GOlaW(裏口)

2005/06/09
XML
 ラピスラズリのような、目の覚める“力”の輝き。
 “力”の輝きに盲い、その本質を見失う主人公。

 その一方で高柳はその下にある“本当の美しさ”を見出す。

 …守りたい。帰るべき場所の美しさを見出した今こそ。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 前回と今回、黒島男の撮り方が全く異なることに驚きました。
 前回はその表情の歪み方を徹底的に描き出していましたが、今回はその子供のような盲信を描くことに集中していましたよね。

 ファンタジーやSFに『無垢なる邪悪』という表現が出てくることがあります。これは二つの意味で使われることがあります。
 前回は『善意や良心という曇りの無い、完全な欲望』、今回は『悪意無く、全てを侵していく』。島男は二つの意味を両方、体現していた気がします。

 前半は人を平然と『生殺し』にし、笑いながらその死を軽視する、まさに『無垢なる邪悪』でした。
 …猶予を与える方が、むしろ高柳よりえげつないです…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「餓鬼じゃねぇかよ」
 屍肉を喰らい、飢えに苦しむ地獄――餓鬼道。まさに島男がおちた”IT業界”とは餓鬼道の体現でした。
 かつての高柳と島男のように、島男と龍太は問答をするのです。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 しかし、ロイドの思惑は前回の予想通りでしたね。
「高柳さんと同じマンション…」
 この時点で、“同一視”されていることに気づけっ(ツッコミ)。

 島男が人生を三回も失敗したのは、この“妄信”が理由なんですね。

 相手の言葉の上面だけを信じ、その奥にあることを汲み取ろうとせず。
 表面だけで、相手を型に嵌めて思い込み(一度善人だと思ったら、相手が言及していない部分までそう思う)。
 だから地雷も踏むんです(そんな奴が裏社会を歩くような、高柳方式を実行できるはずがない)。

 一度目は『親の工場がある奴が、勝手に俺を振り回すな』、三度目は『考えを知らずに勝手に動くからだ』と、むしろ相手側の言い分の方が正しいですしね。
 二度目も、同じような理由があったりするかもしれませんね。

 一回目と三回目で、騙されたと思った島男が全く同じ行動を取っているのが印象的です。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 島男の崩壊は本当に静かに終わったな…と思います。
 前回の引きから、いつ『歪んだ自分の表情に、怯え愕然とするシーン』が入るかと、嬉々として待っていたんですけどね(←それはあんたの単なる趣味だ)。

 島男は今の自分が信じられずに逃げ惑い、居場所の無い寂しさに凍えます。
 それは居場所を全て捨て去ろうとしていたからであり、IT社会に留まることの意味を見出せなかったからです。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 一方、高柳の再生も静かに描かれます。こちらは完全にツボに入りました(実は涙腺が緩んだ)。
 ラピスラズリの絵画を見て、その”資金”の向こうにある心に高柳は触れます。
 彼が絵画の向こうに見ていたのは、フロンティアだったのに違いありません。

 彼は父親が社員を守れなかった姿を見て、自分はそれを繰り返さないと誓ったのでしょう。
 それらしき描写が、これまでにも何度も繰り返されています。

 その決意をもう一度、父親と確認する高柳。
 自分のやり方が破綻した現在なら、父親のやり方も認められるからです。

 死生観に結びつく信念―――矜持を、高柳はもう一度確かめたのです。
 今、上に立つべき人間としての全ての心の資質が揃ったと私は感じました。

 高柳はフロンティアを守るため、その最後の拠り所である島男に直談判しに行きます。
「あなたがしてきたことでしょう?」
 その言葉の重さを全て受け止めたのは、彼が社長として自覚を持ち、その事実をしっかり認識していたからでしょう。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 守るべき家族、最後の居場所。
 島男はそれを“力”に喰われ、操られるままに捨て去ろうとしました。

 その事実に、島男はようやく気づきます。
 自分が行おうとした事の恐ろしさと、居場所のある喜びに震えつつ、彼は涙を零すのです。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 開始三分で茶を噴出した『仮面ライダー555』のファンは私だけでしょうか?
「む、村上社長!?」
 そう。『555』で、”クーデターを引き起こして悪のハイテク総合会社社長の座を乗っ取った”村上峡児を演じた役者さんだったのです(草なぎ君ファンとしては『黄泉がえり』のSAKUを連想するのが正しいらしい)。
 そして、『恋おち』でも同じ役回りですかっ(笑)!
 (ちなみに当管理人の当時の『555』熱に関しては、 『SMAP×SMAP』感想 をご参照ください)

 橘副社長が出てきたということは…『ロイド』のモデルは『SMART BRAIN』で、島男のモデルは木場勇治(『555』で一番の理想主義者。が、暗黒面に乗っ取られてラスト間際に社長に)ですかっ(←違う、違う)!?

 …まさかSMAPのドラマで、特撮ネタが出てくるとは思いませんでした。
 願わくば、橘が「上の上です」などと言いませんように。どんなシリアスなシーンでも爆笑する自信があります(←待て)。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 そしてもう一つのデジャヴは、”泣きながら飯を食う”シーン。
 …『フードファイト』第十話”回転寿司を号泣しながら早食いする”シーンを経験して以来、十八番になりましたよね(『僕の生きる道』第一話、『フードファイト香港死闘編』、『十三番目の男』他)。

 ”泣き食い”で思い出したのですが、前回、今回の話は『銃男』『十三番目の客』(フジ系『世にも奇妙な物語』)を彷彿とする展開でした。
 前者は”過信によって出世していく男”、後者は”拝金主義の社長が改心する話”です。この二つでの演技経験が、今回にも活かされてるのかな…なんてふと思いました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 螺旋を描き、過去の出来事が役者をかえて繰り返されていきます。
 ―――まるで神が運命に捻子を差し込むように。

 ドラマのスタッフが『ネジがキーワードです』といった意味が、ようやく分かりました。

 島男は何度も同じ出来事を繰り返してきました。
 高柳は親子二代で、同じ出来事を繰り返しました。
 フロンティアは会社を飲み込み、そして飲み込まれます。

 しかし同じことを繰り返していても、彼らが描くのは円環(サークル)ではなく、螺旋(スパイラル)です。
 その螺旋を上昇させるのか、下降させるのかは、主人公達次第なのです。

 第一話では、ネジを巻きいれることに希望を感じていた島男。
 でも今回のラストではネジを巻くことに恐れを抱いている、そう私は感じました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 幼子のように、助けを求めるように、島男は捻子を見つめる。
 運命の螺旋を畏れ、闇の中で立ち止まる主人公。

 そして螺旋を動かし始める高柳。

 時は巡る。
 その螺旋の先にあるのは、何か―――



追記(6/15):今回の経営的な突っ込みはこちらがオススメです。
ヒルズに恋しての9話終了後にて~ローの人には関係ないかも。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2005/06/11 06:34:43 PM
[その他、芝居(ドラマ・映画・舞台)] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

Free Space

 こちらはSMAP、ケディ・ティン、チェヨン(ジニー・リー)ファンの管理人によるHP、
GOLAW の裏口になります。
 よろしければ正面玄関にも足をお運びください。

 なにかあれば、Web Crapでお知らせください。(ブログコメント欄は閉じています)

西遊記関連の記事一覧
その他のドラマ記事一覧



このブログおよびHPの画像は全て 素材サイト様 のものです。無断使用禁止。

Calendar


© Rakuten Group, Inc.
X
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: