履歴と感想 : よ

 読書履歴 と 読後感想 ( ※ 作品の記載順と出版順は必ずしも一致していません )

【 よ 】

横山秀夫
・ 陰の季節
・ 動機
・ 半落ち ・・・・・ ★★★★☆
半落ち
「人間50年」 --- 請われて病苦妻を殺した警察官は、死を覚悟していた。
全面的に容疑を認めているが、犯行後2日間の空白については口を割らない「半落ち」状態。
自首,証拠充分 … だが被疑者は頑なに何かを隠している。
男が命より大切に守ろうとするものとは何なのか。
捜査官、検察官、裁判官 … 6人の男たちは事件の“余白”に迫っていった。
感涙の犯罪ミステリー。
警察小説の旗手、初の長篇。
─── 出版社の内容紹介等から引用 ───

「うまいなぁ」 … これが、私の読み終わった時の感想でした。
横山秀夫さんは、元々短編が得意で長編を得意としておられなかったそうです。
その為、得意な短編を繋げる様な構成にしたそうです。
そういう事で、警察官、検察官、新聞記者、弁護士、裁判官、刑務官と、各章ごとに主役として登場していきます。
物語のシーンも警察だけとかではなく、その主人公に見合ったシーンへとに移っていくのですが、こういった展開を見せる作品もめずらしい様に思います。
その際に、警察対検察等の組織の対立する部分と、なぁなぁの部分があって、組織防衛優先の体質を露呈します。
完落ちしないわけをメインに話は進んでいくのではありますが、そういった部分も読み応えがあると思います。
とにかく、作者の力量がかなりでている作品ではないかと思います。
最後のオチについては、なるほど … と思いながらも、やや軽いかな … と思いました。
・ 第三の時効 ・・・・・ ★★★★★
第三の時効
F県警捜査第一課。
一班の朽木、二班の楠見、三班の村瀬。
一筋縄ではいかない強行犯の刑事たちが、覇権を激しく競い合い、難事件に挑む。
非常で独断的な男たちの感動的なドラマを描く本格警察小説。
─── 出版社の内容紹介等から引用 ───

刑事部強行犯代一課をの人間模様を中心に据えた連作短編集です。
各編ごとに主人公が違っていたり、ミステリー的な部分でもバラエティに富んでいますし、かなり密度の濃い小説です。
登場人物の設定が巧く、特に三つの班の各班長のキャラクターがかなり立っています。
ライバル意識むきだしの群像劇には定評のある作者らしく、そういった部分で大いに楽しめました。
・ クライマーズ・ハイ ・・・・・ ★★★★★
クライマーズ・ハイ
男には、乗り越えねばならない山がある。
北関東新聞の記者・悠木は、同僚の安西と谷川岳衝立岩に登る予定だったが、御巣鷹山の日航機墜落事故発生で約束を果たせなくなる。
一方、1人で山に向かったはずの安西は、なぜか歓楽街でクモ膜下出血で倒れ、病院でも意識は戻らぬままであった。
地方新聞を直撃した未曾有の大事故の中、全権デスクとなった悠木は上司と後輩記者の間で翻弄されながら、安西が何をしていたのかを知る――。
1985年、御巣鷹山の日航機事故で運命を翻弄された地元新聞記者たちの濃密な一週間を描いた本格長編小説。
実際に事故を取材した記者時代の体験を生かし、濃密な数日間を描き切った、著者の新境地とも言うべき力作。
─── 出版社の内容紹介等から引用 ───

実際に起こった日航機墜落事故を報道する新聞社の当時の様子と、現在、衝立岩に挑戦している様子とが平行して描かれています。
主人公が、会社内の人間関係の軋轢にに押しつぶされそうになりながら、なんとか自分の思う仕事を全うしようとします。
職務上、色々な選択をせまれれるわけですが、そのさなか、父親と息子の溝等、家族の事、同僚が意識不明になったわけ、事故死した部下について、等が入ってきて、とにかく、テンポがいい。
かなり色々な要素を盛り込んでいるんで、読み応えはかなりのものです。
ただ、登場人物が沢山いるため、こんがらない様にしないといけないのと、若干、主人公の行動に納得できない部分があったのは残念でしたが、気になったのは細かい部分ですので、全体的にはとてもよかった様に思います。
クライマックスは賛否両論あるようですが、私は、昨今ぶつ切りの様な終わり方をする作品が多い中、このような締め方はいいのではないかと思います。
働き盛りのお父さん、それも、息子を持つお父さんにはかなりオススメです。
主人公と一緒になって山に登って、目頭熱くなってください。

題名の 『 クライマーズ・ハイ 』 とは山登りをしている際に恐怖感を感じなくなる様は興奮状態の事をを言います。

最後に筆者のことばを ・・・

若き日、著者は上毛新聞の記者として御巣鷹山の日航機事故の 現場を取材しました。
18年という長い時を経て初めて、その壮絶な体験は、 感動にあふれた壮大な長編小説として結実しました。
それが本作品です。
―― 記録でも記憶でもないものを書くために、18年の歳月が必要だった ── 横山秀夫

・ 真相
・ 出口のない海

米澤穂信
・ 犬はどこだ ・・・・・ ★★★★☆
犬はどこだ
何か自営業を始めようと決めたとき、最初に思い浮かべたのはお好み焼き屋だった。
しかしお好み焼き屋は支障があって叶わなかった。
そこで調査事務所を開いた。
この事務所 “ 紺屋S&R ” が想定している業務内容は、ただ一種類。 犬だ。 犬捜しをするのだ。
それなのに、開業した途端舞い込んだ依頼は、失踪人捜しと古文書の解読。
しかも調査の過程で、このふたつはなぜか微妙にクロスして・・・いったいこの事件の全体像は?
犬捜し専門 ( 希望 ) 、二十五歳の私立探偵・紺屋、最初の事件。
『 さよなら妖精 』 で賞賛を浴びた著者が新境地に挑んだ青春私立探偵小説。
─── 出版社の内容紹介等から引用 ───

こうして 感想を書いていながら言うのもおかしいですが、本書は あらすじ等を知らないまま読まれる事をオススメしたいです。
なぜなら、『 失踪人捜し 』 と 『 古文書の解読 』 、この無関係に思える二つの依頼に関係性があるという部分に主人公たちが気付くのが とんでもなく遅くて、とにかく じれったい。
その部分を知らないまま読んでいれば、それ程 じれったくは感じなかったと思うのですが・・・。
丁寧に調査しているのは十分わかるのですが、さすがに テンポがいいとは言い難く、間延びした印象があります。
それでも、キャラクターの面白さのおかげで、かなり救われていて、なによりも 物語の締めくくり方にインパクトがありました。
ネタバレになるので、書けませんが、予想した結末と少し違って・・・。
シリーズ化を期待しつつも、2作目は平凡な作品になりはしないかと、心配もしてしまう本書。 ちょっとばかし オススメです。




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