MUSIC LAND -私の庭の花たち-

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「十三夜の面影」6




髪を撫でてる手が

頬にすべり落ち、

引き寄せていった。

瞳を開けたままのかぐや姫。

「目を瞑って。」

素直に目を閉じる。

抱き寄せて、キスをした。

びっくりしたのか、身を震わせたが、

観念したかのように、大人しくなる。

「もう目を開けていいよ。」

と耳元にささやく。

「何をしたの?」

「キスだよ。」

「なぜ?」

「君が好きだから。」

と言うと、少し考え込んでいる。

「口吸いね。」

「古いなあ。」

と、思わず笑い出してしまった。

まあ仕方ないか。

風に木々が揺れて

ざわめいている。

雨でも降ってきそうだ。

「そろそろ帰ろうか。

夕立が来ないうちに。」

「そうね。」

二人で歩き出すと、

急に土砂降りの夕立。

手を繋いで、走り出したが、

もうびしょ濡れだ。

どこかに雨宿りをするところはないかと

見渡したら、遠くに東屋が見えた。

「あそこまで走ろう。」

「うん。」

だんだん僕に慣れてきたな。

安心したのか、

声が優しくなってる。

東屋に駆け込んで、

雨をはらう。

「ここで、雨が止むのを待つか。」

「この雨は止まないわ。」

「なんで分かるんだ?」

「だって、これは夕立じゃないから。

もう秋の雨だもの。」

「まだ夏だよ。」

「そんなことない。」

二人で言い争っているうちに

いつの間にか雨が止んでいる。

「ほら、夕立だったじゃないか。」

「おかしいな。

秋の匂いがしたのに。」

「地球に降りてしばらくたったから、

自然の勘が鈍ったのかもね。」

「そうかしら。

確かにあの風は秋風だったの。」

と、淋しそうにつぶやく

彼女の肩を抱いて、

東屋を後にした。

うちに帰っても、

彼女はなぜか暗い顔をしている。

キスしたのがいけなかったかな。

「どうしたんだい?」

「別に。ただ、

なんとなく淋しくなっちゃったの。」

「月が恋しくなったのかい?」

「そういうわけではないの。

地球は面白いし、 

あなたも居るから、

いいのだけど。」

それでも浮かない顔だ。

「さっきはいきなりキスしてゴメン。」

と、頭を下げると、

「いいのよ。

私もあなたが好きだから。」

と、恥ずかしげにうつむく。

初々しくていいなあ。

「それじゃあ、元気を出してよ。」

と手を取る。

「うん。そうする。」

やっと笑った。

もう日が早くなって、

落ちてしまった。

空が、夕焼けの茜色から紫へと変わる。

夜の闇が全てを覆い隠そうとしていた。

続き












































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