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2016年04月27日
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カテゴリ: 羅刹
 東の対に一人残された能季は、二人の姿が見えなくなると急いで尼衣を脱ぎ捨て、用意してきた狩衣に着替えた。

 そして、部屋中の明かりを全て消し、寝所の褥(しとね)の上へ人の形にうまく尼衣を打ち掛けた。

 これで、誰かが来ても、もうここで眠ってしまったと思うに違いない。

 能季は妻戸から外をうかがい、辺りに人影がないことを確かめると、庭に降りて車宿りの方へ走った。

 今日の昼間、車を降りた場所には、既に簾(すだれ)の下ろされた網代車(あじろぐるま)が止まっていた。

 辺りに明かりはないが、牛車の周りには数人の武者らしい影も見える。

 能季はその中でも一際丈の高い影に近づいて、小声でそっと囁いた。

「うまくいったか」

「はい。二人とも既に車の中に。若君は車のすぐ側におつきくださりませ。私が車を先導いたします」

 兵藤太はそう言うと、ひらりと傍らの馬に飛び乗った。そして、短く合図をすると、牛車はごろごろと動き出す。

 能季は他の供人に紛れながら、さりげなく網代車の脇に張り付いた。

 耳をそばだてながら、中の様子をうかがってみる。

 だが、車輪が鳴る音がうるさくて、中の気配はまるでわからない。

 能季は不安でいらいらしながら、それでも黙って車に従うほかなかった。


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最終更新日  2016年04月27日 11時01分01秒
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