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04 新たな仲間
「ふあぁ……」
ルナは目を覚ました。また新しい朝が来たのだ。
しかし、周りの風景がいつもの朝と全然違う。
それだけじゃない。さらに驚いたことに、隣にレイが座っているではないか!
「うひゃっ!?」
ルナは大げさにびっくりした。
「っ……ああ、起きたか。おはよう、ルナ」
叫び声で驚きつつも、声をかけてくるレイ。
だが、ルナは自分が今置かれている状況が理解できていない。
「な、なんで私こんなところで寝てたの!?私達、あやしい森でイジワルズと戦って……」
「わわわ、落ち着けルナ!ちゃんと説明するからさ!」
それから少し後。2匹は小さな森を散歩していた。
道すがら、レイは昨日イジワルズに勝利してからのことをルナに話す。
「そうだったの……私ってホント臆病者よね。安心感で寝ちゃうなんて」
「けど救助は成功したし、いいんじゃないかな」
会話を交わしていく。
ルナは、それ以上この話題には突っ込まなかった。
それはそれでレイにとっては安心なのだが。
あくびをする。やはり昨日はあまり眠れなかった。
散歩しながら、レイは感じていた。今日もいい朝だ……と。
小屋の前でグレアと合流する。どうやら右腕は治ったようだ。
「レイ、今日はどんな依頼をこなそうか?」
「そうだな、やっぱり掲示板を見ないことには」
と、相談をしていると突然地面が揺れた。
「もしもし、探検隊ウィンズとは、あなた方ですか?」
どこからか声がする。
「は、はい、そうですが……」
レイが返事してみる。しかし、声の主がどこにも見当たらない。
ルナもグレアも、きょろきょろと辺りを見回す。
「……あっ、もしかして姿が見えない?これはどうも失礼しました!」
声の主は、地中から顔を出した。ダグトリオだ。
ウィンズの3匹は一様に驚いているが、突然の来客は構わず話を始める。
「初めまして。マルグと申します。
実は昨夜、息子のマウタが高い山の頂上に連れ去られたんです。
そんな所、私達にはとても登っていけないし……
なので、あなた方にお願いしたいというわけなんです。
息子をさらったのは、エアームドっていうポケモンです。凶暴なヤツなので気をつけてください。
場所はハガネ山の頂上です。よろしくお願いします!では!」
それだけ言うと、マルグはまた地面に潜った。
あまりに突然な上に早口だったので、ウィンズは誰も何も言えなかった。
「……行くか」
レイは、それだけ言った。
「本当にいきなりだったな、さっきのポケモンは……」
「神出鬼没ってまさにこのことか。しかも押し付けかよ」
「けど依頼を成功させて、依頼人さんの喜ぶ顔を見ると、やってよかったなって思うのよね!」
そんな会話をしながら、広場を歩く一行。救助の準備をしているところである。
すると、目の前から大柄なポケモンが3匹現れた。
「お、あの集団は……」
「グレア、知ってるのか?」
レイは当然知らない。グレアが紹介を始める。
「ああ。FLBっていう、有名な救助隊だ。フーディンのフレッド、リザードンのレオン、
そしてバンギラスのビリー。3匹の頭文字がチーム名になってるというわけだ」
FLBは、そのままウィンズとすれ違おうとした。だが。
「……!!」
フレッドが、不意に振り返った。
「どうした、フレッド?」
レオンが声をかける。
「ちょっと、いいか?」
そう言うと、フレッドがウィンズの方に歩いていく。
「そこのピカチュウ……おぬし、もしかしてポケモンではないな?」
的を射た言葉に、レイはどきりとした。だが、何かわかるかもしれない。
「そう、僕は人間だったはず。なんでポケモンになったのか、わからないけど」
レイの正直な言葉。
「な、なにっ!?」
「人間だって!?」
ビリーが、そしてレオンが驚く。
「でも、そんなことあり得るのか?」
今度はグレアが問う。彼もまた驚いていた。
「何か……何か、知ってませんか?」
レイの切実な質問。もちろんフレッドに対して。
「……いや、ワシにもわからん」
その言葉に、レイは落胆した。
ピカチュウになってから、ある程度の日数が経過しているが
なぜ自分はポケモンになったのか――その手がかりは全くつかめていないのだ。
だが一瞬言葉を切った後、フレッドが話を続ける。
「もしかしたら……ネイティオなら、何か知っているかもしれない。
やつは1日中太陽を見つめ、未来を見通すという」
「で、その、ネイティオはどこに!?」
やっと見つけた手がかりに、レイはいてもたってもいられなかった。
「大いなる峡谷の中にある、精霊の丘という場所だ」
そこに行けば、何かつかめるかもしれない。
「どうも、ありがとうございました」
レイがFLBにそう言って、ウィンズは再び歩き出す。
一方、FLB。
レオンが、仲間うちにしか聞こえない声でフレッドに話す。
「フレッド、お前のことだ。何も知らないってことはないんじゃないか?」
「気になることが1つある。だが、それは言わない方がいいだろう。彼らのためには……な」
「精霊の丘か……ちょっと遠いけど、行くよね?レイ」
準備をしながら、ルナがレイに言う。
「もちろん、行くしかないよ。けど今日は依頼をすでに引き受けてるから……」
「引き受けたんじゃなくて、押し付けられたんだろ?」
心なしか、今日のグレアは少々不機嫌な様子だった。
押し付けが気に食わなかったらしい。
「ま、ハガネ山ならそんなに遠くないし、さっくり片付けようぜ」
ハガネ山といっても、はがねタイプのポケモンばかり見かけるわけではなかった。
ほとんどは、今までに見たような顔ぶればかりだ。
道をふさぐ野生ポケモンをどかしつつ、一行は山を登っていく。
頂上は、崖を隔てて2つに割れていた。
崖の向こうに、助けるべきディグダ――マウタがいる。
「おーい!大丈夫ー?」
ルナが大声で呼びかける。
「……こ、怖いです」
マウタは小さく声を絞り出す。
目の前には崖が広がる。怖いというのも無理はない。
「さて、どうやって助けようか?」
グレアがそう言ったその時、突然空が暗くなった。
……いや、一行の上に広がるのは空ではなかった。
依頼主のマルグから聞いた、エアームドが上空を飛んでいる!
「あんた達、何しに来たザマスか!?」
金属から発せられるような高い声で、エアームドが叫ぶ。
「そこのディグダを助けに来た!」
レイが堂々と返す。そこには全く怯えというものがない。
「レイ……」
ルナは少しだけ身ぶるいしていた。
一片の怯えもなくエアームドと向き合うレイが、ルナには頼もしく思えた。
「何言ってるザマス!コイツらが暴れてるせいで地震が止まらないんザマス!
これからコイツの親も捕まえに行くザマス!
邪魔しようっていうなら、あんた達覚悟するザーマス!!」
地面に映るエアームドの影が、徐々に小さくなる。高度を上げているのだ。
「ここは、やるしかないか!」
そう言って、レイが閃光を放つ。
しかしエアームドはそれを難なく避けると、信じられない速さで向かってきた!
ウィンズが3匹で総攻撃をかけても、全く命中しない。
目にも留まらぬ高速飛行だ。
「くそっ、なんてスピードだ!」
「くらえザーマス!!」
鋭いくちばしを突き出し、一直線に飛びかかる!
しかし、エアームドの動きが一瞬にして停止した。
それどころか、エアームドの体が上空に引き寄せられている。
翼を動かしていないというのに。
レイは自分の目を疑ったが、空を見るとこの現象の意味がわかった。
突如現れた1匹のコイルが、磁力を放っているのだ!
「な……なに……する……ザマス……」
エアームドは全く抵抗できない。
コイルとエアームドは互いに金属質の体を持つ。磁力が発生すれば、引き付けあうのだ。
ある程度距離が縮んだところで、コイルが爆弾を撃ち込んだ。
銀色の爆弾は、エアームドに衝突し爆発!
衝撃によりエアームドは崖の下に落ちていった。
「あーれーザマスー!!!」
断末魔の叫びが響いた。
マウタを救出し、一行は小屋に戻ってきた。
助けに来たコイルは、以前に電磁波の森で助けたコイルの1匹――イオンだった。
基地にはイオンの仲間である3匹のコイル、そして依頼主のマルグが待っていた。
「うう……ボク、とっても怖かったです。ずっと高い所にいたせいでしょうか……
まだ足が浮いてる感じなんです……」
まだ少し表情を硬くしたままの、マウタが言った。
しかし、ディグダやダグトリオに足はあるのだろうか。
本人達以外の全員が、一斉にそんな考えを頭に浮かばせた。
「おかげで助かりました。ありがとうございました」
基地で待っていたマルグが、ウィンズに感謝する。
「いやいや、お礼ならイオンに言ってよ。私達だけじゃどうなっていたか」
そう言ったのはルナ。確かに、まかり間違えばエアームドの一撃をまともにくらっていたところだった。
「それはそれは、本当にありがとうございました!」
「イヤイヤ、助ケタノハ当然のコトダ」
マルグとイオンが会話を交わす。
「では、皆さんありがとうございました!」
親子同時にそう言って、地中に潜っていった。
残ったのは、ウィンズと4匹のコイル。
「ところで、イオンはどうしてハガネ山に?」
レイが質問する。偶然にしてはできすぎている。
「ソレガコイツ、ドウヤラ皆サンノ仲間ニナリタクナッタラシイノダ」
代わりに答えたのはプロトン。かつてイオンとくっついていたコイルだ。
「ほ、本当に!?」
ルナが速攻で反応する。
「俺は別に構わねえ。レイ、どうする?」
「そういうことなら、歓迎するよ!」
全員一致だ。
「シカシ、ヒトツ困ッタコトガアッテナ」
問題を投げかけたのはニュロンだった。
「我々ガ住ンデイル場所カラココマデ、カナリ遠イ。コノママデハ活動ニ支障ヲキタスダロウ」
エレンが語る切実な問題。
ルナやグレアの住む場所は、レイの小屋から近い。
なので、今までは問題にならなかったことだった。
「それじゃ、僕の小屋に来ないか?」
レイの提案。
「ちょっと狭いけど、何とかなると思うよ」
こう言われては、断る理由もない。
「アリガトウ!レイサン!」
イオンは飛び上がった。
「どういたしまして、それじゃ改めてよろしく!」
この日、探検隊ウィンズに新たな仲間が加わった
そして、物語は加速していく――
Mission04。03の半分程度と短めです。
今回はイベントの順番を変えただけの、シンプルアレンジな構成。
結局、エアームドは名乗る間もなく退場ということで。
2008.02.04 wrote
2008.03.04 updated
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