ガムザッティの感動おすそわけブログ

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gamzatti @ Re[1]:「ムー」「ムー一族」(05/28) ひよこさんへ 訂正ありがとうございました…
ひよこ@ Re:「ムー」「ムー一族」(05/28) ジュリーのポスターに向かってジュリーっ…

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gamzatti

gamzatti

2009.05.31
XML
カテゴリ: シェイクスピア
ジョン・ケアード演出の「夏の夜の夢」。
私は初めて見たのだけれど、
初日にして、すでに非常に質の高い舞台だった。

何がすごいって、セリフと感情がこれほど一致しているのも珍しい。

シェイクスピアの戯曲は、ビクトリア朝の修辞がちりばめられていて、
日本語でやるとどうしても言葉があふれ気味になる。
早口でがなりたてたり、
筋には関係ないどうでもいいような比喩に振り回されて、
その登場人物の持っている心が伝わりにくいことがよくある。

そんな弾丸トークの中で人物造形をやってのけるからこそ、
「シェイクスピア俳優」はすごいのかな、などと思っていたが、
この舞台を見て、考えが変った。

みなゆっくり、かみ締めるように話す。
一つひとつの単語が、声のトーンや身振りとのコラボによって、
観客に具体的なイメージをもたらす。

「たとえば15行の怒っているせりふがある場合、
 がなり立てたまま15行全部を言う必要はないんですよ。
 怒った状態は1行で伝えられる。
 それよりも、
 なぜそれらの単語が使われているかが全体に提示されているはずで、
 それを生むだけの思考を辿ることが必要なんです」
            (ジョン・ケアード・パンフレットより)

ジョンのそうした思いが、役者全員に浸透している。
以前、神田沙也加をインタビューをしたとき、彼女が
「ジョンのワークショップを体験して、読み合わせをすると
 戯曲を深く読み込むようになる」と言っていた、
 その世界を体感することができた。

再演ということもあるだろうが、
それぞれの役者の力量が光る。

オベロンとシーシアスの二役に村井国夫、
ティターニアとヒポリタの二役に麻実れい、
このあたりはさすが大物、という感じだが、
若い役者がまたよかった。

パックはチョウ・ソンハ。
「春琴」で見せたエキセントリックな感じとはまったく異なる、
若々しくて楽しくて、いたずらっ子のパックだ。

キャラメルボックスの細見大輔(ライサンダー)、
青年座の石母田史朗(ディミートリアス)、
「歌わせたい男たち」で保健の先生を演じた小山萌子(ヘレナ)、
謝珠栄に師事し、ミュージカルを中心に活躍する宮菜穂子(ハーミア)。

若者たちの恋のお話を、
オーソドックスで美しいセリフ廻しでありながら、
あふれ出る感情は現代的で、
いまどきの私たちにしっかりと届けてくれる。

もう一つ、
この舞台で特筆すべきは、「劇中劇」の成功である。

「真夏の夜の夢」というお話は、
妖精世界のオベロンとティターニア夫婦のいさかいと
人間世界の三角関係・駈け落ち・ストーキングという
二層から成っていて、
一夜、森の中でそれらが交錯しあうのだが、
最後にめでたく3組の人間男女は結婚式を挙げる。

そこで終わりと思いきや、
「結婚式が終わってから初夜の新床までの3時間が長いから、
 お芝居でも見て気を紛らわそう」という趣向で、
劇中劇が始まる。

これが、たるい。通常なら「なくもがな」のタルい芝居。
それなのに……。
面白かったのである。
楽しかったのである。
その芝居を見て野次ったり、笑ったり、涙を流したりする
ヒポリタやらシーシアスやライサンダーと同じように、
私もとっても楽しめた。

それはなぜだろう。
一つは舞台のしつらえだ。
なんと、主たる俳優たちが椅子をもって舞台を降り、
私たち観客に背を向けて、一列目のお客さんと舞台の間に座った。
麻実れいも村井国夫も、振り向いて後ろのお客さんに声なんかかけながら
「これから一緒にお芝居見ましょうよ」っていう感じ。
そのリラックスした雰囲気が、祝祭的な気分を醸し出したのだろう。

もう一つは、役者の力だ。
特に、ボトム役の吉村直。
彼の、芝居のことはすべてに通じているといった懐の深さと
明るくて太い声の大きさは、
見る者すべてを引き込まずにはいられない。
一方で大まじめにシェイクスピア俳優であり、
一方でめっぽうおどけた三枚目。

そして、最後はやはりジョンのコンセプト。
この「劇中劇」が「なぜ」必要なのか。
シェイクスピアが「芝居」に託したあれ・これ・それ。
彼はそこをしっかりつかまえている。

だからこそ、
一番最後にパックが観客に向けていう一言が効果的なのだ。
大道具の舞台裏でくつろぐ衣装も着替えてしまった役者たちを見せて、
その前で言わせる。

芝居は一夜の夢と同じ。
その夢を、楽しんでいただけましたか?
うまく演じられていたら、うれしいです、と。

やってるほうも、見てるほうも、
お芝居って楽しいよ。
「Play(芝居)はPlay(遊び)をしながらやらないとね」
ジョンが築き上げる愛すべき空間が、ここにある。

休憩の20分をはさんで3時間半はかかるので、
かなり疲労困憊のお客さんも多かったようで、
「長すぎる」「昔ふうのつくり」との声も聞かれたけれど、
私は
早口で過ごして2時間半にまとめるよりは、
このオーソドックスかつゆったりとしたリズムの中にできあがった
贅沢な宇宙にたゆたえて
よかったと思っている。

新国立劇場の中劇場にて、6月14日(日)まで。
その後、6月27日(土)、富山市芸術文化ホール。

とにかく3時間半かかるので、
遠方の方、帰りの電車の時刻など、事前に調べていってくださいね。










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Last updated  2009.06.11 09:26:21
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