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履歴と感想 : し
読書履歴 と 読後感想 ( ※ 作品の記載順と出版順は必ずしも一致していません )
【 し 】
重松清
・ 疾走
・・・・・ ★☆☆☆☆
犯罪へとひた走る14歳の孤独な魂を描いて読む者を圧倒する現代の黙示録。
一家離散、いじめ、暴力、セックス、バブル崩壊の爪痕、殺人……。
14歳の孤独な魂にとって、この世に安息の地はあるのか……。
─── 出版社の内容紹介等から引用 ───
この作品、書評や読まれた方の感想を読んでいると、かなり褒めている方が多く、期待をしながら読み始めました。
悪くはないと思いますが、あえて私は 『 好きじゃない 』 とさせていただきます。
とにかく 重く 暗い作品で、私が今までに読んだ作品の中でも、屈指の暗さです。
あまりの暗さに、途中で読むのをやめようかと思ったほどですが 『 物語の終わりには感動が待っている 』 と、ある方の感想にあった為、なんとか読み終われました。
ですが、最後の感動の部分に関しても 『 本当にそれでいいのか? 』 って思いがしています。
ネタバレになるので、詳しく書くのは差控えますが、生々しい話の最後が妙に奇麗事で締め括った気がしてます。
そういった部分も引っ掛かったのではありますが、どうしても、ある部分に納得できずにいます。
これもネタバレになるのですが、こちらはあえて書きたいと思います。
作品全体を通して、ある人物からの視点での二人称で語られる為、読みにくさがありす。
そのある意味、 『 神の視点 』 とでもいうべき視点の人物が、誰であるかということは、読み始めてその人物が登場する頃にはわかることで、その事によって、最後のある部分については想像がついてしまいます。
また、その人物が、物語中では、言葉使いもやさしく、牧歌的で、素朴な感じで、感情を表に出さないような描かれ方をしているのに関わらず、神の視点から主人公を語る際には、『 おまえは・・・だった 』 『 おまえは・・・ではない 』 と、『 おまえ 』 という呼び方。
このギャップが気になってしまいました。
私の読解力がないだけなのかもしれませんが、私にはこのギャップが効果的であった様には思えませんでした。
読み応えがあり、圧倒的な勢いを感じる作品ではありますが、あまり人に薦めにくい作品の様に思っています。
最後に、とても印象に残ってしまったフレーズをひとつ ・・・ 『 穴ぼこのような目 』
雫井脩介
・ 虚貌
・ 火の粉
・・・・・ ★★★★★
自白した被告人へ無罪判決を下した元裁判官に、今、火の粉が降りかかる。
あの男は殺人鬼だったのか?
梶間勲の隣家に、かつて無罪判決を下した男・武内真伍が越してきた…。
溢れんばかりの善意で、梶間家の人々の心を掴む武内に隠された本性とは?
手に汗握る犯罪小説。
─── 出版社の内容紹介等から引用 ───
この本は面白いです。
読み始めたら止められず、一気に読んでしまうなんて、久し振りでした。
『 怖い話 』 なんですが、直接的な怖さは少なく、生理的な嫌悪感を強烈に感じます。
ストーリー展開にひねりは少ないのですが、逆に言うと、直球勝負で、圧倒的な不気味さでもって読み手を、グイグイ引っ張って行きます。
介護問題を抱えながらも、梶間家は平穏な生活を送っていたというのに、隣に武内が越して来たことから徐々に小さな異変が起き始めます。
これは、まさに火の粉が降り掛かる状態なのでしょうけど、その火の粉を、火の粉だと気付くのが遅れ、また、そうとは思いたくない者もいて、読者は歯痒い思いで読み進めることになります。
嫁である雪見は比較的早くに異変に気付くのですが、確証が無い為、疑心暗鬼になりつつも、なんとかしようとする姿はけなげであり、応援してしまいます。
泣けるようには書いてなかったのかもしれませんが、最後の最後、思わず泣けてきました。
一見、ありがちのストーリーに思われがちですが、打撲痕の件など、謎解き要素もあって、元裁判官の勲、妻の尋恵、嫁の雪見と、複数の視点から書かれている事もこの物語には効果的でしたし、読みやすい文体という事もいいです。
ミステリーであり、サスペンスであり、ホラーである本書。
かなり オススメです。
・ 犯人に告ぐ
・・・・・ ★★★☆☆
犯人よ、今夜は震えて眠れ ・・・
連続児童殺人事件、姿見えぬ犯人に、警察はテレビ局と手を組んだ。
史上初の劇場型捜査が始まる!
─── 出版社の内容紹介等から引用 ───
現実にはありえないと思われますが、『 劇場型捜査 』 という発想は面白いと思います。
犯人を追い詰める外側の部分と、警察内部の内側の部分とがテンポよく書かれています。
読みやすい文体でもありますので、映像が頭に浮かぶ様な感覚は、野沢尚さんの作品を彷彿とさせます。
比較的、面白く読む事ができましたが、最後があっけなかった印象があり、もう一工夫あれば もっといい作品になった様に思います。
これは、前作の 『 火の粉 』 を読んだ後でしたので、過剰な期待をしてしまったのも、その様な感想に至った要因かと思います。
柴田よしき
・ 象牙色の眠り
・ 風情の棲む場所
志水辰夫
・ 飢えて狼
・ 裂けて海峡
・ 背いて故郷
・ 行きずりの街
首藤瓜於
・ 脳男
殊能将之
・ ハサミ男
小路幸也
・ HEARTBEAT
・・・・・ ★☆☆☆☆
優等生の委員長と不良少女の淡い恋。
できすぎたシチュエーションかもしれないけれど、すべてはそこから始まった。
彼女が自力で自分の人生を立て直すことができたなら、十年後、あるものを渡そう ─ そして十年が過ぎ、約束の日がやってきた。
しかし彼女は姿を見せず、代わりに彼女の夫と名乗る人物が現われる。
彼女は三年前から行方がわからなくなっていた。
期待の俊英が放つ、約束と再会の物語
─── 出版社の内容紹介等から引用 ───
なんとも コメントに困る作品なのですが、読み始めてしばらくすると、なんともいえない居心地が悪さというか、座りの悪るさというか、違和感を感じまして、そのまま物語は進んでいきます。
どこかがずれているのはすぐにわかるのですが、それが時間軸なのか、それとも そういった以外のものなのか・・・。
そんな事を考えながら読んでいて、ある時点で 気が付いてしまいます。
違和感の正体 ・・・ 物語の根幹に関わる大事な部分について・・・。
この手の作品を読みなれている方なら かなり早い段階でわかると思います。
ネタばれになるので、あまり書けませんが、ビデオテープに写った女性の幽霊の件は、作者が意図した事とは逆の効果をあげてしまった様にしか思えません。
原稿用紙の枚数制限でもあったのか、終盤、むりやり収束させたかのような展開にも 首を傾げてしまいまいました。
それと、どうしても せつない物語にしたかったのかとも思いますが、せつなさを 押し売りされたような感じでしたし、もう少しなんとかならなかったのでしょうか・・・。
不知火京介
・ マッチメイク
・・・・・ ☆☆☆☆☆
大手プロレス団体のスターが試合中に死んだ。
自殺か … 他殺か … 『 最強 』 を夢見る新米レスラー・山田聡は、真相に迫れるか。
第49回江戸川乱歩賞受賞作。
─── 出版社の内容紹介等から引用 ───
プロレス・ファン、格闘技ファンなら楽しめる本 … と、紹介される事が多いこの本ですが、ファンである私は、かなりの不満です。
登場人物の造形やエピソードが、あまりにも実在する人物にそっくりで、作者の作家としての力量が感じられません。
ケーフェイ、抜き打ちアングル、ミックスジュース、セメント、ブロードウェイ等、プロレスの影の部分の業界用語が多数でてきます。
元・新日本プロレスのレフェリーである、ミスター高橋が書いた 『 流血の魔術 最強の演技 ~ すべてのプロレスはショーである ~ 』 がかなりのネタ元になっているのはまちがいないと思われます。
キャラクター設定、作品プロット、作品背景の小道具、どれも独創性が感じられず、ほとんど、暴露本の様な本書が、江戸川乱歩賞を受賞した事は、私の個人的な私見ながら、理解できません。
新堂冬樹
・ 血塗られた神話
・ 闇の貴族
・ ろくでなし
・ 鬼子
・ 溝鼠
・ 三億を護れ!
・・・・・ ★★★★☆
うだつが上がらない最低ダメダメ男に3億円が当たったからさあ大変!
詐欺師、不倫妻、ホスト、麗しの婚約者、ヤクザ・・・強烈キャラが入り乱れての大乱戦。
奪うか? 護るか? 宝くじの三億円は誰の手に!
底なしのバカ三億円長者VS非情の詐欺師軍団の壮絶な闘争。
『 週刊 アサヒ芸能 』 連載を単行本化。
─── 出版社の内容紹介等から引用 ───
新堂冬樹さんといえば、過激な暴力と性的表現の多い作品といった印象がありますが、そういった部分は かなり控え目で ( とはいえ、無いワケではありませんが ) 喜劇の様な ドタバタ劇になってます。
最後までテンポ良く話は進みますので、細かい部分は気にせず、主人公のバカっぷりを楽しみながら 一気に読んでしまいました。
それにしても、主人公のバカさ加減は 上記内容紹介にもありますように “ 底なし ” です。
読者を選ぶかもしれませんが、私は面白く読む事ができました。
新野剛志
・ 八月のマルクス
真保裕一
・ 連鎖
・ 取引
・ 震源
・ ホワイトアウト
・・・・・ ★★★★☆
・ 朽ちた樹木の下で
・ 奪取
・・・・・ ★★★★★ ( + ★ )
偽札造り …・・・ それは究極のだましのゲーム。
友人がヤクザの街金にはめられて作った借金を返すため、偽札作りを実行しようとする主人公。
パソコンや機械に詳しい彼ならではのアイデアで、大金入手まであと一歩と迫ったが…。
コンピュータ社会の裏をつき、偽札造りに立ち向かう男たちの友情と闘いを、ユーモアあふれる筆緻で描いた傑作長編。
日本推理作家協会賞や山本周五郎賞等を受賞。
─── 出版社の内容紹介等から引用 ───
偽札造りを中心に据えた話ではあるのですが、派手なシーンがあったり、泣けてくるシーンがあったりで、山場が数回あって、よく練られた構成だと思います。
あまり予備知識無しに読まれる方がいいように思います。
友情と復讐 ・・・ 一言でいうと、そういった話です。
この作者の他の作品同様、関連する事については、よく調べられていますので、お札に関する知識はかなり得られるかと思います。
私は、この本を2千円札発行の頃に読んだもんですから、この2千円札の偽造防止策に感心したものです。
とにかく面白いですので、オススメです。
・ 奇跡の人
・ ストロボ
・ 防壁
・ ボ-ダ-ライン
・ ダイスをころがせ
・・・・・ ★★★★★
事業失敗の責任を押しつけられ嫌気がさし、商社を辞した駒井健一郎。
元新聞記者で衆院選に立候補する、健一郎の親友にして恋敵の天知達彦。
2人は理想とある目的とを胸にコンビを組んだ。
軽やかに、爽やかに描く選挙青春小説。
『 34才。 青春はまだ終わっちゃいない 』
─── 出版社の内容紹介等から引用 ───
この作品は、全くの素人が、選挙に出馬する物語なんですが、作者自ら巻末に記載してます様に、難しい本ではありません。
選挙がテーマなだけに、重い作品を想像しがちですが、『 奪取 』 の様な軽快でいて、熱い作品です。
悪質な選挙妨害、出馬した天地の祖父が知事だった頃の収賄疑惑、大型商業施設建設予定地に関する疑惑、等、ミステリー小説らしい部分もありながら、理想高く掲げる天地と、再就職先をさがし家庭崩壊の危機の主人公と、ひとり、またひとりと駆けつける仲間達、それと、各自それぞれ、若い頃の恋愛感情が尾をひいていたりして、読みどころ満載です。
投票日が近付いてきて、選挙が徐々に盛り上がりだすと、読んでる自分もかなりのめり込んでしまいました。
天地と、主人公と一緒になって走り、投票日を迎えたといっても言い過ぎではありません。
私自身が、登場人物達とほぼ同い年という事もあって、わかるなぁ、と思わせる部分が多く、ストーリーのテンポもよく、本当に面白かったです。
ただ、ひとつ難点をあげるならば、沢山の要素を入れすぎではないかと思われた点です。
もう少しシンプルにしても十分面白かったと思います。
選挙について、自分がいかに知らなかったのか思い知らされましたが、選挙の仕組みがよくわかりました。
それと、選挙に関して、色々と考えさせられた本でした。
ただの 『 選挙小説 』 だと思ったら大間違いです。
・ 発火点
・・・・・ ★★☆☆☆
12歳のあの日、父が殺され、少年時代の夏が終わった。
父の友人だった人が、なぜ殺人を犯したのか。
どうして、周りは 「 父親を殺されたかわいそうな子 」 としか自分を見ないのか。
事件以降の9年間、殺人の理由がわからぬ不安と、犯罪被害者として受ける好奇の視線から逃れるため、心を閉ざして生きてきた主人公、杉本敦也。
2人の女性との恋愛を通じて大人へと成長し、あらためて過去の出来事を見つめなおした敦也が得た真実とは…。
魂の根源に迫る衝撃サスペンス。
─── 出版社の内容紹介等から引用 ───
読み終わった方にはわかるんですが、ミステリー小説としながら、他の要素も多分に含んだ作品です。
プロットとしてはいいですし、展開としても悪くないんですが、いまいちキレがない … と感じました。
後半は事件の真相に向かって、一気に進むのでいいんですが、前半、主人公の歪んでしまった部分を書くのに、ページを使いすぎていて、かなり長く感じます。
物語の根幹に殺人事件があって、主人公が犯罪被害者ということもあって、当然なのでしょうけど、とにかく暗いです。
おまけに、主人公の気持ちや行動に同調できず、読むのがきつかったです。
2人の女性とつきあい方等は、主人公の背景がいくらそうであっても、あまりに自分勝手な気がしました。
作者はあえて、そうしたのでしょうけど、事の真相を解明しておきながら煙に巻くようなところや、最後の最後の締めくくりを、読者に委ねているところは、はっきりと明確にした方が良かったのではないでしょうか。
悪くは無いのですが、読後感があまりよくなかったです。
・ 誘拐の果実
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