しろこ

しろこ

第19回 臆病者



普通、日本人の留学希望者は圧倒的にアメリカへ行く。私も最初はアメリカ希望であった。しかし、恩師の話を聞いているうちに、影響されやすい私は、「やっぱ英語は本場イギリスだよな」などと生意気なことを言い出すようになった(話せるようになってから言えよ)。

さて、ストックポートの家からマンチェスターの学校まではローカル電車で20分ぐらい。学校はマンチェスター駅のすぐ近くだった。少し迷ったが学校らしき建物の近くまできた。ここで私が感じたのは、イギリスでは建物から中身が想像できないと言うことである。簡単にいうと全ての建物が煉瓦造りで区別をつけることが出来ないということだ。そう言えば、一般のほとんどの家には玄関にでっかく番号が書いてある(じゃねーとわからんよなー)。

学校とおぼしき建物の入り口に到着した私は途方に暮れた。「ドアがでかい」「これが学校の入り口か?」入り口を何回も確認する。ここに間違いない。しかし、臆病者の私はドアを開ける勇気がなかった。「まあ今日は下見だからいいか」(下見になってないじゃん)。「まあ場所は分かったことだし」と自分に言い訳をしながら大学の敷地の周りを散歩した。

「相変わらず1人は心細い。することもない。怖い人がねらっているかもしれない(妄想もここまで来ると立派!)」「よし、帰ろう!」私は大学を離れ家に帰った。家に着くとスーが言った。「しろこ、もう帰って来たの?せっかくマンチェまで行ったのに買い物にも行かなかったの?」「はい、1人で寂しかった帰ってきました。」

するとジムが笑いながら「しろこ、お前年はいくつだ?」「24です」ジムは(いつも笑っている)"hey siroko, you’er coward! ha, ha, ha"(臆病者だな!は、は、は)。笑っているジムに私は言った。「カワードって何て意味ですか?」その日以来、私のあだ名は「カワードになった」


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