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クールジャパンあれこれ3-R1
<クールジャパンあれこれ3-R1>
最近は百家争鳴のようなクールジャパンについて集めてみました。
お役所主導の縄張り争いのような、経済優先の薄っぺらの文化政策は、叩きがいがあるんでしょうね。
・職人という生き方
・「官製クールジャパン会社」の危うさ
・『浮世絵探検』
・イギリスから見たクール・ジャパン
・だから日本はズレている
**********************************************************************
<
クールジャパンあれこれ2
>目次
・だから日本はズレている
・政府主導のクール・ジャパン
・日本の「ソフトパワー」戦略
・「NARUTO―ナルト―」連載完結
・外国人のほうが実態がよく見える
・キャリーの威力はすごーい♪
・したたかなキャリーパミュパミュ
・日本文化って
**********************************************************************
<
クールジャパンあれこれ1
>目次
・クールジャパンと日本流
・「ジャパニメーション」はなぜ敗れるか
・1番人気の日本
・官主導のクールジャパン
・クールジャパンのいかがわしさ
・村上隆さんへのインタビュー
・韓国の反応
R1:「職人という生き方」を追加
<職人という生き方>
図書館で『ディスカバー・ジャパン(2017年9月号)』という本を手にしたが・・・・
昨今では大学卒の職人も増えているそうだが、この本も就活資料としていけてるかも♪
表紙に「職人という生き方」とあり、中を見ると、民芸的なものとか、宮大工とかかなり本格的な取り組みが見て取れるわけで・・・ええでぇ♪
仕口(台持ち継ぎ)
宮大工について斑鳩工舎・小川三夫氏と作家・塩野米松氏が対談しているので、見てみましょう。
p105~108
<教わったのは飛鳥工人の技術と知恵と生き方>
塩野:
小川さんの師匠は西岡常一棟梁です。僕がはじめて西岡棟梁を訪ねたのは1985年。その頃、小川さんは奈良で西岡棟梁と一緒にやっていたね。
小川:
そうだなぁ。ずいぶん経ったもんだ。俺らはよ、同い年だな。年とったよなぁ(笑)。もう70だからな。
塩野:
西岡棟梁に「弟子にしてください」って言いに行ったのは18歳のときでしょ。
小川:
高校卒業するときだから19になるときか。「もう遅い」「いまは仕事がない」って、ふっつの理由で断られたよ。18でも遅いって言うんだな。15で来なきゃって言うんだ。それでも、法輪寺の三重塔を再建することになって呼んでくれた。3年ほかで修業してからだ。
塩野:
これまでも何度も聞いてきたけど、小川さん。宮大工と普通の大工さんはどう違いますか?
小川:
仕事は一緒。家大工でもすごく腕のいい人はいる。ただ、俺らは大きな木を使う。大きな木というのは木の癖が出る。ねじれたり、割れたり、だから宮大工っていうのは木の癖をくまなくてはいけない。
塩野:
「釘を使わないのは本当ですか」って、よく聞かれるでしょ。
小川:
それは本当。軸部といって力の加わる部分は木だけで組む。垂木を止めたり、板を止めたりっていうのは釘が必要になる。そうはいっても、仕事全体からいえば、釘を使わないって言ってもいいくらいだな。
塩野:
釘で押さえられる木が細くない。「釘が使えない」と言うほうがいいんだな。ほかにはどんなところが違う?
小川:
家大工は施主さんの意向に沿ってつくらなくちゃいけねぇな。俺らは神仏のためにつくる。神さま仏さまは、ああしろこうしろってうるさいことは言わねぇ(笑)。
いやいや、そりゃ冗談だ。堂塔をつくるときは、お寺さんが檀家から何億っていう浄財を集めるんだ。だから俺らは、檀家の人たちが頼りにできる。安心できる建物をつくんなくちゃならねえぇ。
塩野:
木の太さ、大きさが家とは違うわけだけど、寺社建築には本当にあれほどの部材が必要なの?
小川:
細い木でやってやれないことはない。しかし、俺らは何百年も変わらないものをつくるんだ。長い間安定する建物。それから集まる人が安心できる建物っていうこと。そうすると、太い材ということになる。
塩野:
神さま仏さまだけではなく、人が慕って集う建物。大きな木を使っても、重苦しくちゃいけない。だから、ゆったり曲線を使ったり美しい細工をしたり、さまざまな工夫がされるんだね。
小川:
仕口っていって、木と木を組む技術がある。これは長い歴史の中で、大工たちがいろいろ工夫してつくったわけだけど、法隆寺が建てられた時代には、簡単な仕口しかできなかったんだ。なにせ、当時はまだ大工道具がそれほどなかったからな。
塩野:
縦引き鋸すらないから製材もできなかった。太い材木に楔を打ち込んでいって割ったんだな。それを槍鉋できれいに仕上げた。
小川:
そうだな。法隆寺や薬師寺の塔の中に入ると、木と格闘した跡がありありとわかる。鋸がないから、製材した木でも太さはバラバラや。外は何とかきれいに加工するんだけども、中はバラバラ。長さも斧で断ち切ってあんだよ。不揃いの木を組み上げるのは本当に大変だよ。木を1本1本見て、これがどこって場所を決める棟梁がいたからできたんだ。
塩野:
奈良には、そうやって建てられて、1300年も経った建物がたくさんある。それがだいたい同時代に建っている。
小川:
うん。だいたい60年で建ったんだ。同時進行でやったんだな。その頃、経験者っていうのはあんまりなかったと思う。
塩野:
いないね。
小川:
道具も少ない。それだけじゃなく、図面もなかったのに、だよ。やっぱり、知恵だ。昔の人っていうのは知恵を働かせたんだ。木を組むだけじゃねぇ。あれだけ大きな木をどうやって山から切り出し、運んだのか。
塩野:
そういう飛鳥時代の工人の、技術と知恵と生き方を受け継いでいたのが、小川さんの師匠の西岡棟梁だった。
小川:
棟梁は、ずっと貧乏していた。
塩野:
法隆寺や薬師寺っていう寺の仕事しかやってはいけないって育てられた。そんな昔の教えをきっちり守った最後の宮大工だね。
【ディスカバー・ジャパン(2017年9月号)】
雑誌、エイ出版社、2017年刊
<商品の説明>より
日本には世界が驚くものづくりがあります。これまで『Discover Japan 』では、うつわやクラフト、民藝、食など、たくさんの「もの」を紹介してきました。
今回の特集では、さまざまな分野で活躍する職人に注目いたします。
まず何百年と受け継いできた技術を生かし、いまのライフスタイルに合うような柔軟なものづくりで進化を続ける、世界で活躍する職人をフィーチャー。独自の着色技術を開発し、金属着色の可能性を広げている銅器着色職人の折井宏司さん、ブリキや銅、錫の茶筒をつくる茶筒職人の八木隆裕さん、寺院用のおりんの技術を生かした曲げられる金属「すずがみ」が熱い視線を集める鍛金職人の島谷好徳さんの活躍を取材。
<読む前の大使寸評>
表紙に「職人という生き方」とあり、中を見ると、民芸的なものとか、宮大工とかかなり本格的な取り組みが見て取れるわけで・・・ええでぇ♪
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ディスカバー・ジャパン(2017年9月号)
<「官製クールジャパン会社」の危うさ>
「官製クールジャパン会社」と聞けば、経営の門外漢でも危うさがまず目に浮かぶが・・・
ネットに実態が出ています。
2016.11.28
成果なき「官製クールジャパン会社」の信じ難い実態
より
近年、クールジャパン政策が叫ばれている。日本のコンテンツの海外展開分野においても、これまで数百億円の税金や財政投融資など公的資金が注がれている。コンテンツ政策におけるクールジャパンの目的は、単に日本コンテンツの輸出額を増やすだけでなく、ソフトパワーによる観光振興などのインバウンド獲得を狙う「クールジャパン効果」も重要な目的になっている。
しかし、巨額の公的資金支出にもかかわらず、公的資金拠出の意思決定や成果の評価は著しく客観性に乏しい。本来、クールジャパン効果とは客観的な外部評価が基準であるべきだが、税金を使う側である当事者の主観的な内部評価が基準となっている。この思い込みが、国民財産の毀損と無駄遣いの温床になっている。その顕著な例が2011年に「日本を元気にするコンテンツ総合戦略」のもと設立された株式会社All Nippon Entertainment Works(ANEW)である。
ANEWは、日本のIP(知的財産)を用いてハリウッド映画を作ることで、日本のコンテンツの海外展開を図り、その利益を日本国内に広く還流することで日本のエンタテイメント産業を再生するという目的で設立された。官民ファンドである産業革新機構から100%、60億円の出資を受け設立された映画企画開発会社である。
また、ANEWの設立には監督官庁の経済産業省も企画から深く関わっており、設立後に職員を出向させるだけでなく、クールジャパン官民有識者会議、首相官邸コンテンツ強化専門調査会、国会経済産業委員会でANEWの取り組みを推進してきた。
16年10月27日で会社設立から丸5年が経過したが、これまで7作品の開発を発表しているものの、これらの映画が公開され配当を得るどころか、撮影に至った作品すら1本も存在していない。また、官報に掲載されている決算公告によれば、15年12月31日時点までの損失は14億4517万円に上り、何ら成果のないまま毎年赤字を垂れ流している経営状態が続いている。
新しい利権が生じると、すぐ囲い込みに走るのが役人のサガであるが・・・
ハリウッド映画ほどの戦略性も持たず、ジブリほどの情熱を持たない役人にどれほどのことができるのだろう?
自分たちの能力、限界に対する認識に疎く、公僕意識が薄いのがニッポンの官僚なんでしょうね。
<『浮世絵探検』>
図書館で『浮世絵探検』という本を手にしたが・・・・
高橋さんの対談者の顔ぶれがすごいですね。企画編集の勝利とでもいうべきか♪
【浮世絵探検】
高橋克彦著、岩波書店、1997年刊
<「MARC」データベース>より
根強いブームの浮世絵、人気の秘密はどこにあるのだろうか。横尾忠則・宮地正人・荒俣宏・水木しげる・皆川博子・新宮一成といったゲストと共に、趣向を凝らしたテーマで、常識を覆す浮世絵の深層に迫る。
<読む前の大使寸評>
高橋さんの対談者の顔ぶれがすごいですね。企画編集の勝利とでもいうべきか♪
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浮世絵探検
ジャポニスム
漫画と浮世絵が世界に及ぼした影響を荒俣宏さんが語っています。
p90~94
<漫画と浮世絵の旧道とバイパス>
荒俣:漫画と浮世絵の関係というと、どうも本道がない。本道はないんだけれども、バイパスと旧道はあるような気がする。
まずバイパスの場合から行くとね、これは少女漫画の特別な発展と関係がある。ごく最近、海外のアールヌーボー、アールデコのものを見ていてよくわかったのですが、アールヌーボーのちょっと前ぐらいの時代にジャポニスムがあった。それはだいたい「北斎漫画」とかカリカチュアに非常に近いような人体の動きがあるようなものと浮世絵のグラフィックなデザインとをヨーロッパの人が見て、ショックを覚えたのですね。
そのショックは簡単にいえば、とりあえず、絵の表現を立体的なところでこだわっていると、人間の動きの面白さなんてあまり出てこない。むしろ二次元的な展開にしちゃったほうがよっぽど面白いんじゃないかということでしょう。つまりグラフィズムみたいなものが出てきて、ちょうど19世紀の終わりから20世紀ぐらいにヨーロッパの人びとが影響を受ける。
とくに挿絵画家が浮世絵っぽい絵をヨーロッパ的にアレンジして描くようになった。それがフランスでアールデコの絵の主流になるのですね。アールデコ時代はほとんどファッション画とファンタジー小説の挿絵ばかりだったから、必然的にいまの少女漫画と同じような展開をして、小道具からキャラクターまでができちゃった。
それを見たのが蕗谷虹児だとか竹久夢二、ああいう大正ロマンの人びとなんですね。「アッ、これはすごい」って、どこかなんとなく日本的なものがあるんだけど、なんか西洋的な要素もあるというので、あれを採り入れた。最初はほとんどがコピーです。それを見た戦後の少女漫画家がそれをまたコピーして、いまの少女漫画の絵柄の原型が出てきている。彼女たちは、浮世絵の存在は、まあ、知っているけど、まさか自分たちがその末裔とは気づかずに、あくまでもフランスのアールヌーボーの絵を真似したんだと思い込んでいるけど、じつは遠くをたどると、そっちのほうになっている。
もうひとつ、旧道がどうもありそうなのね。この旧道は日本伝統の戯画。浮世絵って半分以上戯画の部分があるじゃない。それこそ鳥獣戯画から、大津絵まで。岡本一平とか田河水泡なんかも、この系譜ですよ。
この戯画の要素がいまの漫画の一部に使われていて、これがまた意識が最近までほとんどない。まさか自分が浮世絵を中心とする日本の戯画の伝統につながっているんだとは、たぶんまったく気がついていなかったと思うのです。それはたぶん旧道、昔の道だと思うのです。ふだん歩いていて、何気なく気がついたら、これは昔の東海道だったというようなところがどうもあって、このバイパスと旧道の二つの流れから浮世絵と劇画をつなげると、わりと見通しがつくんじゃないかなという感じがちょっとしています。
高橋:僕は、だいぶ前から浮世絵が劇画のルーツだというふうに主張してはいたんだけど、それでいて、どこでどうつながっているかというのがよくわからなかったのね。
荒俣:ぼくの考えるところでは、テキストが必ずあって迫力ある挿絵をつけるかたちがだんだんとスペクタルアートになって、ついに劇画に行きついていくには、1回ヨーロッパの影響を受けていると思うのです。
ヨーロッパのイラストレーションというものをシャワーみたいに浴びて、それは、昔、北斎なんかがヨーロッパの影響を受けて、いろいろな絵柄のうえで大スペクタクルを展開していったことと、かなり関連した問題ではないかなという気がするのだけどね。
浮世絵や挿絵入りの本が庶民のあいだで流通していた当時のニッポンは、まさにクール・ジャパンだったのでしょうね♪
<イギリスから見たクール・ジャパン>
『日本に住む英国人がイギリスに戻らない本当の理由』という本に、イギリスから見たクール・ジャパンが語られています。
そのあたりを見てみましょう。
<「漫画・アニメ」は日本の三大柱のひとつ>
p49~51
今、イギリスでは日本の漫画やアニメーションが人気です。漫画『ワンピース』やアニメーション『AKIRA』は、イギリスの若者から絶大なる支持を得ています。
ボーカロイドの「初音ミク」も流行っており、日本語の「可愛い」という言葉も欧米でそのまま「KAWAII」となり日常的に使われています。
イギリスのブレア政権が推し進めた国家ブランド戦略「クール・ブリタニア」のように、日本の「クール・ジャパン」は世界に輸出・発信されています。日本独自の文化が、日本という国に関心を持つ外国人を獲得しているのです。
日本に長年住み、会社役員を引退したイギリス人マイケルが、30年前に初来日したときにショックを受けたのは、電車の中で若いサラリーマンが漫画を堂々と読んで笑っていたことです。
イギリスはじめ、欧米では大人が読む漫画はほとんどありません。最近は少し変化してきていますが、基本的に漫画は子どものためのものです。ところが日本では、大人も子どもと同じように漫画雑誌やコミックを読みます。全盛期の『週刊少年ジャンプ』は、発行部数653万部(1995年新年号)を記録し、ギネスブックに登録されました。
日本の漫画はテーマが幅広く、大人にならなければ理解できない内容のものが多いのも特徴です。そのような大人が読むに値する漫画がイギリスにはないのですから、マイケルが驚いたのは当然です。最初、彼は「漫画を読む大人=オタク」と思い込み、気味悪がっていましたが。
日本ほどではありませんが、欧米にも「オタク」はいます。欧米では必ずしも、「オタク=漫画・アニメ」というわけではありません。イギリスでは、異常に趣味に没頭する人を「nerd(ナード)」と言い、優しくて頭が良い、そしてコンピュータに非常に詳しい若者と見ています。アメリカでは、コンピュータに詳しい人を「techie(テッキー)」と呼びます。
(中略)
「テクノロジー」「和食」に加え、「漫画・アニメ」という日本のは、イギリス人の日常に入り込んでいます。自分の車を「HONDA」と誇り、日本人だとわかるとカメラを見せてくれと言われます。
先ごろ『小さな恋のメロディ』主演のマーク・レスターさん宅におじゃました際、娘さんがすかさず自分の描いた漫画を見せてくれました。彼女の夢は、「日本に行ってアニメの仕事をする」ことでした。このような子どもにイギリスで出会う度、日本の漫画やアニメは、ものすごい潜在能力を持っていると思うのです。
【日本に住む英国人がイギリスに戻らない本当の理由】
井形慶子著、ベストセラーズ、2014年刊
<「BOOK」データベース>より
英国人だからこそ見えた「日本」の素晴らしさ!イギリス人100名に徹底取材!!ベストセラー『英国式シリーズ』の著者が、日本とイギリス社会の知られざる違いを解き明かすー
【井形慶子】
1959年長崎県生まれ。作家。大学在学中から出版社でインテリア雑誌の編集に携わる。その後、世界100カ国に流通する外国人向け情報誌を創刊。28歳で出版社を立ち上げ、英国の生活をテーマにした月刊情報誌「ミスター・パートナー」を発刊する。同誌編集長。50歳でロンドンに拠点を持つ。渡英歴は100回を越える。
<読む前の大使寸評>
本の内容もさることながら著者の来歴がすごい♪
そういえば、ベニシア(・スタンリー・スミス)やC.W.ニコルもイギリス人だったなあ。
(厳密にはC.W.ニコルはウェールズ人だけど)
rakuten
日本に住む英国人がイギリスに戻らない本当の理由
<だから日本はズレている>
図書館に予約していた『だから日本はズレている』という新書をゲットしたが、五ヶ月半待たされたわけで・・・・
果たしてこれだけ待つと、新書の賞味期間が過ぎてしまうではないか?と心配されるわけです(笑)
新書のテーマが短期的視点で書かれることが増えているようだが・・・
半年後に生き残る新書の戦略とは何なのか?という読み方も面白そうである、いやホント。
【だから日本はズレている】
古市憲寿著、新潮社、2014年刊
<「BOOK」データベース>より
リーダーなんていらないし、絆じゃ一つになれないし、ネットで世界は変わらないし、若者に革命は起こせない。迷走を続けるこの国を二十九歳の社会学者が冷静に分析。日本人が追い続ける「見果てぬ夢」の正体に迫る。
【目次】
「リーダー」なんていらない/「クール・ジャパン」を誰も知らない/「ポエム」じゃ国は変えられない/「テクノロジー」だけで未来は来ない/「ソーシャル」に期待しすぎるな/「就活カースト」からは逃れられない/「新社会人」の悪口を言うな/「ノマド」とはただの脱サラである/やっぱり「学歴」は大切だ/「若者」に社会は変えられない/闘わなくても「革命」は起こせる/このままでは「2040年の日本」はこうなる
<読む前の大使寸評>
斎藤環が古市憲寿のズレに注目しているが、団塊世代の「おじさん」として、それを見ているだけでは・・・
あかんのやろな~。
<図書館予約:(12/08予約、5/26受取)>
rakuten
だから日本はズレている
今ではクール・ジャパンという用語も定着したが、使う人の思惑で一人一人のイメージが異なるクール・ジャパンを見てみましょう。
p40~48
<「クール・ジャパン」の誕生>
「クール・ジャパン」という言葉がここまで普及したのは、それほど昔のことではない。ネタ元は1990年代に登場したイギリスの「クール・ブリタニア」だ。イギリスの持つ古臭いイメージを打破することが目的で、イギリスのような大国までもが国家のブランド戦略に乗り出したことが当時話題になった。
もっとも、イギリスでクール・ブリタニアはちっとも普及せずに、数年で死語になった。一方の日本では、2005年頃から、村上隆などの現代アートを海外で展開する際などに用いられるようになり、2006年には『クール・ジャパン―世界が買いたがる日本』(祥伝社)という本も発売された。
そして次第に、アニメやマンガ、映画、ファッションを中心とした日本のポップカルチャーを総称する際に「クール・ジャパン」の文字が躍るようになっていった。
政府もこの動きを後追いした。民主党政権時代、経済産業省が2010年にクール・ジャパン室を開設、翌年には同省に生活文化創造産業課(通称クリエイティブ産業課)も設置された。
クール・ジャパン政策は自民党政権にも受け継がれた。初代クール・ジャパン戦略担当大臣に任命された稲田朋美が、フランスで開かれたイベントでゴスロリファッションを披露、世間の温かい視線を浴びたことは記憶に新しい。
当初はアニメやマンガといった「オタク」的な文化、渋谷の「かわいい」ファッションといったポップカルチャーを指して使われていたクール・ジャパンという用語だが、最近では日本食や伝統工芸までがその範疇に含まれるようになった。
(中略)
<出雲大社はクールじゃない?>
クール・ジャパンに関しては2011年に「クール・ジャパン官民有識者会議」による提言も出されている。提言によれば、「世界は『つながりあった共同体』であるという気運も興って」おり、「日本人が本来持っていた精神性への原点回帰と新たな『進化』を遂げ」て、「日本ブランドの輝き」を取り戻すべきだという。
そのためには和魂漢才や神仏習合など「二分法をこえる日本的創造性」といった「日本流の自覚」などが必用らしい。
また、日本は「枕草子」などで「小さきもの」を尊ぶ文化があったから、「小ささと引き算の活用」で日本を伝えたいとか勝手な日本文化論がとうとうと語られる。本殿の高さが48メートルあったとされる出雲大社や、世界最大の陵墓である仁徳天皇陵を完全に無視した日本文化論で、関係各所からクレームが入らないか心配だ。
それで肝心な結論はというと、地域を活性化する「クリエイティブ・タレント」を養成したり、世界中からクリエイティブな人を呼び込む「クリエイティブ・フォーラム」を開催したり、「新たなライフスタイルや産業の創造」が必用とのこと。
立場の異なる複数の有識者が参加する会議の報告書が、抽象的になってしまうことは仕方ないとしても、あまりにも具体性にとぼしい。
というか、何度読んでも一体「クール・ジャパン」が何なのかということさえもわからない。おそらく、会議の参加者、官僚、政治家の一人一人がイメージしている「クール・ジャパン」が違うのだ。
日本のコンテンツを海外に輸出する話なのか、逆に観光客を日本に呼び込む話なのか、ただ「日本ってやっぱりすごいよね」って言い合いたいだけなのか、それによって結論はまるで変わってくるはずだ。なのにその前提が共有されていない。そりゃ、議論もまとまるわけがない。
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