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2016年05月04日
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カテゴリ: 羅刹
 やがて、右手に朱雀院の重々しい築地塀が連なってきた。

 それを過ぎると、左手の先に神泉苑の小暗い木立の影も見えてくる。

 もうすぐだ。

 暗闇に目を凝らすと、突き当たりの空間に東大宮大路の柳並木が見えるような気がする。

 牛車はなおもがらがらと音を立てながら進み、神泉苑を過ぎたところで左へ曲がると、そこでぴたりと急に止められた。

 能季はもう堪えきれずに太刀を抜くと、目の前の網代車の簾を跳ね上げて、真っ暗な車中に躍り込んだ。

「な、何をする」

 暗闇の中で、白っぽい衣装の影がこちらを振り返る。

 郎党が差し出した松明の明かりに照らされたのは、気味悪く目を血走らせた道雅の顔だった。

 能季は有無を言わさず道雅の襟首を掴み、太刀を首筋に突きつけながら網代車の外へ引きずり出した。

 馬を下りた兵藤太がすかさず道雅を受け取り、後ろ手に縛り上げる。

 それを見届けると、能季は慌てて車の中に戻った。

 車の隅に、撫子襲(なでしこがさね)の袿(うちき)がくずおれるように蹲(うずくま)っている。

 能季は必死になって、斉子女王を助け起こした。

 両袖の中に顔を伏せていた斉子女王は、ますます怖(お)じ恐れて自分に触れる手から逃れようとする。

 だが、やがてそれが能季の手だとわかったのか、今度は無言のまま能季の胸に縋(すが)ってきた。

 微かな嗚咽(おえつ)の声が聞こえる。

 能季はしっかりとその細い身体を抱き締め、優しく背を撫でてやることしかできなかった。


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最終更新日  2016年05月04日 15時15分13秒
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