司馬懿が鼻をさすりつつ見上げると、そこにいたのは…




 近所のガキ大将、呂布だった。

 『りょ、りょりょりょ呂布くんっ!?』

 思わずどこかで聞いたようなセリフで叫ぶ司馬懿。

 『それ…やめてくれないか…』

 どうやらちょっと傷ついたらしい。

 『あ…ご、ごめん…ところで、なんで呂布くんがここにいるの?』

 『それはこっちのセリフだ』

 ようやく気を取り直したのか、呂布はやけに強気で話しかけてくる。

 『なぜ貴様がここにいる?』

 『なぜって…その…』

 言えない。絶対言えない。

 (裾踏んで転がってきましただなんて恥ずかしいし悔しくて言えない…ッ!)

 『なんだ?言えないようなことなのか?もしかして迷子か?』

 ニヤニヤと意地悪そうな顔で呂布が聞いてくる。

 『違うわ、ばかめがー!!!うわーん、呂布くんのばかー!!!』

 ぴぃぴぃと泣き出す司馬懿。

 『わわっ、すまん! わー、泣くなー!!!』

 『うわぁぁぁぁぁぁーん!ばかめが、ばかめがー!!!』

 一向に泣き止まない。あまりの五月蝿さに、両目と耳をふさいで耐える呂布。

 『だー、悪かったっ!!!』

 『ひっく…  痛っ!』

 急に痛がる司馬懿に驚いたのか、『どうした!?』と呂布があわてだす。

 『いたた…』

 『怪我してるのか?』

 『うん…さっき…』

 『そっか、転んでたからな… よし、来い!!!』

 『え?ど、どこに?』

 『いいから来い!!!』

 ぐぃっとむりやり司馬懿の腕をひっぱる呂布。

 突然の呂布の行為に司馬懿はただ目を回すばかり。

 足も怪我をしていて、正直痛いのだが…


 そうして着いたのは、呂布の家。

 『ちょーせん、ちょ――せ―――ん!!!』

 『にぃサマ、どうかしたのですか?』

 『ん』

 ずいっと、司馬懿を貂蝉の前に出す。

 『あらあら、司馬懿くん…まぁ、ひどい怪我!』

 本当は軽いものなのだが、衣服がぼろぼろに破れていれば誰だってそう思うだろう。

 『診てやってくれ』

 『しょうがないにぃサマね…どうせまたいじめたんでしょ?』

 『断じて違うッ!!!////』

 『はいはい、わかりました。ほら司馬懿くん、こっちこっち。』

 そういう貂蝉に、司馬懿は素直に従う。

 『はいはーい、消毒しますからねー』

 なにか微妙におままごとな雰囲気が漂うが、誰も気にするものは居なかった。

 『うぅ…痛いよぅ…』

 泣きそうになる司馬懿。だが貂蝉は、『男の子でしょ、これぐらいで泣かないのッ!』と言うばかりだった。

 『はい、できましたー』

 それなりの応急処置を終え、その出来にご満悦の貂蝉。

 『あ、ありがとう…』

 司馬懿は照れた笑顔でお礼を言った。

 『いえいえ、私ができるのはこれくらいだから…v』

 貂蝉がそういうと、呂布は『さすがは俺の妹だ!!!』と絶賛した。


 『さて、…帰るぞ。…その、お前、足が……おぶって連れてってやる。』

 呂布はそうぼそぼそと言うと、司馬懿に手を差し伸べた。

 司馬懿は驚いた。まさか、呂布が自分に優しくしてくれるとは思っていなかったからだ。

 司馬懿は、嬉しくて『うんv』と素直に従った。

 その帰り道―

 『ここからは一人で行けるよ。』

 『そうか』

 そう言い、背中から司馬懿を降ろす。

 『呂布くん呂布くん』

 『…なんだ』

 『ありがとう』

 突然の司馬懿からのお礼に、赤面の呂布。

 司馬懿はまだ、にこにことしている。

 『と、とうぜんのことをしたまでだっ!!!』

 微妙に声が裏返っているが、司馬懿はそれに気がつかなかった。

 『俺は帰る!!!』

 自慢の俊足で駆け抜ける呂布。

 案外シャイなやつだ。

『司馬懿!!!今までどこにいたのです!?』

  直後、司馬懿のうしろから聞きなれた声が聞こえてくる。

 『ぱぱ――!!!!』

 諸葛亮に飛びつく。

 そんな司馬懿を見て安心したのか、諸葛亮はフゥとため息をついた。

 『まったく…心配したのですよ…!』

 『ごめんなさい、パパ…ごめんなさい』

 しょぼーんとする司馬懿。もし犬耳がついていたら、間違いなくフセていただろう。

 『いえ…無事でなによりです…さぁ、帰りま… !?

 そう言って司馬懿を抱き上げるが、異変に気づく。

『服が破れているじゃないですか―!!!(激怒』

 『パパ?どうしたの?』

 ふるふると怒りに打ち震える諸葛亮を心配そうに見つめる。

 どうやら諸葛パパは、完全に勘違いをしたようです。

 『これは大変だ…!!!月英、月英ー!!!』

 司馬懿を抱いたまま猛ダッシュで家へと帰る、諸葛亮なのでした。


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