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はじのん’ずBar
夏美の日々3
こちらをごらんいただく前に
「夏美の日々(2)」
をごらんください。
第三話
「ハイパーバズーカ」
シュン!
ギロロが小さくつぶやくと、いつも暇さえあれば磨いてる、あの武器が急に現れた。
アタシははじめて、ギロロが突然武器を手にする謎の答えを知った。
弾薬武器庫(この場合は戦場近くに回航していたアーセナルスペースシップ)から超空間転送で直接取り出すのだ。
今、ギロロと一体になってシステムに組み込まれているアタシも、
『ビームライフル』
と念じると、アタシに合ったサイズのそれが転送されてくる。
そうか、念じて使えるのなら、あれが……、
『……』
アタシが念じたのは、ボケガエルの口の中で虫歯型宇宙人と戦ったときの全方位攻撃兵器。思い通り、ビーム砲をロケットで固めたような武器が多数、アタシたちの周囲に現れた。
「いけぇ、ファンネルたち」
アタシがなぜその名前を知ってたのかは謎だが、ファンネルは思い通り、ものすごい機動力で飛び去った。アタシはファンネルたちに、敵が密集しているあたりを包み込むイメージを送る。包囲ができたところで攻撃を。集中砲火が浴びせられ、およそ敵の半分ぐらいが戦闘不能になった。
「相変わらず、恐ろしいヤツだ、夏美」
「地球を守るためなら、必死にもなるわっ!」
「まだ敵は多数だ、囲まれないように機動戦を仕掛けるっ」
「了解っ!」
包囲されないように高速でジグザグに移動しながら攻撃を仕掛けるアタシたち。追いすがってくる敵戦力を少しずつ削いでいく
「背後からの攻撃が効かないっ」
「奴は、奴は背中に目があるというのかっ」
「さすが『戦場の赤い悪魔』」
後ろからの敵は、アタシが避けてるんだけどね。
「なぜ奴は、同時に無数の敵を狙撃できるんだ?」
「きっと、ニュータイプなんだ」
「うぬぬ恐るべし『戦場の赤い悪魔』」
アタシも狙って撃ってるからなんだよね。
「なんだあの機動は、生身の技とは思えん」
「あれで勇名をはせたというのか」
「侮りがたし、『戦場の赤い悪魔』」
アタシとギロロ、お互いを軸にして動くから、極端な機動ができるんだよね。
そうやって消耗戦を強いていたが、さすがにこれではらちが明かないと思ったのか、ひときわ強大なシルエットを持った敵が立ちふさがった。
最初に出てきたフェンとヨルムとかいうヤツだった。
「やらせはせんぞ。貴様ごときケロン人にに、バーサクの栄光をやらせはせん!この俺が居る限りは、やらせはせんぞーー!!」
「貴様はフランケン男かーっ」
前方に立ちふさがったフェンを高機動でかわし、通りすがりざまに首筋にキック一閃喰らわせていくギロロ。しかしそのわずかな隙に後ろからビーム刀で突いてくるもう一人、ヨルム。切っ先はまっすぐにアタシに突き進んでくる。
それからの一瞬は果てしなく長い一瞬だった。
ヨルムの動きをアタシの意識から感じ取った(としか思えない)ギロロは、アタシに、
『その場でふんばれっ』
って意思で命令してくる。アタシがそのとおりにすると、ギロロは右手(つまりアタシ)を軸に無理やり回転し、ヨルムとアタシの間に割り込んできた!
ヨルムの刀が、ギロロの胸元に吸い込まれていく。
「ギロロぉぉぉぉぉっっ!」
ギロロが突き立ったその刀をヨルムの腕ごと脇に抱え込んで固定したところを、アタシがバズーカで至近距離から連射する。爆発で吹き飛ばされるヨルムとアタシたち。
「ギロロ、ギロロ、しっかりしてよぉ」
死んじゃいない。けど反応はない。
「手ごわいヤツだったが」
「どうやらケリがつきそうだな」
生き残ったバーサク人がわらわらと包囲をつめてくる。
『止めを、止めを』
口々に叫びながら、なおも寄ってくるバーサク人
このままではギロロが……
今ギロロを守れるのはアタシだけだっ!
「アタシのギロロを、やらせないよっ!」
アタシはギロロをかばうように立ちふさがる
「があああああっっっ」
残ったバーサク人たちが一斉に襲ってくる。
「地球最終防衛ライン・日向夏美行きますっ」
その瞬間、周辺宙域は水でも打ったかのごとく静かになった
「日向夏美……」
「あの……」
「ペコポン最終防衛線だという」
「コードネーム723……」
「実在したのか……」
「手傷を負った戦場の赤い悪魔だけならこれだけの人数で力押しで何とかなるかもしれないが」
「723まで……無理だ」
『うわぁぁぁっっっ!!!』
こともあろうに、バーサク人たちは我先に逃げ出していった。これって、
すっごい失礼じゃない?!
「まあ、なんだ。噂って言うのは尾ひれがつくもんだ。おかげで助かったじゃないか」
「ギロロ!大丈夫なの?」
「俺はタフなのが自慢だ。」
「よかったよぉ。死んだかと思ったじゃない。無理にかばうんだから」
「お前を失うのだけは嫌だったからな。それより夏美、『何をやらせないっ!』って言ったんだ?」
「……えっえーっと、何のことだったかしら?」
「何か凄く刺激的なことを聴いたような気がするが」
「まあそのなんていうか、そういえばさっき『お前を失うのだけは』って言ってたけどそれって……」
「……こんなところまでつれてきて、怪我とかさせたら面目が立たんだろう」
「……それだけなの?アタシは、ギロロを失うのが怖かった。そりゃ、地球も大事だったけど、それでギロロがどうにかなっちゃったらもっとヤダって思った」
「夏美……、俺は、任務よりも何よりも、お前が大事だって思い始めてるのかもしれない」
「もう、まだるっこしいわね。好きなの、嫌いなの!?」
「は、はい、好きです」
「やっと言ってくれたね。アタシも大好きだよ、ギロロ」
アタシは小さい体をいっぱいに広げて、ギロロの顔に抱きついてキスした。
☆
エピローグ
「いや~ご苦労サンだったであります。ケロロ小隊はやっぱり宇宙一でありますなあ」
「軍曹さんは何にもしてないですぅ」
「そういうタママが独走しなければもう少し楽だったんだがな」
「がぐぐぐ」
「お二人さん、
モウスコシ…モウスコシ…ガン
「新・右手復元分離銃、お待たせしたゼェ」
「おお、クルル、戻れるのか」
アタシは小声でギロロの耳元でささやく
「ちょっとギロロ」
「何だ夏美?」
「切り離されても、もう心は一緒だからね」
「お前なんて恥ずかしいことを……」
「だってアタシから言わないと、アンタからは絶対言ってくれそうもないんだもん」
「行くゼェお二人さん」
ビムビムビム……
・
・
・
・
・
「あ、アタシは大きくなったみたい。ギロロは?」
「俺も大きくなったままだぞ、だが視点が高いな。夏美、どこだ?」
「妙に声が響くわねえ。ねえ、どうなったのクルル」
「どうやらまた失敗したようだゼェ」
「ああ、姉ちゃん、それって『両面宿儺(りょうめんすくな)』だね、日本書紀に出てきた、スーパーマンだよ」
「前の顔がギロロ伍長、後ろが夏美殿で、手が四本、足が四本。身の丈は2メートルほどでありますか。これは宇宙史上最強の戦士でありますな」
『フザケルなー』
叫ぶと同時に四本の手にはそれぞれ『ビームライフル』『バズーカ』『ランチャーポッド』『レールガン』が、足には『ミサイルポッド』が4セット装着された。
『ファイア~~ッ』
『ゲロォォォォ~』『ク~ックック~~~キュー』
アタシ達はとりあえずの不満をボケガエルとクルルにぶつけた。
どうやらアタシたちの受難(とちょっぴりの蜜月)はもう少し続くようだ。
おしまい
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