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Mr.Children(3)
作品レビュー…の続き
13thアルバム
『HOME』
(2007.3.14)
前作から1年半ぶりの13thアルバム。2006年は前半こそ表立った活動はなかったものの、7月にはシングル『箒星』をリリースすると、同月には「ap bank fes’06」に出演。8月には桑田佳祐の呼びかけによる「THE 無人島 Fes.2006」にも参加し、9月にはthe pillowsとの対バンツアー、11月にシングル『しるし』をリリースと、怒涛の後半戦を送りました。2007年は1月に40万枚限定生産のシングル『フェイク』をリリース。そして、今作発表の運びとなったわけです。
直近のシングル『フェイク』で見せた攻撃的な姿勢は影を潜め、今作では徹底して、「やさしいアルバム」を目指しています。バンド感の薄さは特筆すべき点で、楽器隊の主張はすっかり影を潜め、じっくりと「歌」を聴かせる楽曲が並んでいます。歌詞は「背伸びせず等身大の自分で。しかし、ポジティヴにいこう」というテーマが貫かれており、アルバム全体としてのまとまり具合は、過去最高です。それゆえ、起伏に乏しい感もあり、通して聴くと退屈な印象を抱く人もいるかもしれません。もっと波乗りのような不安定さがあってもいいと思いますが、この安定感こそが今作の特長だと思って聴くのもいいかも。白眉は『Another Story』。
1.叫び 祈り
(評価なし)
不穏なインスト。このサウンドが、『ポケット カスタネット』の後半のアレンジへと繋がるのかもしれません。
2.Wake me up!
★★★☆
ファンク風味のアレンジを施したブラスポップ。いい意味で聴き手を裏切るメロディー展開をみせてくれます。高揚感もなかなかで、実質1曲目の役割をしっかりと果たしていますね。単体で聴いても好印象。
3.彩り
★★★
ミスチルらしい穏やかなメロディーで温もりのあるミディアムナンバー。ピアノの音色が印象的。今作のリリース当時に音楽番組でもしばしば披露されていた楽曲で、これをリードトラックにするところに、今作の作風が象徴されていると言ってもいいでしょう。
ただ、作曲行為を「単純作業」と表現してしまうところも含め、僕としては、それほど好印象な曲ではないのが現状。アルバムの中盤にひっそりとおさまっていてほしいタイプの曲です。
4.箒星
★★★☆
28thシングル。2006年7月5日リリース。ギターを押し出したナンバーは(ギターに限らずバンドサウンド全般に言えますが)、今作では少ないので、貴重な存在。アルバムの流れにも溶け込んでいます。
音階を自在に乱高下する躍動感たっぷりのサビメロが、ポップスバンド・Mr.Childrenの凄味を感じさせる1曲。
5.Another Story
★★★★☆
交際しだしてからしばし期間の経過した男女の微妙な関係を描き出したミディアムナンバー。
サウンドは、『クラスメイト』(『Atomic Heart』収録)の進化形と捉えるべきででしょうか。古くは『ため息の日曜日』・『BLUE』・『マーマレッド・キッス』、その後『クラスメイト』・『幸せのカテゴリー』・『Heavenly Kiss』・『渇いたkiss』と続いてきた、ミスチル・ミディアムラブソングの一連の流れに名を連ねることになるであろう1曲。同時に、独立した楽曲としても高く評価できます。
淡々とした曲調と歌詞のマッチング度は最高レベル。次第に音数を増していきながらも決してこの淡々とした感じを破壊しないアレンジメントも見事。間奏のサックスも泣かせます。「バスは今通過中」でファルセットに転じるメロディーラインの美しさもさすが。
6.PIANO MAN
★★★
ジャジーなナンバー。初挑戦のジャンルであることを忘れさせるほど手馴れた感があります。ヴォーカルの奔放さは今作随一。
「無限大にある きっと可能性は果てしない」、「遠慮はいらない 思うがままに生きればいい」。こうしたメッセージがどこか投げやりに聴こえてきますが、それがこの曲の狙いなのでしょう。
7.もっと
★★★
アコースティックな響きで、じっくりと桜井さんの「歌」を聴かせる楽曲。『ラララ』あたりとポジション的には近いのでしょう。
「どんな理不尽もコメディーに見えてくるまで」の歌詞が良いですね。こういうふうに思えるようになりたいものです。
8.やわらかい風
★★★
似たようなタイプの楽曲が続きますね。続けて聴いてくると、大抵この曲あたりで眠くなります(笑)。サックス、トランペット、ストリングスが楽曲を味付けしていますが、この曲も中心はやはり桜井さんの「歌」。別れていった大切な人に向けて、温かく想いを馳せています。
ちょっとこの曲は、位置で損をしてるかなぁ。アルバム前半に配置したり、シングルのカップリングに収録したりしていれば、もっと注目されていたかもしれません。
9.フェイク
★★★
30thシングル。2007年1月24日リリース。前述の通り、シングルは40万枚限定、『フェイク』1曲のみ収録での発売となりました。東宝系映画『どろろ』主題歌。
今作ではほとんど唯一の「毒」を感じさせるナンバーで、アルバムの流れからは浮いていますが、同時にアクセントとしても機能しているように思えます。
パン(音の定位)が変わっているおり、シングルバージョンではこの曲の終了後にシークレットトラックが収録されていることから(トラックは変わらない)、今作収録のトラックは厳密にはアルバム・バージョン。
ここから『SUNRISE』まで、やや打ち込み色の強い楽曲が3曲続きます。それぞれの楽曲の印象はかなり異なりますが。
10.ポケット カスタネット
★★★
最初はエレクトロニカ。奇妙な響きで進んでいきます。これが途中から意外な展開をみせます。中盤過ぎにまさかの壮大化&疾走化。独特なアレンジメントを施したナンバー。このアレンジを皆さんはどう聴くでしょうか。僕は意外性に評価を与える反面、打ち込み主体のアレンジには難色を感じ、功罪相半ばするといった印象。
「つないだ手が語りかける 声になる前の優しい言葉」というフレーズは良いですね。これは『彩り』の歌詞よりも素直でさりげなくて温かい。ただ、2番以降の「お天気がすぐれない日は~」の部分はなんだか説教くさいなぁ。惜しい。
タイトルは童謡「ポケットの中にはビスケットがひとつ~♪」からでしょうか。曲題だけで尻尾を掴ませない感じが、この曲の神秘性とマッチしていると思います。
11.SUNRISE
★★★☆
希望も不安も一緒くたになった未来へなんとかなんとか進もうともがき続ける感じ、モヤモヤ感と胸の高鳴り。そんな歌詞にピッタリのアレンジメントが見事。身震いしてしまいます。
サビメロにもう一捻りから二捻りあれば最高だったのにな、と思います。序盤からサビへの展開は緊張感あっただけに、サビはなんだか間の抜けた印象を受けてしまうんですよね…(笑)。
12.しるし
★★★★
29thシングル。2006年11月15日リリース。日本テレビ系ドラマ『14才の母』主題化。リリースから2ヶ月後の1月15日に再び1位に返り咲くというロングヒットになりました。
ミスチルのシングル史上最長の7分12秒という時間をかけて聴かせてくれる王道バラード。でも、体感時間としては、それほど長くは聴こえませんね。
この曲のどこがどう王道かということを並べてもあまり意味がないので、ここでは割愛。もはや書くことはないです(笑)。あ、ひとつ言わせてもらうなら、サビを「ダーリンダーリン」と安直にまとめてしまったのは、僕の趣味ではないなぁ。これはこれでよしとする向きも当然あるとは思いますが。まぁ、好みの問題。楽曲の完成度は高いです。
13.通り雨
★★★
大バラードの『しるし』とラストの『あんまり覚えてないや』の間に挟まれ、聴き流されがちな1曲ですが、楽器隊の溌剌とした演奏は、今作の他の楽曲では聴くことの出来なかったもの。ラス前まできて、ようやくMr.Childrenのバンド感を味わったような気も。小粒だが聴き逃せない1曲。
14.あんまり覚えてないや
★★★★
フォーキーなラストナンバー。サウンド的にも、歌詞的にも、今作のテーマが集約されていると言えるかもしれません。1番・2番・3番と進む中での歌詞の構成は、またまた桜井和寿の落研ぶりが発揮されたと言っていいでしょう(笑)。
総合 ★★★☆
(記:2009.2.2)
14thアルバム(カップリングコレクションアルバム)
『B-SIDE』
(2007.5.10)
31stシングル
『旅立ちの唄』
(2007.10.31)
前作『フェイク』から約9ヵ月ぶりの新曲は、話題の映画『恋空』の主題歌。王道と言ってもよいミディアムバラードです。2曲目・3曲目には、ツアーの合間に書き下ろされた新曲と、既発表曲のライブ音源をそれぞれ収録。
僕としては、「やっぱりMr.Childrenは横綱クラスだなぁ」と思った反面、「またバラードかよ」という思いがあったのも事実。王道路線の『しるし』の後に、冒険した『フェイク』。そして再び王道の今作。こう、ただただ大まかに2つ路線が繰り返されていくという流れは、あまり歓迎できません。そういう意味では、次なる新曲が非常に気になるところです。
1.旅立ちの唄
★★★★
映画『恋空』主題歌。王道ミディアムバラードですが、決して上へ上へと盛り上げるだけでなく、ちょっとした「引き」の要素が入っており、そこがこの曲の温かさや穏やかさといった印象をつくり出しています。
ツアーのアンコールで先行披露された楽曲で、この曲のためのPVは製作されておらず、ランキング等の番組では、ライブ映像や『恋空』のシーンを組み合わせた映像が使用されています。
2.羊、吠える
★★★☆
ツアーの合間を縫って製作されたという楽曲。小粒ながら味わいのあるロックチューン。「いいこと「49」 嫌なこと「51」の比率」という歌詞が彼ららしい(笑)。
3.いつでも微笑みを
from HOME TOUR 2007.06.15 NAGOYA
★★★
『IT’S A WONDERFUL WORLD』収録曲のライブ音源。ブラスが特徴的なライブアレンジと、原曲とは一部異なる歌詞が楽しめます。
(記:2008.1.11)
32ndシングル
『GIFT』
(2008.7.30)
前作『旅立ちの唄』以来、約9ヶ月ぶりとなったニュー・シングルは、3ヶ月連続リリースの第1弾。
表題曲『GIFT』は、NHK北京オリンピックのテーマソングとして使用されました。
1.GIFT
★★★
いかにもミスチル的な、スケールの大きなバラード。1番からガンガン盛り上がり、桜井さんもかつてないほど血管が切れそうに熱唱しています(笑)。オリンピックという大舞台に、この壮大さが良く似合います。映画・ドラマのクライマックスで流れても違和感は全くなさそう。曲だけ単体で聴くより、なんらかの映像やシチュエーションを伴って聴く方が、断然印象が良さそうですね。
2.横断歩道を渡る人たち
★★★☆
出ました、珍曲。桜井さんのトーキング・スタイルのヴォーカルは、『友とコーヒーと嘘と胃袋』を彷彿とさせます。このブルージーな歌と、AOR風のピアノや躍動感のあるホーンによって仕立てられたアレンジとの取り合わせがなんともストレンジ。1曲まるまるかけて、すまし顔でギャグをやっているかの思える、なんとも唖然とさせられてしまう曲です。A面より断然面白いですが、こりゃカップリングでしか無理だろうなぁという1曲(良い意味でですよ)。
3.風と星とメビウスの輪
(Single Version)
★★☆
ピアノだけで演奏されるバラード。個人的には、それほどピンとくる曲ではありませんでした。「Single Version」と銘打ってあるということは、次回のアルバムに収録されるのでしょう。どんなふうに化けるのでしょうね。
(記:2008.10.23)
33rdシングル
『HANABI』
(2008.9.3)
ライブビデオを挟んで、前作『GIFT』から僅か1ヶ月程度で届けられた新曲。『四次元 Four Dimensions』以来となる2週連続1位、2008年度オリコン年間チャート6位を記録しました。
1.HANABI
★★★★☆
フジテレビ系ドラマ『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』主題歌。
はっきり言って、素晴らしいです。瑞々しいアレンジに爽やかなメロディーライン。桜井氏曰く「曲の力を邪魔しないように書いた」という歌詞も見事。字余り気味に詰め込んだフレーズは、楽曲の印象を単調にせず、流麗に聴かせることに大きく寄与しているように思えます。ミスチル史に残る傑作と断言したいですね。
2.タダダキアッテ
★★★
『タガタメ』(『シフクノオト』収録)の原曲。『タガタメ』を先に聴いている身からすると、この異常なまでに軽快なアレンジに驚きます。あの『タガタメ』の壮大さを知っているがゆえに、この曲を素直な耳で聴けなくなっているというのが事実。うーむ。まぁ、c/wというポジションだし、アリっちゃアリですね。
3.夏が終わる ~夏の日のオマージュ~
★★★☆
『君がいた夏』の原題も『夏が終わる』だったそうですが、それが長い年月を経て復活…というわけではなく、関係はほぼ皆無でしょう。
じわじわと滲んでくる切なさが「夏の終わり」を感じさせます。歌詞も、読むだけで涙が出てきてしまいそうなほど切なく染みます。隠れた佳作。
(記:2009.2.23)
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