GOlaW(裏口)

2007/02/14
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──信じたくない。
──信じたい。

 混沌たる想いから逃げるように、彼は引き金に手を掛ける。
 その銃弾が、最後の絆を打ち砕くとも知らずに──。


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 例え嘘であっても、それにより守られていた絆があります。
 『裏切り』の真実や表面的な儀礼よりも、もっと大切な情があります。

 それならば、絶対に知るべきでは無かったのです。知っても、事実を封印しなくてはいけなかったのです。
 一子も鉄平も、それができなかったのですね。

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 鉄平の中の疑惑。

 鉄平の中には、『大川記事の犯人は父ではないか』という疑惑はずっとあったはずです。
 だからこそ、銀平にもそのことをもらすのです。

>「『知っている』かもしれない」
 銀平の言葉に、彼ははっとします。
 『大川の容態が悪かったことを、父は知っていた』。そのことに思い当たったのかもしれません。
 だから『先の長くない大川を切り捨てた』という仮定も、その時に生まれたのではないでしょうか。

 そして、父に近い立場にいる銀平にも思わず、鎌を掛けてしまったのかもしれませんね。

 でも銀平は『大川の容態』や『三栄の疑惑』の外にいたわけですから、そこまで思い至らなかったと思われます。

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>「葬儀をゴルフで中断させるとは、どういうことですか!?」

「…あんただって、『会社の未来が掛かった接待雉撃ち』行ってたじゃないかぁっ!」
 さて、何人の方が私と同じことをツッコんだでしょうか?

 一子にしても、早苗にしても、財閥や政治家の娘に生まれた以上、パーティや会合などの重要性は身に沁みて知っているはずです。
 パーティの傍らで、重要な話題が交わされる様を一緒に聞いているはずです。

 ですからこの『ゴルフ』にしても、情報収集の必要性はすぐにわかったと思うのです。

 確かに銀行業務に関わっていないから、いまいちピンとこないのかもしれません。
 それでも、鉄平や一子や早苗の反応は『現代の一般家庭の奥様』的反応。
 育った環境にそぐわない、あまりに変な反応に、思わずずっこけました(苦笑)。

>「結局お父さんも、大川先生を都合の良いように利用していただけじゃないんですか!?」
 すみません。鉄平の言葉こそ『正論に言い負かされて逆切れした』ようにしか聞こえません(汗)。

 大介の誠意ある対応も適切でしたね。

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 一人の雉撃ち。

 鉄砲を持ち出し、一人ルートを離れる鉄平。
 秩序無く張り巡らされた枝を払うように、秩序無く浮かび上がる思いを掻き分けていく鉄平。
 それは、まるで疑惑から逃げ出そうとしているようにも見えました。

 ──疑惑に絡む父親から、美馬から、銀平からも逃げるように。

 そして逃げ出そうとしつつも、雉の音には思わず反応し、銃を構えてしまう。
 狙いを定めている間だけは、雑念から逃げられると思っているから。

 そうして、葛藤を先延ばしにしているはずだったのでしょう。


 そうして、自分の裡に狭まりすぎた視界は、銃口の先の父親を見ることさえできなかったのですね。


 そしてその『誤射』は、『自分の中の父親への敵意』に気がつかせてしまいます。
 『撃ち殺してやりたい』という言葉が、一瞬だけ短絡的に父親に結びついてしまったのです。

 自分の中の敵意に気づき、動揺したからこそ、倒れた父親に駆け寄ることさえできなかったのかも知れませんね。

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 大介にとっての『誤射』の意味。

 大介はずっと複雑な思いを抱えていたのではないでしょうか。
 本当は自分の近くで、銀行員として働いて欲しかったはず。なのに、現実は自分の仕事とは違う場所にいて、自分の頑張りや葛藤を理解してくれない。
 しかも、義父の大川には熱い信頼を見せていく。

 そんな姿に、じれったさを感じてもおかしくは無いでしょう。


 そんなときに、美馬に『大川記事の真実を知った』と知らされ。彼は動揺したはずです。

 ひょっとしたら、大介は鉄平に逢いに来るつもりだったのかもしれません。
 余計な疑惑を抱く前に、言いくるめる為に。
 そして自分と大川と、どちらを大切に思うのかを確かめる為に。
 だからこそ不用意に近づいてしまい、銃に当たってしまったのかもしれません。


 その時、『誤射』は父親にも『意味』を持ちます。
 『撃ち殺してやりたい』という言葉と『殺されるかもしれないという脅威』が重なり。
 息子に対する信頼が、肉親だから許されるという思いが、衝撃に壊れてしまったのかもしれません。

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 殺人未遂の後に。

 息子だから、守りたい。息子だから、信じたい。
 その思いが消えてしまったから、本音が零れる。
>「お前は、私を殺そうとしたのか?」

 その本音に、『自分を信じてくれない』という事実を悟り、思わず寂しさと悔しさから
>「お父さんには『僕に撃たれるようなやましい理由』があるんですか?」
と言い返してしまう。
(…殺人未遂直後に、加害者である立場で、その言い返しはアブノーマルだと思います。滝汗)

 その鉄平の言い返しに、逆に『殺意』を確信してしまう大介。
 その時、親子の情は全て消えたのでしょう。

>「一度だけ答えてやる」
 その言葉の裏には、
“これから、『お前が俺の真意を疑い、同じことを問うてしまうようなこと』が何度も起こるだろう”
という決意が裏に滲んでいるように思えました。

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 万樹子の存在。

 彼女は万俵家にとって、第三者の視線を持ち込む存在です。
 故に視聴者に変わって、その異常さを感じることができるのです。

 万俵家で彼女の存在が浮き上がることは、また新しい変化をこの家に持ち込むことを意味するのでしょう。

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 相子の背景も、ようやく見え始めましたね。
 相子の虚勢が一瞬だけ剥がれ、初めて弱さを垣間見せるのが印象的です。

 その日の昼、虚勢を張らずとも自分を認められて、少しだけ心が緩んでいた彼女。
 万俵家の外で、虚勢を張る必要も無いところに、ふと子供にぶつかられ。驚いたところに、親子の姿が目に入ります。

 その時、初めて弱さと動揺を見せます。
 『普通の家族というあり方』に対する不安。そして『普通の家族も存在できる』という可能性への憧憬。
 二つの感情で激しく揺さぶられているのだと思いました。


 そして、その弱さと動揺に『弟との再会』という喜びが加わり、彼女の虚勢にヒビが入るのです。

 弟の説得と動揺は、『彼女が昔は、普通の結婚観を持つ女性だった』ということの裏返しです。
 それを狂わせたのですから、『海外での結婚』は相当に壮絶だったのでしょう。
 反動は、彼女に強固な信念──或いは虚勢──を植えつけたのです。


『自分は結婚などという物を信じない。
 それを操る超越者なのだ』
 相子はそう語り、自分にも言い聞かせています。だからこそ妻を信じきれぬ大介に惹かれ、『妻帯者を奪う地位』に誇りを持っているのです。

 ──いえ、誇りを持とうと頑張っているのです。

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 でも、昔の『夢』や『幸福観』は消えたりしないでしょう。
 そうでなければ、相子はここまで動揺しません。
 弟に言い聞かせる時に、自分にまで言い聞かせるようなニュアンスは含まれません。

 今でも、彼女の奥底では『普通の結婚』に焦がれているのかもしれません。

 そんな『本当の気持ち』を己から欺き、他の人々から悟られぬために、彼女は『嫌われ役』を演じ続けているのかもしれません。
 万俵家に介入し、『感情の無い結婚』を繰り返させているのかもしれません。

 それでも万俵家には、夫婦の情が蘇り、夫婦の情が生まれます。
 親子の情や、兄弟の情が覗きます。

 それらの『情』に、彼女は焦がれ。焦がれるが故に、更に強く『虚勢の仮面』を被ってしまうのかもしれません。


 彼女が『虚勢』を張るたびに、それは大きく膨れ上がります。
 『必要以上の誘惑』となり、『攻撃性』となります。弟の言う、『上辺だけの華やかさ』が膨れ上がります。

 けれど、その『虚勢』の下には空白が生まれます。
 『虚勢』を掻い潜り、吹き抜けた寒風は、時に彼女の心に凍傷を作るのです。

>「所詮、あなたは万俵家の御妾じゃない!」
>「僕には理解できないな」

 『虚勢』の下の理性が、相手の言い分を認めてしまったとき。相子の結婚概念を裏切って、鉄平が妻を庇おうとした時。
 『寂しさ』という痛みが彼女の中に生まれ、激しく動揺させたのではないでしょうか。


 私は、相子をそんな風に感じました。

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 今回の場所は、『神戸北野・旧外国人居留地』。

 ○年前には(←○に入る数字は訊くべからず!)私もよく遊びに行きました。見学可能なものは全部入ったかな?
 神戸の観光名所のひとつ。外国の雰囲気が好きな人にはオススメです。

 相子がその後に歩いていたのは、神戸元町の辺りでしょうか?

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 宿命(さだめ)の刻(とき)まで、一年を切った。
 愛憎の渦は激しさを増し、全てを飲み込み、砕き始める──。





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Last updated  2007/02/14 11:45:05 AM
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