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履歴と感想 : い
読書履歴 と 読後感想 ( ※ 作品の記載順と出版順は必ずしも一致していません )
【 い 】
五十嵐貴久
・ リカ
伊坂幸太郎
・ ラッシュライフ
・・・・・ ★★★★★
解体された神様 ・・・ 鉢合わせの泥棒 ・・・ 歩き出した轢死体 ・・・
拳銃を拾った失業者 ・・・ 拝金主義の富豪 ・・・
バラバラに進む五つのピースが、最後の最後で一枚の騙し絵に組み上がる。
─── 出版社の内容紹介等から引用 ───
この作品はおもしろい ・・・ そして、うまい。
複数のエピソードが 『 ある一点で集約される 』 というのはよくありますが、本書は、言うならば 『 一本の線でつながる 』 感じでしょうか ・・・。
この様な構成の作品は、他にはありそうで無いように思いますし、あるとしても、ここまで徹底してやり通した作品はないのではないでしょうか。
平行して書かれているエピソードに、それぞれどの様な関連があるのかが、中盤を過ぎたあたりから、徐々にわかってきて、ひとつひとつパズルがはまっていくようです。
さすがに、終盤になると、その辺の事はわかった上で読むことになるのですが、わかった上でも、最後の最後、ああいう形で締め括るのは、お約束とはいえ、納得です。
細かい事を言えば、引っかかる所がないではありませんし、物語自体にはミステリー的な要素もありません。
ですが気楽に読める本ですので、気になった方は、ぜひお手にとって下さい。
全てがわかった上で、もう一度読んでみるのもいいかもしれない ・・・ と思った作品でした。
こうして感想を書いてながら言うのもおかしな話ですが、本書は予備知識なしで読むことをお薦めいたします。
・ 陽気なギャングが地球を回す
・・・・・ ★★★★★
確実に他人の嘘を見抜き、市役所で働くリーダー成瀬、演説の達人で喫茶店主の響野、天才スリである20歳の青年久遠、正確な体内時計の持ち主のシングルマザー雪子たちの正体は銀行強盗。
現金輸送車などの襲撃には 「 ロマンがない 」 とうそぶく彼らの手口は、窓口カウンターまで最小限の変装で近づき 『 警報装置を使わせず、金を出させて、逃げる 』 というシンプルなものだ。
しかしある時、横浜の銀行を襲撃した彼らは、まんまと4千万円をせしめたものの、逃走中に他の車と接触事故を起こしてしまう。
しかも、その車には、同じ日に現金輸送車を襲撃した別の強盗団が乗っており、『 売上 』 ごと車を横取りされる。
奪還に動くや、仲間の息子は虐め事件に巻き込まれ、死体は出現、札付きのワルまで登場して、トラブルは連鎖していく ・・・。
特異な才能を持つ4人の男女が、思わぬ事態に巻きこまれていく 痛快クライム・ノベル。
─── 出版社の内容紹介等から引用 ───
本作は4人組の銀行強盗が主役のクライムノベルではあるのですが、さすが伊坂幸太郎さんらしく、明るく、軽快な作品です。
この作者の他の作品にも言える事なのですが、会話がいいです。
それと、伏線の張り方が凄くて、ラストに 『 ビシッ! 』 決まります。
ただ、逆に言うと、伏線が張られすぎて、あまりにムダがない為に、最後のキメが途中で判ってしまいました。
ですから、深読みせず、素直に読み進めていく方が楽しめます。
ネタバレになるおそれがありますから、内容には触れませんが、例え、最後のキメに気が付いても、面白い事には変わりませんからオススメです。
・ 重力ピエロ
・・・・・ ★★★★★
連続放火事件の現場に残された謎のグラフィティアート。
無意味な言葉の羅列に見える落書きは一体何を意味するのか?
─── 出版社の内容紹介等から引用 ───
連続放火事件と、現場近くのグラフィティーアートとの関連性。
出生の秘密のある弟と、父・母・兄 の4人の家族模様。
実は重いテーマを扱った作品なのですが、かなり軽やかな文体で、読みやすい作品です。
ユーモアがあり、テンポの良い展開で、何といっても会話の面白さが印象深いです。
ただ、ミステリーとしては、真相や、犯人の特定が早い段階でできてしまったりと、物足りない様にも思いました。
でも、青春小説的な読み方をするならば、問題なし。
『 カッコイイ 』 だとか 『 洒落た 』 等という形容詞で言い表されている作品・・・。
「 俺たち兄弟は最強じゃないか 」 この台詞、ちょっと、気に入ってます。
・ アヒルと鴨のコインロッカー
・・・・・ ★★★★★
「 一緒に本屋を襲わないか 」 大学入学のため引越してきた途端、悪魔めいた長身の美青年から書店強盗を持ち掛けられた僕。
標的は、たった一冊の広辞苑。
四散した断片が描き出す物語の全体像とは? 清冽なミステリ。
─── 出版社の内容紹介等から引用 ───
現在と過去とが交互書かれていて、過去の出来事と現在とが どの様に関連してくるのか・・・という事をメインに物語りは進行して行きます。
ストーリーについては、ネタバレを考慮すると、ほとんど触れる事ができないのですが、伏線が幾重にも張ってあるので、それらが分かった時には 『 なるほど 』 もしくは、『 やられた 』 という思いがします。
主人公は 『 巻き込まれ型のミステリー 』 にありがちな、押しの弱い 御人好しの青年ではありますが、脇役のキャラクターは個性的かつ魅力的です。
会話の軽快さや、ストーリーのテンポの良さ、物語の読みやすさは、毎度の事ながら伊坂幸太郎さんの作品らしく ・・・。
ただ他の作品と違って、読後には切なさや悲しさが残ってしまいましたが、重くならず、悲しさが通り過ぎていった様な感じで少し不思議な感想を持ちました。
石田衣良
・ 池袋ウエストゲートパーク
・・・・・ ★★★★☆
・ 少年計数機 ~ IWGP・2
・・・・・ ★★★★☆
自分が誰なのか確認するために、まわりのすべてを数え続ける少年・ヒロキ。
その笑顔は十歳にして一切の他者を拒絶していた。
マコトは複雑に絡んだ誘拐事件に巻きこまれ、Gボーイズと共に、池袋の灰色ゾーンを駆ける。
─── 出版社の内容紹介等から引用 ───
『 池袋ウェストゲートパーク 』 の続編で、連作短編集です。
前作同様、一匹狼を通す果物屋のマコトが、トラブルを解消していきます。
二作目ということもあって、一作目に比べると、スピード感やインパクトは薄れていますが、人間ドラマ寄りになっていて、読み応えが増しています。
・ 波の上の魔術師
・ 赤と黒 ~ IWGP外伝
・ 骨音 ~ IWGP・3
・ 電子の星 ~ IWGP・4
・ うつくしいこども
・ 娼年
・・・・・ ★★★☆☆
高級デートクラブで男娼として働き始めた20歳の大学生リョウ。
夜ごと彼を求める女たちの美しさと妖しさ、それぞれの秘密。
そして一線を越えた時に見えてきたものとは? 魂の渇望と性愛の深奥。
二十歳の夏の、光と影を描く物語。
─── 出版社の内容紹介等から引用 ───
高級デートクラブの男娼が主人公という事もあって、性的描写がかなりあります。
そのわりには、不思議と 『 いやらしさ 』 は抑えられている感じがしていて、特異な性的趣向の登場人物もいるのですが、そういう事も普通の事として扱われています。
主人公の性格設定によるところもあるのでしょうが、懐の深い作品という印象があります。
終盤での主人公の女友達の行動について、その行動自体は、普通の感覚で言えば、なんらおかしくなく、ともすれば当然かもしれません。
ですが、何か もやもやした気持ちで読んでしまいました。
・ 4TEEN
・・・・・ ★★★★★
銀座から地下鉄で10分、長屋ともんじゃ焼きと超高層マンションが調和して共存する町・月島。
180センチ、100キロの巨漢、ダイ。
ウェルナー症候群という難病のナオト。
勉強が得意なジュン。
かっこいいことを言ってもどこかイケてない、テツロー。
月島中学に通う、14歳 中学二年生の4人組が出会った8つの瑞々しい物語。
この町でぼくたちは恋をし、傷つき、死と出会い、いたわり合い、そして大人になっていく。
第129回直木賞受賞作。
─── 出版社の内容紹介等から引用 ───
14歳の中学生という、子供でもなく、大人でもない、その境界線上の微妙な年代を、大人の視点ではなく、14歳の視点で描かれています。
キワドイ内容ともとれる話もありますんで、賛否両論あるかもしれません。
家庭内暴力 ・ ドメスティックバイオレンス ・ 拒食症 ・ 生きるということ ・ 死ぬということ ・ 性について … 重くなりがちな話であるのに、軽快な印象。
こういった作品が書けるのは作者の作風でもあるのでしょうが、作者の上手さを感じます。
『 4TEEN 』 という題名は、『 14歳 』 という意味はもちろんのこと、『 4人の少年 』 という意味もあるのでしょう。
この主人公達4人がとてもよく、4人の少年が自転車に乗って走り回る姿がとても印象深いです。
・ 反自殺クラブ ~ IWGP・5
・ アキハバラ@DEEP
伊島りすと
・ JULIET
・・・・・ ★☆☆☆☆
世間から逃げるうに、娘と息子を連れ、亡くなった妻との思い出の地である南の島にある、建設途中(建設中断)のゴルフ場の管理人となった父親。
貝を貝殻にする為に、中身を取り出す『魂抜け』で、貝から中身が落ちるところは決して見てはいけないのだが…。
─── 出版社の内容紹介等から引用 ───
一応ホラーとなっていますが、少しグロテスクな描写があるくらいで、全く怖さがないです。
ミステリーではないので、しいていうなら、ファンタジー系でしょうか?
導入部から、掴みが弱く、話しの展開も遅く、ダラダラとしていおり、家族3人のそれぞれの行動自体も、府に落ちない気がしました。
いいところもあったんですが、一言で言うと 『 スカスカ 』 でしょうか・・・。
私は、ハードカバー版を読んだのですが、どうやら、文庫本になる際に、かなりの加筆・修正がされているらしく、話の構成や、ラストが違うそうです。
ホラーとしても、ファンタジーとしても、ミステリーとしても、かなりいいネタ使ってるんですが、料理の仕方が良くない様に感じましたので、文庫本での、加筆・修正は良かったのかもしれませんが、どうせなら、受賞後、出版されるまでに、していただきたかった様に思います。
それにしても、出版上、諸問題がある場合は、しょうがないですし、話の過程において、僅かな修正ならいいですが、大幅な修正や、ラストが違う等にいたっては、どうなんでしょう。
石持浅海
・ 月の扉
乾くるみ
・ イニシエーション・ラブ
・・・・・ ★★★★☆
大学四年の僕 ( たっくん ) が彼女 ( マユ ) に出会ったのは代打出場の合コンの席。
やがてふたりはつき合うようになり、夏休み、クリスマス、学生時代最後の年をともに過ごした。
マユのために東京の大企業を蹴って地元静岡の会社に就職したたっくん。
ところがいきなり東京勤務を命じられてしまう。
週末だけの長距離恋愛になってしまい、いつしかふたりに隙間が生じていって・・・。
目次から仕掛けられた大胆な罠、全編にわたる絶妙な伏線、そして最後に明かされる真相…。
80’sのほろ苦くてくすぐったい恋愛ドラマはそこですべてがくつがえり、2度目にはまったく違った物語が見えてくる…。
─── 出版社の内容紹介等から引用 ───
『 A面 』 『 B面 』 の二部構成になっている この作品は、 基本的には “ 恋愛小説 ” かと思いますが、根底には大きな仕掛けがあります。
その仕掛けの為に、作者は、かなり きわどい綱渡りをしていて、ヒントを排除したのでは読者に対してフェアでなく、かといってヒントを出し過ぎては この仕掛けは崩壊してしまう。
私は、『 何か 仕掛けが あるらしい 』 と知った上で読み始めたからか、物語の終盤を待たずに 気付いてしまいましたが、気付かないまま最終ページまで読めた人こそ、この作品を面白く思える様な気がします。
そういった事も全て含め、出来事を頭の中で整理し、振り返ってみると、この物語は やはり “ 恋愛小説 ” ではないかと・・・。
ただ、いささか 毒気が強いのですが、それもまた 面白さの一端ですから・・・。
今邑彩
・ i ( アイ )
・ そして誰もいなくなる
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