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夏美の日々2

夏美の日々タイトル

こちらをごらんいただく前に 「夏美の日々(1)」 をごらんください。
第二話

バーサク人
出典: フリー百科事典『宇宙ウィキペディア(SpaceWikipedia)』

バーサク人とはバーサ系119番惑星の住民である。古来より戦闘を好み、宇宙航行技術を取得した後は他星を侵略獲得することを存在理由としている。
正式に惑星獲得戦を申し入れるときは比較的紳士的だが、狂戦士化したときは手がつけられなくなるので、宇宙中で恐れられている。


「というわけなんでありますよ夏美殿」
「バーサク人って、宇宙格闘家の間でも有名ですぅ」
「まったく、どうしてこう次から次へと厄介事が飛び込んでくるのよ」
「で、惑星獲得戦を申し入れてきたわけか」
「地球の人でかなうのかしら」
「それ以前に、宇宙フォーマットに準じてないペコポンの通信機では、バーサク人が攻めてきたことすら判らない筈だゼェ」
「それじゃどうするのよ」
「誰かが代理で獲得戦を戦わなければ、無条件占領というわけでありますな」
「多大な侵略予算をつぎ込んでその上前をはねられるのを恐れる侵略者が代理で戦うのが筋だが」
「それってさあ、あんたたちのことでしょ」
「!!!」
「気づいてなかったわけね、本当におめでたいんだから」
「でも夏美殿、現在ケロロ小隊は半身不随も同然。とてもバーサク人には立ち向かえないでありますよ」

「おっと、新しい通信、いや、これは果たし状だナァ」
「なんて言ってきてるんだ」
「お互いの代表2名ずつでタッグ戦をやろうって言って来てるぜ、ギロロ先輩」
「ボクはやるですぅ。グラップラーの魂を見せてやるですぅ」
「となると……タママと俺で行くしかないのか」

そういいながら右手=アタシを見るギロロ

「しょうがないわね。いまさら取れるのを待ってるわけにはいかないし」
「夏美、いいのか?」
「今度はアタシの番ってこと」
「ん?何のことだ?」
「なんでもなぁい」
「クルル曹長、宇宙船とフルアーマー装備の用意、頼む」
「クルル、アタシにも何かない?」
「パワード723(ナツミ)装備なら、ミニチュアもあるゼェ」
「またアレぇ?もう、何のために用意してたんだか。しょうがないわ、それで」
「了解。すぐ用意するゼェ」
「モアどの、バーサク人に返信、挑戦はこのケロロ小隊が受けると返答するであります。各員奮励の上ペコポン死守に全力を尽くすように」
「偉そうに、何もできないくせに。大体、あんたたちのために守るんじゃないからね」
「夏美殿ォ~」



「ねえギロロ?」
「何だ?」

バーサク人が指定してきた、地球と月の間のつりあい点である『ラグランジェ1(以下L1)』に向かう宇宙船のなかで、アタシは操縦するギロロに聞いた、もっとも、操縦桿を引いてるのはアタシなんだけど、パワード装備のおかげで、飛行機のときよりは楽。やだけどね。大体、何でスク水なわけ?誰も説明してくれない。

「この船の名前って何なの?」
「実は腹案があったんだが、ケロロに却下されてな、未定だ」
「そりゃ伍長さん、『ヱンタープライズ』はいろんな意味でまずいですぅ」
「その代わり、ケロロの『ザンヂバル』は俺が却下したぞ」
「どっちもどっちね」
「この際だから、ナッチーが決めるですぅ」
「アタシが?!」
「ウム、それなら文句も出にくかろう」
「え~と、え~とね、『宇宙戦艦ヒナタ・ナツミ』ってどう?」
「ナッチーもネーミングセンス、ないですぅ」
「もう、ほっといてよ」
「まあ、そのなんだ、暫定『それ行け宇宙戦艦ヒナタ・ナツミ』で行くとしよう」

そこまでやるとどっかの小説みたいね

「伍長さんは認めると思ったですぅ」
「タ、タママ、な、何をいっとる」
「そうこういってるうちに目的地に着いたですぅ」
地球と月との重力がつりあい、姿勢制御を煩雑に行わなくても流されたり、落ちたり(星のほうに)しない、地球周辺にあるポイントの一つ、L1に流れ着いた岩塊の表面でアタシ達を待っていたのは、一見地球人と見まごうような『ヒューマノイド』の異星人だった。その二人のうちの一人が口を開く。

「ようこそケロン人の諸君。ペコポンのような辺境を攻めたのに、君らみたいな強敵が現れるとは思ってもみなかったよ」
「楽勝で無血開城を狙ってたのだろうが、優先権はこちらにある。おとなしく引いてもらおう」
「出来ぬといったら?」
「実力で排するだけだ」

凛とした表情で渡り合うギロロ、ボケガエルたちとへっぽこやってるときとは全く違う『漢(おとこ)』の顔。
アタシの中の『おんな』が反応していくのがわかる。

「こんな田舎の星を攻め落とせないんじゃ、侵略宇宙人第二位と名高い「ケロン人」も大した事無いな」
「まあ、片手間だってことで下っ端が回されたんだろう」

「田舎だ辺境だっていちいち癇に障るわねえ」
「まあ、事実ではあるから仕方あるまい」

「真の最強である我等『バーサク』の中でもエリートの戦士、フェンとヨルムが踏み潰すカエルの名前を聞いておいてやろうじゃないか」
「聞いて驚くですぅ。ガマ星雲第58番惑星・宇宙侵攻軍特殊先行工作部隊隊員タママ二等兵ですぅ」
「悪いが知らん」
「はらぁ」

へなへなとくず折れるタママ

「そっちの赤いのは、このタママとか言うのの下か?はっはっは」
「俺か、俺はギロロだ」

その瞬間、バーサク人に面白いように動揺が走った

「ギロロって、ケロン人のギロロか?」
「あの『戦場の赤い悪魔』なのか?」
「ほほう、意外と俺も有名なんだな」
「ねえ、ねえ、ギロロ、あいつらモロ浮き足立ってない?」
「そのようだな。まあ、噂ひとつで戦力が落ちてくれれば、それに越したことは無い」
「うう、伍長さん有名人でうらやましいですぅ」

フェンとか言う奴が、ギロロの右手のアタシに気がついた
「何だ、その手は」
「サポーターみたいなもんだ」
「俺はまたファイブハンドかカセットアームかと思ったぞ」

アタシは小声でギロロに聞く
「何で宇宙人がスーパー1とかライダーマン知ってるのよぉ!」
「知らないのか、ペコポン製のトクサツは宇宙標準のエンターティメントなんだぞ」
「んなこと知りたくないわよ」
「ナッチーがそれ知ってることのほうが不思議ですぅ」
「いいでしょ。結構かっこいい人多いからなんとなくチェックしてただけなんだから」

ひょっとして、こいつらが地球侵略してくる目的って、アニメとかトクサツとかガンプラのため?そんなのってやだなあ。

「面倒だから総当りで戦うこととする。戦闘空域はこのよどみ点の安定範囲以内。武器は個人で携帯できる範囲とする。勝ち残ったほうがそのまま侵略を進めるということでいいか?」
「よかろう。早く始めてくれ」
「では、侵略権利戦、レディ!」
「ゴーッ!!」

カーン!!

どこからか聞こえてきた謎のゴングとともに、タママが躍り出た

「先手必勝ですぅ」
「待て、タママッ、先走るなッ」

格闘家としてはそれなりの実力(と、見合う程度の慢心)を持ったタママは、一人で敵二人を葬れると踏んで先制をかけたらしい。しかしそこは格闘至上のバーサク人、各個撃破にすかさず切り替え、パンチとキックの乱打でタママを包み込まれた。
拳の応酬が止んだとき、そこにはぼろぼろにされたタママの姿が。

「タ、タママッ!」
「瞬殺……タママインパクトを使う間さえ……」

振り向き、こちらをにらむバーサク人、その目は先ほどまでのものとはまるで別のまるで狂気を帯びたような輝きを放っていた。

「しまった!奴ら狂戦士化しやがった」
「見境無く何もかも壊していくってあれ?」
「そんなに俺の名に恐怖を感じたと言うのか」

バーサク人が手をさっと振る。するといつからいたのか、アタシたちの周囲に無数の同じ眼をした奴らが現れた。

「くっ、戦士の誇りすら忘れたかっ!」
「どうするのよっ」
「ここで食い止めなければ、ペコポンは消滅する。やるぞ夏美」
「もう好きにして~」

数百対1.06の孤独な戦いが、今始まった
夏美の日々02

待て次回




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