って、意表を付かれた1曲目でいきなりレビューも先走ってしまいましたが、まずは背景を紹介しておきましょう。 マッキーの7枚目のオリジナルアルバム。同年7月25日にはMAKIHARA名義で全曲英詩のアルバム『Ver 1.0E LOVE LETTER FROM THE DIGITAL COWBOY』が出ています。企画色が強い『Ver 1.0E~』は個人的にはオリジナルアルバムとしてカウントしたくないですが、公式でも6thアルバムとして数えられているので、今作『UNDERWEAR』は7作目となります。 で、1995年にリリースがなかった反動からか、1996年はリリースラッシュに沸いたマッキー、アルバムとしては『Ver 1.0E~』は別として前作『PHARMACY』からぴったり2年ぶりのこの作品でも、クオリティーの高さは相変わらず。商業的にも初登場2位、75.8万枚と健在をアピールしました。 実はこの作品の制作時には引退も考えて、金字塔となる作品を目指したというマッキー。その成果(?)あってか、まさにここまでの彼の作品の集大成でありながら、また別の段階に上ったようなアルバムに仕上がっています。
2曲目の『PENGUIN』が、このアルバムの中でもかなり好きな曲。ファンからの人気もひそかに高いようです。南極で君と僕とペンギン…。悪くないですね(笑)。 『どうしようもない僕に天使が降りてきた』は、シングル曲として知名度はなかなかでしょうか。ストーリー仕立ての歌詞もいいし、どこまでもキャッチーなメロディーもマル。サビで一瞬裏声に転じるのも良いですね。 続く『君の自転車』も盤石感ある仕上がり。こちらも歌詞にストーリー性があり、しかも恋人同士のささいな喧嘩というネタも前曲と同じですが、焦点がまた別のところに当たっています。可愛らしいですね。 『うん』は、バラードナンバー。これは彼の声ならではの味ですね。うん、良い歌です。 アルバムとしての流れの良さもお見事で、前半は特に素晴らしい完成度で進みます。 ちょっと中盤に落ち着きすぎちゃった感があるのが唯一と言ってもいいほどの難点なんですけどね。 コーラスが映える『I need you』、1曲目に続いてロックテイストを取り入れた『revenge』、打ち込みサウンドの中で自らを狼に例えた詞が歌われる『オオカミ少年』、不倫をテーマにした歌詞を美メロで歌い上げる『THE END OF THE WORLD』などなど、歌詞も曲調も様々に羽を伸ばしながらも、彼らしい納得のレベルに仕上げています。 温かみのあるキーボードリフが印象的な『PAIN』を経て、目に映るシーンと心情を重ね合わせながら描き上げた歌詞と、せつない歌声のコントラスト、鮮やかなアレンジメントが憎らしいほどに良く出来ている名曲『LOVE LETTER』から、まだ見ぬ大切な人へ今の僕を伝える応援歌『まだ見ぬ君へ』へ。 明るい曲で気持ちよく終わりますね。 本当に良く出来た楽曲が揃っている一枚。アルバム全体としてのファンからの人気も高いものがあります。 『UNDERWEAR』というタイトルは、うわべの服を取り払った本質の「曲」と「詞」と「うた」で勝負した今作を聴いてほしいという想いからでしょうか。
1. 男はつらいっすねぇ
★★★ 2. PENGUIN
★★★★ 3. どうしようもない僕に天使が降りてきた
★★★☆ 4. 君の自転車
★★★ 5. うん
★★★☆ 6. I need you. (ALBUM VERSION)
★★★☆ 7. revenge
★★☆ 8. オオカミ少年
★★☆ 9. THE END OF THE WORLD
★★★☆ 10. PAIN
★★★ 11. LOVE LETTER
★★★★☆ 12. まだ見ぬ君へ
★★★
ベストアルバム 『"SMILING II" ~THE BEST OF NORIYUKI MAKIHARA~』 (1997.9.25)
前作から約4ヵ月でリリースされたベスト第2弾。今回は、非シングルの楽曲の中から、彼の最も得意とするところであるバラード・ミディアムを中心に選曲されています。 曲調をある程度絞っていることで、同じようなタイプの楽曲の連続が退屈さをもたらすのではないかとも思いましたが、実際聴いてみてほとんどダレることはありませんでした。これだけ聞かせてくれるというのは、彼の作る楽曲ひとつひとつの質の高さがなせる業だなと実感。個人的には前作以上に楽しめましたね。 しかし、今作は初心者に薦めるべきものではないなとも思います。入り口としては前作、その後は各オリジナルアルバムを聴くほうが彼の楽曲を幅広く楽しめるはず。今回のベストは、ある程度彼の楽曲を聴き込んだファンが総集編として楽しむ一枚かも。 シングル『雪に願いを』のカップリングだった『Red Nose Reindeer』は、今回がアルバム初収録。
1.北風 (ORIGINAL VERSION)
★★★☆ 2.君に会いに行く
★★★ 3.EACH OTHER
★★★★ 4.花水木
★★★☆ 5.まだ見ぬ君へ
★★★☆ 6.てっぺんまでもうすぐ
★★★ 7.東京DAYS
★★★☆ 8.DAY AND NIGHT
★★★ 9.THE END OF THE WORLD
★★★☆ 10.Red Nose Reindeer
★★☆ 11.Witch Hazel
★★★★ 12.LOVE LETTER
★★★★☆ 13.今年の冬
★★★☆ 14.君は僕の宝物
★★★☆
総合 ★★★★
(記:2007.3.8)
18thシングル 『モンタージュ』 (1997.10.29)
1.モンタージュ
★★★☆ 2.僕のものになればいいのに
★★
アルバム『Such a Lovely Place』の先行シングル。『モンタージュ』は、「This is マキハラ」と言えるようなキャッチーで癖のないポップナンバー。ちょっと胸をさすような切なさを滲ませたあたりが巧いです。 c/w『僕のものになればいいのに』は暗くてイマイチかなぁ。 (記:2008.6.28)
8thアルバム 『Such a Lovely Place』 (1997.11.27)
1.うたたね
★★★★ 2.Fan Club Song
★★★ 3.Cleaning Man
★★★ 4.モンタージュ
★★★☆ 5.手をつないで帰ろ
★★★☆ 6.素直 ~Album Version~
★★★☆ 7.情熱 ~Album Version~
★★★ 8.印度式
★★☆ 9.僕のものになればいいのに
★★ 10.足音
★★★★ 11.Such a Lovely Place
★★★★☆
総合 ★★★★☆
前作『UNDERWEAR』も良作でしたが、今回はそれを上回る傑作。螺旋階段をまた一回り上ったような、そんな感のある一枚。彼のひとつの到達点といえるかもしれません。1曲1曲に説得力があり、彼のこれまでの経験が滲み出ているような、説得力のある一枚。 ロックナンバーからスタートした前作とはうって変わって、穏やかでうっとりとしてしまう『うたたね』から緩やかにアルバムは幕を開けます。ここから3曲は、これぞマッキーといえるようなポップセンスの溢れる楽曲が連発されます。この心地良さは、どれも円熟の技といった感じ。特に、先行シングルの『モンタージュ』は、いつもの彼のセンを狙ってサクッと作った感もありますが、それでいて水準以上の楽曲を作れるというのが、もう職人の域というべきか。耳馴染みの良いフレーズの中に漂う切なさがとても痛い。大阪弁を使用し、学生時代の恋愛の一風景を描いた『手をつないで帰ろ』も、決してわざとらしくなく、自然な仕上がり。そして、『素直』。メロディーメーカーとして、シンガーソングライターとして原点に立ち返ったような楽曲が、アルバムの中心部に据えられています。この曲のシングルリリースというのも、ひとつの点に達したからこそ出来たことだと個人的には思います。ここでは「Album Version」として収録されていますが、もっとシンプルなシングルバージョンも必聴。 ここから終盤にかけての展開が面白い。クラブサウンドの『情熱』で驚かされるのですが、次の『印度式』が更に凄い。インド風+テクノサウンドで度肝を抜かれます。歌詞も、リスナーを馬鹿にしているんじゃないかというほど、かつてない領域まで足を踏み入れています(笑)。続いてR&Bの『僕のものになればいいのに』。この曲は暗くてあまり好きじゃないのですが、新境地と呼べるナンバーでしょう。ここまでの意外性のある3曲の流れは、前半2~4曲目で見せた円熟の良質ポップスの流れとは対をなすかのような趣。質的にはここで少し落ちるかなという感想もあるんだけど、ここでこの3曲を続けたのは、ラスト2曲を際立たせるためには良い流れだと思います。本当に。構成の面でも、このアルバムは高く評価したいなぁ。 ラス前の『足音』は、彼らしい温かいミディアムナンバー。「消えそうになっていても~♪」からの力強い展開には思わず涙。そして、最後に壮大な『Such a Lovely Place』。ここでまた涙。なんて良い楽曲なのだろう。ここまでの流れを経て最後に迎えたこの曲は、すべてを包み込むような魅力に溢れています。「ここにはちゃんと愛がある」…彼は遂に、「Lovely Place」と呼べる場所を見つけたのではないでしょうか。深みのある作品。 (記:2007.10.21)
19thシングル 『足音』 (1998.1.21)
1.足音
★★★★
アルバム『Such a Lovely Place』からのシングルカット。温かみの感じられるミディアム・ナンバー。中盤以降のドラマティックな盛り上がりが感動的です。 ところでこのシングル、シングルカットでカップリング曲はなし、バッキングトラックがついただけで816円っていうのはちょっと高いですね。 (記:2008.6.28)
ベストアルバム 『"SMILING III" ~THE BEST OF NORIYUKI MAKIHARA~』 (1998.5.10)
シリーズ第3弾となる今回は、前2作に収録されなかったアルバム楽曲の中からポップなところをセレクト。初期の楽曲はアレンジを変えたNEW VERSIONとして収録されています。また、それらに加えて『SECRET HEAVEN』・『COWBOY』の2シングルを始めとした英語詞の楽曲、更にはワーナー時代の最後のシングルであった『まだ生きてるよ』も収録されています。編集盤的意味合いの強い一枚で、前作以上にファンアイテムと言えるでしょう。これまで彼の楽曲を楽しんできたファンなら、たっぷりと楽しめるベスト盤。前2作は新曲がなかったのに対して、今作は新音源てんこ盛りですからね。 1stアルバムに収録されていた『CLOSE TO YOU』・『DANCING IN THE RAIN』(原題は『RAIN DANCE MUSIC』の2曲は、英語詞でのリメイクで収録。 『80km/hの気持ち』は、オリジナルとは大幅に印象が変わっていますが、こちらも良いですね。その他、オリジナルそのままで収録されている楽曲も、『DARLING』・『雷が鳴る前に』・『PENGUIN』など、良いところを選んできています。『まだ生きてるよ』は、アルバム初収録ですが、シングル盤の打ち込みに対して、今回は外人バンドによる生演奏の「’98 NEW VERSION」となっており、厳密なシングルバージョンはこの時点ではまだアルバム未収録です。(現在ではワーナーから出たシングルコレクション『10.Y.O』のみに収録。) こういった編集盤でも『恋はめんどくさい』・『困っちゃうんだよなぁ。』というテクノの飛び道具的な楽曲が収録されるのは、彼本人の意向なんでしょうか?(笑)。
1.CLOSE TO YOU (ENGLISH VERSION)
★★★ 2.DARLING
★★★ 3.くもりガラスの夏 (’98 NEW VERSION)
★★★☆ 4.SECRET HEAVEN (SINGLE VERSION)
★★★☆ 5.80km/hの気持ち (’98 NEW VERSION)
★★★☆ 6.雷が鳴る前に
★★★☆ 7.COWBOY (SINGLE VERSION)
★★★ 8.恋はめんどくさい? (’98 NEW VERSION)
★★☆ 9.LIMIT’S OF LOVE
★★★ 10.困っちゃうんだよなぁ。 (’98 NEW VERSION)
★★ 11.DANCING IN THE RAIN (ENGLISH VERSION)
★★★ 12.HOME WORK
★★★ 13.I’M NOT GONNA FALL IN LOVE
★★☆ 14.まだ生きてるよ (’98 NEW VERSION)
★★★ 15.PENGUIN
★★★★
総合 ★★★☆
(記:2007.3.9)
20thシングル 『HAPPY DANCE』 (1998.7.23)
1.HAPPY DANCE
★★★☆ 2.BLIND
★★★
ラテン・アレンジを施したダンス・ナンバー。アルバム『Such a Lovely Place』に収録されているものとは、アレンジと一部の歌詞が異なります。c/w『BLIND』は、安心して聴けるミディアム・ナンバー。 (記:2008.6.29)