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2007年01月27日

倉知淳の作品群～ほのぼのとした本格ミステリ

(5)

テーマ：お勧めの本(7415)

カテゴリ：読書

ほのぼのとした雰囲気のミステリを書く作家。

ミステリ界では「これぞ本格ミステリ」と言われているそうですが、
ミステリを全く読まない私には何が「本格」なのかよくわかりません。
丹念に伏線を張っていて、それに基いて推理を展開しているからでしょうか。

そもそも私が読むきっかけになったのは「占い師はお昼寝中」で、
ミステリとは思わずに買って読んだのでした。

倉知作品は、描かれる登場人物の様々な日常や状況、やり取りが面白く、
また、そのほのぼのとした雰囲気が良くて、好んで読んでいます。

登場人物の日常が、私の経験できないいろんな職業の人であったりするので、
謎解きよりも、経験できない他の人の日常を疑似体験できるところが私にとっては魅力です。

寡作な人で、単独本は１０冊しかないので、すぐに全部読めるのはいいのですが、
読んでしまうと新作がなかなか出なくて寂しいのが欠点です。

がんばれ～～！倉知淳！
次の作品を待ってます！

＜猫丸先輩シリーズ＞
１．日曜の夜は出たくない
２．過ぎ行く風はみどり色
３．幻獣遁走曲
４．猫丸先輩の推測
５．猫丸先輩の空論

＜その他＞
・占い師はお昼寝中
　：自称「霊感占い師」が、相談者の話から見事な推理で真相を解明し、的確なご託宣を与える。
・壷中の天国
　：田舎町で起った連続通り魔殺人事件。最初は対岸の火事だった人もだんだん切迫したものに。
・星降り山荘の殺人
　：雪に閉ざされた山荘で起る殺人事件。宿泊人はUFO研究家や女流作家など一癖も二癖も。
・ほうかご探偵隊
　：小学校で次々に起る変な出来事。僕たちはその真相と犯人を突き止めるため捜査を開始した。
・まほろ市の殺人（春）
　：奇怪な殺人事件を解明しようと奔走する大学生カップルと高校生の弟。

ある平凡な人の日常に起った事件の謎を、そこに居合わせた人が解く、という形が多いです。

猫丸先輩シリーズでは、謎解きをするのは猫丸先輩で、他はそれぞれですが、
いずれも一般人？で、刑事や探偵などではありません。

謎解きの多くは、登場人物の中から犯人を捜し出すというものではなく、
謎めいた事件の真相・全容を解き明かすというものです。
「あくまで想像だけどたぶんこういうことだったんじゃないかな」という推理の披露にとどめるものも多いですが、伏線はちゃんと張っていて論理立てて説明しているので、なるほどと思わせます。
また、そういった結末ゆえ、読後感がやわらかく、心地よいものです。

「猫丸先輩」のキャラクターは特に楽しく、このシリーズはお気に入りです。
赤の他人にはとても礼儀正しくバカ丁寧なのに、後輩にはとてもずうずうしくて容赦がなく、
後輩たちには「この人には関わりたくない」と思われつつ、結構慕われてもいる様子。

猫丸先輩シリーズは５作目の「猫丸先輩の空論」に至り、推理にもかなり無理が出てきて、
ツッコミどころが多く、それもまた一興です。

このシリーズは２作目の長編を除いて１話完結の短編構成ですが、
やはり１冊目から順番に読むのがベストだと思います。
正体不明の猫丸先輩の実像が作品を追うごとに徐々にはっきりしてくる過程も楽しめます。

「占い師はお昼寝中」もシリーズ化されておかしくない作品ですが、
なにせ寡作の倉知淳、作品自体がなかなか出てこないのが残念です。

＜私の好きな倉知淳作品ランキング＞
１．幻獣遁走曲　　　　　　（猫丸先輩シリーズ３）
２．日曜の夜は出たくない（猫丸先輩シリーズ１）
３．猫丸先輩の推測　　　　（猫丸先輩シリーズ４）
４．占い師はお昼寝中
５．過ぎ行く風はみどり色　（猫丸先輩シリーズ２）
６．まほろ市の殺人・春・無節操な死人
７．壺中の天国　　　　　　（第一回本格ミステリ大賞受賞）
８．ほうかご探偵隊
９．猫丸先輩の空論　　　　（猫丸先輩シリーズ５）
10．星降り山荘の殺人

ミステリを読まない人にも、ミステリ好きの人にも、オススメできる作品群です。
是非一度読んでみてください。

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