むかしむかし、あるところにかわいい娘がいました。
娘はやさしいお父さんとお母さんに見守られて育ちました。
ところが幸せは続きませんでした。お母さんが重い病気で死んでしまったのです。
娘は悲しくて悲しくて、ご飯も食べず酒も飲まずに朝から晩まで泣いていました。
お父さんは、可哀想でなりません。
そこで出会い系で出会った新しい奥さんと結婚しました。
このまま母は、お父さんの前では娘をかわいがるふりをしていましたが、本当は自分の子供でもない子の世話をするのは、面倒だと思っていました。
そんなある日、お父さんが職場の仕入先の招待旅行で韓国の済州島(チェジュ)に旅行に行くことになりました。
家で娘と二人だけになったまま母は恐ろしいことを考えました。
娘を殺してしまうなら今だと思ったのです。
まま母は、飲み物に毒を入れて娘に飲ませました。
娘は、飲むと、すぐに苦しみながら死んでしまいました。
まま母は、娘の死体を家の裏の庭にうめました。
「ここなら、誰にもわからないわ」
しばらくして、お父さんがおみやげのキムチを持って旅行から帰ってきました。
まま母は、娘がどこかにいなくなってしまったと、うそをつきました。
それから、何日か経って小雨の降った日、庭の娘をうめたところから、アイドルが生えてきました。
アイドルが完全に成長すると、近所に聞こえる大きな声で歌をうたいはじめました。
♪
あ痛かった あ痛かった あ痛かった Yes,
新しいお母様に毒入りテキーラを飲まされちった
キムチ食べたかった 食べたかった 今はもどかしい
済州(チェジュ)エアポート 小雨に煙る
走れ!
♪
それを聞くとまま母はブルブル体をふるわせて、歌をやめさせようとしました。
でもアイドルは追っかけられても捕まらないように、大声で歌いながらそこらじゅうを走り回りました。
やがて、歌で本当の事がわかったお父さんは怒ってまま母を殺してしまいました。
結局、生えてきたアイドルは鳴かず翔ばずでした。