Fancy&Happiness

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エピローグ 2



飯澤 空輝さんへ

先日は、本当にありがとうございました。
華乃の日記帳をもっと早くに見つけていれば、と後悔の念も少しあります。
しかし、心の整理が付いた今だから、こうしてあなたに言えるのだとどうか分かってください。

一つだけ、あなたに大切なことを言い忘れてしまい、こうして手紙を書かせていただいています。
・・・・華乃は、まだこの世のどこかで生きています。
どういう事かと言うと、彼女はドナー登録をしていました。
癌という病気を患い、お医者様には無理ではないかと懸念されてはいたのですが、抗がん剤などの薬をあまり使わなかったため、
なんとか華乃の無事な臓器を他の苦しんでいる人に移植することが出来ました。
私たちは、その臓器を提供した相手を知ることは出来ません。
けれど、彼女はこの世界の、そして多分日本のどこかにいるのです。
そしてその体の中で華乃は生き続けることが出来るのだと、私たちは信じています。
空輝さん、ですからどうか華乃の死を悲しまないでください。
最後になりますが、あなたが心身ともに健やかであられますように 吉村 律子

華乃の両親に会ってから、1週間と経たないうちに届いた手紙。
それを読んで、僕の中に不思議な気持ちが芽生えた。
華乃は、この世界のどこかの誰かの中でまだ生き続けている・・・・
もしかしたら、その辺ですれ違う人の中に、華乃の臓器を持った人がいる可能性だってある。
彼女の両親のいうとおり、華乃は死んだわけじゃない。
僕や彼女の両親の心の中で、そして世界のどこかの誰かの体の中で、
今も生き続けているのだ。
いつの間にか、僕もそう思い始めていた

そしてその夜
僕は赤い日記帳の表紙をめくる。

いつかまた、君に逢えたらいいと願いながら―  END  



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