私見 : 1



2003年 12月 2日 記述

各文学賞の解説というか、説明を書いたのですが、調べている時に思ったことを、あくまでも 私見 として書きます。

以前から感じていた事ですが、文学賞は 主催者側の影響 を強く受けているものが多いです。
中には、理想高く運営されているものもあるのでしょうが、そうでないものがあるのは事実です。
また、創設時はそうではないのだが、今となっては 商業主義 となってしまってるものも、あるように思います。
商業主義が悪いとはいいませんし、むしろ、『これはいい本だよ』って事で、結果として本売っているのですから当然なのでしょう。
ですが、一般的に権威があるといわれている文学賞で、そういう部分があまりにもみえているというのはどうかと思います。

一般公募の賞はその点、未発表作品で優劣をつけるのですから、まだいいですが、発売済みのものを対象とした賞は、選考作品と受賞作品を見ていると、主催者側の都合というか思惑みたいなものを、勘ぐりたくなる場合があります。
年別に書いてるページには、それぞれ、大賞や、受賞作しか書いてませんので、わかりにくいかもしれませんが、その賞の候補作を見ているとはっきりとその辺を感じます。

また、大賞や、受賞についても、○○という作家は△△賞はぜったい獲れなかったり、□□が▽▽賞とったら☆☆賞は獲れないとかあるみたいです。

各賞の選考委員会の発言を、聞いていると、適切な選考委員なのだろうか、と思うことがあります。
特に直木賞に多いのですが、他にも、日本ホラー小説大賞や横溝正史賞 ( 現・横溝正史ミステリ大賞 ) に多い様に思います。

近年の、直木賞での事を、いくつかあげてみます。
(賞の発表と、各選考委員の選評が掲載される『オール讀物』は、毎度毎度物議をかもしております)

第129回 : 手紙 / 東野圭吾

選考委員の 渡辺淳一氏 の、コメントには開いた口が塞がりませんでした。

なによりも不満だったのは、『手紙』というタイトルを付けながら、殺人を犯した兄からの手紙が、ほのぼのとしすぎて実感に欠ける事である。 私の小説の愛読者にSという死刑囚がいるが、彼からの便りは、「ひたすら女とやりたい」と一点に尽きる。 小説を書く以上は、この程度のリアリティは確保しておくべきだろう。

とある直木賞をメインでHPしている方もおっしゃってましたが、「ひたすら女とやりたい」という手紙ばかり書くことがリアリティなのでしょうか?
私も男なんで、そういうのもわからないではないですが、自分が事件を犯して、刑務所にいて、迷惑かけている弟にあてた手紙が「やりたい」ばかりだなんて、それこそありえないと思います。
『手紙』をしっかりと読めばそんなこと位、わかります。
この作品を読んで、涙した私はかなり怒りをおぼえました。
そんなリアリティならいりません。

第128回 : 半落ち / 横山秀夫

結果、落選したのですが、その選評で、登場人物の行動が、現実的ではない、と評価され、要はミステリーとしては欠点がある、との事です。
またの直木賞の選評のせいで、作品のミスに気付かず、高い評価を与えるミステリー界も悪いというような事になってるようです。
横山氏は再調査し、「あり得ない」という意見こそ誤りであると確信を得て、直木賞の主催者である日本文学振興会に「できないと断ずる根拠を示してほしい」と申し入れたが、明確な回答や反応は一切ないそうです。
『 落ちに欠陥がある 』 とされことによって、ミステリー界やミステリー読者たちの立場を悪くなることを懸念したがゆえの申し入れだったそうです。
横山氏は、以後一切直木賞とは関わりを断つことを、2003年3月31日の新聞のインタビューで宣言しています。

いくつか気になった選考委員のコメントをあげてみます。

北方謙三氏
関係の団体に問い合わせて見解を得、主人公の警部の動きには現実性がないことを、選考の途中で報告することになった。 妻を殺しながら人を助けようとする、主人公の生命に対する考えに抵抗が多かったのだという気がする。

林真理子氏
途中から結末が見えてしまう。 この作品は落ちに欠陥があることが他の委員の指摘でわかった。

五木寛之氏
後半の予定調和的な結果には、大いに失望した。 文章や表現の古めかしさは、一考の余地があるだろう。

阿刀田高氏
推理小説としては謎が浅い。 ヒューマニズムを訴える点では盛りあがりに欠け、加えて現実には不可能な設定があるとなると、リアリティーに欠け困ってしまう。

渡辺淳一氏
最大の弱点は、中心人物ともいうべき、妻殺しの警官が、つくられた人形のように存在感がなく、魅力に欠けることである。 結末はいかにもきれいごとすぎてリアリティに欠ける。 すべてがお話づくりのためのお話で、人間の本質を探り描こうとする姿勢が見られず、いわゆる推理小説の軽さだけが目立つ。

言いたい事、言いっぱなしの姿勢はどうにかならんもんでしょうか。

近いところの2回を書いたのですが、読まれた方はどう思いわれるでしょうか?
第121回の 天童荒太さんの『永遠の仔』 の時もかなりひどくて、作品の良し悪しよりも、作品の長さを酷評し否定した渡辺淳一氏には、あきれかえりました。
ちゃんと、読んでるんでしょうか?

その他にもあげたらきりがないので、このへんにしておきますが、選考委員の質に問題はないのでしょうか?

応募方式の賞であるなら、酷評され、その酷評を公表されるのは、いたしかたないかもしれません。
ですが、応募したわけでもなく、勝手に選考しておきながら、こきおろす。
それも、あまりに一方的な、論じ方です。
すでに、市場に出ているものなので、賞の発表時には、一般の読者も読み終わっている事もあります。
作者はもちろんのこと、その読者にさえ、不快な思いをさせる無配慮な発言は、どうなのでしょうか?

長々となりましたが、あくまでも、これは私の私見です。



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