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図書館で『大人のための恐竜教室』という本を、手にしたのです。鳥類と恐竜の関係といえば、大使のツボでもあるわけで・・・チョイスしたわけです。【大人のための恐竜教室】真鍋真×山田五郎著、ウェッジ、2018年刊<出版社>より 恐竜学者・真鍋 真先生とうんちくターミネーター・山田五郎さんが語り尽くした大人のための恐竜入門 恐竜といえば、子どもの専売特許と思われがちです。そもそも子ども向けの恐竜本や図鑑は多数出版されていますが、大人向けの、しかも初心者向けの本は、ほとんど見あたりません。「子どもと一緒に楽しみたいのに……」と悩む親御さんも多いのではないでしょうか?<読む前の大使寸評>鳥類と恐竜の関係といえば、大使のツボでもあるわけで・・・チョイスしたわけです。rakuten大人のための恐竜教室2種類の恐竜が語られているあたりを、見てみましょう。p108~113<恐竜の仲間は大きくふたつ、竜盤類と鳥盤類>山田:先ほど、恐竜研究の歴史の中で1887年に恐竜が大きくふたつの種類に分けられたというお話がありましたけれど、恐竜の図鑑を見ると、まず大きな括りに「竜盤類」と「鳥盤類」というのがありますね。このふたつの括りがずっと続いているということですか?真鍋:そうなんです。(中略) 恐竜の化石はこのどちらかのタイプに分けられるということに気づいたのが、イギリスの古生物学者ハリー・シーリーです。彼が、爬虫類型の骨盤を持っているグループを、骨盤の「盤」にトカゲを表す「竜」をつけて「竜盤類」、鳥に近い骨盤を持っているグループを「鳥盤類」と呼びましょうと提唱したんです。山田:そうそう、シーリーでしたね。恐竜をふたつに分けた男!真鍋:さまざまな恐竜がいる中で、骨盤の形できれいにふたつに分けられることに気がついた。非常に冴えた着眼点だと思うんですよ。しかもこの分類が今日までずっと使われ続けているわけですからね。 ただ、困ったことが出てきたんです。先日も恐竜好きの子どもの保護者の方から質問を受けたんですけれど、今の人たちは先ほど話に出た「恐竜は絶滅していない」「鳥に進化している」と言われていることは百もご存じなんです。だから「竜盤類から鳥類が進化してきたなんて、納得がいかない」とおっしゃるんですね。 要するに、骨盤が鳥に似ている「鳥盤類」の恐竜が素直に鳥に進化していれば話は簡単なんですけれど、鳥盤類から鳥に進化した恐竜はいないんです。「竜盤類だけが鳥になった」というのはおかしい、というわけです。山田:まったく同感です。僕もこれだけはどうしても納得できません。骨盤が鳥に似ていると言っておきながら、それはないだろうって感じです。『大人のための恐竜教室』1
2021.12.08
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図書館で『大人のための恐竜教室』という本を、手にしたのです。鳥類と恐竜の関係といえば、大使のツボでもあるわけで・・・チョイスしたわけです。【大人のための恐竜教室】真鍋真×山田五郎著、ウェッジ、2018年刊<出版社>より 恐竜学者・真鍋 真先生とうんちくターミネーター・山田五郎さんが語り尽くした大人のための恐竜入門 恐竜といえば、子どもの専売特許と思われがちです。そもそも子ども向けの恐竜本や図鑑は多数出版されていますが、大人向けの、しかも初心者向けの本は、ほとんど見あたりません。「子どもと一緒に楽しみたいのに……」と悩む親御さんも多いのではないでしょうか?<読む前の大使寸評>鳥類と恐竜の関係といえば、大使のツボでもあるわけで・・・チョイスしたわけです。rakuten大人のための恐竜教室まず「恐竜時代の終焉」あたりを、見てみましょう。p95~97<鳥は本当に恐竜なのか>山田:恐竜から鳥に進化したというのはほぼ定説になってきていますが、では、鳥=恐竜と言い切ってしまっていいのでしょうか。ハトを恐竜と呼ぶのには抵抗がありますが。真鍋:進化を意識した系統分類の中では、鳥は恐竜である、ということになります。でも、「恐竜は鳥になって生きている」と言っても、カラスとか、ハトとか、あれは紛れもなく鳥ですよね、あれを恐竜と呼ぶのは正しくないんじゃないですか、と言いたくなる人もいます。じゃルーツが恐竜である、それもいいです。だけど、鳥類は鳥類、恐竜だというのは間違いですよね、というわけです。 けれども、恐竜という分類の中からひとつの枝が鳥になっていく。その鳥の中には始祖鳥もいれば、ダチョウもいれば、ハトもいれば、スズメもいる。だけどそれは、恐竜という分類の中のごく一部の仲間の中のそのまた一部です。 だから、鳥類は何に分類されるんですかと言ったら、恐竜に分類されます。そして、恐竜は何に分類されるんですかと言ったら爬虫類に分類されます。それに従えば、カラスやハトやニワトリはみんな鳥なんですけれど、鳥類は恐竜の部分集合なので、鳥類は恐竜でもあります。だから、「恐竜は今でも生きている」という表現になるのです。山田:爬虫類という枠は、もっと大きいわけですよね。まず爬虫類があって、その中に恐竜があって、さらにその中に鳥がいるわけだから、もう十把一絡げに「全部爬虫類だ」と言ってしまってもいいんじゃないかと。真鍋:鳥も恐竜も元をたどれば爬虫類ですからね(笑)。今でも爬虫類のDNAはハトに受け継がれています。あるいはハトに受け継がれています。それは間違いない。ただ、爬虫類は今も普通にいるじゃないですか。だから「爬虫類は生きている」では、話がこんがらがってしまいます。 ワニとかヘビとかトカゲとかカメとかの中でも、途絶えたやつは山ほどいるんですが、かんぜんには絶滅しないで今があるわけじゃないですか。 そう考えたときに、恐竜もかつては絶滅したと思われていたけれど、実は鳥になって現代もいる。恐竜は絶滅していませんよと宣伝する必要があるのです。山田:ただし、恐竜の中で約6600万年前の隕石衝突を乗り越えたのは鳥になったやつだけだった、というわけですね。真鍋:鳥だけです。今のところね。
2021.12.08
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三宮の古書店で『すぐそばのロボット(ナショナルジオグラフィック2020年9月号)』という雑誌が目についたが、めくってみると、ダチョウの特集があるではないか・・・それに値段も300円とリーズナブルなんで買い求めたのです。帰って調べてみると今年の3月に図書館で借りていたので、この記事を(その4)とします。*********************************************************図書館で『すぐそばのロボット(ナショナルジオグラフィック2020年9月号)』という雑誌を、手にしたのです。おお ナショナルジオグラフィックのロボット特集ではないか、これは借りるしかないでえ♪【すぐそばのロボット(ナショナルジオグラフィック2020年9月号)】雑誌、日経ナショナルジオグラフィック社、2020年刊<商品の説明>より【特集】●ロボットがいる日常これまで人間が果たしてきた役割を、ロボットが担うようになってきた。今やロボットは工場で人間とチームを組んで製品を組み立て、大型店舗で在庫の管理や清掃作業に活躍し、農場で作物を収穫し、介護やリハビリを助けている。人間とロボットが共生する時代は、すでに始まっている。●ダチョウの素顔世界最大の鳥、ダチョウ。捕食者だらけの世界で、したたかに生き抜き、子育てする姿を追った。<読む前の大使寸評>おお ナショナルジオグラフィックのロボット特集ではないか、これは借りるしかないでえ♪amazonすぐそばのロボット(ナショナルジオグラフィック2020年9月号)オウツフルンのダチョウ産業ダチョウ産業の盛衰を、見てみましょう。(文:リチャード・ニコフ)p95~99<世界のダチョウ産業の中心地> ダチョウ産業とオウツフルンの町の黄金時代は、おしゃれな女性たちの帽子に付ける羽根の需要の高まりとともに、1870年頃に始まった。当時建てられた「羽根御殿」の塔や切り妻、ポーチ、宝飾などは、今も町の通りを彩っている。 1912年に出航したタイタニック号の積み荷のなかで最も高価だったのは、ダイヤモンドでも金でもなく、12ケース分のダチョウの羽根だった。現在の価格で2億5000万円を超す。 しかし、すべては1914年に終わりを告げた。大きな羽根の付いた派手な帽子は、第1次世界大戦が始まったこと、またオープンカーでかぶるには実用的ではなかったことから、突如として好まれなくなってなってしまったのだ。 ある朝、私はモーリス・フィッシュと会った。彼は引退したダチョウ牧場主で、かつて世界のダチョウ産業を支配していた。オウツフルンのユダヤ人コミュニティーのメンバーだ。政治的・経済的弾圧により欧州から追われたユダヤ系移民は、19世紀後半にこの町にたどり着いた。「アフリカーナー(オランダ系移民の子孫)は彼らを歓迎しました」と、フィッシュは話す。 初期の移民の多くは行商人になった。その後に来た人たちは、多くの場合、移住前に日用品や衣類の商売に関わっていた。ユダヤ人は世界中に離散しているため、彼らはロンドンやニューヨークなどの大都市で同じ商売を営む移民コミュニティーとつながりがあった。そのつながりを通じて、オウツフルンのダチョウ産業は大きく成長する。 彼らのネットワークには、牧場を渡り歩いて羽根を買い付けるバイヤーや、羽根を使った製品を作る職人、それを販売する商店主がいた。最盛期には数百世帯のユダヤ人がオウツフルンで暮らした。 フィッシュは地元の歴史が書かれた本を広げ、祖父の写真を指さした。「彼は世界最大のダチョウの飼育家で、1936年に亡くなったときには35ヵ所の牧場を所有していました」。フィッシュの祖父が建てた羽根御殿には、舞踏会場やワインセラー、イタリアのカツラーラ産の大理石を使った巨大な浴場もあった。 その家は現在、レストランや商店、住居、診療所として使われている。その後、ダチョウ取引は宗教とは無関係の協働組合が担うようになり、ユダヤ人たちも減っていった。フィッシュも50年続けたダチョウの仕事から手を引き、せいせいしたという。「ダチョウなんて羽根がきれいなだけのバカな鳥ですよ」と彼は話した。 ダチョウの子育ての仕方について、彼には訊ねなかったが、私はすぐにそれを知る機会があった。ある朝、アフリカ大陸の南端にあるデ・フープ自然保護区で、ダチョウのつがいが何かを食べているところを見た。彼らも私を見ていたが、やがて警戒を解き、9羽のひなも姿を現した。孵化後1~2週間ほどのひなたちは丸々として小さく、首は黄褐色でまだら模様、体毛は短く逆立っていた。ひなたちは食べ物をついばみ、両親はその後ろについていく。『すぐそばのロボット(ナショナルジオグラフィック2020年9月号)』3:ダチョウの共同営巣『すぐそばのロボット(ナショナルジオグラフィック2020年9月号)』2:ダチョウの素顔p84~90『すぐそばのロボット(ナショナルジオグラフィック2020年9月号)』1:日本的なロボットp49~55
2021.12.07
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三宮の古書店で『すぐそばのロボット(ナショナルジオグラフィック2020年9月号)』という雑誌が目についたが、めくってみると、ダチョウの特集があるではないか・・・それに値段も300円とリーズナブルなんで買い求めたのです。帰って調べてみると今年の3月に図書館で借りていたので、この記事を(その3)とします。*********************************************************図書館で『すぐそばのロボット(ナショナルジオグラフィック2020年9月号)』という雑誌を、手にしたのです。おお ナショナルジオグラフィックのロボット特集ではないか、これは借りるしかないでえ♪【すぐそばのロボット(ナショナルジオグラフィック2020年9月号)】雑誌、日経ナショナルジオグラフィック社、2020年刊<商品の説明>より【特集】●ロボットがいる日常これまで人間が果たしてきた役割を、ロボットが担うようになってきた。今やロボットは工場で人間とチームを組んで製品を組み立て、大型店舗で在庫の管理や清掃作業に活躍し、農場で作物を収穫し、介護やリハビリを助けている。人間とロボットが共生する時代は、すでに始まっている。●ダチョウの素顔世界最大の鳥、ダチョウ。捕食者だらけの世界で、したたかに生き抜き、子育てする姿を追った。<読む前の大使寸評>おお ナショナルジオグラフィックのロボット特集ではないか、これは借りるしかないでえ♪amazonすぐそばのロボット(ナショナルジオグラフィック2020年9月号)オウツフルンのダチョウ産業ダチョウ産業の盛衰を、見てみましょう。(文:リチャード・ニコフ)p95~99<世界のダチョウ産業の中心地> ダチョウ産業とオウツフルンの町の黄金時代は、おしゃれな女性たちの帽子に付ける羽根の需要の高まりとともに、1870年頃に始まった。当時建てられた「羽根御殿」の塔や切り妻、ポーチ、宝飾などは、今も町の通りを彩っている。 1912年に出航したタイタニック号の積み荷のなかで最も高価だったのは、ダイヤモンドでも金でもなく、12ケース分のダチョウの羽根だった。現在の価格で2億5000万円を超す。 しかし、すべては1914年に終わりを告げた。大きな羽根の付いた派手な帽子は、第1次世界大戦が始まったこと、またオープンカーでかぶるには実用的ではなかったことから、突如として好まれなくなってなってしまったのだ。 ある朝、私はモーリス・フィッシュと会った。彼は引退したダチョウ牧場主で、かつて世界のダチョウ産業を支配していた。オウツフルンのユダヤ人コミュニティーのメンバーだ。政治的・経済的弾圧により欧州から追われたユダヤ系移民は、19世紀後半にこの町にたどり着いた。「アフリカーナー(オランダ系移民の子孫)は彼らを歓迎しました」と、フィッシュは話す。 初期の移民の多くは行商人になった。その後に来た人たちは、多くの場合、移住前に日用品や衣類の商売に関わっていた。ユダヤ人は世界中に離散しているため、彼らはロンドンやニューヨークなどの大都市で同じ商売を営む移民コミュニティーとつながりがあった。そのつながりを通じて、オウツフルンのダチョウ産業は大きく成長する。 彼らのネットワークには、牧場を渡り歩いて羽根を買い付けるバイヤーや、羽根を使った製品を作る職人、それを販売する商店主がいた。最盛期には数百世帯のユダヤ人がオウツフルンで暮らした。 フィッシュは地元の歴史が書かれた本を広げ、祖父の写真を指さした。「彼は世界最大のダチョウの飼育家で、1936年に亡くなったときには35ヵ所の牧場を所有していました」。フィッシュの祖父が建てた羽根御殿には、舞踏会場やワインセラー、イタリアのカツラーラ産の大理石を使った巨大な浴場もあった。 その家は現在、レストランや商店、住居、診療所として使われている。その後、ダチョウ取引は宗教とは無関係の協働組合が担うようになり、ユダヤ人たちも減っていった。フィッシュも50年続けたダチョウの仕事から手を引き、せいせいしたという。「ダチョウなんて羽根がきれいなだけのバカな鳥ですよ」と彼は話した。 ダチョウの子育ての仕方について、彼には訊ねなかったが、私はすぐにそれを知る機会があった。ある朝、アフリカ大陸の南端にあるデ・フープ自然保護区で、ダチョウのつがいが何かを食べているところを見た。彼らも私を見ていたが、やがて警戒を解き、9羽のひなも姿を現した。孵化後1~2週間ほどのひなたちは丸々として小さく、首は黄褐色でまだら模様、体毛は短く逆立っていた。ひなたちは食べ物をついばみ、両親はその後ろについていく。『すぐそばのロボット(ナショナルジオグラフィック2020年9月号)』3:ダチョウの共同営巣『すぐそばのロボット(ナショナルジオグラフィック2020年9月号)』2:ダチョウの素顔p84~90『すぐそばのロボット(ナショナルジオグラフィック2020年9月号)』1:日本的なロボットp49~55
2021.12.07
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図書館に予約していた『さえずり言語起源論』という本を、待つこと1週間でゲットしたのです。「BOOK」データベースが「言語の起源は求愛の歌だった」と述べているが・・・何とロマンティックではないか♪【さえずり言語起源論】岡ノ谷一夫著、岩波書店、2010年刊<「BOOK」データベース>よりジュウシマツの歌には「文法」があるーこれが転機をもたらす大発見だった。進化的な起源の異なる小鳥の歌が、言語進化の謎に迫るカギとなるのはなぜなのか。初版刊行から7年半、性淘汰起源説に相互分節化仮説が加わった。「言語の起源は求愛の歌だった」とする進化のシナリオを、苦労と喜びと興奮が満載の研究者人生とともに描く。<読む前の大使寸評>「BOOK」データベースが「言語の起源は求愛の歌だった」と述べているが・・・何とロマンティックではないか♪<図書館予約:(11/20予約、副本1、予約0)>rakutenさえずり言語起源論ジュウシマツ「第9章」で結論めいたあたりを、見てみましょう。p107~110<文法の性淘汰起源説> 私たちのジュウシマツの歌の研究から、たとえ一つひとつは意味をもたない歌要素でも、それらを文法的に配列する行動が進化することがわかった。この事例は、意味のないところにも、文法という形式が進化しうることの存在証明である。これを可能にした要因として、以下が考えられる。 まず、ある行動特性(歌の複雑さなど)がメスによる評価の対象となる。次に、家畜化(ペット化)により減少した淘汰圧のもとで、その行動特性がより極端なところまで進化しうる自由を得る。減少した淘汰圧には、家畜化によって種認識の必要がなくなる過程も含まれる。これらの結果、複雑さを作り出すひとつの方法として、有限状態文法が創発したと考えられるのである。 ここで得られた大切な知見の第一は意味のないところで文法が進化しうること、すなわち、内容と形式が独立に進化しうることである。これを、「内容と形式の独立進化仮説」と呼ぶことにする。第二は、性淘汰は、固体の生存とはかかわりのない形質を進化させる要因となること、また、家禽化によるその他の淘汰圧の緩和は、性淘汰により方向づけられた形質の進化を促進することである。 これらの知見は、そのままの形で人間の言語に敷衍することができる。言語の起源に関する説明は多岐にわたるが、そのほとんどが、まず最初に、動作や音声が特定の意味内容を指し示すシンボルとなることを要請している。そのようにしてシンボルが成立すると、これらを組み合わせて新たな意味を作り出すようになり、その組み合わせを規定する方法が文法である、ということになる。 このような標準的な言語起源の仮説を、「内容と形式の直列進化仮説」と呼ぼう。この仮説は、霊長類を使った言語訓練の研究の根拠となっている。この仮説に則れば、霊長類を訓練し恣意的な記号を特定の意味内容と連合させることは、言語進化の第一段階であるということになる。次にそれらを組み合わさ瀬、より広範な事物を指示できるように訓練し、これをもって言語進化の第二段階を達成したということができる。 たしかに、このような訓練に成功したチンパンジーもいる。また、記号を組み合わせてより広範な事物を指示する行動は、一つの記号がひとつの事物しか指し示さない行動に比べて適応度が高いことが、数理言語学的な研究により示されている。 しかし、この直列進化仮説の問題点は、人間言語の文法のような精緻な構造が、単語の組み合わせにより指示対象が広がることを動力として進化しうるか、という点である。せいぜい、二語が組み合わさり指示対象が広がるところで進化が停止してしまい、言語がもつ複雑な構造をもつには至らないであろう。個々の単語がはじめから意味をもってしまうと、自由な組み合わせが作れないからである。文法の壁が超えられない。 これに対して、独立進化仮説によれば、意味と文法は独立に進化しうる。意味に関しては、シンボルと事物の関係性を社会が共有することで、進化してゆくことは可能である。いっぽう文法については、歌やダンスなどの複雑な時系列行動が性的ディスプレイとして進化してゆき、そのような行動を支える神経機構が、後に言語の文法を支えるものとして流用されたのかもしれない。 実際、大脳基底核と大脳皮質や神経核が作るグループは、小鳥の歌や動物の求愛ダンスを可能にする神経回路であるいっぽう、ヒトでは言語の習得を可能にする神経回路でもある。 以上をまとめ、「ヒト言語の文法の性淘汰起源説」を提唱する。言語の文法構造は、性的なディスプレイとして性淘汰により進化して行動を支えているのと同じ神経機構が受け持っている。 人間は、集団生活、道具の仕様、農耕牧畜によって自己の棲む環境を安全で豊かなものに作り変えてきた。これを「自己家畜化」過程と呼ぼう。性的ディスプレイを有限状態文法にまで進化させるのは、性淘汰によって当初方向づけられた行動が、人間の自己家畜化により制約を緩和されたことで、より極端な方向に変異が蓄積されていった結果である。『さえずり言語起源論』3:複雑な歌をうたうジュウシマツ『さえずり言語起源論』2:小鳥の歌とヒトの言葉の共通点『さえずり言語起源論』1:小鳥の歌とヒトの言葉
2021.12.07
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『朝日デジタルの書評から』フォームや『読みたい本』フォームを作っているのだが、これを市図書館の予約に利用しようと、思い立ったのです。これまでの予約内容と予約候補は以下のとおりです。<予約中>・52ヘルツのクジラたち(4/15予約、副本20、予約592)現在146位・『ザリガニの鳴くところ』(6/04予約、副本17、予約315)現在107・ブレイディみかこ『他者の靴を履く』(8/14予約、副本8、予約81)現在31位・養老先生、病院へ行く(9/30予約、副本12、予約252)現在189位・堤未果『デジタル・ファシズム』(10/04予約、副本5、予約40)現在18位・伊坂幸太郎『ペッパーズ・ゴースト』(10/30予約、副本7、予約202)現在185位・宮家邦彦『米中戦争』(11/09予約、副本1、予約14)現在14位・松村圭一郎『くらしのアナキズム』(11/27予約、副本1、予約15)現在16位・猫が30歳まで生きる日』(12/06予約、副本2、予約24)<カートで待機中>・N・ネフスキー著『月と不死』・8月の果て・ある日うっかりPTA(副本4、予約39)・グレタたったひとりのストライキ<予約候補>・『コロナ危機の政治』・村山斉『宇宙はなぜ美しいのか』:図書館未収蔵 ・小野正嗣『歓待する文学』:図書館未収蔵 ・「諸星大二郎の世界」・『プラスチック・フリー生活』・日本文学100年の名作(6巻):西図書館でみっけ・松本大洋『東京ヒゴロ 1』:図書館未収蔵・『中国戦線、ある日本人兵士の日記』・山口晃『すヾしろ日記 参』:図書館未収蔵 ・片岡義男『言葉の人生』:図書館未収蔵・小野正嗣『多和田語の世界』:図書館未収蔵・本村凌二『馬の世界史』・藻谷浩介『進化する里山資本主義』・クレア・ベンサント『ネコ学入門』:図書館未収蔵・橋本治『黄金夜界』・中園成生『日本捕鯨史』・ジョージ・ミーガン『世界最長の徒歩旅行』:図書館未収蔵・ネルケ無方著『迷える者の禅修業』:図書館未収蔵<予約分受取:11/04以降> ・半沢直樹 アルルカンと道化師(4/06予約、11/04受取)・生態学者の目のツケドコロ(6/28予約、11/04受取)・向田邦子 『父の詫び状』(10/06予約、11/09受取)・高野秀行「怪獣記」(11/03予約、11/09受取)・白井聰『武器としての「資本論」』(4/06予約、11/13受取)・島田雅彦『君が異端だった頃』(11/12予約、11/19受取)・福岡伸一『生命海流』(7/24予約、11/19受取)・岡ノ谷一夫『さえずり言語起源論』(11/20予約、11/28受取)・ブリーディング・エッジ(8/22予約、12/01受取)・桐野夏生『日没』(4/24予約、12/05受取)**********************************************************************【52ヘルツのクジラたち】町田そのこ著、中央公論新社、2020年刊<「BOOK」データベース>より52ヘルツのクジラとはー他の鯨が聞き取れない高い周波数で鳴く、世界で一頭だけのクジラ。たくさんの仲間がいるはずなのに何も届かない、何も届けられない。そのため、世界で一番孤独だと言われている。自分の人生を家族に搾取されてきた女性・貴瑚と、母に虐待され「ムシ」と呼ばれていた少年。孤独ゆえ愛を欲し、裏切られてきた彼らが出会い、新たな魂の物語が生まれるー。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(4/15予約、副本20、予約592)>rakuten52ヘルツのクジラたち【ザリガニの鳴くところ】ディーリア・オーエンズ著、早川書房、2020年刊<商品の説明>よりノースカロライナ州の湿地で村の青年チェイスの死体が発見された。人々は真っ先に、「湿地の少女」と呼ばれているカイアを疑う。6歳のときからたったひとりで生き延びてきたカイアは、果たして犯人なのか? 不気味な殺人事件の?末と少女の成長が絡み合う長篇<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(6/04予約、副本17、予約315)>rakutenザリガニの鳴くところ【他者の靴を履く】ブレイディみかこ著、文藝春秋、2021年刊<「BOOK」データベース>より“負債道徳”、ジェンダーロール、自助の精神…エンパシー(意見の異なる相手を理解する知的能力)×アナキズムが融合した新しい思想的地平がここに。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(8/14予約、副本8、予約81)>rakuten他者の靴を履く【養老先生、病院へ行く】養老孟司著、エクスナレッジ、2021年刊<「BOOK」データベース>より自身の大病、そして愛猫「まる」の死ー。医療との関わり方、人生と死への向き合い方を、みずからもがん患者である東大病院の名医とともに語る。漫画家ヤマザキマリさんとの鼎談も収録。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(9/30予約、副本12、予約252)>rakuten養老先生、病院へ行く【デジタル・ファシズム】堤未果著、NHK出版、2021年刊<「BOOK」データベース>より行政、金融、教育。国の心臓部である日本の公共システムが、今まさに海外資本から狙われていることをご存知だろうか?コロナ禍で進むデジタル改革によって規制緩和され、米中をはじめとする巨大資本が日本に参入し放題。スーパーシティ、デジタル給与、オンライン教育…いったい今、日本で何が起きているのか?気鋭の国際ジャーナリストが緻密な取材と膨大な資料をもとに明かす、「日本デジタル化計画」驚きの裏側!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(10/04予約、副本5、予約40)>rakutenデジタル・ファシズム【ペッパーズ・ゴースト】伊坂幸太郎著、朝日新聞出版、2021年刊<出版社>より少しだけ不思議な力を持つ、中学校の国語教師・檀(だん)と、女子生徒の書いている風変わりな小説原稿。生徒の些細な校則違反をきっかけに、檀先生は思わぬ出来事に巻き込まれていく。伊坂作品の魅力が惜しげもなくすべて詰めこまれた、作家生活20年超の集大成!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(10/30予約、副本7、予約202)>amazonペッパーズ・ゴースト【米中戦争】宮家邦彦著、朝日新聞出版、2021年刊<「BOOK」データベース>よりこれは対岸の火事ではないー最新地政学で読み解く、米中攻防の行方。米中の武力衝突は決してフィクションではない。安全保障学の重鎮である著者が、米国と中国の最新情勢を分析した上で、平時と有事の隙間をつく“グレーゾーン事態”を含む、情報、サイバー、宇宙、電磁界など多次元に広がった「ハイブリッド戦争」の最前線に迫り、二つの大国間で起こりうる軍事対立の見取り図を描く!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(11/09予約、副本1、予約14)>amazon米中戦争【くらしのアナキズム】松村圭一郎著、 ミシマ社、2021年刊<「BOOK」データベース>より国家は何のためにあるのか?ほんとうに必要なのか?「国家なき社会」は絶望ではない。希望と可能性を孕んでいる。よりよく生きるきっかけとなる、“問い”と“技法”を人類学の視点からさぐる。アナキズム=無政府主義という捉え方を覆す、画期的論考!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(11/27予約、副本1、予約15)>rakutenくらしのアナキズム【猫が30歳まで生きる日】宮崎徹著、 時事通信出版局、2021年刊<「BOOK」データベース>よりAIM治療で、医療革命が起こる!猫にとって宿命的な病、腎臓病。長らく不明だったその原因がついに解明された。血液中のタンパク質「AIM(Apoptosis Inhibitor of Macrophage)」で治療が可能になるのだ。さらにAIMは、猫だけでなく人間にも効き、また腎臓病のみならず、アルツハイマー型認知症や自己免疫疾患など、これまで“治せない”と言われてきた病気への活用も期待できる。最新医療研究のリアルがここにある。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約(12/06予約、副本2、予約24)>rakuten猫が30歳まで生きる日【月と不死】N・ネフスキー著、平凡社、1971年刊<出版社>より著者は日本民俗学界の異色の存在として知られるロシア人学者で,柳田国男,折口信夫らと親交を結び,沖縄,東北などの民俗を採録した。本書は日本語で発表された論文・書簡を網羅した唯一の著作集。<読む前の大使寸評>ロシア人にして、日本民俗学界の異色の存在が気になるのです。<図書館予約:(とりあえずカートに入れておこう)>heibonsha月と不死【8月の果て】柳美里著、新潮社、2007年刊<「BOOK」データベース>より日本統治下の朝鮮・密陽に生を受け、マラソンでの五輪出場を目指した亡き祖父・李雨哲。そのうしろ姿を追い、路上を駆けることを決意した柳美里。ふたりの息づかいが時空を越えて重なる瞬間、日本と朝鮮半島のあわいに消えた無数の魂が封印を解かれ、歴史の破れ目から白い頁に甦る。偉丈夫の雨哲と美丈夫の弟・雨根。血族をめぐる、ふたつの真実の物語が、いま日本文学を未踏の高みへと押し上げる。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(とりあえずカートに入れておこう)>rakuten8月の果て図書館予約の運用にも慣れて、速攻で入手するコツも何となくつかんだと思うのだ♪・朝日書評欄で探すとしたら、3ヶ月前掲載くらいのモノが狙い目かも。・専門的すぎるほどのモノは、予約0となっていることが多い。・受取館に収蔵しているモノは、移送する手間が省けるので早くなるだろう。・本屋の店頭に出た直後の新刊本・ウィキペディアでめぼしい著作を探す・神戸市図書館の予約順位は毎週火曜日(午前1時~3時) に更新されます。・Kindle版を購入すれば、その本の全て読めるのだが、紙の本から書き写す手間が好きなわけでおます。予約分受取目録R26好書好日トップ図書館情報ネットワーク 蔵書検索システム
2021.12.06
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三宮の古書店で『すぐそばのロボット(ナショナルジオグラフィック2020年9月号)』という雑誌が目についたが、めくってみると、ダチョウの特集があるではないか・・・それに値段も300円とリーズナブルなんで買い求めたのです。帰って調べてみると今年の3月に図書館で借りていたので、この記事を(その3)とします。*********************************************************図書館で『すぐそばのロボット(ナショナルジオグラフィック2020年9月号)』という雑誌を、手にしたのです。おお ナショナルジオグラフィックのロボット特集ではないか、これは借りるしかないでえ♪【すぐそばのロボット(ナショナルジオグラフィック2020年9月号)】雑誌、日経ナショナルジオグラフィック社、2020年刊<商品の説明>より【特集】●ロボットがいる日常これまで人間が果たしてきた役割を、ロボットが担うようになってきた。今やロボットは工場で人間とチームを組んで製品を組み立て、大型店舗で在庫の管理や清掃作業に活躍し、農場で作物を収穫し、介護やリハビリを助けている。人間とロボットが共生する時代は、すでに始まっている。●ダチョウの素顔世界最大の鳥、ダチョウ。捕食者だらけの世界で、したたかに生き抜き、子育てする姿を追った。<読む前の大使寸評>おお ナショナルジオグラフィックのロボット特集ではないか、これは借りるしかないでえ♪amazonすぐそばのロボット(ナショナルジオグラフィック2020年9月号)ダチョウの共同営巣を、見てみましょう。(文:リチャード・ニコフ)p91~94<ほかの雌の卵も育てる「共同営巣」> ある日の午後、たくさんのダチョウが暮らす一角を見つけた。私たちの前方では、1羽の雌が巣に座り込んでいる。巣の主人である雄は数百メートル離れたところで草を食べていて、さほど注意を払っているようには見えない。ところが別の雄が750メートル以上も離れた場所に姿を現すと、断固たる足取りで侵入者に近づいていった。パートナーを独占するために、ライバルを追い払おうというのだ。 さらに驚くのは、巣を構えたつがいが、訪れてくる別の雌たちに対して示す反応だ。鳥のなかには、子育てという退屈な仕事を免れるために、自分の卵をほかの鳥の巣に紛れ込ませようとするものがいる。ダチョウ以外の鳥たちは、この「托卵(たくらん)」をする鳥を寄せつけないため、防御策を考え出してきた。 ダチョウは違う。別の雌が近づいてくると、巣を守る雌は立ち上がって脇に寄り、訪問者に、自分の卵の横に産卵させることがよくある。ある研究によれば、巣を守る雌が首尾よく孵化させられる19~20個の卵のうち、通常、自分の卵は半分程度にとどまるという。残りは別の雌のものだ。 これは托卵というよりも共同営巣であり、複数の相手との交尾と同様に、危険に満ちた世界でダチョウが繁殖を成功させるための方法なのだ。 雌のダチョウたちの関係は姉妹愛に満ちているわけではない。1979年に共同営巣について初めて詳述した生物学者のブライアン・バートラムによると、巣を守る雌にはあまり選択肢がないのかもしれない。訪れた雌を拒めば争いが起き、ライオンなどの捕食者を引き寄せかねない。大半を占める自分の卵が割れるおそれもあるし、その臭いをかぎつけてハイエナやジャッカルがやって来るかもしれない。 共同営巣は巣を構えたつがいにも一定の利益をもたらすと、バートラムは述べている。一帯の多くの雌と関係をもつ雄にとっては、近隣の雌たちが巣に産みに来る卵のおそらく3分の1ほどは、自分が受精させたものだ。巣を守る雌にとっても、ほかの雌の卵を巣に入れることでリスクが減る。 どうやって見分けるのかは不明だが、雌は自分の卵を常に巣の中央に置き、別の雌の卵を外側に追いやるのだ。孵化してからも、より多くのひなが一緒にいれば、自分のひなが捕食者に殺される確率が低くなる。『すぐそばのロボット(ナショナルジオグラフィック2020年9月号)』2:ダチョウの素顔p84~90『すぐそばのロボット(ナショナルジオグラフィック2020年9月号)』1:日本的なロボットp49~55
2021.12.06
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図書館に予約していた『生命海流』という本を、待つこと4ヵ月ほどでゲットしたのです。折しも朝日新聞が「ドリトル先生 ガラパゴスを救う」を連載している今、福岡先生のガラパゴス航海記を読んでみようではないか。【生命海流】福岡伸一著、朝日出版社、2021年刊<「BOOK」データベース>より福岡伸一、ガラパゴス諸島へ。ダーウィン進化論を問い、“本来の生命のあり方”を精密に描き出す。旅のリアルと思索が行き来する、まさしく「動的平衡」なガラパゴス航海記。<読む前の大使寸評>折しも朝日新聞が「ドリトル先生 ガラパゴスを救う」を連載している今、福岡先生のガラパゴス航海記を読んでみようではないか。<図書館予約:(7/24予約、副本1、予約16)>rakuten生命海流次の寄港地・イザベラ島を、見てみましょう。p146~149<3月5日 イザベラ島> 航路はおよそ180キロほどあり、マーベル号の時速は平均15キロなので、夜通し、暗い海を進むことになる。 私はノートにその日あったことをメモして、フロレアナ島に住み着いた人たちのことを思いながら、早めにベッドに入った。夜半、ふと目が覚めた。暗がりで時計を見ると、午前1時14分だった。船窓から外を覗くも暗い海しか見えない。 ウィンドブレーカーを羽織って甲板に出てみた。あたたかい風が暗い海を吹き渡っていた。そして空を見上げると満天の星だった。都会では考えられないほどの星屑が散らばっていた。船の赤と緑の標識灯以外、あたりには一切あかりもないのだ。 オリオン座の三ツ星はすぐにわかったが、あとの星座がわからない。そう、ここは南半球なのだ。どこかに南十字星が見えるはずだ。目が暗さになれるにしたがって、どんどん星の数が増えていった。星は目の端で見た方がよく見える。網膜の周辺部の方が明暗に敏感な視細胞がたくさんあるからだ。空の中心に天の川がゆったりと流れている。ここには星空と自分しかいない。 (中略) ここでは、ネットのWi—Fiなどない。携帯の電波さえ届かない。バーチャルな次元から一切、切り離される。その日、一日のなまの体験があるだけだ。見て、歩き、泳ぎ、食べ、排泄し、眠る。それだけで精一杯だ。 そうなると不思議なことに、ネットのニュースや仕事のメールなんか、まったく見たいとは思えなくなる。そんなことはどうでもよくなる。芸能人の誰それが不倫をしたとか、クスリで逮捕されたとか、そんなことにも興味がなくなる。つまり私を拘束していた、あらゆるロゴスから解放されるのだ。(中略) ロゴスの最たるもの。つまり、バーチャルな次元は、生命にとってもっとも重要なこの原則(有限性の中にあるからこそ自由に価値がある)というこの原則を無化し、無化することによって逆に生命を損なっているのではないだろうか。 急に夜風が冷たくなってきた。私はウィンドブレーカーの襟を寄せて、船内に戻り、もう一度、眠ることにした。航路はまだ長い。 外が白んでいることに気がついて、目が覚めた。快晴だ。窓から島と山が見える。私は、急いで着替えると甲板に出た。雄大な島影の全貌がくっきりと見渡せた。それはまさに夢にまで見たガラパゴスの光景だった。 なだらかに左右に広がる広大な台地のような火山の山腹には、溶岩流が作り出した縦縞の濃淡が幾筋も並んでいる。それは疾走するシマウマのようにも、横たわる竜の鱗模様のようにも、あるいは奇妙なことに、スキー場のゲレンデのようにも見える。古い溶岩流と新しい溶岩流の上に作られつつある植生の違いが、この光景を作り出していることがわかる。溶岩流はそのまま海にまで達し、荒々しい海岸線を作り出している。むろんのこと人工物は一切見当たらない。 地図と照合してみると、今、私の目の前に広がるのは、イサベラ島の南部を構成するセロ・アスール火山とそれに連なるシエラ・ネグラ火山だとわかる。いずれも1000メートル超級の山岳で、同じイサベラ島を形成する複数の火山のうち、比較的古く形成されたものである。その分、風化と緑化が進んでいる。『生命海流』5:最初の寄港地・フロレアナ島『生命海流』4:マーベル号の出航『生命海流』3:まえがき(続き)『生命海流』2:まえがき(続き)『生命海流』1:まえがき
2021.12.05
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図書館で『昭和遺産探訪』という本を手にしたのです。ぱらぱらとめくってみると、蛇屋のつぎはエロ劇画があったりでかなり危うい感じが、ええでぇ【昭和遺産探訪】藤木TDC 著、宝島社、2012年刊<「BOOK」データベース>よりなぜ生き残る。路地裏“絶滅危惧種”の「娯楽力」と「癒し力」。<読む前の大使寸評>ぱらぱらとめくってみると、蛇屋のつぎはエロ劇画があったりでかなり危うい感じが、ええでぇamazon昭和遺産探訪立ち飲み屋が語られているので、見てみましょう。p124~127<立ち飲み屋:渋谷区桜丘町>■高度成長が遺した大人のおやつ空間 どこか戦後の混乱を感じさせる渋谷駅南の桜丘町に夜の帳が下りる午後5時。路地裏にある雑居ビルの地下階段へ背広姿の中年男がひとり、またひとり吸い込まれてゆく。 彼らが向かうのは天国だ。といっても死後の世界やピンクの灯またたく女体の海ではない。“立ち飲み屋”という名のごく質素で庶民的な天国だ。 店の名は「富士屋本店」。そこには最先端の流行発信地・渋谷とは思えない伝統的なオヤジ空間が残っている。20坪はあろう広いフロアをめぐる使い込んだ凹の字型カウンター。もちろん椅子はない。大人の男性が直立したヘソ上あたり、立ったままでグラスを握るのにちょうどいい高さにカウンターがある。 同店が現店舗で営業を始めて40数年。100人は客が入ろうという巨大な立ち飲み屋は都内では非常に珍しい。高度成長期の名残gは感じられる貴重な店だ。 ビール大瓶450円、酒は1合280円、つまみも200~300円台がほとんど。サクッと飲んで勘定は1000円とちょっと。フトコロ寒き大不況の時代には、まさに天国の価格帯である。 午後5時の開店とともに、引きも切らず客が訪れる。客はひとり、あるいは2~3人で飲んでいる。仕事が終わるや即、浸りたい気持ちもよく分かる。ここには成果主義の口うるさい上司もいなければ、薄給への愚痴をまくしたてる細君もいない。自分だけの世界に没入できる異空間だ。■メディアを席巻する立ち飲みブームとの差異 近年、東京は立ち飲み屋の開店がブームだ。 料亭も舌を巻く美酒美肴や個性的な店舗を売りにする個人店が雑誌をにぎわせる。「日本再生酒場」のエムファクトリーや、「立ち呑み、かぶら屋」のフードゲートなど、チェーン系の立ち飲み屋を展開する外食企業も登場した。 視界を広げれば、都心部ではアイリッシュパブ風、スペインバル風の店も増え、女性に圧倒的人気を博している。かつて仕事に疲れたオヤジの独壇場だった立ち飲みスタイルは、今や幅広い客層に開かれた。 こうしたブームは極小物件で外食営業の可能性を探る実験精神と、狭い店舗でいかに客の密度をあげ、回転率を高めるかという合理主義から生み出された。要は、ロードサイドの大型店と対極の業態を追及した解答なのである。 店員の若年化やトイレの美化など、新しい店は立ち飲みを敬遠していた世代や職種を引き寄せる改善がなされた。 一方でグループ客が増え、大型居酒屋と雰囲気が変わらなくなったし、料理の質を追求する店はチャージ料があったりで会計もさほど安くない。喫煙にやかましかったりプロ野球中継が流されなかったり、オヤジ世代の嗜好を抑圧する方向性も現れ始めている。 その点、「富士屋本店」はあらゆるオヤジの欲望を容認する空気がある。堂々と煙草をやれる。爪楊枝で前歯をせせっても冷ややかに見られない。臆面もなくエロ話ができる。ゆったりした店ゆえ、周囲の雑音すらおだやかで心地よい。ここだけは若い奴らにはゆずらないという気概が店からも客からも漂ってくる。 かつて周辺に数軒あった同業態の酒場は再開発と若者文化の波にのまれ消えていったが、この店だけが渋谷で昭和の夢幻を維持できた。「それは店が自己所有だからやっていけるんで、家賃払ってたら、うちの料金じゃ店員の給料まで出せないわよ」 女将が苦笑する。なるほど、昭和の空気を守り続けるのも実は簡単ではないのだ。『富士屋本店・公式サイトによれば、惜しまれつつ閉店した富士屋本店・桜丘町が復活したそうです。『昭和遺産探訪』1
2021.12.04
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図書館で『昭和遺産探訪』という本を手にしたのです。ぱらぱらとめくってみると、蛇屋のつぎはエロ劇画があったりでかなり危うい感じが、ええでぇ【昭和遺産探訪】藤木TDC 著、宝島社、2012年刊<「BOOK」データベース>よりなぜ生き残る。路地裏“絶滅危惧種”の「娯楽力」と「癒し力」。<読む前の大使寸評>ぱらぱらとめくってみると、蛇屋のつぎはエロ劇画があったりでかなり危うい感じが、ええでぇamazon昭和遺産探訪コリアンタウンの焼肉が述べられているので、見てみましょう。p17~19<コリアンタウン:台東区東上野>■コリアンタウンは完全に大衆のものに 1910年(明治43年)の朝鮮併合以降、半島や済州島から東京や大阪に多くの人々が出稼ぎにやってきた。また太平洋戦争が始まると、徴用によって強制的に日本で労働させられた人々もいる。彼らは45年(昭和20年)、日本敗戦とともに解放されたが、なかには戦後、日本に残り、事業を興し定住した人々もいた。彼らの作ったコミュニティの多くが現在、コリアンタウンと呼ばれる地域になった。 日本最大のコリアンタウンは大阪の鶴橋ににある。東京近郊では荒川区三河島、江東区枝川、川崎市浜町などが、戦前からコリアンが多く住む街として知られる。新宿歌舞伎町の北側、新大久保一帯のように、70年代以降に日本へやってきた韓国人によって作られた新しいコリアンタウンもある。 韓流ブームにのり、今や新大久保コリアンタウンは歌舞伎町を凌駕する人気。客の大半が女性というのも、かつてなら考えにくい現象だ。コリアンタウンは、日本で完全に大衆のものになった。 ■昭和の激動が生んだ在日コリアンたちの街 東上野も歴史の古いコリアンタウンだが、その成立の経緯は他の地区とやや異なる。 戦後、上野駅のガード下にできた巨大なマーケット「アメ横」で起きた日本字と戦勝国民の抗争を背景に、和解を望む韓国・朝鮮人たちが昭和通りの向こう側へ店舗を移転し築いた商店街が、前身である「上の親善マーケット」だ。つまりそこは終戦直後の混乱の中から、人為的に作りだされた街なのだ。 現在の東上野コリアンタウンは食材店と焼肉店がほとんどを占める。今や日本の国民食となった焼肉は、在日韓国・朝鮮人たちによって作りだされ発展・布教していった。当地の人々は「日本の焼肉の味やスタイルは我々が試行錯誤の末に作りだしたものだ」と胸を張って語る。 だが70年代、瓶詰の「焼肉のたれ」が発売され、焼肉は家庭でも味わえるものになる。昨今は廉価の焼肉チェーン店も増えた。それでもこの古色蒼然としたコリアンタウンの人気は衰えることはない。 焼肉店「京城苑」は二間四方の三階建て、築40年以上の店舗は狭く、壁は油煙で茶色に煤けている。だが、そんな店にも行列ができ、若い女性グループが飛び込んでくる。誰もが「本物の味」を求めているのだと店主はいう。 古めかしいガスコンロの上で、焼肉の脂がバチバチとはじけ、獣の匂いのする煙があがる。高級スーツやブランド服ならだいなしになる。それでも客は顔に笑みと驚愕を隠さず、焼肉をほおばり続ける。この街には焼肉の原点がある。独特なタレに、在日コリアンたちの激動の歴史が溶け込んでいるのだ。
2021.12.04
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図書館に予約していた『さえずり言語起源論』という本を、待つこと1週間でゲットしたのです。「BOOK」データベースが「言語の起源は求愛の歌だった」と述べているが・・・何とロマンティックではないか♪【さえずり言語起源論】岡ノ谷一夫著、岩波書店、2010年刊<「BOOK」データベース>よりジュウシマツの歌には「文法」があるーこれが転機をもたらす大発見だった。進化的な起源の異なる小鳥の歌が、言語進化の謎に迫るカギとなるのはなぜなのか。初版刊行から7年半、性淘汰起源説に相互分節化仮説が加わった。「言語の起源は求愛の歌だった」とする進化のシナリオを、苦労と喜びと興奮が満載の研究者人生とともに描く。<読む前の大使寸評>「BOOK」データベースが「言語の起源は求愛の歌だった」と述べているが・・・何とロマンティックではないか♪<図書館予約:(11/20予約、副本1、予約0)>rakutenさえずり言語起源論第1章の続きを、見てみましょう。p4~6<小鳥の歌とヒトの言葉の共通点> さて、小鳥の歌の神経科学が80以上の研究室を擁するほど活発な理由は、「小鳥の歌がヒトの言語を理解するための行動学的・神経科学的なモデルになる」とされるからである。この言明がまかりとおる理由をまず解説しよう。 まず行動そのものを考えよう。小鳥の歌もヒトの言葉も、複数のシステムの協調により可能になる行動である。どちらも吐く息が発声器官を駆動して音声が作られるわけだが、小鳥と人間ではこの部分に若干の違いがある。 ヒトでは喉頭にある声帯が振動して音を作るが、小鳥では左右の気管支にある鳴管(めいかん)という器官が音源である。したがって、鳥では音源が二つあることになる。鳴管がどのようなしくみで音を作るかについては未だに議論が続いているが、現在ではおおまか次のしくみで発生されると考えられている。 肺からの呼気が気管支を通る際、鳴管のまわりの筋肉により気管支の径が変化する。また、鳴管の内側と外側は薄い膜によりできているため、鳴管の下の部分が上の部分に挿入され、複雑な空気の流れを作る。これにより渦ができ、渦が振動して発音するらしい。 ヒトでは、声帯で作られた音がのどや鼻、上あごの内側や舌、歯によりさまざまに変化して発生される。鳥でも、鳴管で作られた音が気道、クチバシへと抜け出る間に特性を変え発せられる。発生のしくみが異なることをのぞけば、ヒトも鳥も、呼気をエネルギー源として音を作り、音源から先がフィルターとして働いて音に多様性をつけるという点で、非常に似たしくみで音を作っているといえる。 ヒトにおいても鳥においても、発声することは、複数の独立した筋肉群をきわめて精密に協調させることで可能になる行動なのである。ここで、白亜紀後期の鳥の発声器官についてネットを見てみましょう。恐竜の話題より■白亜紀後期の鳥、ヴェガヴィスの発声器官話題25で触れたように、爬虫類のワニや哺乳類の発声器官は喉頭(こうとう)にありますが、現在の鳥類の喉頭は生じた音声の調整をおこなうことはあっても(文献3)、発声そのものにはかかわっていないとみなされています。喉頭よりも奥、気道が二股に分かれた部分にある鳴管(めいかん)を使って鳴き声を出します。古代の鳥類がどのような発声のための器官をもっていたのかは、これまでよくわかっていませんでした。ワニの発声器官(喉頭)と鳥の発声器官(鳴管)の位置このヴェガヴィスの化石が見つかった場所は南極半島。文献2ではX線CT(X線コンピュータ断層撮影法)でスキャンした結果を12種の現生鳥類の鳴管から得られたデータとも比較し、この鳥の気道部分の3次元構造を再現しました。再現された1センチくらいの大きさのこの器官には、気道周りの軟骨の一部が完全なリング状ではないこと、この器官の左側と右側で形が非対称となっていること、という現代の鳥類の鳴管の形態的な特徴がよく保存されていました。また、鳴管の内部には、気管支の腹面と背面とを気道をまたいで連結するカンヌキ骨(ペッサルス、pessulus)もヴェガヴィスにあることがわかりました。これは現生鳥類でもダチョウなどが属する古顎類(こがくるい)には存在しないものです(ただし、南米に棲むレアにはかすかな構造物が認められるそうです)。化石の中に残ったこうした構造の中に、もとは空気を振動させるヒダ状の立派な柔組織があったことは間違いありません。(中略)ヴェガヴィスはカモ、アヒル、そしてハクチョウに近い鳥です。これらの鳥と似た鳴き声を出していたと考えられます。始祖鳥から現代の鳥類に進化する過程に、ヴェガヴィスがいたようですね。ヴェガヴィスの生態復元想像図『さえずり言語起源論』1
2021.12.03
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『朝日デジタルの書評から』フォームや『読みたい本』フォームを作っているのだが、これを市図書館の予約に利用しようと、思い立ったのです。これまでの予約内容と予約候補は以下のとおりです。<予約中>・52ヘルツのクジラたち(4/15予約、副本20、予約592)現在146位・桐野夏生『日没』(4/24予約、副本24、予約300)現在4位・『ザリガニの鳴くところ』(6/04予約、副本17、予約315)現在107・ブレイディみかこ『他者の靴を履く』(8/14予約、副本8、予約81)現在31位・養老先生、病院へ行く(9/30予約、副本12、予約252)現在189位・堤未果『デジタル・ファシズム』(10/04予約、副本5、予約40)現在18位・伊坂幸太郎『ペッパーズ・ゴースト』(10/30予約、副本7、予約202)現在185位・宮家邦彦『米中戦争』(11/09予約、副本1、予約14)現在14位・松村圭一郎『くらしのアナキズム』(11/27予約、副本1、予約15)現在16位<カートで待機中>・N・ネフスキー著『月と不死』・8月の果て・ある日うっかりPTA(副本4、予約39)・グレタたったひとりのストライキ<予約候補>・『コロナ危機の政治』・村山斉『宇宙はなぜ美しいのか』・小野正嗣『歓待する文学』:図書館未収蔵 ・「諸星大二郎の世界」・『SFマンガ傑作選』・日本文学100年の名作(6巻):西図書館でみっけ・松本大洋『東京ヒゴロ 1』:図書館未収蔵・猫が30歳まで生きる日:図書館未収蔵・『中国戦線、ある日本人兵士の日記』・山口晃『すヾしろ日記 参』:図書館未収蔵 ・片岡義男『言葉の人生』:図書館未収蔵・小野正嗣『多和田語の世界』:図書館未収蔵・本村凌二『馬の世界史』・藻谷浩介『進化する里山資本主義』・クレア・ベンサント『ネコ学入門』:図書館未収蔵・橋本治『黄金夜界』・中園成生『日本捕鯨史』・ジョージ・ミーガン『世界最長の徒歩旅行』:図書館未収蔵・ネルケ無方著『迷える者の禅修業』:図書館未収蔵<予約分受取:10/21以降> ・日本文学100年の名作:10巻「バタフライ和文タイプ事務所」(10/17予約、10/21受取)・半沢直樹 アルルカンと道化師(4/06予約、11/04受取)・生態学者の目のツケドコロ(6/28予約、11/04受取)・向田邦子 『父の詫び状』(10/06予約、11/09受取)・高野秀行「怪獣記」(11/03予約、11/09受取)・白井聰『武器としての「資本論」』(4/06予約、11/13受取)・島田雅彦『君が異端だった頃』(11/12予約、11/19受取)・福岡伸一『生命海流』(7/24予約、11/19受取)・岡ノ谷一夫『さえずり言語起源論』(11/20予約、11/28受取)・ブリーディング・エッジ(8/22予約、12/01受取)**********************************************************************【52ヘルツのクジラたち】町田そのこ著、中央公論新社、2020年刊<「BOOK」データベース>より52ヘルツのクジラとはー他の鯨が聞き取れない高い周波数で鳴く、世界で一頭だけのクジラ。たくさんの仲間がいるはずなのに何も届かない、何も届けられない。そのため、世界で一番孤独だと言われている。自分の人生を家族に搾取されてきた女性・貴瑚と、母に虐待され「ムシ」と呼ばれていた少年。孤独ゆえ愛を欲し、裏切られてきた彼らが出会い、新たな魂の物語が生まれるー。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(4/15予約、副本20、予約592)>rakuten52ヘルツのクジラたち【日没】桐野夏生著、岩波書店、2020年刊<「BOOK」データベース>よりあなたの書いたものは、良い小説ですか、悪い小説ですか。小説家・マッツ夢井のもとに届いた一通の手紙。それは「文化文芸倫理向上委員会」と名乗る政府組織からの召喚状だった。出頭先に向かった彼女は、断崖に建つ海辺の療養所へと収容される。「社会に適応した小説」を書けと命ずる所長。終わりの見えない軟禁の悪夢。「更生」との孤独な闘いの行く末はー。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(4/24予約、副本24、予約300)>rakuten日没【ザリガニの鳴くところ】ディーリア・オーエンズ著、早川書房、2020年刊<商品の説明>よりノースカロライナ州の湿地で村の青年チェイスの死体が発見された。人々は真っ先に、「湿地の少女」と呼ばれているカイアを疑う。6歳のときからたったひとりで生き延びてきたカイアは、果たして犯人なのか? 不気味な殺人事件の?末と少女の成長が絡み合う長篇<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(6/04予約、副本17、予約315)>rakutenザリガニの鳴くところ【他者の靴を履く】ブレイディみかこ著、文藝春秋、2021年刊<「BOOK」データベース>より“負債道徳”、ジェンダーロール、自助の精神…エンパシー(意見の異なる相手を理解する知的能力)×アナキズムが融合した新しい思想的地平がここに。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(8/14予約、副本8、予約81)>rakuten他者の靴を履く【養老先生、病院へ行く】養老孟司著、エクスナレッジ、2021年刊<「BOOK」データベース>より自身の大病、そして愛猫「まる」の死ー。医療との関わり方、人生と死への向き合い方を、みずからもがん患者である東大病院の名医とともに語る。漫画家ヤマザキマリさんとの鼎談も収録。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(9/30予約、副本12、予約252)>rakuten養老先生、病院へ行く【デジタル・ファシズム】堤未果著、NHK出版、2021年刊<「BOOK」データベース>より行政、金融、教育。国の心臓部である日本の公共システムが、今まさに海外資本から狙われていることをご存知だろうか?コロナ禍で進むデジタル改革によって規制緩和され、米中をはじめとする巨大資本が日本に参入し放題。スーパーシティ、デジタル給与、オンライン教育…いったい今、日本で何が起きているのか?気鋭の国際ジャーナリストが緻密な取材と膨大な資料をもとに明かす、「日本デジタル化計画」驚きの裏側!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(10/04予約、副本5、予約40)>rakutenデジタル・ファシズム【ペッパーズ・ゴースト】伊坂幸太郎著、朝日新聞出版、2021年刊<出版社>より少しだけ不思議な力を持つ、中学校の国語教師・檀(だん)と、女子生徒の書いている風変わりな小説原稿。生徒の些細な校則違反をきっかけに、檀先生は思わぬ出来事に巻き込まれていく。伊坂作品の魅力が惜しげもなくすべて詰めこまれた、作家生活20年超の集大成!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(10/30予約、副本7、予約202)>amazonペッパーズ・ゴースト【米中戦争】宮家邦彦著、朝日新聞出版、2021年刊<「BOOK」データベース>よりこれは対岸の火事ではないー最新地政学で読み解く、米中攻防の行方。米中の武力衝突は決してフィクションではない。安全保障学の重鎮である著者が、米国と中国の最新情勢を分析した上で、平時と有事の隙間をつく“グレーゾーン事態”を含む、情報、サイバー、宇宙、電磁界など多次元に広がった「ハイブリッド戦争」の最前線に迫り、二つの大国間で起こりうる軍事対立の見取り図を描く!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(11/09予約、副本1、予約14)>amazon米中戦争【くらしのアナキズム】松村圭一郎著、 ミシマ社、2021年刊<「BOOK」データベース>より国家は何のためにあるのか?ほんとうに必要なのか?「国家なき社会」は絶望ではない。希望と可能性を孕んでいる。よりよく生きるきっかけとなる、“問い”と“技法”を人類学の視点からさぐる。アナキズム=無政府主義という捉え方を覆す、画期的論考!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(11/27予約、副本1、予約15)>rakutenくらしのアナキズム【月と不死】N・ネフスキー著、平凡社、1971年刊<出版社>より著者は日本民俗学界の異色の存在として知られるロシア人学者で,柳田国男,折口信夫らと親交を結び,沖縄,東北などの民俗を採録した。本書は日本語で発表された論文・書簡を網羅した唯一の著作集。<読む前の大使寸評>ロシア人にして、日本民俗学界の異色の存在が気になるのです。<図書館予約:(とりあえずカートに入れておこう)>heibonsha月と不死【8月の果て】柳美里著、新潮社、2007年刊<「BOOK」データベース>より日本統治下の朝鮮・密陽に生を受け、マラソンでの五輪出場を目指した亡き祖父・李雨哲。そのうしろ姿を追い、路上を駆けることを決意した柳美里。ふたりの息づかいが時空を越えて重なる瞬間、日本と朝鮮半島のあわいに消えた無数の魂が封印を解かれ、歴史の破れ目から白い頁に甦る。偉丈夫の雨哲と美丈夫の弟・雨根。血族をめぐる、ふたつの真実の物語が、いま日本文学を未踏の高みへと押し上げる。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(とりあえずカートに入れておこう)>rakuten8月の果て予約分受取目録R26好書好日トップ図書館情報ネットワーク 蔵書検索システム図書館予約の運用にも慣れて、速攻で入手するコツも何となくつかんだと思うのだ♪・朝日書評欄で探すとしたら、3ヶ月前掲載くらいのモノが狙い目かも。・専門的すぎるほどのモノは、予約0となっていることが多い。・受取館に収蔵しているモノは、移送する手間が省けるので早くなるだろう。・本屋の店頭に出た直後の新刊本・ウィキペディアでめぼしい著作を探す・神戸市図書館の予約順位は毎週火曜日(午前1時~3時) に更新されます。・Kindle版を購入すれば、その本の全て読めるのだが、紙の本から書き写す手間が好きなわけでおます。
2021.12.02
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図書館に予約していた『生命海流』という本を、待つこと4ヵ月ほどでゲットしたのです。折しも朝日新聞が「ドリトル先生 ガラパゴスを救う」を連載している今、福岡先生のガラパゴス航海記を読んでみようではないか。【生命海流】福岡伸一著、朝日出版社、2021年刊<「BOOK」データベース>より福岡伸一、ガラパゴス諸島へ。ダーウィン進化論を問い、“本来の生命のあり方”を精密に描き出す。旅のリアルと思索が行き来する、まさしく「動的平衡」なガラパゴス航海記。<読む前の大使寸評>折しも朝日新聞が「ドリトル先生 ガラパゴスを救う」を連載している今、福岡先生のガラパゴス航海記を読んでみようではないか。<図書館予約:(7/24予約、副本1、予約16)>rakuten生命海流マーベル号の出航あたりを、見てみましょう。p75~78<2020年3月4日 出航> マーベル号の出航は午前1時と決まった。なぜこんな真夜中過ぎの時間になったのか。それは、私の身勝手な希望と、めぐる島々の予定と、船の速度とを勘案した結果、マーベル号船長のヴィゴが、逆算して出した日程だったからである。 私の身勝手な希望とは、1835年、ここがガラパゴス諸島を訪問した進化論の祖、チャールズ・ダーウィンの乗ったイギリス船ビーグル号のたどった航路を、できるだけ忠実にたどりたい、そしてダーウィンが見たであろう光景と同じように眺めてみたい、という贅沢かつ欲張りなものだった。ビーグル号は1ヶ月あまりをかけてガラパゴスの主要な島をめぐり、重要な海峡をくぐり抜け、十分な調査、測量を行った。それをほんの1週間ほどで追体験しようというのだ。 そもそもビーグル号の正式名称は、H.M.S.Beagle,Her Majesty's Ship、すなわち女王陛下の船である。イギリス海軍軍人を中心に乗員74娜、大砲6門を搭載する立派な軍艦だった。表向きは調査・測量が任務だったが、真の目的は、大英帝国の海外進出のための地政学的拠点を確保することだった。 このビーグル号の航路を全部トレースするには、通常のガラパゴスの観光クルーズや定期航路では無理である。なので独自に船をチャーターしなければならない。これが贅沢ということのいわれである。船を1週間借り切るには、操船のための船長、副船長、船員、それから料理人すべてを雇いあげ、燃料、水、食材を積み込まなくてはならない。ヴィゴ船長、グァーポ副船長、船員のフリオ、料理人のジョージの4人が船乗りメンバーである。 それからガラパゴスはそのほとんどが国立公園となっており、自然保護のための規制があり、立ち入れる場所と立ち入れない場所が厳密に決められている。そして、チャーター船であったとしても、そこに必ず指定のネイチャー・ガイドを同行させ、ガイドの管理の下、視察や行動をしなければならない決まりになっている。そのため、私たちは、ガラパゴス国立公園管理局に勤めていたチャピさんに来てもらった。 船員もガイドもみなガラパゴスの人で会話はスペイン語である。なので、通訳兼今回の旅行の下準備をしてもらったエクアドル在住の日本人、ミッチさんに来てもらった。彼は両親が日本人で、日本語・スペイン語のバイリンガルだが、エクアドル生まれ、エクアドル育ち、奥さんもエクアドルの人、という生粋のエクアドル人である。小さいころからサッカーとサルサで育った。南米の少年がモテるためには、第一にサッカーがうまいこと、第二にサルサがうまいこと、だそうな。ああ、南米に生まれなくてよかった(といっても、日本でもモテたわけではないが)。 ミッチさんがいなかったら、南米の荒くれ男(つまり船員たち)と渡り合っていくのはまず不可能で、にっちもさっちも行かなかった。南米ではまずはアミーゴにならないことには何ごとも動かず、アミーゴになるためにはまずは言葉の機微がわからないことには何ごとも始まらないからである。 日本からは、私、福岡ハカセの他、映像記録担当兼お目付け役として、自然派フォトグラファーの阿部雄介さんが同行してくれた。お目付け役、というのは、福岡ハカセが調子に乗って、採集禁止の昆虫を持ち出したり、ゾウガメの甲羅に触ったり、貝や骨をお土産にしないように、という意味である。 ガラパゴスの自然物は、生物であれ無生物であれ、どれも島外への持ち出しは厳禁で、島から島への移動も禁じられている。なので靴やズボンについた砂はきれいに落とさなくてはならず、サンプルも顕微鏡視察や撮影をしたのちは、すべて元の場所に戻すことが義務付けられた。「こそっと持ち出したらどうなりますか」とミッチさんに聞いてみた。「空港で、手荷物検査があり、トランクもⅩ線装置を通しますので、見つかったら大変です。貝がらくらいだったら、没収の上、始末書、それから今後一切ガラパゴスへの訪問を禁じられますね。もし、もっと重要なものを持ち出そうとしたら、逮捕されて牢屋ですね。南米の牢屋に入ると生命の危険があります」 うわわわ。それこそ南米の荒くれ男たちにシャワー室の隅などに追い詰められてしまうのだ。看守もグルなので見て見ぬ振り。恐ろしい・・・。「実際、そんなことがありましたか」「ええ。かなり前ですが、爬虫類マニアが、トランクに生きたイグアナを入れて持ち出そうとして見つかりました。当然、刑務所送りです。それから、これはエクアドル本土内のことですが、ごく最近、日本人の昆虫オタクが採集標本を無許可で持ち出そうとして摘発され、大使館を巻き込んで大騒動になりました。しかも数が異常だったんです。300点以上です。エクアドルの東側はアマゾンの密林ですから、ヘラクレスみたいなカブトムシがとれるんです。その日本人は泣いて謝ったそうですが、ときすでに遅し。実刑を受けたはずです」 くわばらくわばら。『生命海流』3:まえがき(続き)『生命海流』2:まえがき(続き)『生命海流』1:まえがき
2021.12.02
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図書館の本を手当たり次第に、借りている大使であるが・・・・なんか慌しいので、この際、積読状態の蔵書を再読しようと思い立ったのです。で、再読シリーズとして、以下のとおりボツボツ取り上げてみます。・#53:西方冗土・#52: 群像(2020年6月号)・#51:『Bernard et Bianca au Pays des kangourous』・#50:『一夜漬け日本美術史』・#49:『ぼくの翻訳人生』・#48: 村上春樹(BRUTUS 21年10/15号)・#47: 空想居酒屋・#46: 文芸春秋(2021年9月特別号)・#45: 文芸春秋(2021年8月号)・#44: ヤマザキマリ『たちどまって考える』・#43: 再読『マイ・ロスト・シティー』・#42:『小川洋子対話集』 ・#41: ミヒャエル・エンデ著『モモ』・#40: 日本人はなぜ存在するか・#39: 「空気」の研究・#38: 街場の大阪論・#37: 韓国 反日感情の正体・#36: トウ小平・#35: 日本語と韓国語・#34: ソウルの練習問題・#33: 『「日本」とは何か』日本の歴史00巻・#32:「王権誕生」日本の歴史第2巻・#31:新・韓国風土記(第一巻)・#30:グ印関西めぐり(濃口)・#29:リドリー・スコット:フィルムメーカーズ#16・#28:日韓 悲劇の探層・#27:日本人と韓国人なるほど辞典・#26:街場の文体論・#25:書いて稼ぐ技術・#24:「無法」中国との戦い方・#23:資本主義の終焉と歴史の危機・#22:村上春樹ロングインタビュー・#21:日本人はなぜ存在するか・#20:兼好法師『徒然草』 (100分 de 名著)・#19:世界マンガ体系・#18:南画と写生画・#17:ホンモノの日本語を話していますか?・#16:ストレスゼロの整理術・#15:里山資本主義<再読候補>・ノモンハン・播磨国風土記・情報の「捨て方」・老人力のふしぎ・夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです*********************************************************「全国アホ・バカ分布考」読書レポートも6回まで進んで、なんだか関西弁強化月間みたいになっております(汗)松本プロジューサーの、わりと格調高い論調もいいのだが・・・・ここで、もっとベタな故中島氏の著書「西方冗土」から、関西弁の実地例をとりあげてみたいと思うのです。だいいち、「全国アホ・バカ分布考」の論拠にもなるし、他国から関西に来て戸惑うことのないようにと願う大使のサービスでんがな♪<女の子をデートに誘う場合>〇:エミちゃん、今晩ひま?▲:別に用事ないけど。なんで?〇:なんぞおいしいもんでも食べに行けへんか。▲:いや!〇:なんや、いやなんかいな。▲:アホ。(この“いや”は女子の使う感嘆符。“アホ”はののしり言葉ではなく“このひょうきん者”といった好意的なニュアンスである)【西方冗土】中島らも著、集英社、1994年刊<「BOOK」データベース>より「ヤクザ、アキンド、ヨシモト」マスコミに描かれる関西人は三つの人種のみで、かれらは「けつねうどん」と「たこやき」を主食にしており「わやでんがな」などの、奇怪な言葉を操りつつ「がめつい奴」を演じている―という、恐るべきカンサイ人の朝昼夜。街角の看板、貼り紙。試験に出る関西弁を縦横無尽、奇想天外に考察し、関西人にエールを贈り、ヨタを飛ばすエッセイ集。浪速はこれ一冊でわかります。<大使寸評>関西弁のブラッシュアップにはお奨めの1冊でおま♪Amazon西方冗土*********************************************************書棚で『群像(2020年6月号)』という雑誌をみつけたが、どういう経緯で入手したのか思い出せないのです。表紙に出ている「特集:翻訳小説」「小特集:多和田葉子」のコピーを見ると大使のツボではあるのだが・・・【群像(2020年6月号)】雑誌、講談社、2020年刊<商品の説明>より[特集 翻訳小説]・アンケート「最新翻訳小説地図」阿部公彦/磯上竜也/伊東順子/今福龍太/上野千鶴子/大空ゆうひ/大竹昭子/大塚真佑子/大森望/岡真理/小川公代/小川哲/小川洋子/小国貴司/長田杏奈/長田育恵/小山田浩子/温又柔/鎌田裕樹/岸本佐知子/北田博充/木原善彦/木村朗子/久野量一/くぼたのぞみ/倉本さおり/栗原康/小島秀夫/小林エリカ/小山太一/斎藤真理子/酒寄進一/佐藤究/柴崎友香/下平尾直/瀧井朝世/武田将明/堂場瞬一/都甲幸治/豊崎由美/鳥澤光/中島京子/中野善夫/名久井直子/西加奈子/他<読む前の大使寸評>書棚で『群像(2020年6月号)』という雑誌をみつけたが、どういう経緯で入手したのか思い出せないのです。表紙に出ている「特集:翻訳小説」「小特集:多和田葉子」のコピーを見ると大使のツボではあるのだが・・・rakuten群像(2020年6月号)*********************************************************三宮の古書店の店頭で『Bernard et Bianca au Pays des kangourous』という絵本を、手にしたのです。おお フランス語版のディズニー絵本が200円で売られているが・・・持ってけ泥棒価格が嬉しいのです。【Bernard et Bianca au pays des kangourous】Les classiques Disney編、France loisirs社、1999年刊<商品の説明>よりAmmareal est une librairie professionnelle specialisee dans le livre d?occasion. Nous expedions partout dans le monde. Nous avons plus de 250 000 ouvrages en stock dont un grand nombre de livres techniques et academiques. Nous reversons jusqu?a 15% du prix de vente de chaque livre a des organisations caritatives, des bibliotheques et des associations luttant contre l?illettrisme. Ce que nous ne vendons pas nous le donnons, ce que nous ne donnons pas nous le recyclons.<読む前の大使寸評>おお フランス語版のディズニー絵本が200円で売られているが・・・持ってけ泥棒価格が嬉しいのです。abebooksBernard et Bianca au Pays des kangourous********************************************************* 以降は省略する(再読シリーズ(#49-51)参照)*********************************************************再読シリーズ(#1-4)再読シリーズ(#5-8)再読シリーズ(#9-11)再読シリーズ(#12-14)再読シリーズ(#15-17)再読シリーズ(#18-20)再読シリーズ(#21-23)再読シリーズ(#24-26)再読シリーズ(#27-29)再読シリーズ(#30-32)再読シリーズ(#33-34)再読シリーズ(#35-37)再読シリーズ(#38-40)再読シリーズ(#41-44)再読シリーズ(#45-46)再読シリーズ(#47-48)再読シリーズ(#49-51)
2021.12.01
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図書館で『シルクロード 1万5000キロを往く』という本を、手にしたのです。ぱらぱらとめくると、地形のカラー画像が多く、やや専門的な本であるが・・・面白そうである。【シルクロード 1万5000キロを往く】今村遼平, 中家惠二編著、古今書院、2021年刊<出版社>よりタクラマカン沙漠の南北を通る中国シルクロードの3つのルートおよび河西回廊(西安?敦煌)の旅行記。地形・地質の専門家が中心だけに,一般の観光ツアーでは訪れない珍しい風景を求めて南へ北へ。上巻には,タクラマカン沙漠の北縁に沿って西へパキスタン国境に至る「天山南路」の旅(2011年)および,天山山脈の北側,ジュンガル盆地を横断する「天山北路」の旅(2014年)を収録。どこまでも続く沙漠,氷河,大草原,そして五色に輝くヤルダン地形に言葉を失う。新疆ウイグル自治区に暮らす人々との交流も楽しい。中国の厄介なトイレ事情も。<読む前の大使寸評>ぱらぱらとめくると、地形のカラー画像が多く、やや専門的な本であるが・・・面白そうである。rakutenシルクロード 1万5000キロを往く「第1編 天山南路」の冒頭を、見てみましょう。(この本では現地の都市名をすべて漢字で表記しているが、パソコンで打てない漢字が多いのでカタカナで表記します)p4~5<1 念願が叶う> 私たちは2009年8月に今回の旅を計画していたが、出発の半月くらい前、新疆ウイグル自治区で漢民族とウイグル族の間で争いが起きて、旅行は中止になった。そんな悔しい思いもあり、再度挑戦の機会をうかがいつつ、夢を実現すべくカウントダウンの毎日であった。 2011年7月18日の午後、新疆ウイグル自治区のホータンで、10数人のグループが警察署を襲撃し、周辺の人々を人質にとって火を放った。駆けつけた武装警官は襲撃者14人を射殺した。 その他に武装警官2人と人質2人の死者が出るという事件があって、「また中止か?」と心配したのだが、旅行社からは何の連絡もなく、飛行機は8月2日、成田を予定通り離陸し、雄大な自然と歴史を巡る旅は始まった。 なぜタクラマカン沙漠のシルクロードの旅にこだわったのか? 参加者の今村は旅先の風物にも興味はあったが、特に歴史に執着があり、また中家は大学時代の恩師(多田文男教授)が授業で紹介したタクラマカン沙漠の講義が印象深く残っていた。上野はタクラマカン沙漠そのものと、周辺の山岳地帯の地形地質の実態に触れてみたいという深い思いがあった。だが、全員が、漠としたロマンを思い描いて参加したというのが実情だろう。 タクラマカン沙漠は、トルコ系ウイグル語で「入ると出れない」という意味を、中国語で音訳したものである。中国歌謡『楚辞』の『招魂』に次のような一節がある。 魂よかえりなさい。西方の害は、沙漠が千里も続いている。 その雷淵に回転して入ると、身が砕けてしまっても止まることができない。 幸いにも脱することができても、その外は荒野である。 赤蟻は象のようであり、黒蜂は瓢箪のように大きい。 五穀は育たず、菅の茎を食っている。その上は焼けて人の肌を爛れさせ、水を求めても手に入れる所がない。さまよい歩いても身を片寄せて休む所もなく、広々と大きくてはてしがない。 帰りなさい。恐らく自身に害を与えるであろう。 この『招魂』は屈原が妬まれて王の側近をしりぞけられ自ら命を失ったのを哀れんで、楚の大夫宋玉が、屈原の魂を招くためにつくったといわれている。楚の国を中心に、東西南北どの方向にも安住の地はなく、楚の国にまさる場所はない。だから魂よ帰ってこいと説得した第二段の、西方を詠んだ一節である。
2021.11.28
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書棚で『群像(2020年6月号)』という雑誌をみつけたが、どういう経緯で入手したのか思い出せないのです。表紙に出ている「特集:翻訳小説」「小特集:多和田葉子」のコピーを見ると大使のツボではあるのだが・・・【群像(2020年6月号)】雑誌、講談社、2020年刊<商品の説明>より[特集 翻訳小説]・アンケート「最新翻訳小説地図」阿部公彦/磯上竜也/伊東順子/今福龍太/上野千鶴子/大空ゆうひ/大竹昭子/大塚真佑子/大森望/岡真理/小川公代/小川哲/小川洋子/小国貴司/長田杏奈/長田育恵/小山田浩子/温又柔/鎌田裕樹/岸本佐知子/北田博充/木原善彦/木村朗子/久野量一/くぼたのぞみ/倉本さおり/栗原康/小島秀夫/小林エリカ/小山太一/斎藤真理子/酒寄進一/佐藤究/柴崎友香/下平尾直/瀧井朝世/武田将明/堂場瞬一/都甲幸治/豊崎由美/鳥澤光/中島京子/中野善夫/名久井直子/西加奈子/他<読む前の大使寸評>書棚で『群像(2020年6月号)』という雑誌をみつけたが、どういう経緯で入手したのか思い出せないのです。表紙に出ている「特集:翻訳小説」「小特集:多和田葉子」のコピーを見ると大使のツボではあるのだが・・・rakuten群像(2020年6月号)多和田葉子へのインタビュー(続き)を見てみましょう。(インタビュアー:小澤英美)p188~190 <キャラクターの交換可能性>小澤:Hirukoをはじめ、ノラやニールセン夫人といったといった女性たちがみんな強くて自由奔放なところに元気づけられましたが、クヌートやナヌークら男性陣は、母親や恋人から逃げ回ったり、沈黙したりと弱さやダメさが目立ちますね(笑)。アカッシュは「このままでは男性は滅んでしまうのではないか」とすら考えます。多和田:スカンジナビアを舞台に選んだもう一つの理由は、フェミニズムをはじめ、いろんな差別との闘いに関して先進国だからです。まだ男女差別が当然のものとして蔓延している社会ではなく、公式にはもう男女差別はないことになっている社会のなかで人間はどうなるのか。 たとえば日本でも、おおっぴらに女性や性的マイノリティを差別したりする人がいない職場で、時々ちらちらと差別発言をしないではいられない人というのがいると思います。やりすぎるとインガのように強い女性にたしなめられて黙る。それほど差別意識がつよいわけではないし、女性を崇拝し、ゲイの友達もいるのに、時々そういう発言をお漏らししないと精神のバランスが保てない。ベルマーもそれですね。小澤:そのベルマーが、ナヌークと性格を交換するという展開は、奇想天外でした。多和田:私も奇想天外だと思いました(笑)。読者は登場人物をキャラとして読むんだなと気がついた時に、キャラなんてものはいつでも交換可能ですよ、と反発したくなったんです。小澤:キャラを立てるのが大事だという考えは小説においてもありますが、便利で有益かもしれませんが、安易ともいえる。多和田:そうです。日常生活でも、あの人はこういう性格だ、と決めてしまって、安心してみんなが暮らしているような共同体というのはおそろしいものです。決めてしまった時点で、その人のことをそれ以上知りたくないといったようなもので、絶縁状態と同じです。キャラを決めることが、相手の顔にレッテルを貼ることになってしまう場合もあると思うんです。でも逆に言えば、レッテルに過ぎない部分は交換できるはずですよね。小澤:たくさん登場人物が出てくる物語では、それぞれのキャラが立っていないと誰が誰だかわからなくなってしまうし、群像劇や歴史エンターテイメントやアニメや漫画では「キャラ立ち」が必須の要件のようなところもある。でも多和田作品では、キャラという概念に抗って、それぞれの登場人物が多面的でありつつ強烈に魅力的でもある。多和田:私も昔から知っている友達でも、ああ、こんな面もあるんだ、と驚かされることがあります。好感を持っていた友達のイヤなところを見てしまった時には、見て見ぬふりをするより、自分がイヤだと思う面と好きな面の相互作用とか、矛盾の美とかを楽しんだ方が生産的だと思います。まだイヤなところが一つも見つかっていない人はそれほど親しい人じゃないと思うし。小澤:多和田さんの手にかかると、どんなにイヤな登場人物でもチャーミングに思えてしまうから不思議です。『群像(2020年6月号)』2:「ブロークン・ブリテンに聞け」『群像(2020年6月号)』1:多和田葉子へのインタビュー
2021.11.27
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書棚で『群像(2020年6月号)』という雑誌をみつけたが、どういう経緯で入手したのか思い出せないのです。表紙に出ている「特集:翻訳小説」「小特集:多和田葉子」のコピーを見ると大使のツボではあるのだが・・・【群像(2020年6月号)】雑誌、講談社、2020年刊<商品の説明>より[特集 翻訳小説]・アンケート「最新翻訳小説地図」阿部公彦/磯上竜也/伊東順子/今福龍太/上野千鶴子/大空ゆうひ/大竹昭子/大塚真佑子/大森望/岡真理/小川公代/小川哲/小川洋子/小国貴司/長田杏奈/長田育恵/小山田浩子/温又柔/鎌田裕樹/岸本佐知子/北田博充/木原善彦/木村朗子/久野量一/くぼたのぞみ/倉本さおり/栗原康/小島秀夫/小林エリカ/小山太一/斎藤真理子/酒寄進一/佐藤究/柴崎友香/下平尾直/瀧井朝世/武田将明/堂場瞬一/都甲幸治/豊崎由美/鳥澤光/中島京子/中野善夫/名久井直子/西加奈子/他<読む前の大使寸評>書棚で『群像(2020年6月号)』という雑誌をみつけたが、どういう経緯で入手したのか思い出せないのです。表紙に出ている「特集:翻訳小説」「小特集:多和田葉子」のコピーを見ると大使のツボではあるのだが・・・rakuten群像(2020年6月号)多和田葉子へのインタビューを、見てみましょう。(インタビュアー:小澤英美)ポーランドとベラルーシ国境で移民の押し付け合いがみられる昨今ですが、2020年5月時点でこのインタビューが行われたようです。p177~181 <コロナ禍で浮かび上がる国家間のズレ>小澤:このお話を伺っている今、日本では東京をはじめ7都府県に緊急事態宣言が発出されたばかりです。コロナウイルス感染拡大の影響で、直接お会いする予定が変更になり、急遽ドイツにいる多和田さんに電話でインタビューすることになりました。 こうした世界的な危機のさなかに、前作『地球にちりばめられて』とその続編である『星に仄めかされて』を読むと、ここで描かれている開かれた世界のありようがひどく遠く離れてしまったことを痛切に感じました。 この作品は、世界のさまざまな場所から集い、自由に移動しつづける若者たちの物語です。ところが現在では、世界中で国境が封鎖されて、出入国が厳しく規制されている。くしくもHirukoの状況が現実味を帯びてしまったようです。多和田:『地球にちりばめられて』と『星に仄めかされて』、それとたぶんもう1冊続くのですが、これらの作品に描かれた世界では、ヨーロッパのなかは自由に移動することができるけれども、日本と思われる国には全然行かれないし、連絡がつかないという状況になっています。鎖国とグローバル化の両方が共存する状況ですね。 今、新型コロナウイルスのせいで世界中が鎖国状態にあります。ドイツの場合、仕事なら大丈夫ですが、友達に会いに行くとか湖に遊びに行くという目的では、国内の隣の州にも入れません。それだけではなくて、国境を閉じるか閉じないかを決めている段階で、ヨーロッパのなかの心の境界線みたいなものや、それぞれの国の考え方のズレのようなものが浮上してきて、ヨーロッパがばらばらになるんじゃないかと心配しました。 たとえばハンガリーなどは、これはいいチャンスだと言わんばかりに、さっさと国境を閉めましたね。移民問題ですでに国境を閉めたがっていたところにウイルスが幸い現れてくれたという感じなのでしょうか。これはハンガリー人がわるいのではなく、今の政権に問題があるのですが。 ドイツは、保守党も革新党もドイツが第二次世界大戦で大変な間違いを犯したという点では意見が一致しています。EUに積極的であるという点も基本的には一致しています。ですから戦後、国境のない平和なヨーロッパをつくろうとあれほど努力してきてやっと国境がなくなったのに、ウイルスのせいでまた国境を閉めなければならなくなったことがすごく悔しくて、かなり躊躇していたので、閉じるのが少し遅れました。 私も知らなかったのですが、国境というのは、こちら側からと向こう側からのそれぞれで開け閉めできるものなんですね。二重ドアです。例えばポーランド側はすぐ閉めたけれども、ドイツ側からはすぐには閉めなかった。 スタートはばらばらでしたが、それではいけないとという気持ちもあった、フランスのマクロン大統領は、コロナウイルスに対してヨーロッパが足並みをそろえてやっていかなければ意味がないよと呼びかけました。確かにそうなんです。地続きなので、それぞれが勝手な政策をとってもしようがないわけです。ただ、その国によって犠牲者の数には大きな差があり、その理由はまだ判明していません。死者の数でいうと今の時点でフランスではドイツの五倍くらい死者がでています。 毎日新しいニュースが入るので、今ここで言ったことが活字になる頃には違っている可能性もありますが、今の時点では、ひどい被害を受けたイタリアやスペインに北ヨーロッパの国々がどんなかたちで経済的な援助をするかで、もめています。私が小説で描きたかったヨーロッパも、いろいろな文化が喧嘩したり、仲直りしたり、もめたり、混ざったり、別れたりしている流動的な世界です。ヨーロッパの中でもデンマークとイタリアは違うし、しかもそれぞれの国にまた別のたいりくから来た人たちがたくさん住んでいるという構図です。 『地球にちりばめられて』の場合は、スカンジナビアと、かつて古代ローマ帝国に属していた部分、という二つの世界があって、その間を登場人物たちが行き来します。『星に仄めかされて』では移動は一回きりで、今はドイツの都市だけどもかつて古代ローマ帝国の重要な都市であったトリアーから、コペンハーゲンへの旅です。ナヌークの場合と、ノラ、アカッシュの場合で、移動のルートは違うのですが、いずれにしても巨大な暗い森のようなドイツという国を通っていかなければなりません。 昔のローマ人にとって現在ドイツのあるところは、恐ろしい森のなかにゲルマン人が隠れていて、いつ襲われるかわからないというイメージだったようです。でもそれがいつかドイツ・ロマン派の森になって、その森に入ることで自分の内部に分け入っていく、という意味合いが生まれるんですね。小澤:なるほど。今作での移動はなによりそのルートや手段の多様さに読みごたえがありました。コロナ禍であきらかになった、ヨーロッパの国々のズレというお話にひきつけると、本作では物語というツールをとおして、国籍や人種を超えた関係性が生まれています。例えば登場人物たちの造型には日本の神話的人物が透けてみえますが、HirokoとSusanooは、同じ国の出身かもしれないけれども、『古事記』でスサノオの兄弟であるツクヨミは、病院で皿洗いをしている青年ムンンにあてがわれています。 本作には北欧の神話への言及もありますが、さまざまな国や地域に伝わっている神話をごちゃ混ぜにしたるつぼのなかから物語を紡ぐということが、さまざまなズレや違いを内包しつつひとつになろうとするヨーロッパという先ほどのお話にも、また本作に通底する国という概念への疑義にもつながっていきます。多和田:日本という国がなぜか急に消えてしまったということになると、Hirokoはニイガタの人で、Susanooはフクイの人ということで、もう同郷人ではありません。 ユーゴスラビアとかソ連とか、今はもう存在しない国で生まれた知人たちが、出身国を聞かれた時に一瞬唾をのんで黙る。あの沈黙が気になっていたんです。アカッシュなどは、南アジア出身、インド出身、マラーティー語の話されている広大な地域出身、プネー出身、という風にいろいろな言い方のできる自分の出身のことなどたいして気にかけていません。 「インド人だからヨガができるはずだ」というステレオタイプにも柔軟かつ生産的に対応しています。あれだけ多様性に満ちたインドにさえナショナリズムを推し進める政治が生まれている今の世界情勢が一方にあるので、アカッシュにはがんばってほしいと思っています。 国という概念は、頭の中でつくられたり、勝手に壊れたり、フェイクとして又あらわれてきたりします。この小説の中でも、日本と思われる国が消滅してしまったからこそ、こういう国だよねという話だけがヨーロッパでひとり歩きして、逆に日本が以前よりはっきり感じられたり、ナヌークのように自分が日本人であるように振る舞って遊ぶ人がでてきたりします。 私はもちろん国という概念にこだわらずにものを考えることが何より大切だと思っていますが、でも実際に国も国という概念も必要なくなった世界というのは簡単には来ないと思うんです。 今だってウイルスへの対策は国単位で決定され実行されています。EU内部で政策を調整するのさえこんなに大変なのですから、世界が一つになるなんて夢の夢ですね。だからせめてとりあえず、その「国」と呼ばれる得体のしれない何かが、住人全員の意見からできていることが大切ですね。 それから、もちろん国と国の交流がすごく大切で、そのためには人と人とが顔を合わせる国際ワークショップとか国際学会などが必要で、ああ、やっぱり国境封鎖は困る。新型ウイルスさんには早く退場してほしいですね。小澤:今回の国境封鎖や、人種差別や他者恐怖といった排斥感情の深まりで、これまで私たちが積み上げてきたものが大きく後退し、足元から崩れていくような感覚もありました。マルクス・ガブリエルが、国家の単位などおかまいなしに、全民衆を平等に感染させるウイルスに対して、人類はどう立ち向かうのかと問題提起していましたが、統合と分断の二極化が進む現在の状況にあって、本作のなかで登場人物たちが緩やかな連帯を結んでいくさまが、私にはなによりも貴重なものに感じられました。 以前読んだ『文学界(2019年1月号)』4に「多和田葉子と温又柔との対談」が載っています。ところで、コロナ対応で自粛していましたが・・・今夜の夜行バスで四国南西部への里帰りを行う運びになりました。27日には帰ってきますが、この間はブログ更新はままならないことになります。
2021.11.22
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図書館に予約していた『君が異端だった頃』という本を、待つこと1週間でゲットしたのです。島田雅彦による自伝的青春私小説!ってか・・・面白そうである。【君が異端だった頃】島田雅彦著、集英社、2019年刊<「BOOK」データベース>より3月生まれの幼年期から、めくるめく修業時代を経て、鮮烈なデビューへー。戦後の文学を彩った、文豪たちとの愛憎劇と、妻がある身の最低男の、華麗なる遍歴と、不埒な煩悶と。最後の文士・島田雅彦による自伝的青春私小説!<読む前の大使寸評>島田雅彦による自伝的青春私小説!ってか・・・面白そうである。<図書館予約:(11/12予約、副本4、予約0)>rakuten君が異端だった頃「第1部 縄文時代」で著者の縄文的サバイバルを、見てみましょう。p15~18<滅亡に備えて> 君は四千年の年月を超えて、縄文人が残した痕跡と向き合うことになったが、森の中に分け入ったそもそもの動機は「心身の鍛錬」だった。何処ででも生きて行けるように自分を鍛え、来るべき危機の時代に備えるつもりだった。 縄文土器ブームが去り、君は五年生になったが、相変わらず野山の徘徊を続けていた。ちょうどその頃、グアム島で旧日本軍兵士が発見され、28年ぶりに帰還するという出来事があった。「恥ずかしながら生きて帰ってまいりました」といった男はジャングルに掘った穴に籠り、人目につかないよう自給自足のサバイバル生活を続けていた。 水筒を改造してフライパンにしたり、パゴの木から繊維を取って布を織り、服に仕立てたり、ヤシの繊維で草履やロープを編んだりして、それこそ縄文人のように暮らしていた。君はその創意工夫に満ちた生活術をテレビで見て、自分もその真似をしたいといい出すと、父は家出直後、東京で野宿を余儀なくされていた頃のことを思い出し、「夜露を浴びるのはしのびないから」とテントを買ってくれた。 そのプレゼントは完璧に息子のニーズに合っていて、ローラースケートや人生ゲームや野球のグラブをもらった時より数倍嬉しかった。君は早速、裏山にテントを張り、一晩過ごしてみた。夜9時までは弟も一緒だったが、「やっぱり蒲団がいい」といって、子ども部屋に戻った。 後に『ノストラダムスの大予言』が世間を騒がすことになり、大抵の小中学生がナイーブにそれを信じ、自分は40歳まで生きられないという諦念を育んだものだが、君はサバイバルの素養があるので、自分だけは滅亡を免れることができると思っていた。とはいえ、大震災も空襲も火山の噴火も津波も経験したことのない君は、滅亡とは何がどうなることか具体的なイメージを結べず、ただ漠然と、縄文人の暮らしに戻ることだと考えていた。文明の発祥地が森ならば、文明の滅亡後に向かう先も森である。 森に落ちているのはクリやドングリや土器ばかりではない。君は6年生になっても野山の徘徊を続けていたが、それは森が絶えず君の好奇心と冒険心を満たしてくれるからだった。森は我が家の裏庭にぽっかりと開いた別世界だったが、森の中にも別世界への入口があった。 君は土器やけもの穴を通じて、古代につながる入口を発見したが、別の少年は昆虫や草花を通じて、別世界に導かれただろう。多摩丘陵を徘徊していると、突然、目の前に神社や遊園地が出現したりもする。丘陵の斜面全体にジェットコースターのコースや水族館やゴーカートコースやモノレールの軌道を配置した遊園地は、君がこの町に移住して来た頃に開業していた。 君は時々、この遊園地に遊びに来たが、入園料を払って正面ゲートから入ることは滅多になかった。遊園地の敷地はフェンスで囲まれていたが、君が徘徊する森と地続きで、金網の破れたところが三ヵ所あり、こちらの無料ゲートから入場できるのは徘徊者の役得だった。 戦時中は都心を空襲するB29を照射するサーチライトが多摩丘陵の一画に設置されていたらしいが、戦後、丘陵の上空は米軍の領空になり、横田基地と厚木基地のあいだを軍用プロペラ機やヘリコプターが我が物顔で飛び交っていた。君はしばしば竹筒をバズーカ砲のように構え、その迷惑な飛行物体に照準を合わせ、撃墜する儀式を行った。<竹藪ハーレム> 君は森に自分の喜怒哀楽を捨てにも来ていた。森に通う者の心にはわだかまりがあり、それは町では晴らしようもない。森は安易に人の要求を叶えてはくれないが、恨みや悲しみを忘れさせ、何事もなるようにしかならないというあきらめの境地に導いてくれる。何かが足りないと感じたら、それは森が足りない時である。谷間を通り抜ける風には草木から漂い出した精気が含まれていて、それを吸い込むと、君の中の邪気は振り払われ、清涼な気分が満ちてくる。森の中にはとりわけ精気が強く流れる場所があり、そこは大抵、風通しがよく、見晴らしもいい。森はそのような浄化の場ゆえ、そこにやってくるのは穢れた人や弱った人が多かった。
2021.11.22
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図書館で『平成ネット史』という本を、手にしたのです。スマホやラインが嫌いな大使でもブログという手段でネットにつながっているわけで・・・ネット社会は今後どうなるのか気になるのです。【平成ネット史】NHK『平成ネット史(仮)』取材班編、幻冬舎、2021年刊<出版社>より2019年1月に放送され、トレンド1位となった特別番組「平成ネット史(仮)」を待望の書籍化。平成がいかにインターネットと進化してきたか、堀江貴文、宇野常寛らの論客が語る。また、ニコニコ動画、iモード、mixi、LINEの創始者などの開発秘話も。番組では取り上げられなかった取材成果も多数盛り込んだ、インターネット史決定版!<読む前の大使寸評>スマホやラインが嫌いな大使でもブログという手段でネットにつながっているわけで・・・ネット社会は今後どうなるのか気になるのです。rakuten平成ネット史「Chapter7 炎上とフェイクの時代」でツイッターの変化を、見てみましょう。p183~186<ツイッターの使われ方の変化> それまでは、ツイッターもようするに「遊び」というか、「暇つぶし」をするためのコミュニケーションツールでした。たわいもないツイートでつながるという、暇つぶしの道具だった。それが震災によって、「個人が多くの人にリアルタイムで情報を届けることができるツール」だと気づいたのです。 実はツイッターはすごく不安定なサービスでした。平成22年(2010年)くらいまでは。人が増えるとやたらんい落ちる。不安定で接続できなかったり、メンテナンス中の「クジラのマーク」が出ることも多かったわけです。 ただ東日本大震災のときは、ほとんど落ちていない。これは「大変なことが日本で起きているから、日本のサーバーを増強して落ちないようにしよう」とツイッター社が判断してやっていたのです。東日本大震災で日本人がツイッターを活用し始めてことで、ツイッター社もその役割に気づいた。ただ友だちと交流するのではなくて、情報を通じて社会の公共的な役割を果たす。そういう役割に気づくきっかけでもあったのです。 ちょうどその頃から、ツイッター社も自分たちのことをSNSとは言っていません。「自分たちはSNSではなく、ニュースネットワークなんだ」と。「自分たちは、個人が発信できる世界最速の情報ニュースネットワークサービスなんだ」と、当時まだ経営陣にいたエヴァン・ウィリアムズという経営幹部が言っています。<個人の影響力が大きくなりすぎた> ツイッターは理想の世界を実現しつつあるのでしょうか? たとえば、政治を透明化できたのか。これまでより個人と政治家がつながることで、政局よりも政策ベースの政治が実現したのか。 もちろん、部分的には実現しつつあります。ただ一方で、デマの問題も起きている。沖縄県知事選でも、対立候補に対する怪文書並みのデマやフェイクニュースが相当な数流れました。むしろ、その対応に政治家が追われなければいけなくなったという状況もあるわけです。 それはひとえに、ツイッターに流れる情報の影響力が大きくなりすぎたことに起因します。若年層に対しては、ときにはテレビや新聞以上の影響力を持つ。若年層だけではなく、むしろ高齢者のほうがネットの情報を鵜呑みにすることもある。つまり、全世代的に影響が大きくなっているわけです。よって、政治と個人をつなげるポジティブな可能性以上に、ネガティブな可能性のほうが大きくなっている側面もあります。 ジャーナリズムもそうでしょう。ツイッターで情報発信することで、ジャーナリズムがどんどん良くなっていったのかといえば、実際にはフェイクニュースや炎上ばかりが目立つようになった。 新しい可能性や刺激を与えたけれど、完全にそれに振り回されている状況もあるツイッターがここまで影響力の大きい存在になるというのは、そういう世界を僕も10年前は夢見ていたわけで、良い部分・悪い部分双方ありますが、現在は悪い側面のほうが目立ちますね。『平成ネット史』1
2021.11.22
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図書館で『文学界(2021年2月号)』という雑誌を、手にしたのです。表紙に出ているように創刊1000号記念特大号とのことで、これがゲットする決め手となりました。【文学界(2021年2月号)】雑誌、文芸春秋、2021年刊<商品の説明>より通算1000号記念号 短篇競作 村上龍、山田詠美他<読む前の大使寸評>表紙に出ているように創刊1000号記念特大号とのことで、これがゲットする決め手となりました。rakuten文学界(2021年2月号)柳美里さんのエッセイを見てみましょう。p378~379 <道行き> 11月19日に『JR上野駅公園口』の英訳『Tokyo Ueno Station』(Morgan Giles訳)が全米図書賞の翻訳部門を受賞した。版元の河出書房新社や担当編集者の尾形龍太郎さんやわたし自身の想定を遥かに超える反響があり、現時点で18万9500部の重版が決まっている。 文庫のサイン本を大量に作成した経験はないのだが、約二千冊の文庫本にサインをした。限られた時間の中で、都内の書店も訪問した。交通渋滞で10分ほど遅れてジュンク堂書店池袋本店のバックヤードに到着し、慌ててサイン道具の筆ペンと落款と朱肉をテーブルに並べていた時のことである。 「東日本大震災以降、柳さんの福祉までの活動を追ってきたけれど、今回の受賞で、柳さんが小説の世界に戻ってきてくれて、うれしいです」 と、書店員のAさんに言われて、一瞬顔を上げ、手を止めた。そうか、そういう風に受け止められているのか、でも、そりゃそうだよな、とわたしはサインをはじめながら、2011年3月11日以降に出版した本のタイトルを刊行順に頭の中でつぶやいてみた。 ピョンヤンの夏休み、沈黙より軽い言葉を発するなかれ、グッドバイ・ママ、JR上野駅公園口、貧乏の神様、ねこのおうち、まちあわせ、人生にはやらなくていいことがある、国家への道順、春の消息、飼う人、町の形見、沈黙の作法、南相馬メドレー… 出版自体はコンスタントにしているのだが、小説作品は『グッドバイ・ママ』『JR上野駅公園口』『ねこのおうち』『まちあわせ』『飼う人』の5冊のみ。 現在のわたしには三種類の名刺があって、その肩書は「青春五月党主宰」と、「フルハウス店長」と、「La MaMa ODAKA支配人」である。青春五月党は劇団、フルハウスはブックカフェ、La MaMa ODAKAは演劇アトリエで、三つの所在地は、全てわたしの自宅である。 わたしの自宅の住所は、福島県南相馬市小高区東町一丁目十番地。東京電力福島第一原子力発電所から北に16キロ地点に位置する旧「警戒区域」(原発から半径20キロ圏内)で、レベル七の原発事故によって12842人だった居住人口が0になった地域である。もうじき丸10年になるが、帰還住民は僅か3751人(2020年11月30日現在)で、約半数が65歳以上の高齢者である。 わたしは、常磐線小高駅から徒歩3分の場所にある中古住宅を購入し、表側をブックカフェ「フルハウス」として改築し、裏側の倉庫を「La MaMa ODAKA」と名付け、四半世紀ぶりに主宰劇団「青春五月党」を復活させて、地元住民を俳優に起用して三作品を上演した。 ここに至るまでの経緯に関しては、『南相馬メドレー』と『沈黙の作法』に詳しいので、触れないでおく。 敢えてひと言でいうと、わたしは、福島県の相双地区の人々と出逢った。一つ一つの行為の目的や予想を立てる間もなく、いや、目的や予想を立てられないほど毀損され引き裂かれた場所で、その破れ目の中で決定的に出逢ってしまったのである。それからのわたしの歩みは、絆や復興という言葉にはとてもそぐわない、辿るべき道もなければ行き着く先もわからない道行きのようでもあった。 臨時災害放送局の週一のレギュラー番組を担当したことから始まり(6年間で約600人の地元住人の話を収録した)息つく暇もなく、行動を起こしつづけてきた。行動というものは、目的や予想があれば、そちらに向かおうと歩み出す際に、出発点の方へたわむ瞬間がある。本当にこの道を進んでよいのだろうか、という逡巡のぬかるみにハマることもある。 だが、わたしの場合は、全てが行き当たりばったりで、なのにいきなりアクセルをベタ踏みしたものだから、延々と時間とのカーチェイスを繰り広げるしかなかった。『不思議の国のアリス』の白うさぎよろしく、いつも時計を眺めて「大変だ!遅刻する!」と走っていたような気がする。 さて、小説である。 震災後に出版した五冊に関しては、書いていて、確かな手応えがあった。どのような手応えかというと、書きながら、意識が卵のように抱く無意識の領域に触れ、時間に従属しない瞬間のようなものを捉えられた、という実感が得られた。 自己に縛されながら他者に到達する、という小説の「他我」を掴んだのだと思う。 今の私ならば、小説の中で自我を他在させることが出来る。 時間さえあれば、書ける。 書きたい小説は、いくらでもある。 今はただただ、小説を書く時間が欲しい。以前に読んだ『JR上野駅公園口』をつけておきます。【JR上野駅公園口】柳美里著、河出書房新社、2014年刊<「BOOK」データベース>より東京オリンピックの前年、男は出稼ぎのため、上野駅に降り立った。そして男は彷徨い続ける、生者と死者が共存するこの国をー。構想から十二年、柳美里が福島県に生まれた一人の男の生涯を通じて“日本”を描く、新境地!<読む前の大使寸評>著者は南相馬市のFM放送で週一回のパーソナリティを務めているそうである。毎度のことではあるが・・・虐げられる者、ハンデキャップを持つ者に寄り添う著者のスタンスがいいではないか。rakutenJR上野駅公園口『文学界(2021年2月号)』3:多和田葉子の特異性『文学界(2021年2月号)』2:翻訳される日本作家たち『文学界(2021年2月号)』1:21世紀の日本文学
2021.11.13
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<『老親友のナイショ文』(復刻)>瀬戸内寂聴さんが亡くなられましたね。その遺徳を偲んで、10日ほど前にUPした記事を復刻します。不撓不屈で頑張ってこられた寂聴さんでしたが、お疲れさんでした。図書館で『老親友のナイショ文』という本を、手にしたのです。ぱらぱらとめくってみると、90年、80年生きた人間というのがやたらに出てくるわけで・・・これこそ老人むけの書である。【老親友のナイショ文】横尾忠則×瀬戸内寂聴著、朝日新聞出版、2021年刊<「BOOK」データベース>より百歳目前にして日々ペンを走らせる瀬戸内寂聴と、八十代半ばにして現役バリバリ横尾忠則。半世紀ほど前に出会った二人による、週刊朝日連載の往復書簡をまとめた書籍。〝老親友〟の二人が昭和からの交流を振り返り、世相を見抜き、奔放にユーモラスに生きること、長寿の悲喜こもごもを互いへの手紙形式で伝えあう。<読む前の大使寸評>ぱらぱらとめくってみると、90年、80年生きた人間というのがやたらに出てくるわけで・・・これこそ老人むけの書である。amazon老親友のナイショ文横尾さんの文才のあたりを、見てみましょう。p165~167<ヨコオさんの文学的才能 見抜いたのは私> ヨコオさん 今回の手紙は、はからずも「小説」の話になって面白いですね。それに、嵐山光三郎さんが出てきたので、思わず「ヨーッ」と叫んで、おでこを叩いてしまいました。 嵐山さんの名前で書かれた活字の文章は、目につく限り、すべて読んでいます。別に義務があるわけでなく、彼氏の作文は、何を読んでも、断然、面白いからです。第一に、文章がよろしい。内容が気が利いている。必ず途中で笑わされる。すべてが粋である。こんな文章を見逃すのは、よっぽど運が悪いか、アホーな人間である。 仰せの如く、嵐山さんは、物書きになる以前は、雑誌「太陽」の編集長だった。私もヨコオさんも、その頃の嵐山さんが初対面であったようですね。嵐山さんは30代になっていたのだろうか。粋で、おしゃれで、言動のすべて、気が利いていた。 向かい合うと、いつの間にか、自分が常以上のおしゃべりになり、あること、ないこと、面白おかしく喋くりまわっている。喋り疲れて口を閉ざすと、間髪を入れず、「では、その話を、6枚のエッセイにまとめてください。締切は××日です」 とか言う。こうして、私はいくつエッセイを「太陽」に書かされたことか。取材の度に何度一緒に出掛けたことか。 私は内心、この人はきっと作家になるだろう。でなければ、出版社を造って、社長になるかも…と思っていた。 ヨコオさん、私の直感は、かくの如く凄いのよ。ヨコオさんの文学的才能をいち早く認めたのも、私だったことを忘れないで! 井上光晴さんが、いきなり電話をかけて、ヨコオさんにはじめての小説を書かせたのも、私が井上さんに、「天才がいるよ、若いけれどホンモノよ、あなたの雑誌“辺境”に彼の最初の小説を貰いなさい。歴史的事件になるよ!」 とわめいて、井上さんが何の紹介を持たず、いきなり、あなたにあの大声で電話をかけた次第だったのです。 私は昔から、天才が好きで、天才に憧れていました。未来の天才の若きヨコオ青年の身内にひそむ天才の本質を、すでに私は、見抜いていたというわけです。(もっと、尊敬しろ!)この本も老人力あれこれに収めておくものとします。『老親友のナイショ文』3:戦争体験『老親友のナイショ文』2:瀬戸内さんの返信『老親友のナイショ文』1:老年の価値
2021.11.12
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図書館で『文学界(2021年2月号)』という雑誌を、手にしたのです。表紙に出ているように創刊1000号記念特大号とのことで、これがゲットする決め手となりました。【文学界(2021年2月号)】雑誌、文芸春秋、2021年刊<商品の説明>より通算1000号記念号 短篇競作 村上龍、山田詠美他<読む前の大使寸評>表紙に出ているように創刊1000号記念特大号とのことで、これがゲットする決め手となりました。rakuten文学界(2021年2月号)「21世紀の日本文学」というテーマで3人の書評家、評論家たちが語り合っているので、見てみましょう。(安藤礼二×鴻巣友希子×江南亜美子)p362~367 <21世紀の日本文学>安藤:21世紀の日本文学というのが今回のテーマですが、21世紀といってもまだ20年しか経っていないんですよね。ちょうど私が、群像新人文学賞の評論部門優秀作を受賞したのは2002年でした。今日のために重要と思われる今世紀の十作を選んできましたが、自分がこれまで書いてきたキャリアをそのまま振り返るようで大変興味深かったです。同時代という感じがしました。鴻巣:私も書評を始めたのがちょうど2000年です。だから、自分の歩みを見るような感じです。江南:この20年を振り返るにも、なにかたたき台がなければ漠然としてしまいそうですので、簡単な2000年代の見取り図を考えてみたのですが、ここから始めさせてもらっていいでしょうか。安藤:どうぞよろしくお願いします。江南:斎藤美奈子さんと記憶しますが、純文学がミステリーやSF、ホラーといったジャンルの上位に位置するのではなく、並列になったとおっしゃったのが2000年ごろだったと思います。話の力点は、純文学が特権的な文学の形式ではなくなった、という意味です。 たしかに21世紀の日本文学の特徴として、ミステリーやSFとのジャンル混交的な純文学作品が目につくようになります。ミステリー的純文学の領域では高村薫さんの純文学への転向があり、奥泉光さんははっきりとミステリーを意識した作品を書きだし、そして桐野夏生さんの作品をミステリーか純文学かと問うのは野暮というもの。中村文則さんのデビューも2000年代です。 一方、SFと純文学はそもそも相性がよかったですが、近年の村田紗耶香さんの作品には、SF的かつフェミニズム的という文脈が浮かびあがります。さかのぼれば川上弘美さん、最近では上田岳弘さんがいます。円城塔さんがSFマガジンと文学界でデビューしたのは2007年でした。つまり、純文学だけが固有のジャンルのコードから自由だという言説が無効になり、他ジャンルでも脱コードの風潮ができたのが、2000年代ではないか。 ジャンル混交がデフォルトとなったからこそ、改めて「純文学って何なのか」とのとらえ直しが必要になるのかもしれません。(中略)■ディストピアはリアリズム?鴻巣:ミステリーとの乗り入れというのはそれまでもありましたが、おっしゃる通り、SFとの結びつきというものはこの2,30年の大きな特徴だと思います。翻訳者目線で言うと、マーガレット・アトウッドがいて、それからカズオ・イシグロがいます。 日本には村上春樹がいて、彼は比較的早くからファンタジーとの融合を実践していました。明らかにカズオ・イシグロよりも早かったですよね。 その状況に乗り入れてきたのが、ディストピア文学なんです。この20年ぐらい、英米ではディストピアブームが続いていて、もうブームとも言えないぐらいに一つのサブジャンルを形成していますが、この表現方法がはっきり変わってくるのがイシグロくらいからなんですね。 どういうふうに変わったかというと、昔、ディストピア文学というとSFの範疇だったじゃないですか。ジューヌ・ヴェルヌだって、19世紀の半ばからファクシミリのことを書いていたり、リニアモーターカーが登場したりする。 とにかくSF的ガジェットを投入して、未来感を作るのがディストピアだったのが、ル・グインなどのフェミニズムSFが「女性のユートピア」を描いた後に出てきたアトウッドの『侍女の物語』が一つの転換点になり、カズオ・イシグロの『わたしを離さないで』で決定的に事情が変化してきたと思います。 これは一種のSFマスキュリニティだと思うんですけど、先端的なテクノロジーを登場させ物質的なもので世界を加工して作り上げるという、ジューヌ・ヴェルヌからオーウェルを経由してヴォネガットにつながる男性的なディストピア、SF観を、女性的な資質を持った作家が緩やかに覆していった。 日本でその流れを受け継いでいるのが小川洋子さんであり、村田紗耶香さん、先日刊行されたばかりの桐野夏生さんの『日没』をそこに入れてもいい。別に驚くような未来感を前面に押し出したり、未来都市を構築したりするわけではないですよね。どんどんリアリズムに寄っているというか。江南:未来的な予言性のある作品というより、歴史的な検証も含んだ、時間超越的なものですね。結果的に、普遍的な趣きがもたらされるという。鴻巣:そうそう。川上弘美さんの『大きな島にさらわれないよう』などは神話ですよ。私はレトロ型ディストピアと呼んでいますけど、その潮流はどうしても気になりますね。 その中で重要な存在として、今回規定違反だとは思うのですが、小川洋子さんの『密やかな結晶』を十冊に入れました。日本では1994年に出ているので厳密には21世紀の作品ではないのですが、2019年にスティーブン・スナイダーが英語に翻訳したことによって、いま英米で大いに再評価を受けていますね。江南:小川さんがまだデビューして7、8年で書かれた作品ですが、のちの小川印がすでに濃厚に出ています。鴻巣:芥川賞を取って3年目で書いた、長編第1作なんですね。翻訳って時計の針を進めたり戻したりすることができると思っていますが、今回は時計の針が進んだというか、現代にアップデートされて提示されたんでしょう。今、英語圏では『密やかな結晶』を『The Ⅿemory Police』という新刊図書として読んでいるわけですよね。 日本の私たちが20年も翻訳されなかったピンチョンを、新刊図書として読むのと同じようなことが起こっている。作品の提示の仕方を変えてことで、今、読者の心にものすごく刺さっている。だから、私たちもこの作品をもう一回見る目を変えて読むというのはいいかなと思ってリストに入れました。 『密やかな結晶』は、今読むとディストピアだってわかるじゃないですか。だけど、刊行当時はファンタジーとして読まれていました。(中略)江南:多和田葉子さんとかもそうですね。鴻巣:そういった変遷がこの20年に起こった大きな変化の一つだと思います。ディストピア文学の中での流れですけどね。特徴の一つとしては喪失や消失があって、作品の中で登場人物はよく記憶をなくすんです。カズオ・イシグロの『忘れられた巨人』もそうですし、J・Ⅿ・クッツェーのイエス三部作でも、記憶を消せない人というのが咎められる。『The Ⅿemory Police』も一緒で、記憶を消せない人が取り締まられるディストピア。 歴史修正にもつながるそういうところがリアリティをもって受け止められているのでは。 <偽史小説と性的多様性>安藤:(中略)それともう一つ、ここ数年本当に顕著になってきていると思うのは、主に男性作家たちが描く偽史の世界です。鴻巣:もう一つの別の歴史を描いた作品が、たしかにかなり多く発表されていますよね。安藤:この20年、阿部和重さんの『シンセミア』から始まって、村上春樹さんの『1Q84』だってまさにそうでしょう。男性の作家たちは本当に偽史しか書いていない。上田岳弘さんの『キュー』もそうです。満州事変から始まって、それが現実とはまったく異なった別の未来へと続いていく。ほとんどこの20年間、男たちはただひたすら偽史だけを語り続けているのではないか。 それではもう一方で、女性の作家たちは何をやってきたのか。こちらはこちらで、性的多様性、あるいはそうした性的多様性が認められた上での生殖的多様性というべきものだけを語っている。(中略)鴻巣:私もまったく同じことは考えていました。安藤さんがおっしゃった偽史小説を、私は叙事的なクロニクル小説と呼んでいますが。江南:島田雅彦さんの『君が異端だった頃』も一種の文芸偽史で。ところで、2年前の図書館放出で入手した『文学界(2019年1月号)』が興味深いので、ときどき再読しております。『文学界(2019年1月号)』4:多和田葉子と温又柔との対談
2021.11.11
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『朝日デジタルの書評から』フォームや『読みたい本』フォームを作っているのだが、これを市図書館の予約に利用しようと、思い立ったのです。これまでの予約内容と予約候補は以下のとおりです。<予約中>・白井聰『武器としての「資本論」』(4/06予約、副本9、予約89)現在1位・52ヘルツのクジラたち(4/15予約、副本20、予約592)現在193位・桐野夏生『日没』(4/24予約、副本24、予約300)現在33位・『ザリガニの鳴くところ』(6/04予約、副本17、予約315)現在135位・福岡伸一『生命海流』(7/24予約、副本1、予約16)現在5位・ブレイディみかこ『他者の靴を履く』(8/14予約、副本8、予約81)現在43位・ブリーディング・エッジ(8/22予約、副本2、予約9)現在2位・養老先生、病院へ行く(9/30予約、副本12、予約252)現在212位・堤未果『デジタル・ファシズム』(10/04予約、副本5、予約40)現在25位・伊坂幸太郎『ペッパーズ・ゴースト』(10/30予約、副本7、予約202)現在206位・宮家邦彦『米中戦争』(11/09予約、副本1、予約14)<カートで待機中>・N・ネフスキー著『月と不死』・8月の果て・ある日うっかりPTA(副本4、予約39)・グレタたったひとりのストライキ<予約候補>・『コロナ危機の政治』・『レアメタルの地政学』・日本文学100年の名作(6巻):西図書館でみっけ・松本大洋『東京ヒゴロ 1』:図書館未収蔵・猫が30歳まで生きる日:図書館未収蔵・『中国戦線、ある日本人兵士の日記』・山口晃『すヾしろ日記 参』:図書館未収蔵 ・片岡義男『言葉の人生』:図書館未収蔵・岡ノ谷一夫『さえずり言語起源論』・小野正嗣『多和田語の世界』:図書館未収蔵・本村凌二『馬の世界史』・藻谷浩介『進化する里山資本主義』・多和田葉子『文字移植』:図書館未収蔵・橋本治『黄金夜界』・中園成生『日本捕鯨史』・ジョージ・ミーガン『世界最長の徒歩旅行』:図書館未収蔵・ネルケ無方著『迷える者の禅修業』<予約分受取:9/25以降> ・『チャイニーズ・タイプライター』(7/17予約、9/25受取)・『Tokyo Ueno Station』(9/02予約、10/01受取)・『分水嶺 ドキュメント コロナ対策専門家会議』(5/30予約、10/01受取)・ヘミングウェイで学ぶ英文法(10/11予約、10/17受取)・多和田葉子の〈演劇〉を読む(8/31予約、10/17受取)・日本文学100年の名作:10巻「バタフライ和文タイプ事務所」(10/17予約、10/21受取)・半沢直樹 アルルカンと道化師(4/06予約、11/04受取)・生態学者の目のツケドコロ(6/28予約、11/04受取)・向田邦子 『父の詫び状』(10/06予約、11/09受取)・高野秀行「怪獣記」(11/03予約、11/09受取)**********************************************************************【武器としての「資本論」】白井聰著、東洋経済新報社、2020年刊<「BOOK」データベース>より資本主義を内面化した人生から脱却するための思考法。【目次】本書はどんな『資本論』入門なのか/資本主義社会とは?-万物の「商品化」/後腐れのない共同体外の原理「無縁」-商品の起源/新自由主義が変えた人間の「魂・感性・センス」-「包摂」とは何か/失われた「後ろめたさ」「誇り」「階級意識」-魂の「包摂」/「人生がつまらない」のはなぜかー商品化の果ての「消費者」化/すべては資本の増殖のためにー「剰余価値」/イノベーションはなぜ人を幸せにしないのかー二種類の「剰余価値」/現代資本主義はどう変化してきたのかーポスト・フォーディズムという悪夢/資本主義はどのようにして始まったのかー「本源的蓄積」/引きはがされる私たちー歴史上の「本源的蓄積」/「みんなで豊かに」はなれない時代ー階級闘争の理論と現実/はじまったものは必ず終わるーマルクスの階級闘争の理論/「こんなものが食えるか!」と言えますか?-階級闘争のアリーナ<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(4/06予約、副本9、予約89)>rakuten武器としての「資本論」【52ヘルツのクジラたち】町田そのこ著、中央公論新社、2020年刊<「BOOK」データベース>より52ヘルツのクジラとはー他の鯨が聞き取れない高い周波数で鳴く、世界で一頭だけのクジラ。たくさんの仲間がいるはずなのに何も届かない、何も届けられない。そのため、世界で一番孤独だと言われている。自分の人生を家族に搾取されてきた女性・貴瑚と、母に虐待され「ムシ」と呼ばれていた少年。孤独ゆえ愛を欲し、裏切られてきた彼らが出会い、新たな魂の物語が生まれるー。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(4/15予約、副本20、予約592)>rakuten52ヘルツのクジラたち【日没】桐野夏生著、岩波書店、2020年刊<「BOOK」データベース>よりあなたの書いたものは、良い小説ですか、悪い小説ですか。小説家・マッツ夢井のもとに届いた一通の手紙。それは「文化文芸倫理向上委員会」と名乗る政府組織からの召喚状だった。出頭先に向かった彼女は、断崖に建つ海辺の療養所へと収容される。「社会に適応した小説」を書けと命ずる所長。終わりの見えない軟禁の悪夢。「更生」との孤独な闘いの行く末はー。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(4/24予約、副本24、予約300)>rakuten日没【ザリガニの鳴くところ】ディーリア・オーエンズ著、早川書房、2020年刊<商品の説明>よりノースカロライナ州の湿地で村の青年チェイスの死体が発見された。人々は真っ先に、「湿地の少女」と呼ばれているカイアを疑う。6歳のときからたったひとりで生き延びてきたカイアは、果たして犯人なのか? 不気味な殺人事件の?末と少女の成長が絡み合う長篇<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(6/04予約、副本17、予約315)>rakutenザリガニの鳴くところ【生命海流】福岡伸一著、朝日出版社、2021年刊<「BOOK」データベース>より福岡伸一、ガラパゴス諸島へ。ダーウィン進化論を問い、“本来の生命のあり方”を精密に描き出す。旅のリアルと思索が行き来する、まさしく「動的平衡」なガラパゴス航海記。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(7/24予約、副本1、予約16)>rakuten生命海流【他者の靴を履く】ブレイディみかこ著、文藝春秋、2021年刊<「BOOK」データベース>より“負債道徳”、ジェンダーロール、自助の精神…エンパシー(意見の異なる相手を理解する知的能力)×アナキズムが融合した新しい思想的地平がここに。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(8/14予約、副本8、予約81)>rakuten他者の靴を履く【ブリーディング・エッジ】トマス・ピンチョン著、新潮社、2021年刊<出版社>よりITバブルは弾けたが新世紀の余韻さめやらぬニューヨークで、子育てに奮闘する元不正検査士の女性。知人の仕事を手伝い覗いたネットの深部で見つけたのは、不穏なテロの予兆だった。NYの、そして世界の運命は肝っ玉母さんの手に――オタク的こだわりと陰謀論にあふれる、謎に満ちたアメリカ文学の巨人が放つビッグバン。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(8/22予約、副本2、予約9)>shinchoshaブリーディング・エッジ【養老先生、病院へ行く】養老孟司著、エクスナレッジ、2021年刊<「BOOK」データベース>より自身の大病、そして愛猫「まる」の死ー。医療との関わり方、人生と死への向き合い方を、みずからもがん患者である東大病院の名医とともに語る。漫画家ヤマザキマリさんとの鼎談も収録。「<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(9/30予約、副本12、予約252)>rakuten養老先生、病院へ行く【デジタル・ファシズム】堤未果著、NHK出版、2021年刊<「BOOK」データベース>より行政、金融、教育。国の心臓部である日本の公共システムが、今まさに海外資本から狙われていることをご存知だろうか?コロナ禍で進むデジタル改革によって規制緩和され、米中をはじめとする巨大資本が日本に参入し放題。スーパーシティ、デジタル給与、オンライン教育…いったい今、日本で何が起きているのか?気鋭の国際ジャーナリストが緻密な取材と膨大な資料をもとに明かす、「日本デジタル化計画」驚きの裏側!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(10/04予約、副本5、予約40)>rakutenデジタル・ファシズム【ペッパーズ・ゴースト】伊坂幸太郎著、朝日新聞出版、2021年刊<出版社>より少しだけ不思議な力を持つ、中学校の国語教師・檀(だん)と、女子生徒の書いている風変わりな小説原稿。生徒の些細な校則違反をきっかけに、檀先生は思わぬ出来事に巻き込まれていく。伊坂作品の魅力が惜しげもなくすべて詰めこまれた、作家生活20年超の集大成!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(10/30予約、副本7、予約202)>amazonペッパーズ・ゴースト【米中戦争】宮家邦彦著、朝日新聞出版、2021年刊<「BOOK」データベース>よりこれは対岸の火事ではないー最新地政学で読み解く、米中攻防の行方。米中の武力衝突は決してフィクションではない。安全保障学の重鎮である著者が、米国と中国の最新情勢を分析した上で、平時と有事の隙間をつく“グレーゾーン事態”を含む、情報、サイバー、宇宙、電磁界など多次元に広がった「ハイブリッド戦争」の最前線に迫り、二つの大国間で起こりうる軍事対立の見取り図を描く!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(11/09予約、副本1、予約14)>heibonsha米中戦争【月と不死】N・ネフスキー著、平凡社、1971年刊<出版社>より著者は日本民俗学界の異色の存在として知られるロシア人学者で,柳田国男,折口信夫らと親交を結び,沖縄,東北などの民俗を採録した。本書は日本語で発表された論文・書簡を網羅した唯一の著作集。<読む前の大使寸評>ロシア人にして、日本民俗学界の異色の存在が気になるのです。<図書館予約:(とりあえずカートに入れておこう)>heibonsha月と不死【8月の果て】柳美里著、新潮社、2007年刊<「BOOK」データベース>より日本統治下の朝鮮・密陽に生を受け、マラソンでの五輪出場を目指した亡き祖父・李雨哲。そのうしろ姿を追い、路上を駆けることを決意した柳美里。ふたりの息づかいが時空を越えて重なる瞬間、日本と朝鮮半島のあわいに消えた無数の魂が封印を解かれ、歴史の破れ目から白い頁に甦る。偉丈夫の雨哲と美丈夫の弟・雨根。血族をめぐる、ふたつの真実の物語が、いま日本文学を未踏の高みへと押し上げる。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(とりあえずカートに入れておこう)>rakuten8月の果て予約分受取目録R26好書好日トップ図書館情報ネットワーク 蔵書検索システム図書館予約の運用にも慣れて、速攻で入手するコツも何となくつかんだと思うのだ♪・朝日書評欄で探すとしたら、3ヶ月前掲載くらいのモノが狙い目かも。・専門的すぎるほどのモノは、予約0となっていることが多い。・受取館に収蔵しているモノは、移送する手間が省けるので早くなるだろう。・本屋の店頭に出た直後の新刊本・ウィキペディアでめぼしい著作を探す・神戸市図書館の予約順位は毎週火曜日(午前1時~3時) に更新されます。・Kindle版を購入すれば、その本の全て読めるのだが、紙の本から書き写す手間が好きなわけでおます。
2021.11.10
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図書館に予約していた『生態学者の目のツケドコロ』という本を、待つこと1ヶ月ほどでゲットしたのです。いまのところコロナ禍は小康状態であり、ニッポンはウィズコロナを目指して折り合いをつけようとしているが・・・生態学者の見たコロナ禍は如何なるものか。【生態学者の目のツケドコロ】伊勢武史著、ベレ出版、2021年刊<「BOOK」データベース>より生物と生物、生物と環境との関係を調べる、生物学の一分野である生態学。生きものについて知りたい、自然を守りたいと願う人にとって、生態学的な見方は必ず役に立つ。自然と生きもの、人間との関係を見つめ直す7つの章。【目次】第1章 人に囲まれて/第2章 暮らしのなかで/第3章 文化に触れて/第4章 外国を旅して/第5章 里山に生きて/第6章 森を歩いて/第7章 研究をとおして<読む前の大使寸評>いまのところコロナ禍は小康状態であり、ニッポンはウィズコロナを目指して折り合いをつけようとしているが・・・生態学者の見たコロナ禍は如何なるものか。<図書館予約:(6/28予約、副本3、予約21)>rakuten生態学者の目のツケドコロレジ袋有料化について、見てみましょう。p60~62<レジ袋有料化は環境にいいの?> レジ袋有料化は、もう10年くらいくすぶっていた議論。法の規制のもと、コンビニなどでも有料になったのは2020年7月からだが、イオンなど大手スーパーではもう何年も前から自主的に有料化していたと記憶している。 無駄なものを出さないのがいい、繰り返し使えるエコバッグがいいよね、という理由は誰もが理解できるところだが、そもそもレジ袋有料化がどのように環境の役に立つのか、じつはこの10年あまりで議論が変化してきたのでまとめておきたい。 僕の記憶の範囲では、10年ほど前にスーパー各社が自主的にレジ袋有料化を進めた際は、二酸化炭素排出量削減というのが名目だったように思う。ところが近年は、マイクロプラスチックなどの海洋ごみ問題の緩和を前面に出してきたように思われる。 二酸化炭素の話でいうと、私たち日本人が出す二酸化炭素のうち、レジ袋が占める割合はごくごくわずかであり、自動車や飛行機などの乗り物が出す量の1%未満となる。勝手な邪推だが、名だたる大企業主体の自動車産業や航空運輸業をやり玉に挙げることがかなわなかったからではないかという憶測を禁じ得ない。 一方、海洋ごみの削減という問題を考えると、たしかにレジ袋はそれなりに大きな原因になっていると考えられる。二酸化炭素は無味無臭無色の気体なので、排出されてもいわゆる「ごみ問題」は引き起こさないんだけど、街角に捨てられたレジ袋はやがて劣化してボロボロになり、海に流れ出してしまうのである。というわけで、環境科学の専門家のはしくれとしては、海洋ごみ削減のためのレジ袋の有料化という措置は妥当だと考えている。 問題なのは周知の仕方であり、どうも市民は何のためにレジ袋が有料化されたのかあまり理解しておらず、ただその不便さに不満を抱いているような気がしている。Twitterのつぶやきを確認したところでも、レジ袋有料化に好意的な発言というのはあまり見られない。 レジ袋有料化が海をきれいにするという効果が観測されるにはしばらく時間がかかるだろうが、少なくとも現時点でも、何を目的としているのか、意識を共有する必要があると思う。その責任は、僕ら専門家、政府、そして小売業のみなさんで連帯して負うべきであると思っている。 なお、有料化と禁止は意味合いが異なる。レジ袋についての環境政策としては、有料化が妥当で穏便なやり方だと思う。エコバックを持ち歩くのが面倒という人は、3円なり5円なり支払えば、これまでどおりにレジ袋を入手できる。それはまったく合法なことである。一方、エコバックを持ち歩く生活習慣を身につけた人は、レジ袋を買わずに済む。今回の有料化でそういう人の割合が大きく増えたことだろう。このように人間の多様性を認めつつ、社会全体としていい方向に持っていくための手段が有料化なのだ。『生態学者の目のツケドコロ』3:Small is beautiful『生態学者の目のツケドコロ』2:科学的リテラシー『生態学者の目のツケドコロ』1:生態系エンジニア
2021.11.10
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図書館で『禍いの大衆文化』という本を、手にしたのです。いまのところコロナ禍は小康状態であり、ニッポンはウィズコロナを目指して折り合いをつけようとしているが・・・この本にも、その「禍い」にどう折り合ってきたかという歴史が述べられているようです。【禍いの大衆文化】小松和彦著、KADOKAWA、2021年刊<「BOOK」データベース>より「禍い」に襲われた人々は、様々な文学・絵画・芸能・信仰を生み出してきた。その多くは娯楽の側面も持ち、世相を反映しながら、時代や地域に根付いていく。過去・現在の民衆の心性を解き明かす、研究プロジェクトの第2弾!<読む前の大使寸評>いまのところコロナ禍は小康状態であり、ニッポンはウィズコロナを目指して折り合いをつけようとしているが・・・この本にも、その「禍い」にどう折り合ってきたかという歴史が述べられているようです。rakuten禍いの大衆文化「第8章 近代、サイの目、疫病経験」で近代の疫病経験を、見てみましょう。p285~287<「伝染病」の誕生> 幕末から明治にかけて、疫病は、ひとつの転機を迎えた。疫病がどのように生じるかという理解の仕方が、この時期、更新されたのである。 集団を襲う病としての疫病は、古来、さまざまな原因にむすびつけられ理解されてきた。あるときは神罰。仏罰として、またあるときは国政の不調の結果や、非業の死をとげた貴人の怨恨(御霊)のしわざとして語られた。 明治期まで多くの子どもらを死地に追いやった疱瘡(のちにいう天然痘)の場合、疱瘡神という特異な形象とむすびつけられた。疱瘡への罹患は、疱瘡神の来訪ととらえられ、人びとは患者が軽く安々と回復するよう疱瘡神を饗応した。疫病は、身体に発する現象とは考えられておらず、下界の出来事に呼応して身体に生ずる現象ととらえられていたのだった。 そうした疫病への理解が、短期間のうちに更新されたのが、いまいう幕末から明治にかけての数十年の次期である。日本列島では19世紀初頭より、それまで経験したことのない疫病が流行するようになっていた。長崎に1817(文化14)年に現れた「神経疫」(腸チフスか)や、西日本を中心に1822(文政5)年に流行した「ころり」(コレラ)などが、それである。 その過酷な病状をみて、一部の医師らは、病因を解明し治療法を探るべく、西洋の医学書の翻訳に励んだ。そして、身体を内外から害する「毒」という病因論に替え、物理的な病原物質が病を「伝染」させるという病因論に着目するようになったのである。 疫病を、外界の何者かによる身体の集合的な侵襲とみるか、病原物質の伝播に起因する病の集団的発症とみるかは、非常に大きな転換である。幕末期には、まずは西洋近代医学を研究する医師が、つづいて為政者が、後者へと疫病の理解を切り替えていった。 病が病原物質の「伝染」により発症するのであれば、その経路を断ち切るとともに、発症を未然に防ぐ措置をとらねばならない。西洋流の環境改善策や海港検疫が日本にも紹介され、種痘(天然痘の予防接種)が積極的に推奨されるようになった。 かくて、肥前瘡など一部の皮膚病の説明に用いられていた「伝染」という概念は、維新前後に急激に変容する。コレラを筆頭に、病原物質の物理的な拡散により集団的に重篤な症状をひき起こさせる病が「伝染病」として国家にマークされ、その予防を掲げる法制度がしだいに構築されてゆく。疫病は近代にいたり、日常から徹底して排除すべきであり、また排除可能な病の集合へと変貌したのだった。<「衛生双六」にみる明治期の疫病> では、明治期の疫病、すなわち「伝染病」は、日常世界にどのように現れ、いかに排除すべきよう説かれたか。本章では、「衛生」をテーマに明治期に制作された三点の絵双六から、その様相を探ってみたい。道中双六 いま「絵双六」というのは、日本に15世紀後半になり現れた卓上競技である。歴史的に先行する「盤双六」と同様に、競技者が順にサイコロを振り、いかに早く駒を「振出」から「上り」まで進められるかを競う。投書、極楽浄土を「上り」とする「浄土双六」として登場したものが、時代とともに種類を増やしていった。 全盛期には、発達した木版印刷技術のもと、色鮮やかな絵双六も作成されるようになった。また、駒の進め方にも工夫がみられた。従来型の「浄土双六」や「道中双六」のように、決められた道順をサイコロの目の数だけ進んでゆく「廻り双六」とは別に指定されたサイコロの目にしたがって特定のマス目へと飛ぶ「飛び双六」も編みだされたのだった。 さて、本章で以下にみる「衛生」がテーマの絵双六は、いずれも「振出」から何度も病を経験しつつ「上り」へと至る飛び双六である。飛び双六の面白さは、一葉の紙の上に、多種多様な物語が展開される点にあろう。衛生双六もまた例外ではなく、サイコロの一投一投によって、「上り」までの道筋がころころと変化する。疫病に「伝染」したのち、「伝染病院」に飛んで収容されるか、「迷信」に走るか、「売薬」に頼るかによって、健康・長寿を得るか「死亡」に導かれるか、運命が分かたれるのである。『禍いの大衆文化』2:予言獣としてのアマビエ『禍いの大衆文化』1:コレラの妖怪
2021.11.10
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図書館に予約していた『生態学者の目のツケドコロ』という本を、待つこと1ヶ月ほどでゲットしたのです。いまのところコロナ禍は小康状態であり、ニッポンはウィズコロナを目指して折り合いをつけようとしているが・・・生態学者の見たコロナ禍は如何なるものか。【生態学者の目のツケドコロ】伊勢武史著、ベレ出版、2021年刊<「BOOK」データベース>より生物と生物、生物と環境との関係を調べる、生物学の一分野である生態学。生きものについて知りたい、自然を守りたいと願う人にとって、生態学的な見方は必ず役に立つ。自然と生きもの、人間との関係を見つめ直す7つの章。【目次】第1章 人に囲まれて/第2章 暮らしのなかで/第3章 文化に触れて/第4章 外国を旅して/第5章 里山に生きて/第6章 森を歩いて/第7章 研究をとおして<読む前の大使寸評>いまのところコロナ禍は小康状態であり、ニッポンはウィズコロナを目指して折り合いをつけようとしているが・・・生態学者の見たコロナ禍は如何なるものか。<図書館予約:(6/28予約、副本3、予約21)>rakuten生態学者の目のツケドコロシューマッハの言葉「Small is beautiful」について、見てみましょう。p38~42<Small is beautiful> Small is beautiful. 小さいことはうつくしい。 20世紀に活躍したドイツの経済学者、È・F・シューマッハの書いた本のタイトルである。この考え方は、一見すると世間の常識に反しているようにも思われる。人はたいてい、お金持ちになりたい、そしたら大きな家を買って、大きな車に乗って…、みたいな夢を見がちである。このように、状況と力の許すかぎり、経済的に大きくなってやろうという傾向は、人間が本能的に持つ性質なのかもしれない。 歴史をひも解くと、成功者たちはたしかに、大きくなりたがっていた。アレクサンダー大王、始皇帝、豊臣秀吉…、権力者たちはみな国を大きくし、巨大な宮殿や城をつくり、後宮に女をはべらせ…、みたいなことをしてきたのだった。生物学的に解釈すると、この現象は人間に生じた自然選択が原因だということが可能である。 社会的に成功した人は富をかき集めることができ、それは自分の適応度を上げることにつながる。たくさんの食べものと従者と配偶者を集めると、繁殖に有利になるのは当然だろう。その結果、成功者の遺伝子は分布を拡大する。これこそが適者生存であり、生きものに普遍的な現象なのである。 ところがこの、なんでも拡大してやろうという人間の本能ではカバーできない問題もある。それが環境問題だ。 人口密度が低く科学技術なんてものが存在しなかった原始時代は、当時の人間が全力を尽くしても、世界のすべての資源を使い切るなんてことは不可能だった。だから太古のむかしは、環境問題については深く考えず、ただ目先の資源を独占するというモチベーションと能力を持つ者の適応度が高くなったのである。 しかし時は移り現代。人間は世界中で数を増やし、いろんな資源を我がもの顔で利用するようになった。このままのやり方では、世界の資源の枯渇が現実味を帯びてきたのである。 たとえばアメリカ人のように、大きいけど気密性が低く古い家で暖房をガンガンかけて、冬でもTシャツで過ごすようなライフスタイルを世界中の人が送るようになると、世界は破綻するのである。これについては、人間は本能だけに従うのではなく、理性をはたらかせて後先を考える必要がある。そこで出てくる考え方が、「Small is beautiful」である。 人間は幸い、原始時代からその大きな脳みそを長所として生きてきた。脳みそが大きいことの利点は、本能にプログラムされていない新しい環境に置かれても、その状況を観察して理解し、考えて合理的な行動ができることにある。このように、それまで体験したことがないないことにも適応できるというのが人間のすばらしさであり、環境問題という近年深刻化する問題に適応する原動力になるのではないだろうか。 ちなみに広い意味では、環境問題というのは、生物の世界でもいろいろ発生している。環境が変われば、それは生物の生存と繁殖を脅かすことになる。たとえば、ある離島に外来種のネズミがやってきたとしよう。その島にそれまではネズミのような生物はいなかったので、そこに暮らしている生きものたちは、ネズミに対して無力だった。(中略) この島にやってきたネズミたちは、不幸なことに、後先を考えるという能力を持っていなかかった。だから彼らは、食べられるだけの獲物をひたすら食べ、産めるだけの子を産みつづける。その先に破たんが待っていたとしても、それを止めることはできなかった。では、いままさに環境を食い荒らしている人類も、荒廃を止めることはできないんだろうか?そうとも限らない、と僕は思う。 何度も言うけれど、人間のおもしろさは後先を考えることができること。未来のためにいまがまんしよう、という理屈に沿って行動できるのだ。これは人間が持つ、農耕や牧畜という産業形態にも現れている。木の実や子羊を手に入れたら、その場で食べてしまうのがいちばん楽だ。しかし農耕や牧畜には、食べるのをがまんして未来のために苦労して育てるという知能が必要になる。 このように、未来を思い描く能力と、未来のためにいま苦労する自制心によって農耕や牧畜という産業を発明できた人類は、将来の環境問題のために、いま欲望を抑えるという判断もできるんじゃないかと僕は思っている。 「Small is beautiful」は、発想の転換を迫る言葉である。これまでは大きいことが富と力の証しだったが、これからは小さいことに美しさを見いだしていこうという勧めである。20世紀後半、ちょうどさまざまな環境問題が注目されはじめた時期に出版されたシューマッハのこの本は、世界中の人びとに知られるようになり、環境問題の解決に果たした役割は計り知れない。『生態学者の目のツケドコロ』2:科学的リテラシー『生態学者の目のツケドコロ』1:生態系エンジニア
2021.11.09
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図書館に予約していた『生態学者の目のツケドコロ』という本を、待つこと1ヶ月ほどでゲットしたのです。いまのところコロナ禍は小康状態であり、ニッポンはウィズコロナを目指して折り合いをつけようとしているが・・・生態学者の見たコロナ禍は如何なるものか。【生態学者の目のツケドコロ】伊勢武史著、ベレ出版、2021年刊<「BOOK」データベース>より生物と生物、生物と環境との関係を調べる、生物学の一分野である生態学。生きものについて知りたい、自然を守りたいと願う人にとって、生態学的な見方は必ず役に立つ。自然と生きもの、人間との関係を見つめ直す7つの章。【目次】第1章 人に囲まれて/第2章 暮らしのなかで/第3章 文化に触れて/第4章 外国を旅して/第5章 里山に生きて/第6章 森を歩いて/第7章 研究をとおして<読む前の大使寸評>いまのところコロナ禍は小康状態であり、ニッポンはウィズコロナを目指して折り合いをつけようとしているが・・・生態学者の見たコロナ禍は如何なるものか。<図書館予約:(6/28予約、副本3、予約21)>rakuten生態学者の目のツケドコロコロナ禍に触れているあたりを、見てみましょう。p14~17<変わりゆく世界> 僕ら生態学者は、生物が環境のなかでどのように暮らしているかを考えるのが仕事だ。僕ら人間も生物であり、僕らを取り巻く環境のなかでなんとか日々を送っている。 人間という生物の特徴は、自分で自分のクラス環境を変えること。生物はふつう、与えられた環境でうまく生き抜くために全力を尽くしはするが、環境そのものを積極的に変えようとはしない。人間以外の数少ない例としてはビーバーがいる。彼らは川をせき止めてダムをつくり、安全に暮らし子育てできる環境をつくり出す。 このように、自分で環境を改変する生物のことを「生態系エンジニア」と呼んだりする。僕ら人間も生態系エンジニア。少し気の利いたビーバーみたいなものだ。ちなみに生態系(ecosystem)とは、ある場所の生物と非生物すべてをひっくるめたまとまりのことで、これらの要素がかかわり合いながら、その生態系をかたちづくっている。 2020年、僕ら人間の社会を新型コロナウイルスが襲った。 それは、僕らが何十年もかけて築き上げてきた社会システムをいとも簡単に、わりと根本的なところから揺さぶることになった。新型ウイルスはもちろん人類にとっての大問題ではあるが、一歩引いた目線で見ると、人間社会にとっての試金石であるともいえる。人間が試行錯誤を積み重ねてつくってきた現代社会は、人間という生物を中心とした生態系と呼ぶことができる。それなりに安定しているかに見えたこの生態系が、突然の大きな変化を強いられているのである。 レジリエンスという概念がある。外圧によって変化してしまっても、もとに戻る能力のことである。ほんとうに人間にとって必要なことなら、コロナウイルスの影響でそれが一時中断しても、早晩もとに戻るだろう。 食べることや人と話すこと。これらはウイルス蔓延の渦中では「悪」のようにみなされることもあったりするが、これらは人間の本能的なものだから、コロナ騒ぎが収束したらもとに戻るんじゃないだろうか。もとに戻るどころか、自粛の反動で、とてもテンションの高い数年間がやってくるような気がしてならない。 その一方で、満員電車で出社して、ときには新幹線に乗って出張して会議して、という現代日本の習慣は、コロナ騒ぎが終わってからも、もうもとには戻らない気がしている。昭和の高度経済成長期、日本では人口の都市集中が進み、満員電車での通勤を余儀なくされる人が増えていった。 日本の社会が農業中心だった時代は、朝起きたら自宅のそばの田畑で作物の世話をしていたわけだから、満員電車とは無縁である。これが日本の歴史の圧倒的な長期間を占めていて、満員電車時代はたかだか直近の数十年にすぎないのである。 もっとも、満員電車で通勤するという選択にはメリットもあった。田舎で農業をするよりも都会で会社勤めをするほうが経済的に安定するので、トレードオフとして満員電車をがまんするのも悪くない。生態学的な表現をすると、都会で会社勤めをするという戦略にはデメリットもあるものの、総合的にはその人の生存と繁殖の役に立ってきたのかもしれない。 このようなわけで、高度経済成長期には合理的だった「満員電車通勤戦略」だが、そのような生活習慣が廃れる機は徐々に熟していた。その最たる要因はインターネットだろう。インターネットが普及しはじめて20年あまり、いまでは有線でも無線でも高速で安定した通信が提供されていて、職種によってはその気になれば出社しなくても、全国どこにいても仕事ができる状況はすでに整っていたのである。
2021.11.08
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早朝に散歩する太子であるが、南東の空に月と金星が見えるのです。ちょうど三日月の内側に金星が位置しているが、これって中東諸国が好むマークではないか。また、このマークは春分と関係があるのではないか?残暑厳しき折りなんて言っていたが・・・このところやっと秋の気配を感じる太子でおます。(オイオイ、もう立冬やでぇ)『日本のならわしとしきたり』という蔵書に二十四節季の記事があることを思い出したのです。【日本のならわしとしきたり】ムック、 徳間書店、2012年刊<内容紹介>ありふれたムック本ということなのか、ネットにはデータがありません。<大使寸評>とにかく「今日は二十四節季でいえば、何になるか♪」を知りたいロボジーにとって、座右の書となるでしょう♪Amazon日本のならわしとしきたり浅草 鷲神社 酉の市この本で、立冬のあたりを見てみましょう。和暦p27~28<立冬>冬が立つ日。年末を意識した仏事神事が始まる 「立冬」は、現行の暦では11月7日ころ第1日目を迎え、小雪(11月22日ころ)に入る前日までをいう。 季節の区分では、立冬の初日から立春(2月4日ころ)の前日までが「冬」になる。ちなみに、俳句ではこの日から冬の季語になる。『暦便覧』には、「冬の気立ち始めて、いよいよ冷ゆれば也」とあり、冬の気配が現れ始めた様子が記されている。 農作業では、五穀などの収穫が一段落したころで、前節気に続き恒例の年中行事が目白押しに続く。神事や仏事の祭りでは、収穫に対する感謝とこれからの厄除け祈願、商売繁盛などが中心となっている。 景気が不景気になるほど参拝者が増える傾向にあるという。困った時の「神頼み」「仏頼み」である。またこの節気には、子供の成長を祝う七五三がある。現行の暦では11月15日ごろ。 七五三は、子供の成長を祝う行事のひとつ。男子は三歳と五歳、女子は三歳と七歳で行われ、産土神や寺社にお参りする。 もともと宮中で行われていた「髪置・袴着・帯解」の祝いがひとつになり、江戸中期以降、江戸を中心に一般化した行事である。(中略) また、「飾り売り」など早くも年末を意識した行事がこのころから始められる。 立冬の期間の七十二候には、初候の「山茶始開」(山茶花が咲き始める)は山茶と書いてサザンカと読む。 そして次候「地始凍」(大地が凍り始める)に至り、末候「金盞花香」は、水仙の花が咲くという意味になる。二十四節季の寒露に注目(復刻)
2021.11.06
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図書館の本を手当たり次第に、借りている大使であるが・・・・なんか慌しいので、この際、積読状態の蔵書を再読しようと思い立ったのです。で、再読シリーズとして、以下のとおりボツボツ取り上げてみます。・#48:村上春樹(BRUTUS 21年10/15号)・#47: 空想居酒屋・#46: 文芸春秋(2021年9月特別号)・#45: 文芸春秋(2021年8月号)・#44: ヤマザキマリ『たちどまって考える』・#43: 再読『マイ・ロスト・シティー』・#42:『小川洋子対話集』 ・#41: ミヒャエル・エンデ著『モモ』・#40: 日本人はなぜ存在するか・#39: 「空気」の研究・#38: 街場の大阪論・#37: 韓国 反日感情の正体・#36: トウ小平・#35: 日本語と韓国語・#34: ソウルの練習問題・#33: 『「日本」とは何か』日本の歴史00巻・#32:「王権誕生」日本の歴史第2巻・#31:新・韓国風土記(第一巻)・#30:グ印関西めぐり(濃口)・#29:リドリー・スコット:フィルムメーカーズ#16・#28:日韓 悲劇の探層・#27:日本人と韓国人なるほど辞典・#26:街場の文体論・#25:書いて稼ぐ技術・#24:「無法」中国との戦い方・#23:資本主義の終焉と歴史の危機・#22:村上春樹ロングインタビュー・#21:日本人はなぜ存在するか・#20:兼好法師『徒然草』 (100分 de 名著)・#19:世界マンガ体系・#18:南画と写生画・#17:ホンモノの日本語を話していますか?・#16:ストレスゼロの整理術・#15:里山資本主義<再読候補>・ノモンハン・播磨国風土記・情報の「捨て方」・老人力のふしぎ・夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです*********************************************************<『村上春樹(BRUTUS 21年10/15号)』2>『村上春樹(BRUTUS 21年10/15号)』という雑誌が最寄の本屋で売り切れだったので、三宮に出かけた際に購入したのです。買った後で中を見たのだが「翻訳家として何がすごいのか?」とか「私的読書案内 51 BOOK GUIDE」とか色んな切り口があって・・・楽しめそうでおます。【村上春樹(BRUTUS 21年10/15号)】雑誌、マガジンハウス、2021年刊<商品説明>より1979年に『風の歌を聴け』でデビュー後、文芸の本流を担ってきた村上春樹。同時代を生きるブルータスが、ついにこの稀代の作家に向き合います。村上春樹と読み、村上春樹を読む。村上さんが手放せない51冊の本について28ページにわたって書き下ろし。著作から時代を読み解く年表や、早稲田大学<村上春樹ライブラリー>案内も。【目次】より・村上春樹の私的読書案内。51 BOOK GUIDE ・特集「ドイツの『いま』を誰も知らない!」・年表で探る。文芸・社会学・カルチャーで振り返る、村上春樹の時代。・翻訳家として何がすごいのか?<読む前の大使寸評>買った後で中を見たのだが「翻訳家として何がすごいのか?」とか「51 BOOK GUIDE」とか色んな切り口があって・・・楽しめそうでおます。rakuten村上春樹(BRUTUS 21年10/15号)『村上春樹(BRUTUS 21年10/15号)』3:『村上春樹(BRUTUS 21年10/15号)』2:冒頭のインタビュー『村上春樹(BRUTUS 21年10/15号)』1:辛島デイヴィッド×小野正嗣による対談*********************************************************<『空想居酒屋』>本屋の店頭で『空想居酒屋』という新書を、手にしたのです。ぱらぱらとめくると、どこから読んでも面白そうなラインアップとなっているし、写真やレシピも充実しているし・・・なかなかの優れものでおます♪【空想居酒屋】島田雅彦著、NHK出版、2021年刊<「BOOK」データベース>よりコロナ禍のもと、大手チェーンからデリバリー中心のゴーストレストランへ、飲食店のかたちが変わろうとしている。そんな中、国内外の居酒屋をハシゴして40年、包丁を握って35年の「文壇随一の酒呑み&料理人」が、自身の理想の居酒屋を開店した?芥川賞最多落選の芥川賞選考委員が放つ、ポスト・コロナの食をめぐる痛快エッセイ!レシピ&カラーページ付。<読む前の大使寸評>ぱらぱらとめくると、どこから読んでも面白そうなラインアップとなっているし、写真やレシピも充実しているし・・・なかなかの優れものでおます♪rakuten空想居酒屋空想居酒屋4*********************************************************<『文芸春秋(2021年9月特別号)』2>本屋の店頭で『文芸春秋(2021年9月特別号)』を、手にしたのです。ウーム 今月号は読みどころがたくさん載っていて、芥川賞受賞作(二作)と台湾・蔡英文総統インタビューが決め手になって・・・8月号に続いて買い求めたのです。【文芸春秋(2021年9月特別号)】雑誌、文芸春秋、2021年刊<出版社>より〇台湾・蔡英文総統 単独インタビュー「香港、ウイグルへの弾圧を北京当局がやめるよう呼びかける。聞き手・船橋洋一〇第165回 芥川賞発表・貝に続く場所にて 東日本大震災で生き残った者の罪悪感を 文学として昇華させた石沢麻依(いしざわまい)・彼岸花が咲く島 台湾出身の作家が描く 女性が統治する島の秘められた過去とは李琴峰(りことみ)<読む前の大使寸評>今月号は読みどころがたくさん載っていて、芥川賞受賞作(二作)と台湾・蔡英文総統インタビューが決め手になって・・・8月号に続いて買い求めたのです。bunshun文芸春秋(2021年9月特別号)『文芸春秋(2021年9月特別号)』2:台湾・蔡英文総統への単独インタビュー(続き)『文芸春秋(2021年9月特別号)』1:台湾・蔡英文総統への単独インタビュー*********************************************************<『文芸春秋(2021年8月号)』5>本屋の店頭で『文芸春秋(2020年8月号)』を、手にしたのです。ウーム 今月号は読みどころがたくさん載っていて、特集「中国共産党の野望と病理」も充実しているので、手元不如意の太子も・・・久々に買い求めたのです。【文芸春秋(2021年8月号)】雑誌、文芸春秋、2021年刊<Customer reviews>より①今月は中国特集号だ。一帯一路政策、サイバーテロ、宇宙人戦争、台湾への圧力、ウイグル弾圧と枚挙に暇がない。②習近平は中華帝国の再来を目指している。ウイグル弾圧や香港の民主化運動場弾圧、台湾への圧力強化が国際社会から非難されても一向に構わない。主権は中国にある。③台湾への圧力強化は間違いなく日米中関係を悪化させる。中米に挟まれて苦しむのは日本である。これ以上米中関係を悪化させないように仲介役を務めるのが日本の外交政策である。④善隣外交の手腕が日本に求められている。お勧めの一冊だ。<読む前の大使寸評>追って記入amazon文芸春秋(2021年8月号)『文芸春秋(2021年8月号)』4:中国新人類「寝そべり族」『文芸春秋(2021年8月号)』3:量子科学衛星の脅威『文芸春秋(2021年8月号)』2:台湾侵攻「日米極秘訓練」『文芸春秋(2021年8月号)』1:中国の「巨大な監視社会」やネットカルチャー*********************************************************<再読『たちどまって考える』>本屋の店頭で『たちどまって考える』という新書を手にしたのです。パラパラとめくってみると、ヤマザキマリの最新評論集のような本になっています。これは図書館予約している場合ではないでえ・・・ということで、衝動買いしたわけでおます。【たちどまって考える】ヤマザキマリ著、中央公論新社、2020年刊<「BOOK」データベース>よりパンデミックを前に動きを止めた社会。世界を駆ける漫画家・ヤマザキマリもこれほど長期間家に閉じこもり、自分や社会と向き合ったのは初めてだった。しかしその結果「たちどまることが実は必要だったのかもしれない」という想いにたどり着く。ペストからルネサンスが開花したようにまた何かが生まれる?混沌とした日々を生き抜くのに必要なものとは?自分の頭で考え、自分の足でボーダーを超えて。あなただけの人生を進め!<読む前の大使寸評>ヤマザキマリの最新評論集のような本になっています。これは図書館予約している場合ではないでえ・・・ということで、衝動買いしたわけでおます。rakutenたちどまって考える『たちどまって考える』10:医療崩壊と自問自答『たちどまって考える』9:イタリアと中国の蜜月p34~36『たちどまって考える』8:人生は思い通りにならないp166~169『たちどまって考える』7:テレビのコンテンツに苦言を呈すp150~153『たちどまって考える』6:松田聖子は「アイドル界のカエサル」p150~153『たちどまって考える』5:日本人の教養p146~148『たちどまって考える』4:ニッポンのコロナ感染『たちどまって考える』3:ニッポンの世間体p204~206『たちどまって考える』2:外国語の習得p200~203『たちどまって考える』1:漫画家のくせにp195~197*********************************************************図書館の本を手当たり次第に、借りている大使であるが・・・・なんか慌しいので、この際、積読状態の蔵書を再読しようと思い立ったのです。で、再読シリーズ#43として『マイ・ロスト・シティー』を取り上げてみます。【マイ・ロスト・シティー】スコット・フィッツジェラルド著・村上春樹訳、中央公論新社、1984年刊<商品のレヴュー>より訳者の想いが冒頭にあるため、必然的に村上春樹の世界に引きずられてしまうような気が、、、それはともかくどの短編も諦めと言いましょうか、静かな悲しさに包まれた雰囲気を纏っている。狂騒的な時代に嫌悪感を感じつつ、それに合わせていかないと様々な意味で生きていけない自己および市井の人々の悲哀をこの作家は本能的に嗅ぎつけ、かつ意図して淡々と描き出して見せた気がする。今回の読書後の一番の好みは『残り火』かな。<読む前の大使寸評>この古い文庫本がどういう経緯で本棚に乗っていたかはわからないが、村上春樹訳のこの本が気になっていたので・・・読むことにしたのです。rakutenマイ・ロスト・シティー『マイ・ロスト・シティー』2:失われた三時間『マイ・ロスト・シティー』1:残り火*********************************************************再読シリーズ(#1-4)再読シリーズ(#5-8)再読シリーズ(#9-11)再読シリーズ(#12-14)再読シリーズ(#15-17)再読シリーズ(#18-20)再読シリーズ(#21-23)再読シリーズ(#24-26)再読シリーズ(#27-29)再読シリーズ(#30-32)再読シリーズ(#33-34)再読シリーズ(#35-37)再読シリーズ(#38-40)再読シリーズ(#41-44)再読シリーズ(#45-46)
2021.11.03
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今回借りた5冊です。だいたい支離滅裂に借りているけど、今回の傾向は、強いていえば、「日本」でしょうか♪<市立図書館>・日本文学100年の名作:10巻「バタフライ和文タイプ事務所」・イエズス会がみた「日本国王」・禍いの大衆文化・日本語の乱れ・リスボアを見た女<大学図書館>(ただいま市民への開放サービスを休止中)図書館で手当たり次第で本を探すのがわりと楽しいが・・・これが、図書館での正しい探し方ではないかと思ったりする(笑)***********************************************************【日本文学100年の名作:10巻「バタフライ和文タイプ事務所」】小川洋子・他著、 新潮社、2015年刊<Customer reviews>よりついに全10巻。「晴耕雨読」の、うれしい相棒。(第10巻)小川洋子/桐野夏生/吉田修一/伊集院静/恩田陸/三浦しをん/角田光代/森見登美彦/木内昇 /道尾秀介/桜木紫乃/高樹のぶ子/山白朝子/辻村深月/伊坂幸太郎/絲山秋子<読む前の大使寸評>小川洋子/桐野夏生/三浦しをん/絲山秋子の短編が載っているのが借りる決め手になりました。<図書館予約:(10/17予約、10/21受取)>amazon日本文学100年の名作:10巻「バタフライ和文タイプ事務所」【イエズス会がみた「日本国王」】松本和也著、吉川弘文館、2020年刊<「BOOK」データベース>より戦国末期に来日し、キリスト教を布教したイエズス会の宣教師たち。彼ら西洋人は、日本の権力者をどのように見ていたのか。書き残された膨大な書翰や報告書を分析し、実体験に基づく日本国家観、権力者観を読み解く。<読む前の大使寸評>戦国末期~江戸期に来日した欧米人(ポルトガル、バスク、オランダ、イギリス、ロシア、アメリカ)のフロンティア・スピリット(あるいは泥棒根性)がええでぇ。rakutenイエズス会がみた「日本国王」【禍いの大衆文化】小松和彦著、KADOKAWA、2021年刊<「BOOK」データベース>より「禍い」に襲われた人々は、様々な文学・絵画・芸能・信仰を生み出してきた。その多くは娯楽の側面も持ち、世相を反映しながら、時代や地域に根付いていく。過去・現在の民衆の心性を解き明かす、研究プロジェクトの第2弾!<読む前の大使寸評>追って記入rakuten禍いの大衆文化【日本語の乱れ】清水義範著、集英社、2003年刊<「BOOK」データベース>より日本語に未来はあるのか!ラ抜き言葉、意味不明な流行語、間違った言葉遣い、平板なアクセント、カタカナ語の濫発…日本語の現状を憂う聴取者からの投書の山に、ディレクターは圧死寸前!?(「日本語の乱れ」)。その他、比喩の危険性、音声入力の可能性と限界、宇宙を蹂躙する名古屋弁など、言葉をテーマにした傑作12篇。<読む前の大使寸評>日本語を題材にしてパスティーシュ小説を書いたり、茶化すことにかけては第一人者なので興味深々なのでおます。rakuten日本語の乱れ【リスボアを見た女】阿刀田高著、新潮社、1995年刊<「BOOK」データベース>より天正の少年使節団や支倉常長より早く、当時の大国ポルトガルの都リスボアを訪れた日本人がいた。種子島の鍛冶の娘で、伝来した鉄砲の製法と引きかえに、人身御供同様に嫁がされたのだった。彼女の名ははな、ポルトガル人にはアンナと呼ばれた。―歴史の現場に立ってみようとふと島を訪れた男の目に、初恋の淡い思い出に重なって、歴史に呑みこまれた悲劇の女たちの姿が現われる。<読む前の大使寸評>追って記入amazonリスボアを見た女************************************************************図書館大好き515
2021.11.01
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昨日パソコンがクラッシュしたので、ブログアップができなくなりました。パソコンを買い換えるまで新規のブログ更新が滞りますのでよろしくお願いします。
2021.10.22
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■今朝(10/16-6時50分)は、やや寒いがお天気良~し♪ 我が町の空高くツバメの群れが舞っています。これはどうも渡りの途中の集合中ではないかと思うのだが?■今朝(10/14-6時10分)はお天気良~し♪ 我が町の空高くツバメの群れが舞っています。これは渡りの途中なのか? はたまた集団トレーニングなのか?真夏日が続く今夏は、ツバメの渡りが遅くまで見られるようですね。■今朝(10/10-6時半)はお天気良~し♪、おや、我が町の上空を数羽のツバメたちが飛んでいるぞ・・これは渡りの途中なのか?■今朝(10/07)はお天気良~し♪、おや、我が町の上空をツバメたちが舞っているぞ・・・これは行き遅れた群れなのか、はたまた、北から移動中の群れなのか?この行動は寒くなるまでは続くかもしれないので、ウォッチングせなあかんなあ。(8時には見えていたこの群れは、9時頃には見えなくなりました)ということで、以前の日記から復刻します。***********************************************************************日に日に、群れで飛ぶツバメが少なくなっているような、このごろですね。七十二候に「玄鳥去」というのがあるけど・・・どうも我が町生れのツバメたちは、もう飛び去っていて南の地域を移動中ということのようです。ネットでこんなサイトがありました。七十二候「玄鳥去(つばめさる)」。巣立ったヒナは、どんな旅に出るのでしょうかより■もう帰る巣のない幼鳥たち。「渡り」を前に、集団で暮らします 食糧や繁殖のため定期的に長距離を移動する『渡り鳥』。日本でもいろいろ見られます。ツバメなどの「夏鳥」は、春に来て子育てし、秋になると南の国に去っていきます。オオハクチョウなどの「冬鳥」は、越冬するために北の国から日本にやってきます。チドリなどの「旅鳥」は、北国で繁殖し南国で越冬するため、中継地点として日本を通りかかります。 人間の世界では、転々とする苦労人を「渡り鳥」と表現したりしますが、『渡り』の旅はまさに苦労の連続。嵐や天敵など危険もいっぱいです。ツバメたちも、毎回命がけで種の楽園をめざします。 5月下旬。生まれてからおよそ20日で巣立った一番子のヒナたち。ツバメは2回子育てをする親が多く、生まれた巣は、これから育つ弟妹(二番子)たちのもの。巣立った子の居場所はありません。 そこで、幼鳥たちは集まって、出発の日まで水辺のアシ原や大きな樹木などで集団生活をします。早く一人前にならないと、南の国に渡っていけません。渡り鳥としての自覚を高める寮生活といったところでしょうか。幼鳥は、尾が短いので遠くからでもよくわかります。 夏になると、2回目の子育てが終わった親鳥たちも集団に加わります。夕方、空にたくさんのツバメたちが集結して、日が沈むと一斉にねぐらに入っていきます。「集団ねぐら」は毎日少しずつ移動するうえ、夜明けにはツバメたちはもう飛び立っているので、なかなか見つけにくいようです。集団はだんだん大きくなり、秋には数千~数万羽もの大群になるといいます。■歩かないツバメ。渡り鳥を見送れる場所をご存じですか? ある日の明け方前に小グループで出発。親鳥から先に南へと旅立ち、幼鳥は渡る体力がつくのを待ちます。連れて行ってはもらえません。7月後半になると、ねぐらは親の割合が少なくなってきます。それでも10月頃までには、皆出発するようです。 渡りにはいくつかのコースがあるようです。まだ一度も通ったことのない何千キロもの空の道を、親もいないのに、幼鳥はどうやって迷わずに行けるのでしょう? ツバメには、目印のない海の上でも目的地に向かって飛び続けられるよう、太陽や地磁気によって方角を知る能力があるといいます。さらには、目的地に近づくと地形や目立つ建造物をたよりに正しい場所を見つけるのだそうです。生まれながらに「渡る力」が備えられていたのですね。(中略) 飛行速度は時速45km、最高時速は200kmともいわれます。また、長い尾や翼のひと振りで、急旋回・急降下・停止飛行も思いのまま! 多くの渡り鳥が、気流が安定していて天敵に襲われにくい夜間に渡るなか、飛翔力に優れたツバメは、昼間に堂々と渡っていくのです。体力のついたツバメたちは南の地域を移動中のようだが・・・来年の春にまた帰っておいで。
2021.10.17
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『村上春樹(BRUTUS 21年10/15号)』という雑誌が最寄の本屋で売り切れだったので、三宮に出かけた際に購入したのです。買った後で中を見たのだが「翻訳家として何がすごいのか?」とか「私的読書案内 51 BOOK GUIDE」とか色んな切り口があって・・・楽しめそうでおます。【村上春樹(BRUTUS 21年10/15号)】雑誌、マガジンハウス、2021年刊<商品説明>より1979年に『風の歌を聴け』でデビュー後、文芸の本流を担ってきた村上春樹。同時代を生きるブルータスが、ついにこの稀代の作家に向き合います。村上春樹と読み、村上春樹を読む。村上さんが手放せない51冊の本について28ページにわたって書き下ろし。著作から時代を読み解く年表や、早稲田大学<村上春樹ライブラリー>案内も。【目次】より・村上春樹の私的読書案内。51 BOOK GUIDE ・特集「ドイツの『いま』を誰も知らない!」・年表で探る。文芸・社会学・カルチャーで振り返る、村上春樹の時代。・翻訳家として何がすごいのか?<読む前の大使寸評>買った後で中を見たのだが「翻訳家として何がすごいのか?」とか「51 BOOK GUIDE」とか色んな切り口があって・・・楽しめそうでおます。rakuten村上春樹(BRUTUS 21年10/15号)村上春樹特集の冒頭のインタビューを、見てみましょう。p20~21<村上春樹(上) 読む>Q:最近も読書をされていますか?村上:読んでいますね。ちょっと時間が空いた時とかに。僕の「51冊の本」を選んだじゃない? あれを読み返してて、結構面白かったですよ。選んだけど、ずっと昔に読んだきりだったから、「どんなだっけなあ」と思って。Q:新刊もチェックしていますか?村上:新刊・・・。あんまり書店に行ってないからね・・・。柴田元幸さんが翻訳したのを僕のところに送ってくれて、それを読んでるだけで時間が・・・。こんなに速くたくさん仕事する人いないよなと思って。だって、読むより翻訳する方が速いんだもの。柴田さんの本は結構読んでます。あとは最近、新刊で文学ってあまり読んでないですね・・・。ミステリーとかは結構読んでるんですけど。Q:ミステリー!村上:ミステリーを読むの好きですよ。僕は何を隠そうジャック・リーチャーのファンだから。ジャック・リーチャー・シリーズはマメに読んでますね。Q:村上さんは昔から古典だけでなく、新刊の海外文学の翻訳をたくさんされているじゃないですか。翻訳する本についてはどうやって情報を集めてるんですか?村上:僕は外国にしょっちゅう行ってたから。書店で探して買ってきて、それを読むっていうことをやってた。あんまりインターネットとかでは買わないですね。実際に書店に行って、買う。最近は外国に行ってないでしょ? だから書店に行けないし、仕入れはないですね。Q:では、ストックがちょっと枯渇してたり?村上:うん。ただ僕は30代、40代、50代くらいの時はアメリカのコンテンポラリー、レイモンド・カーヴァーやその同時代のものを訳すのに興味があったんだけど、最近は同時代のものをいち早く訳すのは若い人に任せて、昔読んだ好きなものをコツコツ訳していこうという方向に。あまり知られなくてもね、あるんですよね。 トルーマン・カポーティとかスコット・フィッツジェラルドとか、昔のものをやっています。今はフィッツジェラルドの『最後の大君』を訳し終えてゲラを見ているところ。あとはカポーティの『遠い声 遠い部屋』を訳しています。Q:一番最初の長編ですね。村上:うん。素晴らしい作品。おういうクラシックのものを訳し直すというのが今面白いです。Q:当時好きだったものをもう一回翻訳するっていう時に読み直すと、意味がだいぶ変わってきたりするものですか?村上:うん。あとはずっと僕が持ってきた本のイメージみたいなものを昔の翻訳で見るとちょっと違うなって。自分のイメージで訳したいという気持ちがすごく強くなってきた。Q:調べながら訳すんですか? 『グレート・ギャッピー』をやっている時に、ニューヨークのガイドブックがずいぶん役に立ったみたいなことをおっしゃっていました。村上:今はウィキペディアとかがあるから、すごく楽。30年前に訳したものと今訳したものと全然違うっていうのは、情報量が違うんですよ。だから例えば『最後の大君』なんかは、1940年頃の作品だけど、その当時の風俗的なものがいっぱい出てくるから、昔の翻訳者なんかわかりっこないんですよね。今はかなりカバーできます。ウィキペディアとかそういうので。だから翻訳の概念そのものがだんだん変わってきているなあと思います。Q:少し話は変わりますが、今みたいな時代だからこそ、もう一度読み直したら面白いぞとか、意味が変わってきてこの時代に合ってるぞみたいなものってありますか?村上:今の時代だとエドガー・アラン・ポーなんかはもう一回読み直してみたいなと思いますね。『赤死病の仮面』ってあってね。ペストがあってみんな閉じこもってとか。コロナの時、僕はあれを一番最初に思い出したんですよね。ポーの話って今の時代に読むのにいいんじゃないかなとという気がだんだんしてきて。…ポーは良いなあ。ポーはね、割と翻訳が良いのが出てるから、あえてやることはないかもなあというふうに思っています。Q:ポー、読み返します。ちなみに小説以外に何か読んだり、情報を得たりするものってあるのでしょうか? 新聞とか、雑誌とか。村上:小説以外で? 読まなくなったね…。Q:では村上さんは今どこで情報を仕入れてるんですか?村上:情報はね、人から聞くんですよ(笑)。「こんなことありましたよ」「誰が死にましたよ」…「チャーリー・ワッツ死にましたよ」とかね。Q:人なんですね、情報源が。村上:インターネットのウェブニュースがあるじゃない? あれはかなり偏向しているような気がするからあまり見ないようにしているんですよね。新聞の情報の方が、まだ「この新聞のこれだったら大丈夫だろう」っていうのがあるけど、ネットは何が何だかわからないからなるべく見ないようにしているんですよ。それよりは、周りの人から聞く情報の方が正確なような気がする。Q:この人が言うんだから間違いないとか。村上:あとね、僕は新聞読まないけど、うちの奥さんが切り抜き魔で、僕が読んだ方がいいっていうやつを全部切り抜いて机の上に置いてあるの(笑)。それを見て情報を得てますね。Q:(笑)。それは毎日ですか?村上:いや4、5日まとめてどっと置いてあって。誰が死んだっていうのは大体それでわかるから。それは便利っていうか。僕は何年かまとめて外国に住んでいたけど、その時はインターネットってなかった。それで誰が死んだかっていうのはわからなくて、日本に帰ってきて誰が生きてて誰が死んでるかって全然わかんなくなって混乱が生じたから。死亡記事っていうのは大事なんですよね。Q:村上さんが死亡情報に関心があるとは知りませんでした。『村上春樹(BRUTUS 21年10/15号)』1
2021.10.13
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図書館で『ラッフルズ』という本を、手にしたのです。ラッフルズは英国・東インド会社の社員だったが理想主義であったことが特異なんですね。インド、東アジアを舞台に暴れ回った東インド会社が興味深いのです。【ラッフルズ】坪井祐司著、山川出版社、2019年刊<「BOOK」データベース>よりシンガポールの建設者ラッフルズは、フランス革命でヨーロッパが激動した時代、自由主義の理想に燃えてアジアに赴いた。ラッフルズは、ジャワでは農民を封建領主から解放し、シンガポールでは海賊や奴隷制を排除して自由な交易空間をつくろうと試みた。彼を迎えた東南アジアには、豊かな海の交易世界と華人やムスリムなど多様な人びとからなる折り重なったネットワークが広がっていた。ラッフルズがもたらした「近代」は地域や人びとをどのように変えたのだろうか。<読む前の大使寸評>ラッフルズは英国・東インド会社の社員だったが理想主義であったことが特異なんですね。インド、東アジアを舞台に暴れ回った東インド会社が興味深いのです。rakutenラッフルズ「5 ラッフルズがもたらしたもの」のあたりを、見てみましょう。p92~94<5 ラッフルズがもたらしたもの―その後のシンガポール> ラッフルズは、1824年にベンクーレンから帰国した。与えたインパクトに比して、彼のシンガポール滞在期間は極めて短い。1819年の短期間と1822~23年の1年間弱であり、シンガポールでは行政官としての役職にもつかなかった。当時多くのヨーロッパ人がそうであったように、ラッフルズには熱帯の気候に体を蝕まれ、しばしば体調を崩した。ベンクーレン時代の1821~23年、彼は四人の子どもを次々にうしなう不幸に見舞われた。帰国直前には彼の乗った船が火災に襲われ、収集した文物が灰塵に帰すというトラブルもあった。 帰国後、ラッフルズはロンドン動物学協会の設立に参加するなど、持ち前の博物学への関心を生かした活動をおこなった。しかし、東インド会社本部との対立は解消されなかった。ラッフルズは、アジアにおける自身の活動に対して、会社から金銭的な報酬を受けられると期待していた。しかし、会社は財政的に逼迫していた。帰国後に彼を待っていたのは、ボーナスどころかシンガポールの建設にかかわる追加費用の請求であった。 結局この争いは法廷に持ち込まれ、心身ともに消耗したラッフルズは裁判のさなかの1826年に45歳で死去した。最終的には、ソフィア夫人が遺産から請求された費用を会社に支払った。ラッフルズの業績は、存命中は世間の認めるところとはならなかった。彼の晩年は、決して恵まれたものではなかったのである。<その後のシンガポール 自由貿易の拠点としての経済発展> 本書の最後に、ラッフルズが後世に残した遺産について考えてみよう。彼自身は見届けることができなかったが、冒頭で述べたとおり、その後のシンガポールの経済発展はめざましかった。イギリスのグローバルなネットワークの中心となるとともに、華人やムスリムの中心にもなったためである。 経済発展の多くは、移民によってもたらされた。ラッフルズが持ち込んだ自由主義の帰結の一つが人の移動の自由化である。植民地の時代は、現在と比べて人の移動がはるかに活発であった。特に、アヘン戦争を契機とした中国の開国は、大量の移民をもたらした。19世紀末にもう一つの有力な移民先であったアメリカの西部開発が落ち着くと、東南アジアに集中した。 シンガポールは華人移民の玄関口となった。シンガポールの人口は、大規模な移民により急速に増加した。華人が七割を占める現在のシンガポールの人口構成は、ここで形成されたのである。 物流においても、アジア海域に広がった華人ネットワークは大きな役割を果たした。シンガポールには、インドや日本の綿織物に加えて、東南アジアのシャムやフランス領インドイナのコメ、オランダ領東インドの砂糖やゴムなど、政治的境界を越えてモノが集まった。アジアの内部の流通を握っていたのは華人商人であり、彼らが拠点においたシンガポールがアジア間貿易のハブとなる仕組みができたのである。19世紀末から20世紀初頭、シンガポールは植民地体制のもとで大きな繁栄を迎えた。 このあと、戦後のリー・クアンユー首相による経済発展が続くのですが、いずれにしてもラッフルズの思想は今も受け継がれているようです。『ラッフルズ』1
2021.10.11
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図書館で『橋本治と内田樹』という本を、手にしたのです。めくってみると、お二人が対談を楽しんでいる様子が見えてくるのです。【橋本治と内田樹】橋本治×内田樹著、筑摩書房、2008年刊<「BOOK」データベース>日本に「よきもの」をもたらす、この柔軟な知性。注目の対談集。<読む前の大使寸評>めくってみると、お二人が対談を楽しんでいる様子が見えてくるのです。rakuten橋本治と内田樹#8で「橋本治と内田樹の違い」が語られているあたりを、見てみましょう。p242~246<「橋本治」と「内田樹」の違い>橋本:そもそも私は、前近代の泰平の町人の子どもで、「物心ついたら玄関の前を掃除していなくてはいけないみたい」なものだから・・・。内田:僕の場合はどちらかというと、士族的エートスといいますか、上昇志向がわりと強い家風だったから。庄内藩で、明治以降は冷や飯食らいですから、「薩長藩閥が独占してきたポジションを奪還する」というルサンチマンの絡んだ東北的上昇志向ってありますでしょう。親たちがそれで苦労したんだから、親よりも高い学歴を身につけて、親よりも高い社会的地位につけ、と。そういうプレッシャーがずっとかけられてましたね。橋本:上昇志向がないんですよね、俺は。さっきの官討ではないですけれど、不自然に上がってしまうと、自分の身が危うくなるなという、生命本能のような危機感があるんですよ。だから今この瞬間、偉くなりそうかもしれないと思って、そういう風潮があると、ぶっ壊してしまうんですね、自分で。だから何年かに一度『アストロモモンガ』みたいなことをしないと(笑)気がすまない。内田:僕はこともと第一志望東大法学部だったんですよ。でも、受験の直前にやめたんです。これではいけないと、ふっと思ったんですね。法学部を出て、警察官僚とか検察官とかになったら、なんかすごく将来の日本に禍根をもたらすことになる気がして。 そのまま僕が官僚になったりしてたら、たぶん強権的で、陰謀好きな、かなり厭味な役人になっていたかもしれないと思うんです。受験の前に、そういうのはやっぱりよくないんじゃないかなと思って。フランス文学なんて実用性ぜんぜんないし、出ても食えないじゃないですか。でも、その食えないところにずれていくことで自分の本態的な有害性みたいなものは抑制できるんじゃないかなって。 橋本さんはどちらかというと、世の中に、いかに「善きもの」を積み増していくか、という発想法をされてれでしょう。僕はそうじゃなくて、いかにして自分のもたらす害毒を最小化するかを考えてきたんじゃないかと思うんです。だって、ひどい人間ですから。邪悪さ、攻撃性、残忍さについては、自慢じゃないけど、まず人にまける気しないですから。橋本:一皮剥けば私だって全部持っていますよ(笑)。内田:いや、僕はもう前面に出ていたから(笑)。なんとかこれは少し控えた方がいいなと思って。でも、「善いこと」をしようとすると、たぶんろくなことしない。自分に大義名分があると、いきなり態度でかくなる男ですから(笑)。だから、それよりもとにかく「悪いこと」するのを自制しようと、その点では、僕も「引き算」の人間なんです。橋本:私は初めに引き算があって、足し算を覚えたみたいなところもあるから、蓄積しないんですよね。業績として蓄積されないで、経験として自分の中に蓄積してしまうという性質の人だから。経験だけ蓄積されると自分は偉くなれないから好都合なんですよ。えらくなってしまうと経験が使えなくなるというのがあって。 つまり現場に置いておくと有能だけれど、管理職としては向かないという性質ってあるじゃないですか。そうするとその人は常に現場に居られるようにいろいろおとあがくわけですよ。 もう十年前だけれど、十年前が一番最近かな。『源氏物語』をやったときの「偉くならない方法」というのが・・・。内田:「偉くならない方法」ってあるんですか(笑)。橋本:『源氏物語』をやってるときに、なんか周囲の風当たりが微妙に変わってきたんですよ。俺は偉い人になっているのかもしれないみたいなのがあって、これはまずいことになったと思って金髪にしたんですよ(笑)。内田:はあー、それでなんですか(笑)。橋本:十年前に、40過ぎて金髪にしている人なんて、まずいなかったし、その歳で金髪にするなんて考えられないようなことだったので、これをやってしまえば馬鹿だと思われるだろうと思って。内田:あのですね。僕が仏文科に行ったのは、駒場の時の成績でフランス語が一番悪かったからなんです。これは絶対に仏文科に行っても劣等生になるしかない。そこで劣等生として、せめて卒業するまでにフランス語をなんとかわかるようになる、というあたりを達成目標にしておけばいいやと思って。30人からいる同期生の中でも僕は一番できない学生でした。だから、その後、フランス文学の業界に入っても、「」というポジションをずっとキープしてました。なるべく日の当たらない所にいようと思って。橋本:それはつまり、内田さんは自分の能力にすごく自信があるということでしょう?内田:何か、みんなを死ぬほど怒らせるようなことをしでかすだろうなということについては、すごく自信がありました。橋本:フランス語の成績が悪いのだから、入ってしまえば伸びるだろうという考え方ができるということは、自分の潜在能力に自信があるということじゃないですか? だって俺なんかそんな選択できないですよ。ずうずうしいまでに自分の能力に自信がないですよ!内田:「ずうずうしいまでに」って、そういう使い方するかなあ(笑)。橋本:だって、自信がない、自信がないと言ったって、お前はどんだけのことをやったのかということがあるじゃないですか。それであっても、自信がないんですよ、根本のところで。つまり、能力というのがいかなるものであるかという基準が分からない。外側の基準とは違うところで能力を作ってしまっているから、「」という、つねに疑心暗鬼みたいなところで、能力を叩いて固めてという、そういう不思議なことをやっているんですよ。だから、ずうずうしいまでに能力がないんですよね。内田:僕はずうずうしいまでに世間の評価を気にしないんです。原稿依頼がなくても、本が売れなくても、全然気にしたことないです。95年頃から、もう原稿依頼が2年に1件くらいしかなkったですけれど、どうして、俺んとこに仕事の依頼が来ないのか、理由がわからなかった。世間の諸君は何考えてんだろうって(笑)。橋本:世間が本を読まないと言われていた時代だから。内田:世間ばかりか、業界内部的にも全然駄目で(笑)。何をやっても何の反応もなかったし、誰も評価してくれないんですけど、そんなこと全然気にならなかった。橋本:それはもしかして、世代交代の時期だったんじゃないですか? 一時代前の人が編集長としてまだいて、その人たちが管理職で上の方に上がってしまって、下の方にいた若いのがきて、これがいいという切り替え時だったのでは?『橋本治と内田樹』4:『桃尻語訳 枕草子』『橋本治と内田樹』3:橋本流「タイトル論」『橋本治と内田樹』2:フリーターの実態『橋本治と内田樹』1:翻訳の誤訳
2021.10.07
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図書館で『語学者の散歩道』という文庫本を、手にしたのです。めくってみると、歴史小説や西洋古典が、英語はもちろんギリシャ語、ラテン語まで引用して語られています。扱う題材は難しいがウィット溢れる語り口がええでぇ♪【語学者の散歩道】沼重剛著、岩波書店、2008年刊<「BOOK」データベース>より「賽は投げられた」は、本当は「賽を投げろ」だった?「健全な肉体に健全な精神」のもともとの意味とは?西洋古典学者として高名な著者が放つ、西洋古典が起源の英語のことわざや、意外な英語の語源、語学学習の思わぬ落とし穴など、語学学習にはもちろん日本語を書くうえでも役に立つ、蘊蓄とウィットが満載の楽しいエッセイ集。<読む前の大使寸評>めくってみると、歴史小説や西洋古典が、英語はもちろんギリシャ語、ラテン語まで引用して語られています。扱う題材は難しいがウィット溢れる語り口がええでぇ♪rakuten語学者の散歩道ギリシャ語、ラテン語について、見てみましょう。p204~209<ギリシャ語・ラテン語を学んで日本語を考える。> ギリシャ語やラテン語を学ぶのは、もちろんギリシャ語やラテン語で書かれた文章を読むために決まっている。しかしどんなものでも、何かを学ぶと、たいてはその結果、本来の目的以外の役に立つことがあるもので、私にとっては、ギリシャ語やラテン語を学んだことが、自分の日本語を書くのに役に立ったと、少なくとも自分では信じている。あるいは英語を読むのにもやはり役立っていると思っている。 話がすっかり飛ぶようだが、かつて、私の英国での恩師であるドウヴァ先生が来日された折、あちこちの大学でなさった講演を日本語に訳しながらはっとしたことがある。 先生の英語そのものにはそんな言葉はないのに、日本語にすると、文と文の間にどうしても「ですから」とか「ですが」とか「つまり」とか「で」とか、そういうつなぎことばをいれたくなる、あるいは入れないと前の文とのつながりがなめらかにいかない、唐突になる、という箇所がいくつも出てきたのである。 しかも、原文にない語を日本語で使ったら、原文の意をそこなうかどうかを考えてみると、たとえ原文にはなくても、日本語としては入れた方が、かえって原文に忠実になると思える箇所がかなりあった。これは明らかに、英語と日本語、とくに講義や講演における両者の、文と文の並べかたというか、つなぎかたというか、そういう点に違いがあるということだろう。 そこに思い至るとすぐ気がつくのは、ギリシャ語の文法でparticle(不変化詞とか小辞とか訳されている)と呼ばれる一群の語のことだ。gar,men,de その他たくさんあるが、ほとんんど単音節の小さな語で、ふつう文の頭から二番目に置かれる。語ではある以上はもちろん意味をもってはいる。 garならば「というのは」、deならば「そして」あるいは「しかし」というようにだ。しかしそれでいて、例えばdeを「そして」とか「だが」とか訳してしまうと、ギリシャ語原文の中のdeより強くなりすぎる。場合によっては訳さない方がかえって原文全体の意に沿うことになることもある。 menに至っては訳しようがないが、後続の文の中にdeがあれば、それと呼応して、menを含む節とdeを含む節が、対立とまでは言わないまでも、何らかの対照を意識して書かれていることのしるしととってよい。こういう案配なのだ。 だからparticleは意味ももっているが、その一語だけを取り出して訳せと言われると困惑する程度の微弱なもので、それよりは、文全体の中に位置を占めて、おの文と前後の文のつながり方が平らかだとか対立しているとか、そういう関係を表す。言い換えれば、語としてのそれ自身の意味よりは、文の姿勢とか気分とかいうものを表すものなのだ。(中略) こういうparticleがギリシャ語には数も多いが、使う頻度もずいぶん高い。これを含まない文というのはむしろ異例と言ってもいい。そういう文、そして接続詞によってつながれているのでもない文のことを、文法家はわざわざasyndeton(結ばれていないもの)と名づけるほどなのだ。考えてみると日本語も、こういう小さなつなぎことば、それ自身としての意味はたいしたものではないが、それがないと文がなめらかにつながらない、という語が多い言語だ。さっき挙げた「つまり」とか「で」とかいう、文の頭に置かれることばがそれだ。 これに対して、古典語ならラテン語はこれが乏しい言語だと思う。近代語なら英語もそうで、この種の語がほとんどない。particleがほとんど使われていない英語のドウヴァ先生の講演を、particleにみちみちた日本語に置き換えようとしたから困惑したのだ。逆も真なりで、こういうつなぎことばの豊富な日本語を英語に訳す時、文頭の「そして」や「で」や「しかし」や「つまり」がそういうつなぎことばにすぎないことに気がつかずにい、いちいちandだのbutだのという接続詞に「訳」してそれを“native speaker”に見せたりしたら、「接続詞で始まる文を書くな」と言われてしまう。(中略) つなぎことばが豊富な日本語で育ったしまった私には、文と文との関係は、つなぎことばがないとつねに明晰とは言えないように思えてならない。 このことと関連して是非言っておきたいことがもう一つある。近ごろいわゆるハウ・ツウものの「よい文章の書きかた」というような本を見ると、明晰な文章を書きたかったら文を短くするに限ると書いてある。しかし長い文で言うのと同じ内容を短い文で言うことにすると、文がたくさんできて、それぞれの文と文との継ぎ目がそれだけ余計になって、その都度つながりかたが不分明になり得るということがある。 それを、例えば従属節に従属節を重ねるようにして書けば、書くのにも読むのにも骨は折れるが、はるかに明晰な文が仕上がる。私に言わせれば、文章の明晰さを保証するのは文の長さではなく、思想の明晰さである。短いよりは長い方が文が明晰になることもあるということを知りたかったら、ギリシャの歴史家トゥキュディデスの文を読むに限る。『語学者の散歩道』1
2021.09.19
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図書館で『語学者の散歩道』という文庫本を、手にしたのです。めくってみると、歴史小説や西洋古典が、英語はもちろんギリシャ語、ラテン語まで引用して語られています。扱う題材は難しいがウィット溢れる語り口がええでぇ♪【語学者の散歩道】沼重剛著、岩波書店、2008年刊<「BOOK」データベース>より「賽は投げられた」は、本当は「賽を投げろ」だった?「健全な肉体に健全な精神」のもともとの意味とは?西洋古典学者として高名な著者が放つ、西洋古典が起源の英語のことわざや、意外な英語の語源、語学学習の思わぬ落とし穴など、語学学習にはもちろん日本語を書くうえでも役に立つ、蘊蓄とウィットが満載の楽しいエッセイ集。<読む前の大使寸評>めくってみると、歴史小説や西洋古典が、英語はもちろんギリシャ語、ラテン語まで引用して語られています。扱う題材は難しいがウィット溢れる語り口がええでぇ♪rakuten語学者の散歩道nods(うなづく)に関する薀蓄を、見てみましょう。p60~65<Homer sometimes nods> ホラティウス(前1世紀)の『詩論』からもう一つ諺を拾ってみよう。先ほどの『オックスフォード英語諺辞典』が“Homer sometimes nods”という形で挙げているものだ。私がこの諺にはこめて出会ったのは中学生の時である。教科書に出てきたのだ。Homerの前に“Even”がついていたと記憶している。 その時先生がおっしゃったことも覚えている。 「詩聖といわれたホーマー(ホメロス)でさえ時にうなづくことがある。つまり弘法も筆のあやまりということだな」ホーマーがうなづくとどうして弘法が筆をあやまることになるのかよく分からなかったが、私ははにかみ屋だったので、うっかり質問して、「なに、ホーマーがうなづくっていうことは弘法さんが字を書きまちがえるようなもんじゃないか。そんなことも知らんのか」と一喝されそうな気がしてそのままにしておいたが、そのためにその後長年にわたって、私にとっては、ホーマーのうなづきと弘法の筆のあやまりの相関関係は謎でありつづけた。 謎は解けたのは、白状すると、私が英語の教師になってからである。つまり、原因はどうあれ、要するに首を縦に振るのを英語では“nods”という、 「うん、そうだ、そうだ」とうなづくのも、こっくりこっくり居眠りをして首を上下するのも、とにかく首を縦に振れば“nods”というのだと知って、長年の謎が解けて嬉しかった。 あんまり嬉しかったから、今度は自分が、教室でそのことを得意になって話した(むろん教科書に“shook his head”という英語が出てきたからだが、事のついでに、日本語ではこういう“head”のことはふつう「頭」とはいわない、「首」というのだと、これも得意になってしゃべった)。あんまりこっちが得意になったせいだろう、生徒の中から、「じゃあ斜めに振るのは何ていうんですか」と質問するのが出てきた。仕方がないから、「君、その首を斜めに振ってみたまえ」とやり返した。 閑話休題。ホラティウスの詩句はこういうものである(『詩論』359)、 「しかしまた、あのすぐれたホメロスが居眠りをすると、私は遺憾に思う。ただ、長い作品の中では、眠気が襲うのは無理からぬこと。」 358行の終りの 「しかしまた」というのは前の行を受けていて、そこではアレクサンドロス大王の宮廷詩人という栄誉ある地位にいたが作品は凡庸という、コイリロスという叙事詩人のことを、 「二度三度、時にはすぐれた行を書いているのを見ると、(おや、結構やるねえと)びっくりして笑えてくる」と言っている。(オックスフォード・ラテン語辞典を引用して例文を紹介する下りは、長くなるので勝手ながら大使判断で略します。) これも高校で教えていた頃、私はこの諺を、それこそうっかり「弘法も木から落ちる」と言ってしまったことがある。すぐに気がつきはしたけれど、弘法ならぬ身には、居眠りをすると筆をあやまるところにも到達できず、せいぜい猿なみに木から落ちて目を覚ますのが精一杯ということだろうか。
2021.09.19
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NHK『クローズアップ現代+ 宝の山をどういかす?』という番組が放映されたが、林業再生には関心があるわけで・・・・早速、ネットを覗いたイラチな大使でおます。 2021/09/15クローズアップ現代+ 宝の山をどういかす?より オリンピック・パラリンピックで使用された国立競技場や木造高層ビルなど木をふんだんに使った建造物が増えている。背景にあるのは林業再生を目指す国の政策。 法を改正し補助金の仕組みを整えて林業を強力に後押しし、日本の木材自給率を20年間で、かつての約2倍、40%近くまで上昇させた。しかしその裏で問題が起きている。 大規模伐採ではげ山が広がったり、山の所有者に無断で伐採する「盗伐」が発生したり。大規模伐採の一部が、土砂災害などの要因の一つになっているという指摘もされている。国土の7割を森林に覆われた日本で持続可能な林業とは? 「自伐型林業」という“小さな林業”の取り組みなども例に、林業の未来を考える。 この番組を見ながら、メモしたのです。・球磨川水害の主原因は大雨であるが、それに加えて森林の皆伐(それも盗伐が多い)にもよるとのこと。伐採後の木の根が腐ると、大雨でそこに水が溜まり斜面が崩壊するとも。・皆伐した後に植林すればいいのだが、利益優先の業者(あるいは盗伐者)は皆伐後の山を放置したことも災いしているようです。・更に遠因として、木材チップが値上がりして売物になったこと、アメリカが住宅ブームで木材輸入国に転じたことなども影響して皆伐が増えたようです。(今や日本の材木が輸出されていることには、驚いたのです)・水害が増加しているなか、日本の木材自給率が増えたとして喜んでいていいのか?・森林行政のミスリードが目を覆うばかりであるが・・・営林署の無策があったのでは?(前例踏襲がイノチの行政は山林主の利益保護を謳うが、山林主がやる気をなくしたり、山林主が分からなくなった山林があったりで、昏迷を深める森林行政である)・全国54箇所で自伐型林業が始まっているが・・・環境保全型林業でもあり、持続可能な林業でもある。・山が急峻なオーストリアで環境保全型林業が実現できているのに、日本でそれが進まないのはなぜか?(ひとえに森林行政のミスリードである)・森林は共有財産であり、それを守るのは森林国ニッポンのコモンセンスではないか。
2021.09.16
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図書館で『明治維新とは何だったのか』という対談本を、手にしたのです。おお 半藤一利さんが明治維新について出口治郎さんと対談しているのか・・・これは面白そうである。。【明治維新とは何だったのか】半藤一利×出口治郎著、祥伝社、2018年刊<「BOOK」データベース>よりあのとき、日本を動かしたのは龍馬でも松陰でもなかった!知の巨人2人が、薩長史観に隠された「幕末・維新」を語る。<読む前の大使寸評>おお 半藤一利さんが明治維新について出口治郎さんと対談しているのか・・・これは面白そうである。rakuten明治維新とは何だったのか『第2章 「御一新」は革命か内乱か』で戊辰戦争を、見てみましょう。p89~91五万石を薩長に「盗まれた」長岡藩出口:戊辰戦争の話に戻りますが、最後は榎本武揚が北海道まで逃れました。半藤:東北での戦いは慶応4年(1868年)にはほとんど片がついていましたが、いわゆる函館戦争は明治2年(1869年)まで続きました。新政府の徳川家に対する処置があまりにも厳しく、およそ8万人の幕臣を雇うことができなくなったので、海軍副総裁の榎本武揚が幕臣たちを蝦夷地に移住させ、函館政権を樹立したんですね。それが新政府軍に屈したところで、戊辰戦争は終結しました。出口:暴力革命が成就したわけですね。それが、新しい国家を築くための正義の戦いだったように語られたわけですね。半藤:私も子供の頃から皇国史観という名のいわば「薩長史観」を学校で教え込まれていましたが、父方の祖母には逆のことを教わりましたよ。父の実家は越後なんですが、夏休みに遊びに行くと、祖母が 「東京には勲章をつけた偉い奴がたくさんいるみたいだけど、あの連中はみんな泥棒だよ。無理やり喧嘩を売ってきて七万四千石の長岡藩から五万石を盗んでいったんだ。おまえは、あんな奴らを尊敬することないだぞ」という話をされたものですよ。出口:なるほど、 「盗まれた」という感覚なんですね。半藤:実際、長岡藩は降伏した後で五万石を取り上げられて、二万四千石しか残らなかったんですよ。祖母からそんな話を聞かされて、「へえ、そういう見方もあるのか」と気づかされたおかげで、あまり皇国史観に毒されることなく育ちましたね。 ともかく戊辰戦争で負けてからの長岡は大変な苦労をしたんですよ。たとえば「米百俵」で有名な長岡藩の大参事・小林虎三郎がお寺の本堂を借りて国漢学校をつくったのも、もう人材を育てる以外に復興の術がなかったからです。それを首相時代の小泉純一郎さんは間違った形で引用しましたが(笑)。出口:あの国会演説では、 「痛みに耐えろ」と我慢を強調していましたが、教育政策とはあまり関係のない話になっていましたね。半藤:そうなんですよ。ほかに方法がないから、小林虎三郎は周囲の反対を押し切って「米百俵」を売ったお金を学校と病院の建設に使ったんです。人材育成の重要性をいわなければ、「米百俵の精神」の意味を正しく理解いたことにはなりません。出口:小林の人材育成の目的は、いわば薩長の暴力革命に対する一種のリベンジですよね。半藤:そういうことです。出口:会津藩もじつに可哀想で、負けて全部召し上げられるんですよね。その後、青森の斗南藩に行くんですが、気候が厳しいので、みんな死んでいくんですよ。それで、これは本当かどうかわかりませんが、もともと斗南で暮らしていた女性たちが、 「こんな可愛い男の子を死なせるのは可愛そうだ」とか 「こんな親切な人を殺しちゃいけない」など、ハンサムな男性や、女性にマメな男性を養ったおかげで、辛うじて会津の血が受け継がれたという話があるぐらいです。それ以外の男はみんな死んでしまった。半藤:しかも明治時代に入ってから、いわゆる「賊軍」の人たちはひどく差別を受けました。たとえば司馬遼太郎さんが『坂の上の雲』で描いた秋山真之、秋山好古、正岡子規の松山藩は賊軍です。だから、ものすごく苦労した。差別があるから、軍の学校にしか行けないわけですよね。『明治維新とは何だったのか』2:薩長のスタンス『明治維新とは何だったのか』1:起きて困ることは「起こらない」と思い込む日本人
2021.09.12
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図書館で『エクソダス』という本を、手にしたのです。めくってみると、論文スタイルでぎっちり書かれてあり読みにくいが・・・移民、ディアスポラを扱っていて、大使のツボが疼くのです。【エクソダス】ポール・コリアー著、みすず書房、2019年刊<「BOOK」データベース>より『最底辺の10億人』のグローバルな視点から、コストと便益の両方を見すえた、モデルを提示。“移民自身”“受入国の住民”“送出国に残された人々”という三つの立場にバランスよく目配りしつつ、移住のグローバルな経済的、社会的、文化的影響を分析する。<読む前の大使寸評>めくってみると、論文スタイルでぎっちり書かれてあり読みにくいが・・・移民、ディアスポラを扱っていて、大使のツボが疼くのです。rakutenエクソダス「第2章 移住はなぜ加速するのか」から加速する移住を、見てみましょう。p38~41<所得格差が移住にどう影響するか> 移住はディアスポラを生み、ディアスポラが移住を推進する。どちらがニワトリでどちらが卵なのだろう? これに関してだけは、謎はない。20世紀、富裕国が貧困国からの移民に国境を閉ざしていた長い期間のため、1960年ごろには大きなディアスポラはなかったことがわかっている。 1960年以降、ディアスポラが腰を据える前段階として移住があった。初期のディアスポラは大きな所得格差にもかかわらず取るに足りない数で、国境が開かれてもごくわずかしか移住しなかった。移民を受け入れてくれる先発組がまだいなかったため、移住にかかる費用が高すぎたのだ。 所得格差とディアスポラとの相互作用は、衝撃的ながらもわかりやすい力学を生む。移民の流入は、格差に加えて、どれだけの移民がすでにいるかによって変わるのだ。移民の数の蓄積につれてあとに続く移民の流れも増えるため、格差が一定であれば、移住は加速する。 経済学者は、常に均衡を探す。拮抗する力がバランスをとって、システム全体が静止状態にある地点を求めるのだ。移住のシステムが静止状態になるには、二つのはっきり異なる形がある。移住率が加速せずに一定になるか、あるいは、静止状態をもっと学問的に言えば、国と国の間での人の純フローが止まるということだろう。 この所得格差とディアスポラの単純な相互作用のプロセスが、いずれかの均衡をもたらすことはあるだろうか?<均衡が必要ない理由> 所得格差を一定とすると、移住の加速が止まるのはディアスポラの増加が止まったときだけだ。移住は常にディアスポラに増員を送りこんでいるので、ディアスポラの規模を減らす相殺的なプロセスをなにかしらなければ、その増加は止まらない。ディアスポラは理解しやすい概念だが、測定するのがやっかいだ。 通常、測定にはたとえばその国に住んでいるがそこで生れたわけではない人の数などの代数変数を用いる。だがディアスポラの妥当な概念はその出自ではなく、行動によって定義される。移住率にとって重要なのは、新たな移民と関係があり、彼らを支援することができる人の数だ。その意味では、ディアスポラからの脱落率は移民の死亡率ではなく、文化や義務感の伝達によって変わってくる。 私は移民の孫だが、エルンスバッハからイギリスに移住したいと願う人の役に立つことは一切できない。祖父があとにした美しい村には一度戻ったことがあるものの、そこの人々とも、イギリスにいるほかのドイツ人の子孫たちともなんらつながりを持っていない。つまり、私はディアスポラではないのだ。だが、移民のほかの孫たちの中には、そういう意味でディアスポラに属している者もいる。 ほとんどの社会において、ディアスポラの境界線は曖昧になっている。多くが移民としての過去に片足を、主流の未来に片足を突っこんだ状態だ。(中略) 私の父がしたように、移民の子どもが今暮らしている社会の一員として自分を再定義するのかもしれない。あるいは、長い時間を経て、移民家族の子孫が母国から精神的に切り離されていくのかもしれない。切り替っていくディアスポラの割合は、年ごとに高かったり低かったりするだろう。この割合を、「吸収率」と呼ぼう。たとえば、毎年ディアスポラ100人のうち2人が主流社会に吸収されるとすれば、吸収率は2%になる。 吸収率は、移民はどこから来たか、そしてどこに来たかによって大きく異なる。政策によっても異なる。この影響については第3章でもっと徹底的に議論しよう。ところで、「エクソダス」と聞けば、ポ-ル・ニューマン主演の映画『栄光への脱出』を思い出すのだが・・・観た当時は、強制移住とかユダヤ人問題に関心があったわけではありません。『エクソダス』2:第1章 移民というタブー『エクソダス』1:プロローグ
2021.08.28
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今回借りた4冊です。だいたい支離滅裂に借りているけど、今回の傾向は、強いていえば、「2度、3度目」でしょうか♪<市立図書館>・謎解き鳥獣戯画(芸術新潮2020年7月号)・ストーカーとの七00日戦争・遠い町から来た話・不愉快な本の続編<大学図書館>(ただいま市民への開放サービスを休止中)図書館で手当たり次第で本を探すのがわりと楽しいが・・・これが、図書館での正しい探し方ではないかと思ったりする(笑)***********************************************************【謎解き鳥獣戯画(芸術新潮2020年7月号)】雑誌、新潮社、2020年刊<Top reviews from Japan>より「特集 謎解き鳥獣戯画」が掲載されている「芸術新潮2020年7月号」は、謎に満ちた鳥獣戯画に40ページ(関連コンテンツを含めると、実に84ページ!)が割かれており、見応え、読み応えのある一冊に仕上がっている。現存する甲・乙・丙・丁の4巻合わせて全長44.328mに及ぶ「鳥獣戯画」の全ての絵が折り込みページで一挙掲載されていること。現物よりかなり小さいとはいえ、東京国立博物館に甲・丙巻を、京都国立博物館に乙・丁巻を見に行かなくとも、じっくり鑑賞できるのだ。<読む前の大使寸評>おお 鳥獣戯画の謎解きってか・・・興味深い特集やでぇ♪amazon謎解き鳥獣戯画(芸術新潮2020年7月号)【ストーカーとの七00日戦争】内澤旬子著、文芸春秋、2019年刊<「BOOK」データベース>よりネットで知り合った男性との交際から8カ月ーありふれた別れ話から、恋人はストーカーに豹変した。誰にでも起こり得る、SNS時代のストーカー犯罪の実体験がここに。<読む前の大使寸評>追って記入rakutenストーカーとの七00日戦争【遠い町から来た話】ショーン・タン著、河出書房新社、2011年刊<「BOOK」データベース>より町のはずれに住んでいた水牛のこと、覚えている?誰にも愛されなかった物からペットを手作りすることや結婚までのとても危険な道のりの話、それから異次元からのちっちゃな交換留学生のことー。【著者情報】タン,ショーン(Tan,Shaun) 1974年オーストラリア生まれ。幼い頃から絵を描くことが得意で、学生時代にはSF雑誌で活躍。西オーストラリア大学では美術と英文学を修める。 これまでに発表したいずれの作品も卓越した内容と表現で評価が高く、オーストラリア児童図書賞など数々の賞を受賞。作品は世界中で翻訳出版されている。現代を代表する新進気鋭のイラストレーター、絵本作家として活躍する一方、舞台監督、映画のコンセプトアーティストとして活動の場を拡げている<大使寸評>この絵本に描かれた絵に、ディアスポラの不安感が表れているのです。もしかして、移民という著者の境遇が影響しているのかも。この絵本の装丁が素晴らしいが、オーストラリア版と河出書房新社版でどう違っているのだろうか?なお、この絵本を借りるのは2度目であると分かっていたのだが、何度も読んでみたいのです。rakuten遠い町から来た話【不愉快な本の続編】絲山秋子著、新潮社、2011年刊<「BOOK」データベース>より女と暮らす東京を逃げ出した乾。新潟で人を好きになり、富山のジャコメッティと邂逅し、そして故郷・呉から見上げる、永遠の太陽ー。不愉快な本を握りしめ彷徨する「異邦人」を描き、文学の極点へ挑む最新小説。<読む前の大使寸評>カミユの「異邦人」を意識した小説とのこと・・・・期待できるかも♪絲山秋子ミニブームがまだ続いています。帰って調べてみると、この本を借りるのは三度目であることが分かりました。rakuten不愉快な本の続編************************************************************図書館大好き500
2021.08.04
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図書館で『国境の人びと』という本を手にしたのです。海に囲まれた日本にも領土問題はあるわけで、その相手はロシア、韓国、中国、台湾となります。一番強硬な国は、なんといっても中国であり、仮想敵国なんでしょうね。【国境の人びと】山田吉彦著、新潮社、2014年刊<「BOOK」データベース>より境界だからこそ晒される脅威と苦難。だが、そこにも根を下す人々がいた。北は択捉島から南は沖ノ鳥島まで、東は南鳥島から西は与那国まで、世界で六番目に広い「海」を持つ日本。その国境はすべて海の上にある。紛争の最前線、北方領土、対馬、竹島、尖閣諸島をはじめ、99に上る国境離島のことごとくに足を運び、自らの目で確かめた著者が、そこで暮す“人”を通じて問い直す「この国のかたち」-。<読む前の大使寸評>海に囲まれた日本にも領土問題はあるわけで、その相手はロシア、韓国、中国、台湾となります。一番強硬な国は、なんといっても中国であり、仮想敵国なんでしょうね。rakuten国境の人びと与那国島と台湾との歴史的関係を見てみましょう。p116~119<最西端、絶海の孤島―与那国島を台湾との交流拠点に>■台湾との結びつき 与那国島が歴史に登場するようになったのは、15世紀後半。これも風と海流に縁がある。1477年冬、朝鮮の済州島を船出した人々が強い北西風のため漂流し、その内三人が与那国島に流れ着いた。この三人は、島の人々の手厚い保護を受け、夏になり南風が吹くのを待ち、西表島や宮古島を経由して沖縄本島の首里城に送られた。その後、九州を経由して対馬から、本国へ送り返されたことが記録されている。この三人の証言が朝鮮王朝の記録『成宋実録』に記載されているのが、与那国に関する最も古い記述のようだ。当時の島は、米作を柱として農耕生活で、人口100人ほどだったという。肉は食べていなかったようだ。 日本側の記録は、その後、数十年を待たなければならない。 16世紀初頭、島はサンアイ・イソバという女酋長が弟たちを使い、分散統治していたと伝えられている。島が伝説の世界から抜け出したのは1522年だ。この年、宮古島の軍勢が押し寄せ、与那国島は琉球王朝の支配下に組み入れられた。その結果、島の記録が正確に残されるようになったのだ。そして、周辺の島々と交流が始まり、人の往来も頻繁に行われるようになった。 実は、与那国島に最も近い都市は、石垣市ではなく台湾の花蓮市だ。その距離は111キロ。石垣島より若干近い。年に数日、海の向こうに台湾の山並みが見えることもある。第二次大戦後、与那国島と台湾の間に国境線が引かれるまで、この二つの島の文化は一体であったと言っても過言ではないだろう。 終戦まで台湾は日本領だったため、与那国は、日常的に台湾と交流していた。与那国島での生活に使う日用品は台湾から運ばれ、子供たちは、教育を受けるために台湾の高校や大学へ行き、大病を患った時には台湾に運ばれ治療を受けた。 この島に人があふれた時代があった。第二次世界大戦の終結後まもなく、台湾の密貿易の拠点になり人口は1万2000人にのぼった。常時2万人近くが島に出入りしていたと推定される。 沖縄に基地を置く米軍の払い下げ物資や横流し品を台湾で売却し、その資金で食料品や生活必需品を買い込み九州や関西に送る。その商品の中継点であり隠し場所となっていたのが与那国島であった。 島内に映画館が二ヶ所あり、料亭のような場所もあったそうだ。島人は、庭先を荷物置き場に貸すだけで商売になり、子供が1日荷さばきを手伝うだけで、教師の1ヵ月分の収入が得られたという。学校の先生がほっかぶりをして、人足に交じって荷物を担いでいたという逸話も残っている。『国境の人びと』1
2021.08.02
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図書館で『冫 にすいです。』という本を手にしたのです。目次を見ると多彩な対談者見られるわけで・・・冒頭にかわぐちかいじ氏を配しているのが、ええでぇ♪【冫 にすいです。】冲方丁著、角川書店、2013年刊<「BOOK」データベース>より『天地明察』『光圀伝』の異才が各ジャンルの強者達と語り合った7年の軌跡。仕事とは。創作とは。そして、日本人とは。熱く濃密な対談集。<読む前の大使寸評>目次を見ると多彩な対談者見られるわけで・・・冒頭にかわぐちかいじ氏を配しているのが、ええでぇ♪rakuten冫 にすいです。井坂氏との対談を見てみましょう。p139~143<小説にしか出来ないこと:井坂幸太郎> ■リベンジの思いで書き始めた『マリアビートル』冲方:『マリアビートル』敢行、おめでとうございます。ここが面白かった、良かったと具体的に言いたいんですが、ネタバレしそうで怖いですね(笑)。何の予備知識もなく読み始めたので、途中で『グラスホッパー』(角川文庫)に続く世界の話なんだと気づいてビックリしました。井坂:『マリアビートル』は『グラスホッパー』が出た頃からタイトルだけは決まっていたんです。『グラスホッパー』は出た直後、僕の周りで評判が悪かったんですよ。冲方:え! そうだったんですか?井坂:正確には本が出る前から。最後のゲラをやっている頃に、プロモーションの関係なのかゲラを読んでる人がいて、そういった人から、「今回のはどこが面白いのか分かりませんでした」みたいなメールが届いたりして。「まだゲラやっているのに!」って(笑)。冲方:ひどーい! それはへこむわ(笑)。井坂:そうなんですよ! 発売後も結構、評判は悪くて(苦笑)、僕としては自信があったから、正直ショックで、だからすぐにリベンジしてやると思って。「同じ世界観の小説で、今度は面白いって言わせてやる!」と。タイトルも虫つながりで『マリアビートル』と決めて。その後、書く余裕が全然なくなって6年後になってしまったんですけど。冲方:最初から新幹線の中で物語が展開するという設定だったんですか?井坂:6年前には頭になかったですね。嫌な子どもと復讐する男の話、というアイディアはあったんですが。で、去年、ある漫画家さんとお会いする機会があって、この人は次にこんなのを描いたら面白いんじゃないかって勝手に考えたのが、「新幹線の中で殺し屋同士が戦う話」だったんです。でも、その漫画家さんの反応は「ふーん」みたいな感じで(笑)。その後、「これは自分で書いたほうが面白くなるかも」と思ったんです。冲方:面白くなると思ったということは、ディテールまで思い浮かんでいたんですか?井坂:どうなんだろう。ただ、殺し屋が新幹線の中を走っているところに、別の殺し屋が乗ってくることで物語が動く。その瞬間ってすごくワクワクするんじゃないか、ということだけは思ってましたね。それと、新幹線の中だけで完結する物語ってあまりないんじゃないですか。それも面白いなと思って。ただ、電車の中だけの話なんて誰でも思いつくことだから、先に誰かが書いてしまうんじゃないかっていう不安はありましたね。冲方:新幹線の中だけ、というのは大変だから、やりたがる作家はあまりいないんじゃないかな(笑)。しかも東北新幹線の東京駅から盛岡駅まで、と限定されているし。井坂:確かに大変でした。唯一よかったのは、編集者に原稿の進捗状況を知らせるときに「大宮まで書きました」と言えたこと(笑)。冲方:わかりやすい(笑)。しかし、限定された空間で、しかも通路が1本しかない。すぐに鉢合わせしてしまいますよね。プロットの組み立てが大変だったんじゃないですか?井坂:試行錯誤ですね。どちらに逃げても袋小路じゃないですか。書き始めてからそのことに気づいて。すぐつかまっちゃうじゃん。と(笑)。ただ、『モーニング』に『モダンタイムズ』を連載していたときに、物語が袋小路に入って、どうやって突破しよう、と毎回担当者と知恵を絞ったことがあったんです。その時の経験が生きたのかもしれない。『冫 にすいです。』1以前に読んだ『グラスホッパー』を付けておきます。【グラスホッパー】伊坂幸太郎著、角川書店、2007年刊<「BOOK」データベース>より「復讐を横取りされた。嘘?」元教師の鈴木は、妻を殺した男が車に轢かれる瞬間を目撃する。どうやら「押し屋」と呼ばれる殺し屋の仕業らしい。鈴木は正体を探るため、彼の後を追う。一方、自殺専門の殺し屋・鯨、ナイフ使いの若者・蝉も「押し屋」を追い始める。それぞれの思惑のもとにー「鈴木」「鯨」「蝉」、三人の思いが交錯するとき、物語は唸りをあげて動き出す。疾走感溢れる筆致で綴られた、分類不能の「殺し屋」小説。<大使寸評>【バッタは蝗害を起こす前に、普段の「孤独相」と呼ばれる体から、「群生相」と呼ばれる移動に適した体に変化する。これを相変異と呼ぶ】この本のタイトル『グラスホッパー』はサバクトビバッタを比喩しているとのこと。なるほど、都会の孤独な殺し屋は、サバクトビバッタなのか。伊坂幸太郎の作品としては珍しく、希望が語られることはなく、殺しに徹しています。rakuteグラスホッパー
2021.07.28
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『朝日デジタルの書評から』フォームや『読みたい本』フォームを作っているのだが、これを市図書館の予約に利用しようと、思い立ったのです。これまでの予約内容と予約候補は以下のとおりです。<予約中>・池井戸潤『半沢直樹 アルルカンと道化師』(11/29予約、副本33、予約644)現在200位・内田樹『コモンの再生』(1/05予約、副本2、予約21)現在2位・村上春樹『一人称単数』(1/27予約、副本26、予約301)現在60位・白井聰『武器としての「資本論」』(4/06予約、副本9、予約89)現在50位・52ヘルツのクジラたち(4/15予約、副本20、予約592)現在425位・桐野夏生『日没』(4/24予約、副本24、予約300)現在183位・鎌田由美子『「よそもの」が日本を変える』(4/26予約、副本1、予約6)現在3位・マイケル・サンデル『実力も運のうち』(5/05予約、副本1、予約73)現在39位・ヤマザキマリ『生贄探し』(5/14予約、副本1、予約19)現在8位・『分水嶺 ドキュメント コロナ対策専門家会議』(5/30予約、副本2、予約16)現在13位・『ザリガニの鳴くところ』(6/04予約、副本17、予約315)現在265位・『生態学者の目のツケドコロ』(6/28予約、副本3、予約21)現在18位・『チャイニーズ・タイプライター』(7/17予約、副本1、予約3)現在5位・福岡伸一『生命海流』(7/24予約、副本1、予約16)<カートで待機中>・N・ネフスキー著『月と不死』・8月の果て・ある日うっかりPTA(副本4、予約39)・グレタたったひとりのストライキ<予約候補>・『コロナ危機の政治』・『大人の恐竜図鑑』・『レアメタルの地政学』・『中国の大盗賊』・ブレイディみかこ『他者の靴を履く―アナーキック・エンパシーのすすめ』:図書館未収蔵・『中国戦線、ある日本人兵士の日記』・『理不尽ゲーム』 ・野外鳥類学を楽しむ・オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る・岡ノ谷一夫『さえずり言語起源論』・小野正嗣『多和田語の世界』:図書館未収蔵・本村凌二『馬の世界史』・藻谷浩介『進化する里山資本主義』・多和田葉子『文字移植』:図書館未収蔵・高野秀行「怪獣記」・橋本治『黄金夜界』・中園成生『日本捕鯨史』・高野秀行「ワセダ三畳青春記」・ヘミングウェイで学ぶ英文法:図書館未収蔵・内澤旬子『ストーカーとの七00日戦争』:須磨図書館でみっけ・ジョージ・ミーガン『世界最長の徒歩旅行』:図書館未収蔵・ネルケ無方著『迷える者の禅修業』<予約分受取:5/13以降> ・ウイルスの意味論 : 生命の定義を超えた存在(2/18予約、5/13受取)・『出版翻訳家なんてなるんじゃなかった日記』(1/06予約、5/13受取)・清水義範『大人のための文章教室』(5/15予約、5/26受取)・川越宗一『熱源』(6/08予約、6/06受取)・ブレイディみかこ『ワールドサイドをほっつき歩け』(9/19予約、6/06受取)・ケン・リュウ『生まれ変わり』(5/26予約、6/15受取)・田口俊樹『日々翻訳ざんげ』(4/29予約、6/20受取)・『超ひも理論と宇宙のすべてを支配する数式』(6/14予約、7/03受取)・平松洋子『韓国むかしの味』(7/05予約、7/09受取)・カズオ・イシグロ『クララとお日さま』(3/20予約、7/18受取)***********************************************************************【半沢直樹 アルルカンと道化師】池井戸潤著、講談社、2020年刊<「BOOK」データベース>より東京中央銀行大阪西支店の融資課長・半沢直樹のもとに、とある案件が持ち込まれる。大手IT企業ジャッカルが、業績低迷中の美術系出版舎・仙波工藝社を買収したいというのだ。大阪営業本部による強引な買収工作に抵抗する半沢だったが、やがて背後にひそむ秘密の存在に気づく。有名な絵に隠された「謎」を解いたとき、半沢がたどりついた驚愕の真実とはー。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(11/29予約、副本33、予約644)>rakuten半沢直樹 アルルカンと道化師【コモンの再生】内田樹著、文藝春秋、2020年刊<出版社>より天下りのマッチポンプ、地方の過疎化、アンチ・グローバル化現象……コモン(共有地)の再生が日本の活路を開く!・西部劇『シェーン』が示すコモンをめぐる原理的な主題・ベーシックインカムの成否を決定づける要素とは?・トランプ現象とアンチ・グローバリズムの流れ・マナーの悪い「幼児的」なオヤジのマウンティングについて・明治維新前の藩制度とフランスのコミューンの共通点・「自我の支配」から解放される瞑想のやり方……etc.分断を超えて、新しい共同幻想が立ち上がる希望の書。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(1/05予約、副本2、予約21)>rakutenコモンの再生【一人称単数】村上春樹著、文藝春秋、2020年刊<「BOOK」データベース>より短篇小説は、ひとつの世界のたくさんの切り口だ。6年ぶりに放たれる、8作からなる短篇小説集。【目次】石のまくらに/クリーム/チャーリー・パーカー・プレイズ・ボサノヴァ/ウィズ・ザ・ビートルズ/ヤクルト・スワローズ詩集/謝肉祭/品川猿の告白/一人称単数<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(1/27予約、副本26、予約301)>rakuten一人称単数【武器としての「資本論」】白井聰著、東洋経済新報社、2020年刊<「BOOK」データベース>より資本主義を内面化した人生から脱却するための思考法。【目次】本書はどんな『資本論』入門なのか/資本主義社会とは?-万物の「商品化」/後腐れのない共同体外の原理「無縁」-商品の起源/新自由主義が変えた人間の「魂・感性・センス」-「包摂」とは何か/失われた「後ろめたさ」「誇り」「階級意識」-魂の「包摂」/「人生がつまらない」のはなぜかー商品化の果ての「消費者」化/すべては資本の増殖のためにー「剰余価値」/イノベーションはなぜ人を幸せにしないのかー二種類の「剰余価値」/現代資本主義はどう変化してきたのかーポスト・フォーディズムという悪夢/資本主義はどのようにして始まったのかー「本源的蓄積」/引きはがされる私たちー歴史上の「本源的蓄積」/「みんなで豊かに」はなれない時代ー階級闘争の理論と現実/はじまったものは必ず終わるーマルクスの階級闘争の理論/「こんなものが食えるか!」と言えますか?-階級闘争のアリーナ<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(4/06予約、副本9、予約89)>rakuten武器としての「資本論」【52ヘルツのクジラたち】町田そのこ著、中央公論新社、2020年刊<「BOOK」データベース>より52ヘルツのクジラとはー他の鯨が聞き取れない高い周波数で鳴く、世界で一頭だけのクジラ。たくさんの仲間がいるはずなのに何も届かない、何も届けられない。そのため、世界で一番孤独だと言われている。自分の人生を家族に搾取されてきた女性・貴瑚と、母に虐待され「ムシ」と呼ばれていた少年。孤独ゆえ愛を欲し、裏切られてきた彼らが出会い、新たな魂の物語が生まれるー。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(4/15予約、副本20、予約592)>rakuten52ヘルツのクジラたち【日没】桐野夏生著、岩波書店、2020年刊<「BOOK」データベース>よりあなたの書いたものは、良い小説ですか、悪い小説ですか。小説家・マッツ夢井のもとに届いた一通の手紙。それは「文化文芸倫理向上委員会」と名乗る政府組織からの召喚状だった。出頭先に向かった彼女は、断崖に建つ海辺の療養所へと収容される。「社会に適応した小説」を書けと命ずる所長。終わりの見えない軟禁の悪夢。「更生」との孤独な闘いの行く末はー。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(4/24予約、副本24、予約300)>rakuten日没【「よそもの」が日本を変える】鎌田由美子著、日経BP、2021年刊<出版社>よりコロナ禍で日常生活や働き方が激変し、心のどこかで「これまで通りの生き方で本当にいいのか」と悩んでいる人も多いのではないだろうか。ニューノーマルは見たことのない世界ではなく、「デジタル化」「多様性」「環境意識」といった後回しにしてきた問題が目の前に突き付けられただけーー。JR東日本でエキナカや地域活性化を成功させてきた著者が、「『What if?』という自問自答が必要」「仕事と生き方は融合していく」「サステナブルが日常に」など、個人や企業の「これからの生き方」を提示する。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(4/26予約、副本1、予約6)>rakuten「よそもの」が日本を変える【実力も運のうち】マイケル・サンデル著、早川書房、2021年刊<「BOOK」データベース>より「努力と才能で、人は誰でも成功できる」この考え方に潜む問題が見抜けますか?100万部突破『これからの「正義」の話をしよう』から11年ー格差と分断の根源に斬りこむ、ハーバード大学哲学教授の新たなる主著。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(5/05予約、副本1、予約73)>rakuten実力も運のうち【生贄探し】ヤマザキマリ×中野信子著、講談社、2021年刊<「BOOK」データベース>より幸せそうな人を見ると、モヤッとする、相手が得をすると損した気持ちになる、抜け駆けする人が痛い目に遭うのは当然、お前だけを特別扱いできない、などー日本人の思考の傾向は脳の特徴だった。豊かで多様性のある生き方のために、中野信子とヤマザキマリがアドバイス。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(5/14予約、副本1、予約19)>heibonsha生贄探し【分水嶺 ドキュメント コロナ対策専門家会議】河合香織著、岩波書店、2021年刊<「BOOK」データベース>よりクラスター対策に「3密」回避。未知の新型コロナウイルスに日本では独自の対策がとられたが、その指針を示した「専門家会議」ではどんな議論がなされていたのか?注目を集めた度々の記者会見、自粛要請に高まる批判、そして初めての緊急事態宣言…。組織廃止までの約五カ月、専門家たちの議論と葛藤を、政権や行政も含め関係者の証言で描く迫真のノンフィクション。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(5/30予約、副本2、予約16)>rakuten分水嶺 ドキュメント コロナ対策専門家会議【ザリガニの鳴くところ】ディーリア・オーエンズ著、早川書房、2020年刊<商品の説明>よりノースカロライナ州の湿地で村の青年チェイスの死体が発見された。人々は真っ先に、「湿地の少女」と呼ばれているカイアを疑う。6歳のときからたったひとりで生き延びてきたカイアは、果たして犯人なのか? 不気味な殺人事件の?末と少女の成長が絡み合う長篇<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(6/04予約、副本17、予約315)>rakutenザリガニの鳴くところ【生態学者の目のツケドコロ】伊勢武史著、ベレ出版、2021年刊<「BOOK」データベース>より生物と生物、生物と環境との関係を調べる、生物学の一分野である生態学。生きものについて知りたい、自然を守りたいと願う人にとって、生態学的な見方は必ず役に立つ。自然と生きもの、人間との関係を見つめ直す7つの章。【目次】第1章 人に囲まれて/第2章 暮らしのなかで/第3章 文化に触れて/第4章 外国を旅して/第5章 里山に生きて/第6章 森を歩いて/第7章 研究をとおして<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(6/28予約、副本3、予約21)>rakuten生態学者の目のツケドコロ【チャイニーズ・タイプライター】トーマス・S・マラニー著、中央公論新社、2021年刊<「BOOK」データベース>より中国語タイプライターの“不可能性”から繙かれる圧巻の言語技術文化史。漢字についての発想の転換や戦時中の日中関係、入力や予測変換といった現在につながる技術の起源まで、波瀾と苦渋に満ちた展開を鮮やかに辿る。<読む前の大使寸評>圧巻の言語技術文化史ってか・・・これは読むしかないでぇ♪<図書館予約:(7/17予約、副本1、予約3)>rakutenチャイニーズ・タイプライター【生命海流】福岡伸一著、朝日出版社、2021年刊<「BOOK」データベース>より福岡伸一、ガラパゴス諸島へ。ダーウィン進化論を問い、“本来の生命のあり方”を精密に描き出す。旅のリアルと思索が行き来する、まさしく「動的平衡」なガラパゴス航海記。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(7/24予約、副本1、予約16)>rakuten生命海流【月と不死】N・ネフスキー著、平凡社、1971年刊<出版社>より著者は日本民俗学界の異色の存在として知られるロシア人学者で,柳田国男,折口信夫らと親交を結び,沖縄,東北などの民俗を採録した。本書は日本語で発表された論文・書簡を網羅した唯一の著作集。<読む前の大使寸評>ロシア人にして、日本民俗学界の異色の存在が気になるのです。<図書館予約:(とりあえずカートに入れておこう)>heibonsha月と不死【8月の果て】柳美里著、新潮社、2007年刊<「BOOK」データベース>より日本統治下の朝鮮・密陽に生を受け、マラソンでの五輪出場を目指した亡き祖父・李雨哲。そのうしろ姿を追い、路上を駆けることを決意した柳美里。ふたりの息づかいが時空を越えて重なる瞬間、日本と朝鮮半島のあわいに消えた無数の魂が封印を解かれ、歴史の破れ目から白い頁に甦る。偉丈夫の雨哲と美丈夫の弟・雨根。血族をめぐる、ふたつの真実の物語が、いま日本文学を未踏の高みへと押し上げる。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(とりあえずカートに入れておこう)>rakuten8月の果て予約分受取目録R26好書好日トップ図書館情報ネットワーク 蔵書検索システム図書館予約の運用にも慣れて、速攻で入手するコツも何となくつかんだと思うのだ♪・朝日書評欄で探すとしたら、3ヶ月前掲載くらいのモノが狙い目かも。・専門的すぎるほどのモノは、予約0となっていることが多い。・受取館に収蔵しているモノは、移送する手間が省けるので早くなるだろう。・本屋の店頭に出た直後の新刊本・ウィキペディアでめぼしい著作を探す・神戸市図書館の予約順位は毎週火曜日(午前1時~3時) に更新されます。・Kindle版を購入すれば、その本の全て読めるのだが、紙の本から書き写す手間が好きなわけでおます。
2021.07.25
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図書館で『カムイの世界』という本を手にしたのです。「とんぼの本」シリーズだから、たいへんビジュアルである。それに自然とともに生きるアイヌの知恵が詰まっている記事もええでぇ♪【カムイの世界】堀内みさ, 堀内昭彦著、新潮社、2020年刊<「BOOK」データベース>より文字文化を持たなかったアイヌが、代々語り継いできた精神と伝統を、数年にわたるアイヌの人々との心の交流を経て、現代の語り部たちの「言葉」を丁寧に聞き取り、守り継がれてきた儀式や祭祀、聖地、そしてカムイが宿る北海道の壮大な風景を写真で紹介。今に生きるアイヌの魂を探す旅。<読む前の大使寸評>「とんぼの本」シリーズだから、たいへんビジュアルである。それに自然とともに生きるアイヌの知恵が詰まっている記事もええでぇ♪rakutenカムイの世界">さて、アイヌのサケ迎えとは、どんなかな。p59~62<アシリチェプノミ(サケ迎え)> 澄んだ水が豊かに流れる千歳川。その水面に木洩れ日がきらめいている。 9月。川で生まれ、海で育ったサケが、再び生まれ故郷の川を遡上してくるこの季節、千歳では新しいサケを迎える儀式、アシリチェプノミが行われる。 アイヌの人々にとって、サケは大切な食糧。この時期は、道内各地でサケ迎えの儀式が行なわれている。 「サケはカムイチェプ、つまり神の魚。アイヌにとっては他の食べ物とは違う、とても身近な主食なんだよ」 そう話すのは、アシリチェプノミの副祭主、中村吉雄さん。アイヌ語でサケは「シペ」とも呼ばれ、「本当の食べ物、主食」という意味がある。日本人にとっての米と同じ位置づけということだ。■貴重な保存食 かつて、千歳川には多くのサケが遡上していた。「ぼっこ(棒)を立てても倒れない」とは、アイヌの人々がよく使う表現で、この時期は、棒が倒れる隙間もないほどサケがひしめき合っている川が多かったのだ。 アイヌの人々は、秋になると日々食べる分のサケを獲り、切り身にして焼いたり、野菜と一緒に煮てオハウという具だくさんの汁物にして食べていた。内臓や白子、筋子は塩漬けに、頭の軟骨は細かく叩いてチタタプというタタキにし、骨は軽く炙ってスナック菓子のように食べたという。さらに、皮は靴として生まれ変わり、背びれが滑り止めに使われた。サケは捨てるところがないと言われる所以である。 だが、サケが何より重宝されたのは、貴重な保存食になったからだ。 「千歳のサケは脂やけしないのが特徴。他の川より長く回遊して遡上するから、その間に脂が抜けてしまう。その分保存も利くから、3年以上は持つよ」 中村さんは言う。 保存には、主として囲炉裏の上に、お腹を開いたサケを丸ごと一匹吊るし、燻しをかけるトバという方法が用いられた。もっとも、外に干すこともあれば、早く乾燥するように三枚におろして干すなど、用途や目的により干し方はさまざまだったという。昔は塩が貴重だったことから、保存は乾燥に頼ることが多かったのだ。 さらに、雪が積もると、丸ごと雪の中に埋めて凍らせた。そのサケを薄く切り、溶けかけを食べるルイベ(溶けるもの)は、今もアイヌに関係なく、道内で広く知られる食べ方だ。■豊漁を願わない アシリチェプノミの儀式は、まずアイヌ民族の伝統的な捕獲方法、マレク漁でサケを捕り、それをアペフチカムイ(火のカムイ)に捧げることから始まる。マレクとは鉤銛のこと。魚を突くと銛が反転し、魚がうごくほどに体に食い込む仕掛けになっている。 儀式の直前、その日漁を行う少年が丸木舟の上でカムイノミを行っていた。マレク漁は舟に乗って行われるのだ。まだ中学生らしいその少年は、最初に舟の先頭部分に挿してあるイナウの先端に、シラリ(酒粕)を、続いてトノト(御神酒)をイクパスイというヘラ状の祭祀具で捧げ、オンカミ(礼拝)をした。 「サケが獲れるように、じゃなくて、怪我なく無事に終わるようにって祈るんだぞ」 一連の所作を見守っていた青年が声をかける。 そのとき、中村さんの言葉を思い出した。それは、アシリチェプノミは豊漁を祈る儀式かと確認したときだった。 「いいかい。アイヌは豊漁や大漁を願わない民族だ。サケが上がってくれてありがとう。それだけだ。そこを勘違いしないでほしい」 終始穏やかな中村さんの口調が、その瞬間、諭すような毅然とした声に変わった。では、お願いごとはしないのか。そう尋ねると、 「具体的にこれをくださいと言うことはしない。ただ感謝して、またコタンに戻ってきてくださいとお願いするんだ。そうしたら、次は形を変えて何かを与えてくれる。それは別の食べ物かもしれないし、子どもが授かることかもしれない。そういう発想なんだ、アイヌは」 と言う。アイヌのサケ漁をネットで見てみましょう。伝統漁法を千歳川で マレク使いサケ採捕-千歳アイヌ協会より 千歳アイヌ協会(中村吉雄会長)は15日から千歳川上流域で伝統漁具マレク(自在もり)を使ったサケ漁を複数回行う。若い世代への漁法継承を目的とし、来年1月31日までの期間を設け、すでに道の特別採捕許可を受けた。道内河川では、儀式以外に民族的な冬季のサケ漁に許可が出るケースは珍しい。大切な主食の一つで、生活するための糧となったサケを得てきた漁の復活は大きな弾みになる―と関係者は期待している。 アイヌ民族はサケを「カムイチェプ(神の魚)」と呼んで、食料とする以外にも皮も靴などに加工するなどしてきたが、明治政府がサケ漁を禁止して以降、自由な捕獲ができない状況が続いてきた。 今回は道が、千歳アイヌ協会を実施主体とする形で道アイヌ協会に許可した。市内水明郷の王子製紙第4発電所ダムから下流700メートル地点までの区間で、50匹を上限にマレクで捕獲できるとする内容だ。サケのふ化増殖事業やインディアン水車での漁業に配慮し、影響のない時期に漁を行う。
2021.07.22
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漢民族は嫌いだが、漢字文化圏という括りが好きな大使である。何でかなぁ?・・・ということで、漢字について集めてみました。甲骨文字・チャイニーズ・タイプライター・日本古代語と朝鮮語・閉された言語・日本語の世界・朝鮮日報が日本の国語辞典を評価・『漢字と日本人の暮らし』・『呪いの思想』・漢文の有用性・お言葉ですが・・・別巻2*********************************************************************<漢字の世界2>目次・漢字の来し方行く末・『呆韓論』・韓国での漢字教育・呉音、漢音、唐音、慣用音の違い・漢字排斥の弊害にあえぐ韓国・韓国から見た日本・韓国、台湾の漢字事情・漢字文化を考える*********************************************************************<漢字の世界1>目次・韓国で漢字復活・韓国が漢字効用に目覚めた・漢字がつくった東アジア・「中国文明の謎」第2集・漢字のベクトル・『おどろきの中国』3・『韓国が漢字を復活できない理由』・『漢字で覚える韓国語』R5:『チャイニーズ・タイプライター』を追記【チャイニーズ・タイプライター】トーマス・S・マラニー著、中央公論新社、2021年刊<「BOOK」データベース>より中国語タイプライターの“不可能性”から繙かれる圧巻の言語技術文化史。漢字についての発想の転換や戦時中の日中関係、入力や予測変換といった現在につながる技術の起源まで、波瀾と苦渋に満ちた展開を鮮やかに辿る。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(7/17予約、副本1、予約3)>rakutenチャイニーズ・タイプライター<『日本古代語と朝鮮語』2>父親から受け継いだ「日本古代語と朝鮮語」という本であるが、終戦時には朝鮮で小学校の教員だった父の経歴から、朝鮮関係の蔵書が充実しています。かなり専門的な本で、特に漢字、文化の伝来について述べられているのが、興味深いのでおます。【日本古代語と朝鮮語】大野晋編「日本古代語と朝鮮語」毎日新聞社、1975年刊<「BOOK」データベースより>アマゾンでは古書となるこの本にはデータもレビューもありません。で、この本の感想とエッセンスです。<大使寸評>漢字が渡来した時期の日本語はどんな言葉だったのか?という興味がわくし・・・中国に過剰適応してしまった朝鮮では、漢文はどう読まれたか?とにかく大使の関心は漢字にむかうわけです。Amazon日本古代語と朝鮮語『日本古代語と朝鮮語』2:朝鮮半島の種族構成『日本古代語と朝鮮語』1:中国語の音韻史<『閉された言語・日本語の世界』1>同音異義の漢字の成立理由が、中国語と対比して述べられています。p75~79■漢字語は音声と文字の交点に成立する 私はかねてから日本語は伝達」メディアとしてはテレビのような性格を持っていると主張している。音声を使って話している時でさえも、使われている漢字語の視覚的な映像を同時に頭の中で追っているのである。 これは決してすべての人が漢字を一字一画に至るまで、いつも正確に意識しているというわけではない。ある音形をきいたときに、それに対応するいくつかの、意味が関係のある漢字を思い浮かべ、前後の関係からどれか一つに決定するという意味である。「・・・官房長官がシ案を作りました」とニュースで聞くと、「私案」かな、それとも「試案」かなと一種の絵合わせを頭の中でやっていくのだ。この頃では、アナウンサーが御親切に「こころみ」の案だとか、「わたくし」の方だとか、ちょっと声を落として注をつけ始めたようだが、日常会話でも相手が使った言葉の文字を尋ねたり、自分の用いた語の表記に「さんずい」だとか「てへん」だなどと注を加えることは、しばしば経験する。 てのひらを出して字を書き示す習慣も日本独特で、西欧人はペラペラと綴りをそらでいう。私たちは字面を思い浮かべないと落ち着かない。 日本語に比べると、表記が原則的として表音である言語では、話すことはラジオのようなもので、すべての情報が音声という聴覚的刺激に託されている。そこで音形が同じで、意味に関連性があるような二つ以上の語は極端に嫌われ、互いに衝突するものとして一方が排除されてしまうのである。 日本語において表記が視覚的な情報源として働くということに対する言語構造上の理由は二つある。この二つは互いに原因であり結果であるという密接な関係に立っているが、現象としては一応別個の事実として考えるおとができる。 第一はすでに同音語の考察で明らかのように、お互いに同音で、しかも意味がなんらかの点で関連がある漢字が非常に多いということである。例えば「コウ」という発音を持った普通に用いられる漢字の数は、75にのぼる。これはポケット版である『岩波国語辞典』の見出し項目として出ているものだけであるから、大型の辞書にのっているものを数えれば、その数ははるかに多くなると考えられる。 この75の漢字のどれだけが、実際の会話の中で同音衝突を起こす可能性があるのかは簡単に決定できない。文の前後の脈絡次第で思わぬところで意味が混同されたり、取りちがえられることがあり得るからだ。荒天、好天や紅海、黄海などは衝突することは確実である。このようなとき、どんな字を使うのかという、表記に関する知識、つまり視覚的な情報が、曖昧性、多様性を解消することになるのである。(中略) 書かれた文字を見て、それをどう発音するかわからなくても、あるいはすぐ思い出せなくても意味はちゃんと分かることがあるのは誰でも経験することであろう。これはテレビを見ていて、音声を消してもある程度なんのことだか分かるのと比べられる。ラジオは消したらおしまいである。 以上の考察から明らかになったことは、西欧諸国の言語のように、文字表記が原則的には表音的な性質を持っている場合には、文字という視覚的情報は本質的には重複性がきわめて強いということである。 これに対し日本語の漢字語では、文字は音声からは別個に独立した情報源であり得るので、音声が等しくても、そして意味に関連があっても、文字さえ違えば同音衝突によるはじき出しが起こらないのは当然である。 この点で同じ漢字を使う中国語の場合と、日本漢字のそれとはかなり違っている。日本語の中に組込まれた漢字の音形は、日本語の音韻体系が中国語に比べて非常に単純であるために、もとの発音とは似ても似つかぬほど簡略化されてしまった。日本語には中国語のような声調(四声)の区別、有気無気の対立がなく、そして音節末の子音の存在を許さない。そこでもとの中国語ではまったく別の音形であった多くの漢字が、日本語に入ると同音になり、中国語では想像もつかないような数多くの同音異義の漢字が生れたのである。 このような日本化された漢字の表す概念(意味)は、もはや音的情報のみでは自立不可能となり、視覚的情報との交点においてはじめて明確に決定されることになった。【閉された言語・日本語の世界】鈴木孝夫著、新潮社、1975年刊<「BOOK」データベース>より日本語を話す人=日本人という「単一言語国家」であり、歴史上侵略された経験がない日本人は、いかなる言語を育んできたのか。数種類の一人称代名詞をもち、「相手依存」で自己規定する私たちの言葉の不思議。言語社会学の第一人者が、言語と文化への深い洞察をもとに、日本語観、外国観、そして日本人の自己像を考える。時代を経ても色褪せない必読の論考。<読む前の大使寸評>発行年度がかなり古い本であるが、当時で32刷となっているように・・・・いわゆるロングセラーなんだろうね♪ 借りた本は1990年発行となっています。rakuten閉された言語・日本語の世界<朝鮮日報が日本の国語辞典を評価>朝鮮日報が日本の国語辞典を評価しているので、見てみましょう。2018/04/08国語辞典の差、韓日の知力差より 先日、日本で静かな文化的事件が起きた。岩波書店が国語辞典の「広辞苑」の第7版を出したのだ。日本には1万種類を超える辞典、事典があふれる。そんな国で多くの国語辞典の一つが改訂版を出したところで大したことではなかろうというかもしれない。しかし、クリック数回でインターネットであらゆる辞典が見られる時代だ。民間の出版社が新たな紙の辞典を発売したことを決して軽く見るべきではない。(中略) 広辞苑は10年ごとに同じ作業を進めてきた。市民にも門戸を開いた。初期には日本初のノーベル物理学賞受賞者である湯川秀樹のような人物も解釈に参加したという。辞典に完璧はない。しかし、完璧に向かった改善の努力をやめないことが重要だ。日本にはそうした国語辞典が複数ある。個性もはっきりしている。言葉を扱い表現することが文化の水準を決定するとすれば、これは大きな力になる。 日本も「紙の辞典」が退潮する現象を経験した。広辞苑も1998年の第5版が100万部、2008年の第6版が50万部と販売が落ち込んだ。第7版は6月までの販売目標を20万部に設定している。しかし、インターネット時代に紙の辞典に1万5000円も払う人が20万人もいるということはむしろ驚くべきだ。いい加減な辞典を無料で使うより、カネを払っても信頼できる辞典が欲しいという人たちだ。彼らが日本の国語辞典を支える力だ。広辞苑はソウル光化門の教保文庫でも15部が売れたという。 韓国では国語辞典という市場自体が死滅した。人々がポータルサイトを利用するからだ。出版社の辞典チームは解体された。それゆえ、改訂競争で辞典の質を高める機会も消えた。国民の税金で設立した国立国語院の標準国語大辞典は1999年の初版発行以降、一度も改訂版を出していない。 オンラインでも本格的な改訂はなされていない。載せるべきものと載せなくてもよいものを区別できず。単語の最も正確な意味も盛り込まれていないという批判が根強い。オンライン辞典が大勢ならば、読者がオンライン国語辞典の誤りを指摘し、修正を求めて声を上げなければならない。国語辞典の差が韓国と日本の知力の差をもたらすと思うと恐ろしい。韓国で出版された韓国語辞典とやらを見たことがないのだが、漢字の扱いはどうなっているのだろうか?漢字抜きの韓国語辞典など、意味不明が拡散して、かえって混乱が生じるのではないかと思ったりするのだが。<『漢字と日本人の暮らし』>(長くなるので省略、全文はここ)
2021.07.19
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『朝日デジタルの書評から』フォームや『読みたい本』フォームを作っているのだが、これを市図書館の予約に利用しようと、思い立ったのです。これまでの予約内容と予約候補は以下のとおりです。<予約中>・池井戸潤『半沢直樹 アルルカンと道化師』(11/29予約、副本33、予約644)現在210位・内田樹『コモンの再生』(1/05予約、副本2、予約21)現在3位・村上春樹『一人称単数』(1/27予約、副本26、予約301)現在72位・白井聰『武器としての「資本論」』(4/06予約、副本9、予約89)現在51位・52ヘルツのクジラたち(4/15予約、副本20、予約592)現在439位・桐野夏生『日没』(4/24予約、副本24、予約300)現在196位・鎌田由美子『「よそもの」が日本を変える』(4/26予約、副本1、予約6)現在3位・マイケル・サンデル『実力も運のうち』(5/05予約、副本1、予約73)現在44位・ヤマザキマリ『生贄探し』(5/14予約、副本1、予約19)現在10位・『分水嶺 ドキュメント コロナ対策専門家会議』(5/30予約、副本2、予約16)現在13位・『ザリガニの鳴くところ』(6/04予約、副本17、予約315)現在274位・『生態学者の目のツケドコロ』(6/28予約、副本3、予約21)現在19位・『チャイニーズ・タイプライター』(7/17予約、副本1、予約3)<カートで待機中>・N・ネフスキー著『月と不死』・8月の果て・ある日うっかりPTA(副本4、予約39)・グレタたったひとりのストライキ<予約候補>・『コロナ危機の政治』・『大人の恐竜図鑑』・『レアメタルの地政学』・『中国の大盗賊』・ブレイディみかこ『他者の靴を履く―アナーキック・エンパシーのすすめ』:図書館未収蔵・『中国戦線、ある日本人兵士の日記』・『理不尽ゲーム』 ・野外鳥類学を楽しむ・オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る・岡ノ谷一夫『さえずり言語起源論』・小野正嗣『多和田語の世界』:図書館未収蔵・本村凌二『馬の世界史』・藻谷浩介『進化する里山資本主義』・多和田葉子『文字移植』:図書館未収蔵・高野秀行「怪獣記」・橋本治『黄金夜界』・中園成生『日本捕鯨史』・高野秀行「ワセダ三畳青春記」・ヘミングウェイで学ぶ英文法:図書館未収蔵・内澤旬子『ストーカーとの七00日戦争』:須磨図書館でみっけ・ジョージ・ミーガン『世界最長の徒歩旅行』:図書館未収蔵・ネルケ無方著『迷える者の禅修業』<予約分受取:5/13以降> ・ウイルスの意味論 : 生命の定義を超えた存在(2/18予約、5/13受取)・『出版翻訳家なんてなるんじゃなかった日記』(1/06予約、5/13受取)・清水義範『大人のための文章教室』(5/15予約、5/26受取)・川越宗一『熱源』(6/08予約、6/06受取)・ブレイディみかこ『ワールドサイドをほっつき歩け』(9/19予約、6/06受取)・ケン・リュウ『生まれ変わり』(5/26予約、6/15受取)・田口俊樹『日々翻訳ざんげ』(4/29予約、6/20受取)・『超ひも理論と宇宙のすべてを支配する数式』(6/14予約、7/03受取)・平松洋子『韓国むかしの味』(7/05予約、7/09受取)・カズオ・イシグロ『クララとお日さま』(3/20予約、7/18受取予定)***********************************************************************【半沢直樹 アルルカンと道化師】池井戸潤著、講談社、2020年刊<「BOOK」データベース>より東京中央銀行大阪西支店の融資課長・半沢直樹のもとに、とある案件が持ち込まれる。大手IT企業ジャッカルが、業績低迷中の美術系出版舎・仙波工藝社を買収したいというのだ。大阪営業本部による強引な買収工作に抵抗する半沢だったが、やがて背後にひそむ秘密の存在に気づく。有名な絵に隠された「謎」を解いたとき、半沢がたどりついた驚愕の真実とはー。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(11/29予約、副本33、予約644)>rakuten半沢直樹 アルルカンと道化師【コモンの再生】内田樹著、文藝春秋、2020年刊<出版社>より天下りのマッチポンプ、地方の過疎化、アンチ・グローバル化現象……コモン(共有地)の再生が日本の活路を開く!・西部劇『シェーン』が示すコモンをめぐる原理的な主題・ベーシックインカムの成否を決定づける要素とは?・トランプ現象とアンチ・グローバリズムの流れ・マナーの悪い「幼児的」なオヤジのマウンティングについて・明治維新前の藩制度とフランスのコミューンの共通点・「自我の支配」から解放される瞑想のやり方……etc.分断を超えて、新しい共同幻想が立ち上がる希望の書。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(1/05予約、副本2、予約21)>rakutenコモンの再生【一人称単数】村上春樹著、文藝春秋、2020年刊<「BOOK」データベース>より短篇小説は、ひとつの世界のたくさんの切り口だ。6年ぶりに放たれる、8作からなる短篇小説集。【目次】石のまくらに/クリーム/チャーリー・パーカー・プレイズ・ボサノヴァ/ウィズ・ザ・ビートルズ/ヤクルト・スワローズ詩集/謝肉祭/品川猿の告白/一人称単数<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(1/27予約、副本26、予約301)>rakuten一人称単数【武器としての「資本論」】白井聰著、東洋経済新報社、2020年刊<「BOOK」データベース>より資本主義を内面化した人生から脱却するための思考法。【目次】本書はどんな『資本論』入門なのか/資本主義社会とは?-万物の「商品化」/後腐れのない共同体外の原理「無縁」-商品の起源/新自由主義が変えた人間の「魂・感性・センス」-「包摂」とは何か/失われた「後ろめたさ」「誇り」「階級意識」-魂の「包摂」/「人生がつまらない」のはなぜかー商品化の果ての「消費者」化/すべては資本の増殖のためにー「剰余価値」/イノベーションはなぜ人を幸せにしないのかー二種類の「剰余価値」/現代資本主義はどう変化してきたのかーポスト・フォーディズムという悪夢/資本主義はどのようにして始まったのかー「本源的蓄積」/引きはがされる私たちー歴史上の「本源的蓄積」/「みんなで豊かに」はなれない時代ー階級闘争の理論と現実/はじまったものは必ず終わるーマルクスの階級闘争の理論/「こんなものが食えるか!」と言えますか?-階級闘争のアリーナ<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(4/06予約、副本9、予約89)>rakuten武器としての「資本論」【52ヘルツのクジラたち】町田そのこ著、中央公論新社、2020年刊<「BOOK」データベース>より52ヘルツのクジラとはー他の鯨が聞き取れない高い周波数で鳴く、世界で一頭だけのクジラ。たくさんの仲間がいるはずなのに何も届かない、何も届けられない。そのため、世界で一番孤独だと言われている。自分の人生を家族に搾取されてきた女性・貴瑚と、母に虐待され「ムシ」と呼ばれていた少年。孤独ゆえ愛を欲し、裏切られてきた彼らが出会い、新たな魂の物語が生まれるー。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(4/15予約、副本20、予約592)>rakuten52ヘルツのクジラたち【日没】桐野夏生著、岩波書店、2020年刊<「BOOK」データベース>よりあなたの書いたものは、良い小説ですか、悪い小説ですか。小説家・マッツ夢井のもとに届いた一通の手紙。それは「文化文芸倫理向上委員会」と名乗る政府組織からの召喚状だった。出頭先に向かった彼女は、断崖に建つ海辺の療養所へと収容される。「社会に適応した小説」を書けと命ずる所長。終わりの見えない軟禁の悪夢。「更生」との孤独な闘いの行く末はー。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(4/24予約、副本24、予約300)>rakuten日没【「よそもの」が日本を変える】鎌田由美子著、日経BP、2021年刊<出版社>よりコロナ禍で日常生活や働き方が激変し、心のどこかで「これまで通りの生き方で本当にいいのか」と悩んでいる人も多いのではないだろうか。ニューノーマルは見たことのない世界ではなく、「デジタル化」「多様性」「環境意識」といった後回しにしてきた問題が目の前に突き付けられただけーー。JR東日本でエキナカや地域活性化を成功させてきた著者が、「『What if?』という自問自答が必要」「仕事と生き方は融合していく」「サステナブルが日常に」など、個人や企業の「これからの生き方」を提示する。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(4/26予約、副本1、予約6)>rakuten「よそもの」が日本を変える【実力も運のうち】マイケル・サンデル著、早川書房、2021年刊<「BOOK」データベース>より「努力と才能で、人は誰でも成功できる」この考え方に潜む問題が見抜けますか?100万部突破『これからの「正義」の話をしよう』から11年ー格差と分断の根源に斬りこむ、ハーバード大学哲学教授の新たなる主著。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(5/05予約、副本1、予約73)>rakuten実力も運のうち【生贄探し】ヤマザキマリ×中野信子著、講談社、2021年刊<「BOOK」データベース>より幸せそうな人を見ると、モヤッとする、相手が得をすると損した気持ちになる、抜け駆けする人が痛い目に遭うのは当然、お前だけを特別扱いできない、などー日本人の思考の傾向は脳の特徴だった。豊かで多様性のある生き方のために、中野信子とヤマザキマリがアドバイス。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(5/14予約、副本1、予約19)>heibonsha生贄探し【分水嶺 ドキュメント コロナ対策専門家会議】河合香織著、岩波書店、2021年刊<「BOOK」データベース>よりクラスター対策に「3密」回避。未知の新型コロナウイルスに日本では独自の対策がとられたが、その指針を示した「専門家会議」ではどんな議論がなされていたのか?注目を集めた度々の記者会見、自粛要請に高まる批判、そして初めての緊急事態宣言…。組織廃止までの約五カ月、専門家たちの議論と葛藤を、政権や行政も含め関係者の証言で描く迫真のノンフィクション。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(5/30予約、副本2、予約16)>rakuten分水嶺 ドキュメント コロナ対策専門家会議【ザリガニの鳴くところ】ディーリア・オーエンズ著、早川書房、2020年刊<商品の説明>よりノースカロライナ州の湿地で村の青年チェイスの死体が発見された。人々は真っ先に、「湿地の少女」と呼ばれているカイアを疑う。6歳のときからたったひとりで生き延びてきたカイアは、果たして犯人なのか? 不気味な殺人事件の?末と少女の成長が絡み合う長篇<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(6/04予約、副本17、予約315)>rakutenザリガニの鳴くところ【生態学者の目のツケドコロ】伊勢武史著、ベレ出版、2021年刊<「BOOK」データベース>より生物と生物、生物と環境との関係を調べる、生物学の一分野である生態学。生きものについて知りたい、自然を守りたいと願う人にとって、生態学的な見方は必ず役に立つ。自然と生きもの、人間との関係を見つめ直す7つの章。【目次】第1章 人に囲まれて/第2章 暮らしのなかで/第3章 文化に触れて/第4章 外国を旅して/第5章 里山に生きて/第6章 森を歩いて/第7章 研究をとおして<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(6/28予約、副本3、予約21)>rakuten生態学者の目のツケドコロ【チャイニーズ・タイプライター】トーマス・S・マラニー著、中央公論新社、2021年刊<「BOOK」データベース>より中国語タイプライターの“不可能性”から繙かれる圧巻の言語技術文化史。漢字についての発想の転換や戦時中の日中関係、入力や予測変換といった現在につながる技術の起源まで、波瀾と苦渋に満ちた展開を鮮やかに辿る。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(7/17予約、副本1、予約3)>rakutenチャイニーズ・タイプライター【月と不死】N・ネフスキー著、平凡社、1971年刊<出版社>より著者は日本民俗学界の異色の存在として知られるロシア人学者で,柳田国男,折口信夫らと親交を結び,沖縄,東北などの民俗を採録した。本書は日本語で発表された論文・書簡を網羅した唯一の著作集。<読む前の大使寸評>ロシア人にして、日本民俗学界の異色の存在が気になるのです。<図書館予約:(とりあえずカートに入れておこう)>heibonsha月と不死【8月の果て】柳美里著、新潮社、2007年刊<「BOOK」データベース>より日本統治下の朝鮮・密陽に生を受け、マラソンでの五輪出場を目指した亡き祖父・李雨哲。そのうしろ姿を追い、路上を駆けることを決意した柳美里。ふたりの息づかいが時空を越えて重なる瞬間、日本と朝鮮半島のあわいに消えた無数の魂が封印を解かれ、歴史の破れ目から白い頁に甦る。偉丈夫の雨哲と美丈夫の弟・雨根。血族をめぐる、ふたつの真実の物語が、いま日本文学を未踏の高みへと押し上げる。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(とりあえずカートに入れておこう)>rakuten8月の果て予約分受取目録R26好書好日トップ図書館情報ネットワーク 蔵書検索システム図書館予約の運用にも慣れて、速攻で入手するコツも何となくつかんだと思うのだ♪・朝日書評欄で探すとしたら、3ヶ月前掲載くらいのモノが狙い目かも。・専門的すぎるほどのモノは、予約0となっていることが多い。・受取館に収蔵しているモノは、移送する手間が省けるので早くなるだろう。・本屋の店頭に出た直後の新刊本・ウィキペディアでめぼしい著作を探す・神戸市図書館の予約順位は毎週火曜日(午前1時~3時) に更新されます。・Kindle版を購入すれば、その本の全て読めるのだが、紙の本から書き写す手間が好きなわけでおます。
2021.07.18
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図書館で『池上彰の世界の見方 中国・香港・台湾』という本を、手にしたのです。物知り池上さんの説く「中国・香港・台湾」とは如何なものか。2016年発刊の本書は、香港の雨傘運動にも触れています。【池上彰の世界の見方 中国・香港・台湾】池上彰著、小学館、2016年刊<「BOOK」データベース>より「反日」「反中」を鵜のみにしない、偏見を捨てよ、客観的な国際感覚を磨け! 渾身の授業録!!【目次】第1章 「分断の歴史」から見る中国、台湾、香港/第2章 「共産党による独裁」から見る中国/第3章 「中進国の罠」から見る中国/第4章 「破壊された文化」から見る中国/第5章 「ひまわり&雨傘」から見る中国、台湾、香港/第6章 「外交戦略」から見る中国、台湾<読む前の大使寸評>物知り池上さんの説く「中国・香港・台湾」とは如何なものか。2016年発刊の本書は、香港の雨傘運動にも触れています。rakuten池上彰の世界の見方 中国・香港・台湾第二次大戦後のふたつの中国を、見てみましょう。p38~41<ふたつの中国。本当の中国はどちらだ> 1949年1月、共産党が国民党との争いに勝利します。敗れた国民党は中国大陸にいることができなくなりました。逃げる場所は台湾しかありません。一挙に100万人もの国民党軍が大陸から台湾に逃げ込んできました。 共産党が統治している大陸では、1949年10月に中華人民共和国が建国されました。一方、台湾に渡った国民党はそのまま中華民国を名乗り続けます。大陸には中華人民共和国、台湾には中華民国。さあ、本当の中国はどっちなんだ、という問題がここから起こります。 台湾の中華民国のトップである蒋介石は、もう一度、大陸を取り戻すことを夢見ていました。再び大陸に攻め込んで、共産党を倒し、中華民国を再建するんだと。 一方、中国共産党は、中国全土を支配してこそ、初めて中華人民共和国の統一が成し遂げられると考えています。つまり台湾を中華人民共和国のものにして初めて中国の統一が達成されるわけです。中華人民共和国ができて以来、中国共産党はいずれ台湾を手に入れるぞ、という固い決意を現在まで持ち続けているのです。 第二次世界大戦が終わった後、1945年に国際連合が発足すます。戦争に勝った連合国側のアメリカ、イギリス、ソ連など5ヶ国が常任理事国となりました。中国も常任理事国です。しかし国連ができた時、中国はまだ中華民国が統治していました。ですから、中華人民共和国が誕生した後も、国連に加盟しているのは台湾の中華民国という状態が続いていました。 大陸の中華人民共和国のほうが圧倒的に人口は多い。台湾しか統治していない中華民国を中国の代表にし続けることには、国際的に無理があります。1971年に国連総会の決議で、中国の代表は中華人民共和国に変更されました。 中華民国はその決定を不服とし、国連を脱退します。以降、台湾の中華民国は国際的には認められないまま存在しています。中国の代表が中華人民共和国になるまで、台湾は英語でRepublic of Chinaの名称でしたが、国連脱退以降はChinese exile Government in Taipei(台北に存在する中国亡命政府)となり、略してChinese Taipeiとなっています。 リオデジャネイロ・オリンピックの開会式で、日本のメディアは「205の国と地域」が参加していますと報道しました。その「地域」のひとつは、台湾のことを指している、というわけです。 第二次世界大戦後、日本も中国との間に日華平和条約を結びます。その相手は中華民国でした。しかし、やはり中国を代表するのは中華人民共和国だろうということになり、1972年に日本は当時の田中角栄首相が、中華人民共和国との間で国交を正常化します。 それまで日本は台湾、つまり中華民国ととても仲がよかったわけです。それを捨てて、中華人民共和国と国交を結ぶとなると、非常に難しい立場になります。(中略) そこで日本は「中国が台湾は中華人民共和国の不可分の領土であると主張していることを、日本側としては十分理解し、尊重する」という言い方をしました。つまり、日本は、台湾は中華人民共和国の一部だとは認めていないが、中華人民共和国が台湾は中華人民共和国の一部だという主張は理解し、それを尊重します、という非常に微妙な表現をしたのです。 同じ頃、アメリカも中華人民共和国との国交を正常化させました。アメリカはどう対応したのかというと「中華人民共和国が、台湾も中華人民共和国の一部だと主張していることをテイクノート(Take Note)する」と表現しました。 Take Noteは、直訳すると、「ノートをとる」という意味になります。中華人民共和国の主張を留意、つまり気に留めておきますということです。アメリカも日本と同様の対応をしたということですね。
2021.07.15
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図書館で『のっけから失礼します』という本を、手にしたのです。ぱらぱらとめくると気安いテーマのエッセイが並んでいて・・・どこを読んでも頭のコリがほぐれるような気がするのです。【のっけから失礼します】三浦しをん著、集英社、2019年刊<「BOOK」データベース>より『BAILA』好評連載に5本の書き下ろしを加えた、自称「構想5年!」の超大作。ありふれているのに奇想天外な日常が綴られる三浦しをんワールド炸裂の抱腹絶倒エッセイ集。<読む前の大使寸評>ぱらぱらとめくると気安いテーマのエッセイが並んでいて・・・どこを読んでも頭のコリがほぐれるような気がするのです。rakutenのっけから失礼します「あとがき」のあとに、この「巻末おまけ書き下し」がありました。p284~<もふもふパンダ紀行> みなさん・・・、お読みになられていますか・・・。これ以降のページは、心のきれいなかただけに見えるインクで刷られています・・・。あ、「読めてる」というお声が聞こえてきました。心のきれいな読者ばっかりでうれしいです。 このおまけエッセイが無事に収録できたのは、印刷所が総力を結集して、心のきれいなかたにだけ見える特殊インクで印刷してくださったおかげです。私は印刷所に足を向けずに寝ている! いや、まだこの原稿書き終わってないのに寝るな! 今後は、「『締め切り』って言っても、本当の締め切りはまださきなんだろう」なんて勘ぐるのはやめて、告げられた日にちをきれいな心で真摯に受け止める、サウイフモノニワタシハナリタイ。 急に片言になったのではなく、宮沢賢治オマージュです。・・・賢治と印刷所のみなさまにお詫び申しあげます。 さて、と(切り替え早い)。パンダを見たよ。 片言のつぎは寝か、と思われるだろうが、私は覚醒している。本当にパンダを見たのだ。むろん、あんな愛らしき生き物が拙宅近辺(東京郊外)の道をふらふら歩いているはずはない。和歌山県の白浜にある「アドベンチャーワールド」へ行って、見たのだ。 「東京に住んでいるなら、上野の動物園で見ればいいんじゃないか?」というご意見もあろう。しかし私がぼんやりしているうちに、上野で生れたシャンシャンはけっこう大きくなっていた。すくすく育ったシャンシャンをテレビのニュースで見て、「人間の赤子と同様、パンダの子どももあっという間に大きくなるんだなあ」と驚いた。 大人のパンダがいやだというわけではないが、せっかくならコロッコロのチビパンダを見たいのが人情というもの。この調子で子パンダを見るチャンスを逃したまま一生を終えるのかとよんぼりしていたところ、「BAILA」連載担当者のNさんが、 「パンダなら、白浜のアドベンチャーワールドにごろごろいますよ。つい先日も赤ちゃんがうまれました」 と言うではないか。 「え、そうなの!? パンダって、そんなにごろごろいるようなものなんですか?」 Nさんは、お母さんが和歌山県のご出身で親戚も多く住んでいるので、幼少のころからしょっちゅう白浜へ遊びにいっていた。そのため、アドベンチャーワールドのパンダ事情にも詳しいようなのだ。 「アドベンチャーワールドには、永明というパンダ界のスーパーモテ男がいるんですよ。人間でいうと70歳ぐらいらしいんですけど、いまも現役。『交尾がうまい!』『雌をとろかす!』と評判です」 「だれが判定したんですか、そんなこと」 「さあ・・・。とにかく永明のおかげで、これまでアドベンチャーワールドでは15頭ものパンダが生まれました。先日生れた赤ちゃんパンダのお父さんも、永明です」 「15頭! しかしちょっとよくわからないんですが、交尾のうまさと子どもができるかどうかに、いかなる相関関係があるのでしょうか」 「パンダの雌って、1年に3日ぐらいしか発情期がないうえに、好みじゃない雄が寄ってきても見向きもしないらしいんです。そこで、我らが永明の登場です。彼はどんな気むずかしい雌もその気にさせるモテ男ですから。永明のモテ力がすごいおかげで、アドベンチャーワールドでは自然繁殖を行ってるそうですよ」 「なるほど」『のっけから失礼します』5:うちのぼうや『のっけから失礼します』4:青(っぽ)い鳥『のっけから失礼します』3:先住民・イゾラドの孤独『のっけから失礼します』2:本屋さんに関するエッセイ『のっけから失礼します』1:もやしとぬた
2021.07.14
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図書館で『のっけから失礼します』という本を、手にしたのです。ぱらぱらとめくると気安いテーマのエッセイが並んでいて・・・どこを読んでも頭のコリがほぐれるような気がするのです。【のっけから失礼します】三浦しをん著、集英社、2019年刊<「BOOK」データベース>より『BAILA』好評連載に5本の書き下ろしを加えた、自称「構想5年!」の超大作。ありふれているのに奇想天外な日常が綴られる三浦しをんワールド炸裂の抱腹絶倒エッセイ集。<読む前の大使寸評>ぱらぱらとめくると気安いテーマのエッセイが並んでいて・・・どこを読んでも頭のコリがほぐれるような気がするのです。rakutenのっけから失礼しますしおんさんのそそっかしいエピソードを、みてみましょう。p255~257<うちのぼうや> 言い訳めくが、少々気が急いていたし、駐輪場が満杯だったので、最寄り駅の道端に自転車を停め、銀行でお金を下ろしたりスーパーで買い物をしたりして、バスで帰った。 ・・・え? と思われたかたもいらっしゃるだろう。書いてて私も、「おーい、なにかお忘れじゃないかい?」と自身の行動にツッコミを入れざるを得なかった。なんで自転車で行って、バスで帰ってきちゃってんの! 大丈夫なのか私。 むろん、「しまった、自転車!」とバスを降りる時点で気づいた(遅い)。しょうがないから買ったものを自宅に置いたのち、再びバスに乗って駅前へとんぼ返りした。自転車はなかった。 「ぼうやー!わたしのぼうや、どこにいるのー!」 と探しまわるも、影も形も見当たらない。路上駐車ということで、撤去されてしまったらしい。あたしのぼうやが、ひとさらいに・・・! と泣き崩れる(嘘)。まだ2時間も経ってないぐらいだぜ。勤勉すぎやしないか、私が住んでいる区の職員のみなさまよ。 ふと見ると、自転車が軒並み撤去された道端には看板が設置してあり、「ここで保管してるよ。取りにきてね。三千円を徴収するよ」ってな旨とともに地図が掲示してあった。歩いていくには、ちょっと遠い。しかも三千円か・・・。私のぼうや(自転車)、駐輪場でもひときわ目立つほどボロボロで、そろそろ買い替えなきゃと思ってたんだよな・・・。 必死に探しまわったくせに自転車を引き取りにはいかず、ひとまずバスに乗って自宅に帰る。この往復のバス代はなんだったんだ、まったくの無駄ではないか、とも思ったが、落ち着いて考えたかったのだ。 撤去された自転車を引き取りにいったら三千円。しかし引き取りにいかなかったら、たぶんそのまま行政がわが処分するのだろう。だとすると、私が選択すべき道はひとつではないか? ここは鬼になって、ぼうやを撤去された事実をなかったことにする! そうすれば、三千円をはらわなくてすむうえに、ボロボロのぼうやをタダで処分できるのだ! そして新品のぼうやを迎え入れる・・・。うしし。 就寝した(鬼である)。だが、なかなか眠りが訪れない。 私とぼうやのつきあいは、もう十年になんなんとする。ぼうやは赤いママチャリで、カスタムしてうしろにも籠がついている。(中略) とにかく、愛着があるのだ。鬼になってはみたものの、いまもぼうやは夜の闇のなか、慣れぬ撤去自転車置き場でポツンと、「あれれ~、どうしてぼく、こんなとこにいるんだろう。早く迎えにきてー」って思ってるんだろうなと思うと、涙がにじんできて眠れないのである。(追って記入予定)『のっけから失礼します』4:青(っぽ)い鳥『のっけから失礼します』3:先住民・イゾラドの孤独『のっけから失礼します』2:本屋さんに関するエッセイ『のっけから失礼します』1:もやしとぬた
2021.07.13
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