりがベトつく~♪」と短編小説のような書き出しでリスナーを引き込むストーリーテリングや、「願いよかなえ いつの日か」という力強いサビのフレーズは、歌詞職人・稲葉の本領発揮といったところでしょう。「赤から黄色 白から黒へ」という、絶対に変化しない色(赤の絵の具に何色を混ぜても黄色にはならない。白から黒もまた然り。)に目を付けたこの部分も見事。
もちろんヴォーカルのほうも、そのパワフルさは、1994年の活動があったからこそのものでしょう。しっかりと、『The 7th Blues』を消化しての楽曲になっています。

2.YOU & I ★★★☆

この時期のシングルの2nd-beatは傑作・佳作揃いですが、この曲もファンには人気があります。
『OFF THE LOCK』あたりからの手馴れた歌謡ロックサウンドですが、こういった作風も久々ですね。そして、やはりこの曲を語る上で外せないのはその歌詞でしょう。「嫌いだ」と歌い出すラブソングはなかなかありません。それでいて「好きだ好きだ」と連呼する数多のラブソングよりも、よっぽど説得力がありますからね。

(記:2008.5.4)










8thアルバム
『LOOSE』
(1995.11.22)



制作集団「B・U・M」解体後のB’zは、ブルース・HR路線を貫いた1994年の活動で蓄えた重量感は芯にしながら、それ以前のポップな作風も取り入れ、一回りパワーアップしたバランスの良いサウンドを提示するに至りました。
この1995年の『ねがい』・『love me, I love you』・『LOVE PHANTOM』という3シングルは、まさにそうした新生B’zサウンドを象徴するに充分なナンバーで、従来のファン、新規ファン、『The 7th Blues』で離れていたファンと、その全てに訴えかける魅力を備えていたように思います。こうして、楽曲の充実ぶりは過去最高と言えるほどになり、セールス面でもミリオンは当たり前、『LOVE PHANTOM』は当時歴代最高の初動95万枚を売り上げるなど絶頂期を迎えた1995年のB’z。この年11月に発表された8thアルバムが今作『LOOSE』です。

3枚のシングルナンバーと同様、アルバム曲のほうも、HRとしての要素もポップスとしての要素も広く取り入れてスケールアップした充実のB’zサウンドが楽しめます。
ハワイでレコーディングしたという『消えない虹』・『drive to MY WORLD』なんかは、なるほど開放的な空気感が曲にも反映されています。また、『ねがい』をライブアレンジで収録したり、過去の代表曲『BAD COMMUNICATION』のアコースティックアレンジ(こちらは前年のツアー『The 9th Blues』で披露されていたバージョンが原型)を収録してみたり、ガチガチに縛られることなく、自由な雰囲気で制作された作品だということが伝わってきますね。これも、今作のテーマに掲げた「B’zは二人である」というメリットが発揮されたということでしょう。チープなお遊び曲『BIG』なんていうの曲もあったり。本当にバラエティ豊かです。

B’zのオリジルアルバムでは歴代最高となる300万枚を超えるヒットとなったわけですが、それだけ売れたのも納得できるパワーを兼ね備えた作品です。
ひとつ難点を言うなら、アルバム後半の流れが少し弱いかな。曲が悪いっていうんじゃなくて、前半~中盤のあまりの充実ぶりで、通して聴いていると、後半がややインパクト薄いように感じてしまいます。『love me, I love you』と『LOVE PHANTOM』を離れた位置に置けば、また違った感触だったと思うんですけどね。

1.spirit loose (評価なし)

松本さんのギターと稲葉さんのフェイクによるアドリブ的な序曲。生々しい質感にゾクッとしますね。思わず固唾を飲んでしまいます。ラストのシャウトは超絶レベル。そして、スムーズな流れで次曲『ザ・ルーズ』へと入っていきます。おっ、こういう流れって、『RISKY』の再来じゃん。

2.ザ・ルーズ ★★★☆

派手なホーンのHRサウンドに乗せて、稲葉さんのシャウトに近いヴォーカルが暴れまくるハイテンポなナンバー。
歌詞は、就職活動期を迎える大学生のボヤキ。家庭教師のアルバイトの模様の描写は、稲葉さん自身の経験がモチーフになっているのでしょうか。
実質オープニングのこの曲、過去最高のテンションでのアルバムの幕開けです。そして、このテンションがこの曲以降も中盤にかけてずっと下がらないのが良いですね。冒頭だけやたら派手で頭デッカチという印象のアルバムもよくありますが、今作はそんな心配とは無縁でした。

3.ねがい (''BUZZ!!'' STYLE) ★★★☆

初のスタジアムツアーとなった『B’z LIVE-GYM Pleasure’95 BUZZ!!』で披露されたバージョンでの収録。
原曲のジャジーなテイストは薄くなり、かわってギターリフが強く主張するようになるなどHR色が濃くなっています。曲の終わり方もライブアレンジということで、原曲のフェイドアウトとは違ってビシッとキメています。個人的には、シングルのほうよりも、こっちのバージョンのほうが断然好きですねー。

4.夢見が丘 ★★★★★

曲も歌詞も、映画のワンシーンかのような美しさと儚さに富んでいます。B’zの特徴のひとつである歌謡曲的なメロディーラインの要素と、幻想的なストリングスアレンジ、主張する面と脇役に徹する面とを兼ね備えた松本孝弘のギター、そして無常を歌い続ける稲葉浩志のヴォーカル。これらが高次元で融合した傑作。コンパクトな構成でポップスとして機能しながらも豊かなスケールを持った楽曲に仕上がっているのが、いかにもこの時期のB'zらしい。前作『The 7th Blues』収録の『赤い河』の進化・発展型ともいえるかもしれません。
香港の人気投票では1位となり、現地で発売された『B'z The Best ''Treasure''』には、ボーナス・トラックとしてこの曲が収録されています。

5.BAD COMMUNICATION (000-18) ★★★★

彼らの初期の代表作『BAD COMMUNICATION』のリアレンジ。あの、打ち込みバリバリのディスコ・ナンバーが、なんと驚きのアコースティック・アレンジに変貌を遂げているのです。『BAD COMMUNICATION』は、今作の前後を問わず形を変えたバージョンが様々披露されていますが、そのどれもが原曲の枠を崩していないものであるのに比べて、今作でのアレンジはまさに「バッコミ番外編」といった趣。前年のツアー『The 9th Blues』で披露されていたバージョンが原型になっています。シングルのカップリングに収録する予定だったみたいだけど、「アルバムに入れてみても面白いのでは?」という誰かからの提案で、ここに収録されることになったのだとか。この判断も面白いし、正解だと思いますね。演奏もすごく良いです。鳥肌モノ。聴けっ!!

6.消えない虹 ★★★★

ピアノとストリングスによるバラード。ギターは控えています。ハワイで作られたという逸品。女性人気が高く、バラードベスト『The Ballads ~Love & B’z~』にも収録されました。そのメロディーの良さとアレンジの美しさはもちろんのこと、ハイトーンヴォイスでシャウトを連発する普段とはうってかわって、低音域を中心に丁寧に歌い上げる稲葉さんの歌声も、人気の要因でしょうか。ビデオ/DVD『BUZZ!! THE MOVIE』のラストでは、この曲の英語バージョンを聴くことができます。

7.love me, I love you (with G Bass) ★★★★

前作のシングル『ねがい』から僅か1ヶ月あまりで届けられた17thシングル。3分20秒という短めの演奏時間に、B’zのポップセンスがギュッと凝縮された傑作です。ここまで底抜けに明るくポップな楽曲は、本当に久しぶり。一聴して耳を奪われるようなキャッチーでダンサブルな1曲です。イントロとシメの部分に同じフレーズが使われているのもいいですね。
歌詞に目を移しても、『ねがい』で見せたようなシリアスな色合いは今作では薄め。軽いタッチでありながら、ズバリと核心をついてくるハッパかけソングに仕上がっています。「たまにゃ海も山も人も褒めろよぉ」…このフレーズは凄すぎ。これはちょっと他の人には逆立ちしても出てきそうにないですね。
また、札幌で撮影されたというPVでは、稲葉さんのスーツ姿も見ることができます。オリコンチャートでは2週連続1位を獲得。今作では、シングルでは打ち込みだったベースが明石さんによる生演奏に差し替えられているほか、一部でコーラスが追加されています。

8.LOVE PHANTOM ★★★★

18thシングル。テレビ朝日ドラマ『Xファイル(第1シーズン)』主題化。アルバム先行シングルとして10月11日にリリースされると、当時歴代最高の初動95万枚を記録。その後もセールスを伸ばし、『愛のままにわがままに~』に次いで、B’z史上2番目のヒットシングルとなりました。
この曲が初めて披露されたのは、『B’z LIVE-GYM Pleasure’95 BUZZ!!』。吸血鬼に扮した稲葉さんが、間奏中に高さ数十メートルのセットの上に移動し、曲の終わりと共に地上へダイブ。飛び降りた瞬間に会場は暗転。しばしの悲鳴の中、次曲『ねがい』で稲葉さんがマラカスを振りながらオチャメに登場してくるという、非常に凝った演出がなされました(笑)。一連の模様は、ビデオ/DVD『BUZZ!! THE MOVIE』で見ることが出来ます。
それにしても、1分20秒に及ぶオーケストラのイントロ。そして、神秘的なピアノ、「You must know what I am」というコーラス(呟き)に続いて、切り裂くような松本さんのギター、雪崩のような稲葉さんのシャウトが一気に滑り込んでくるスピード感は、B’zの代表曲と呼ぶに恥じない完成度。最後の最後まで、息つく暇をもたせません。この曲で、B’zはひとつの頂点を極めたかなという感は確かにあります。メロディーだけとってみれば、「ど演歌」だったりするんですけどね(笑)。「いらな~い、なにも~」ってゆっくり歌ってみると、いかにこの曲が日本人的なメロディーで出来ているかがわかります。小林幸子が歌ったっていいのよ。アレンジ面での完成度の高さに反比例して(?)、歌詞のほうは「二人でひとつになれちゃうことを~」の「なれちゃう」なんていう言い回しなんかが、別冊角川でも酷評されていたように少し気になるところではありますが…。全体的には、さすがに聞き飽きてきたので、個人的にはそろそろ再録音を希望する曲だったりします。

9.敵がいなけりゃ ★★★

これは、時期的には『MOTEL』の頃に作られた楽曲で、今作中では例外的にB・U・Mのメンバーによって制作されています。『BAD COMMUNICATION (000-18)』もそうだけど、こうした楽曲がポーンと入ってるのも、ある意味今作がルールに縛られずに作られたアルバムだということの表れでもありますね。
楽曲は、どこかセルフパロディー的な匂いもするブラスロック。過去のナンバーの焼き直しのようにも聴こえてしまいますが…。ただ、マーチ風のドラムというのは新たな試みですね。歌詞は、『Out Of Control』を彷彿とさせるジャーナリズムへの反発&皮肉。

10.砂の花びら ★★★

タイトルだけだと抽象的でなんじゃらほいといった感じですが、歌詞を見てみればお馴染みのダメ男ソング。そうか…『砂の花びら』って、そういうことか。しっかし、あまりに情けなさすぎて、泣きたくなりますね(笑)。現実の描写はあまり出てくるわけではなく(「宴会は続くのです」のくだりも比喩表現でしょう)、ひたすら嘆き節と懇願で構成されている歌詞はめずらしいといえばめずらしく、それがこうしたカラッとしたサウンドに乗っているのが相性マル。B’zのレパートリーの中でも、独特な雰囲気を持ったナンバー。

11.キレイな愛じゃなくても ★★★☆

ダメ男に続いて、これまたお馴染みのテーマである不倫ソング。ストリングスの入ったロック・バラードで、AEROSMITHがよくやっていそうな楽曲。『ANGEL』みたいなね。サウンドのほうは磐石です。
歌詞は、もう後戻りすることも出来ないほど膨らんでいく相手への想いを、本能的な感情と哲学的なフレーズとを組み合わせて構築させた稲葉ワールド全開と言っていい仕上がりに。「空を舞う 鳥を撃たないで」というフレーズが胸にきます。終盤は、「キレイな愛は綺麗なの?」と自問。「どんなことをしても奪い取りたいと思う愛のほうが、〔キレイな愛〕よりもその思いは強く美しいのではないか」という意でしょう。こんなに不倫を突っ込んで描かれるとね、そりゃアルバム前半にはこの曲は置けませんね(笑)。

12.BIG ★★★

ラス前に置かれた演奏時間3分に満たない小品。アコースティック・ギターと打ち込みでまとめています。明日への決意を、こうしたシンプルなサウンドに乗せて高らかに宣言するのが面白いですね。アルバムの流れとして必要な曲。

13.drive to MY WORLD ★★★

アルバム中最もHR寄りのナンバー。ラストにバラードではなく、こうした重い楽曲を持ってくるというのも良いですね。「セブンイレブン」なんていう身近で現実的な単語から序盤の描写はスタートするわけですが、最後には「ちっちゃくまとまる世界にバイバイ」と壮大&前向きに。ロック・バンドB’zの決意表明のような1曲です。

14.(Secret Track) (評価なし)

ブックレット等に記載されていない1分ほどのシークレット・トラック。エレキ・ギターとフット・ステップのみによる演奏。オマケですね。焼肉を食べた後の口直しの飴のようなもの。

総合 ★★★★

(記:2008.8.13)


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