伝説の相場師・ギャン師匠と共に

伝説の相場師・ギャン師匠と共に

テープの使い方、テープに騙されるな



テープ(※)は確かに市場のトレンドを示すものの、実際には小さな変化や急速な逆転
が数多くあって、普通の人には大きなトレンドが転換したのか、あるいは小さな変化が
数時間、もしくは数日、数週間続いた後で大きなトレンドがまた再開されるのかを判断
することは難しい。

トレーダーがテープを見に証券会社の店頭に出かける(※)と、2~3人から十数人の
トレーダーがチッカーの周りに立って、時々話し合ったり、自分の意見を言ったり、別
の銘柄について見聞きしたことを披露したりしているのを目にする。また、ニュース・
チッカーが伝えるゴシップやウォール街の噂話、立会場から洩れてくる手口情報などに
も耳を傾けざるをえなくなる。こうした雑音の中で株価の動きを云々できるほど集中で
きる人は100万人に一人もあるまい。

また例えその人が良い株をみつけることができて売買を始めても、チッカーの傍に立っ
ている誰かの言っていることに動かされて、結局時機を逸した行動をとってしまうはめ
になるだろう。

どんなに意志力が強くとも、意識するか否かに関わらず、人間は見たり聞いたりした
ことに左右されるものであり、その行動もそれによって影響を受ける
ものである。


(※注)
チッカーとは株式等の相場表示器。取引所の立会場から証券会社の店頭へ時々刻々と
価格などを伝達する装置。この装置から打ち出される記録がチッカー・テープ。
ネットトレード全盛の現代では、証券会社各社が株価時価表示システムを提供している
が、当時の証券会社店頭での噂話は、今では様々なウェブ上におけるコメントと同様と
考えることができる。

テープを見ずに、あるいは、始終見ていなくともテープが読めることが必要

意味のある相場の動き、たとえば長期の上下動などが始まったり、またはアキュミュレ
ーションやディストリビューションが完了するまでには、数週間または数ヶ月が必要で
ある。大きな動きが始まった後でも1日か2日は売買するに充分な時間がある。従って、
株の動きを見て取るにはテープを毎日または毎時間眺める必要はない。その日のマーケ
ットが終わってから時間をかけて見た方がよい。

(中略)

チッカーに毎日張り付いている人は、 大きな動きの始まる前にそれをどうやって見極め
ることができるのだろうか。実は、それはできない相談なのである。
人は日に1度か
2度はチッカーに騙されるものである。アキュミュレーションの進行中に大量の株を買う
には時間を要するし、高値で大量の株のディストリビューションを行なうにも時間がかかる。
大きな動きには1日、1週、1ヶ月でも足りない。アキュミュレーションやディストリビュー
ションが完成するには、数ヶ月または1年を要する。関心のある銘柄のチャートを作って
おくと、このプロセスの進行中に大きな動きが始まったとき、 毎日チッカーを眺めている
よりもはるかに良い判断ができる
ものである。

●テープに騙されるな

毎日テープを見ている人は自分の願望や恐れの影響を受ける 。しかし、それはどうする
こともできない。例えば、市場が終日強含みで、その人の注目する銘柄も次第に値を
上げていたが、2時半ごろ急に相場が崩れ始めたとする。15分間の下げで人気株は高値
から軒並み1ポイント下げてしまう。その後も持ち直すことなく、3時の大引け5分前
までに更に1ポイント下がる。出来高が大きいので何かおかしいと判断し大引けで売って
しまう。ところが、翌朝は0.5から1ポイント高で寄り付く。なぜか。前日の引け前の
30分に見られた売りは利喰いに過ぎないのに、恐れをなしたトレーダーは全員翌日に
建玉を持ち越さずに売りに出てしまった。その結果、翌朝の株の売りは限られていて、
結局のところ前日に見られた反落はトレンドを変えるほどのことはなかったのである。

始終チッカーを見ている人の冒す大きな過ちの一つは、 頻繁に取引し過ぎる ことである。

(中略)

トレーダーが見落としやすい重要な点がもう一つある。売買を重ねるほどに、 判断が
変わることが増える
ことである。従って、誤りを冒す可能性も高くなってくる。強気また
は弱気の相場では、重要なトレンドとは逆の動きがしばしば起こり、そのような動きを
利用して大きく儲けることもできるが、毎日売買しているとこの動きをうまく捉えること
ができなくなる。事実に基づく充分な理由ができるまで待ってから売買するべきである。
単なる期待や不安から売買を重ねると、損をするだけでなく本当の機会が訪れ
てもそれを見逃してしまう
ことになる。相場の主要なトレンドから見ればその日その日
の動きはほとんど意味を持たないものだ。

(中略)

市場が上昇または下降の一方向に動く機関が長ければ長いほど、最終局面の買いや売り
も増えてくる。相場の上下に連れて期待や不安も増してくるからであり、 多くの人を売買に
誘うのは健全な判断ではなく期待や不安
である。


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