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2016年01月15日
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カテゴリ: 羅刹
 出迎えの女房の先導で、斉子女王は小八条第の東の対へ通された。

 急なことでさぞかし手狭なことかと思いきや、対の屋の中は美々しく整えられ、特に御座所の豪華さは目を見張るばかりだった。

 部屋中を覆い尽くす色鮮やかな大和絵の屏風に、細部にまで精緻(せいち)な螺鈿(らでん)の施された蒔絵(まきえ)の調度類。

 さすがは派手好きの道雅だけのことはある。長年引き篭もっている病身の老人の住処(すみか)とは思えない華美さだ。

 その中央の座の上に腰を下ろした斉子女王は、案内してきた女房へ細い雅な声で言った。

「明日は早朝のうちに嵯峨野まで参るゆえ、こちらは夜の明ける前に出立することになろう。少し休みたいから、気遣いはどうぞ無用に」

 その声音には凛とした近づきがたい威厳があった。

 院御所の奥深くで大切に育てられた、世慣れない深窓の姫君であるはずなのに、斉子女王は微塵(みじん)も気後れや緊張を感じさせない振る舞いで、能季がお願いした通りのことをすらすらと言ってのける。

 能季は正直斉子女王をはじめてみるような思いだった。


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最終更新日  2016年01月15日 11時13分58秒
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