❹--②雑誌撮影でご一緒に・・(B) (画像37枚)


あらこの人ととも・・と意外な人との出会いもあったようです。
何回も企画で会う女の人とは、噂がたったり、橋蔵さんも何人かこの人は・・と思った方もいたような・・・。

livedoorブログ__心の軌跡💞忘れえぬ人*大川橋蔵*投稿の画像とリンクさせているコーナーもお楽しみください。


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​★(A) livedoorブログ__心の軌跡💞忘れえぬ人*大川橋蔵*投稿とリンクコーナー

🔶【❹雑誌撮影でご一緒に・・(A)からの続きとなります。】


2023.9.3
(30)・・・●コンビ対談「恋ほど素敵なものはない」 大川橋蔵さん  桜町弘子さん
この画像は、livedoorの ブログ"心の軌跡"のほうの掲載記事とリンクさせています
1961年8月号近代映画から

橋蔵さんとマコちゃんは、コンビを組んでから、もう四年にもなります。
どの作品でも、マコちゃんはいつも橋蔵さんに振られる役だったとか。
このゴールデン・コンビが、楽しく語り、大いに笑うひとときです!

😢失恋しちゃった
橋蔵  マコちゃんとのコンビ作品は大分あるね。
桜町  そうね、でもね、大体、私は失恋する方が多いの(笑)
橋蔵  僕に? そうだったかなあ・・・得恋はなかったの? そうかな・・・(笑)
桜町  そうなんです。ほんとについていないんです・・・ でも、日ごろ親切ですから・・・ (笑)
橋蔵  やさしいね(笑)
桜町  とっても・・・・すごく気をつかってくれるの。
橋蔵  別に気はつかわないけどね・・・。
桜町  いえ、本当よ。私、無口の方でしょう。セットに入るとすごく緊張しているわけよね。それを橋蔵さんはいろいろ面白い話をし
    てくれて、すごくやさしいわよ。スムースにお仕事ができるんで・・・そういう意味でいつも感謝しているの。
橋蔵  マコちゃんが東映へ入ってはじめて僕と共演したのは、「大江戸喧嘩纏」だったね、ひばりちゃんと僕との・・・。
桜町  そうね。いいなずけなのに、私が浮気してほかの人を好きになっちゃうの(笑)そして、橋蔵さんはひばりちゃんと結ばれる。
橋蔵  四年前だな。マコちゃんもずいぶん大きくなったね(笑)
桜町  あら、もう大人よ!(笑)
橋蔵  これは失礼。こんどの「新吾二十番勝負」でも、一緒だったね。
桜町  こんどは新吾さんと遇うの、こないだ「若さまやくざ」は会えんかったけど。
橋蔵  「若さま・・・」は会うんだけど、恋人までいかないね。ファーとね。
桜町  また失恋なのよ(笑)
橋蔵  おかぼれという程度ね。ファーとなってファーと消えちゃうの・・・(笑)マコちゃんはね、とても愛くるしいっていうか、可愛
    いところがあるでしょう。だから、すごくね、チョコチョコっと、つまんで食べたいようなね。
桜町  いやァね・・・(笑)
橋蔵  (笑)だから、ときどきからかうと怒られちゃう。
桜町  怒ったふりするのよ。・・・でも今まで大分撮っていろいろコンビを組むと、気心が知れるというか・・・。
橋蔵  それはやはり、作品によってだけど、気が合わないってことは大変だよ。例えばコンビでやる場合に喜劇がいいとか、悲劇がい
    いとか、結局、マコちゃんとやる場合は喜劇みたいなものをやると面白いんじゃないかな。そこへいくと、例えば恵子ちゃん
    (大川恵子)の場合だったら、喜劇というより悲劇の方の女性になっちゃうでしょう、そんな感じがするでしょう。
    僕とやる場合にさ・・・。
桜町  そうですね。

💛ピンクムード?!
桜町  休みのときはどうしてます。
橋蔵  そうだね、一日ぐらいしかない休みの時は、家にいてテレビ見てるぐらいだね。二日以上あれば、東京に行っちゃうけど。
桜町  私、こないだ、テレビで、「ピンクムードショウ」をみたわ。
橋蔵  (大笑)・・・・それでどうだった?
桜町  みんながあまりやかましくいうから、そんなにいいのかしらと思ってみたの・・・。
橋蔵  そこで、ご感想は?
桜町  いやらしいわ。エッチよあのテレビ・・・(笑)
橋蔵  いやいや、あれは、ピンクで塗り染められた立派なムード放送ですよ。
桜町  男性からみると・・・?
橋蔵  女性からみてもそうなんですよ。
桜町  でもね、あの放送がはじまる最初に、すごいコマーシャルがあるでしょ。
橋蔵  そうだ、あれはちょっと刺激的だね。でも、コマーシャルと分かったらがっかりしちゃう。
桜町  でも、どきっとしちゃったわ、あたし・・・。
橋蔵  でもマコちゃん。なにごとも勉強・・・ところで、マコちゃんは休みになにして過すの?
桜町  なんとなくすごしちゃう。こないだドライブしたの。いつか夜の東山へいったことがあるんですよ。そのときに、途中がとて
    もきれいだったの。だから、そこへ行ってみようと思って。ところが運転手さんに比叡山といつたらしいの。ちっとも景色が
    よくないの。何だかおかしいのよ、いつか行ったときはバカに近いように思ったのに、今日はバカに遠いなァとおもったら
    ・・・私はいつもの調子でのんびりして未だか未だかと待っていたの。ついにがまんし切れなくて、道が違ったんじゃないか
    ってきいたの。すると、頂上はまだまだこれからだっていうのよ。その中に私「東山って、こんなところかしら」といったら、
    「ここは比叡山ですよ」って、いうんですよ。
橋蔵  それはマコちゃんらしい。
桜町  私、あまり車に強い方じゃないから、車には酔っちゃうし、真っ暗だから、景色はみえないし、途中で帰って来ちゃった。
    頂上まで行かずに・・・。大失敗だったわ。
橋蔵  一人で行ったの?
桜町  いえ。それがね、父母と弟が田舎から遊びに来たの。そのとき、大いばりにドライブなどとシャレたんです。
橋蔵  あまりムリするからだよ。
桜町  そうなのよ。-----その夜は寒くてね、ブルブルふるえちゃったわ。
橋蔵  お料理作る? マコちゃんは。
桜町  よわいの。
橋蔵  お嫁にいったら困るじゃないの。
桜町  だけど、もらってくれる人なんかないから大丈夫。
橋蔵  もらってくれないの?(笑)
桜町  ないと思う。
橋蔵  いかないの?
桜町  だって、私なんかがいったら、その人が不幸になっちゃうから・・・。
橋蔵  じゃ、悲劇のヒロインだね(笑)
桜町  何もできないから・・・だけど、最初だけよね。
橋蔵  だったら、結婚しなきゃまずいだろう(笑)
桜町  そりゃ、好きな方がいればね(笑)
橋蔵  恋愛しなきゃつまんないものね。
桜町  夢にえがいているのよ。
橋蔵  すごいね(笑)
桜町  夜ねるときに美しいこと考えるの。
橋蔵  どんなの? マンボズボンはいて・・・(笑)
桜町  マンボは出てこない。
橋蔵  もう少し太ればいいんだよ、マコちゃん。
桜町  いくら食べても太らないもの。

🗼銀座を漫歩さ
桜町  橋蔵さんは東京へいくと、銀座を散歩するの好きですってね?
橋蔵  銀座に限らず、新しい空気を吸うのはね。バーにいって、カウンターの端でひとりポツンと飲むのなんか好きだね? めがねか
    けちゃうと、ちょっと分かんないしね・・・。
桜町  そうして、ポツンとしている人に女の人って魅力勘恥じるんじゃない・・・・そうよ。そういうわよ、大抵の人が・・・。
橋蔵  じゃ、僕、これからいつも一人で歩こう(笑)大いに淋しがろう(笑)バーへいって、ひとりこうして・・・・(片肘つく恰好を
    する)(笑)僕がまだ映画へくる前に、いつもバーへ誘っていた俳優さん・・・・今でもいるけど、紺の背広だったか着て、ポ
    ツンとしてじっと飲んでるの、ウィスキーをね。ものすごくステキだったよ。男でも魅力を感じるような、何かそういった
    ムードがあったね。別に僕はまねするわけじゃないけれどね・・・。やはり、僕が魅力を感じたんだから、女の人が見ると
    そう感じるのかも知れないね。僕はそのつもりでいくんじゃないよ(笑)何事も全部仕事を忘れて、そういった雰囲気にひた
    りたい気持ちがどこかにあるんだね。
桜町  私もそう思うけれど、なかなか行動に移れない。もっとも、女の人と男の人と相当違うものね。本当に面白いですね。東京
    にいくと、家になんかいないで、必ず銀座の一丁目から八丁目まで何回か往復するんですって?
橋蔵  まあね。いろいろ買物もしたいからね。下着でも何でも着るものは全部東京で買うんだ・・・・季節季節の前にそういった
    ものを仕入れて帰ってくるの。マコは東京へいかないの?
桜町  あまりいかないけど、好きです。夢があるから・・・好きなくせにちっとも出ない。
橋蔵  出不精なの?
桜町  まあ、そうね。でもいいわね。橋蔵さん東京へいけて・・・私もいきたくなったわ。
橋蔵  じゃ、一緒に今夜いこう(笑)
桜町  あした仕事があるの(笑)本当に大好きよ、東京・・・。
橋蔵  目立たない恰好して、誰にも教えないで、東京の街をフラフラ歩くの。これが一番いいですよね。

🍰食べると太る
桜町  こないだ電車に乗ったの。弟が電車に乗りたいというから、四条大宮までいったの。前の人二、三人は分かったらしいけど
    楽しかったわ。
橋蔵  東京へいくと、僕は芝公園から銀座まで、バスに乗るの。ポツンと、楽しいよ。
桜町  本当ね。
橋蔵  分かっている人もいるけど、めがねかけてね・・・。
桜町  「似てる」とか「違うわよ」とか、「あんな変な顔していないわ」とか・・・・。
橋蔵  それは面白い(笑)別に東京でなきゃいけないということないけど、どうしても東京があらゆる各国との通交上のキイ・ポイ
    ントだから、そこへより多くいって、いろんなものの雰囲気にひたりたい、別に意識しなくてもいいけど、ただ、耳できく
    だけでもいいから・・・京都へ帰ってきていろんな話が出た時に、ふっと、そういうこと思うんだね。この頃はこういう
    メーキャップがはやるとか、こういうスタイルがはやっているとかいったことでもまた、流行語一つにしても、そういった
    ことをものすごく感じるんだね。僕はやはり、東京都いうところはこれからチョイチョイ出ていく必要があると思う名。
    いいとか悪いとかいうことは別問題で・・・。
桜町  いいところね。まねでいいから私も実行したい。
橋蔵  (窓より遠くネオンの明滅する京の夜景を見ながら)マコちゃん、高台は好きかい?
桜町  好きよ。
橋蔵  高台好きなのは、猫とキチガイだ。
桜町  ひどいわ。キチガイだなんて・・・(笑)
橋蔵  マコちゃんだけでなく、総体に時代劇の女優さんというのは、ものを食べないね。どうしてだろう?
桜町  食べるとふとるからよ。
橋蔵  そんなことないだろう。
桜町  橋蔵さんもあまり食べない方ですね。
橋蔵  うん。僕も時代劇の俳優さんだから・・・(笑)
桜町  いやだわ。私は、本当に睡眠不足が顔に出てくる、ふとりたいんだけどあまり食べれないの。
橋蔵  では、これから東京へお父さんの追善のパーティーで買えるの。いろいろ買物もあるしね、いろいろ忙しいんだよ。
桜町  では、気をつけてね。



2023.9.3
(29)・・・●コンビ特集「灯(ともしび)の庭」  大川橋蔵さん  桜町弘子さん
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1961年8月号近代映画から

☘️「いつも、橋蔵さんにはふられる役が多いのよ・・・」と語る桜町弘子さん。きょうは撮影の余暇を、橋蔵さんと夕涼みに出かけます。
日ごろは忙しくて、セットやロケでもゆっくり語らうことも出来ないお二人。こんどはいる「新吾二十番勝負」では、橋蔵さんを慕いつつ、新吾を母君に合わせるという重大な役で、桜町さんは名コンビぶりをみせています。

(画像)
1 涼しい夕べの庭に水まきして楽しむコンビのレジャータイム



(28)・・・●若様のレジャーフィッシング  大川橋蔵さん  丘さとみさん
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1961年8月号明星から
盛夏のレジャーは、涼味あふれる鮎釣りがなんといっても一番です。6月に入ると各地の川は 、痺れを切らせて解禁を待っていた釣り人たちでいっぱいになります。しぶきを上げる渓流に、投げ込まれた糸が 竿に心心よぃあたりを残してひかれると、ウロコを見せて跳ねながらあらわれる鮎の姿、銀色に光が入ると もうマニアにはこたえられない喜びの一瞬でしょう。初夏の休日、なかよしの丘さんを誘った橋蔵さん、鮎たいじに出かけました。

(画像)
1 「ほらこんな大きなのが取れたよ、焼いて食べようか、お昼のおかずにさ」
  「なんだかかわいそうみたい」
2 竿さばきは、刀を抜くコツで、エィッとやると、ご覧の通りどうこの腕前!



(27)・・・●特集 “美空ひばりさんの結婚の条件” *満24歳を迎える彼女の心境は?*
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1961年7月号平凡から
“美空ひばりを理解し、加藤和枝を愛してくれる人”----これが、ひばりちゃんの旦那さまの条件です。噂や、ゴシップはたくさんありますが、サテ台風の目、ひばりちゃんも5月29日で満24歳を迎えます。仕事!仕事!に多忙をきわめる毎日ですが、いったい結婚をどんな風に考えているのでしょうか。
※5月28日は妹さんの結婚式
ひばりちゃんが 今一番喜んでいること、それはなんといっても5月28日に挙げられる妹勢津子さんの結婚式です。「 純白の仕掛けを着たい----」という勢津子さん希望をきき、忙しいなかをひばりちゃんがお店に出かけて行き、 自分で慎重に選んで作ってもらったという妹重いのひばりちゃんなのですから----。
ところで、ひばりちゃん自身の結婚問題はどうなのでしょうか。
ご当人は、「仕事一本に打ち込んでいる現在、女としての幸福はちょっとおあずけ」と、呑気に割り切って、相変わらず、歌に、映画に、舞台に脇目も振らず 、といったところです。
でも24歳にもなるひばりちゃんです。”そろそろ結婚・・・”報道陣が手ぐすねひき 、”相手は誰かしら・・・”と やきもきする ファンがあっても、ちっとも不思議ではありません。
こういうファンに変わって、最近のひばりちゃんの生活や、考え方にスポットを当ててみましょう 。
まず、久しぶりで仲よし大川橋蔵さんとの対談から始めてみましょう。


《対談》 トミーとは久しぶりの対談ネ      美空ひばり ・ 大川橋蔵
美空  トミー、またお得意のシブイ喉をきかせてちょうだいよ。(笑)
大川  そんなに容易くはきかせられないよ。マミーと違って持ち歌が少ないから。(笑)
美空  現在のところ、何曲ぐらい?(笑)
大川  よわいな。でも映画を一つとり終わるたびに一曲ずつ増えるんでね・・・。『富士に立つ若
    武者 』 のときは『無情の夢』をというのをマスターしたし、まあ 来年あたり、リサイタル
    でも開こうかと…。(笑)
美空  ステキじゃない。”トミー・大川リサイタル”ってとこね。(笑)
大川  トミー・大川? (笑)わるくはないな。随分うまい歌手みたいな名前だ。(笑)
美空  時代劇調 、ロカビリー歌手のデビュー。(笑)
大川  9月の26日から2日間、東京の歌舞伎座で僕の舞台があるんだけど、この時に2、3曲ファン
    にサービスしようかと思ってるんだけど ・・・。
美空  いつも地方へ行った時は舞台で歌うって言うじゃない。 どんなの歌うの?
大川  新吾の歌でね『剣に生きる男き』とか『若さまの歌』何かおね。
美空  あんまり上手く歌わないでよ、 後で私たちが行った時、辛いから。(笑)
大川  心得ました。気をつけましょう。(笑)

☘ドドンパ時代劇はどう?
美空  トミーと対談するのも久しぶりだけど、お仕事もずいぶん一緒にやらないわね。
大川  そうだねえ、もう3年ぐらいになるなあ・・・・。ところでマミーは今沢島組だったな。
美空  そう『白馬城の花嫁』。高田浩吉先生や、鶴田のお兄ちゃんと一緒。

大川  僕は、河野組に入ったところ。『若様やくざき』で、久しぶりに暴れられるぞ。このところ
    頼朝とか内匠頭とか、肩のこるような役ばかりでね、この腕が夜泣きしてんだ。(笑)
美空  はやく一緒の映画撮りたいわね。
大川  うん。若様と恋人のお姫様が、一緒に”ドドンパ”かなんかを踊るような気楽なやつをね。(笑)
美空  トミーは”ドドンパ”が好きね。私も嫌いじゃないけど・・・。
大川  この前、京都のクラブで一緒に踊ったろう。あの時はうまく踊れなかったけど、あれ以来
    、やみつきなんだ。(。(笑)
美空  変に気取ってしゃなりしゃなりと 踊るダンスより、よほどいいわね。トミーむきよ。(笑)
大川  そうだ。なんと言っても体裁振らないところがいいよ。(笑)

☘思われニキビが口許に二つ
美空  また踊りに行こうか 、”ドドンパ”(笑)
大川  よろしくお願いします。これこそ本当に手を取り足を取りってやつだ。(笑)でも、もう初夏
    だから、オープンで何か楽しいことやりたいな あ。
美空  たまには琵琶湖辺りで 一日中遊んでみたいわね。
大川  それそれ!それなんだよ。今年はぜひヨットを買って乗りまわしたいと思ってる。
美空  じゃあ、私の夏のレジャー・タイムはトミーのヨットと決めた 。(笑)
大川  おいおい、まだ買ったわけじゃないんだぜ 。(笑)(顔をひばりちゃんに近づけてじっと覗き
    込む)
美空   どうして人の顔をそんなにジロジロ見てるの?
大川  (大声で) 見つけたぞ!ニキビ!ほら口のところに二つもあるよ。
美空   (口許を押さえて)あら、ほんと、思われニキビかな。いまごろ出てくるなって。
大川  羨ましいような話だ。ひとつでいいから分けてもらいたい。(笑)
美空  でも変ね、二つそろって出てくるなんて…(笑)
大川  そういうのを南京虫ニキビ、っていうんだ。(笑)
美空   えーっ、(笑)南京虫ニキビ、どうして?
大川  南京虫に食われると後がそういうふうに二つ残るだ。
美空  いったわね。さっきの仇討ちだな。もっとロマンチックに考えてよ。(笑)

☘どっちが先にゴール・イン
美空  でも”思われニキビふだとするふ<果たして誰が ???>
大川  だめだよ。(笑)マミーみたいに、仕事に夢中になって るうちは。
美空  恋人なんかできそうもない?(笑)
大川  あたりまえさ。第一、かりにできても、あんなにお母さん思いで、兄弟思いのマミーじゃ、恋人がつまんないよ。
美空  お母さんがよくいうの。「たまにはお嬢のそばから離れるから恋愛でもしなさい」って。
大川  こりやしめた!というんで一人でどこかに出かけられマミーじゃないし・・・。
美空  そうなの。どうしてもお母さんと一緒でないと、何だか淋しくてね。(笑)
大川  僕かい? やっぱり同じだな。今のところは仕事が大切なんだ。というより、 映画の魅力に勝
    てないというところだよ。(笑)
美空  そうね。仕事の魅力以上の異性が現れないかぎり。
大川  のぞみなしだ。(笑)

※「加藤和枝を愛してくれる人と・・・・・」
たしかに、こればかりは、誰にも、わからないでしょうが、でも、誰よりも早く知りたいというファンの願いも当然のこと-----。ひばりちゃんの結婚問題をいちばん早くわかる人、それはなんといつてもご当人以外にはないでしょう。
・・・・・・(ということでここからは、ひばりさんへ一問一答のコーナーになっていますので、割愛させていただきます)




(26)・・◇剣と拳の№1対談 【義兄弟だ乾杯だ】   大川橋蔵 ・ 小林 旭
(1961年7月号明星から)
この画像は、livedoorの ブログ"心の軌跡"のほうの掲載記事とリンクさせています
1961年7月号明星から
もしも、もしもこの二人の共演映画が撮れた撮れ、空前の大ヒット間違いなし!でもそんなことは、現在の映画界では・・・そこで、 本誌で初顔合わせとなりました。

もうとっくに、会っていそうなお二人が、今日、初めての顔合わせ。剣と拳銃をとっては、まさに日本一の腕くらべです。
美剣士とマイト・ガイ-----それこそ、風薫る5月にふさわしい綺麗な宵。二人はすっかり意気投合して 、かたく義兄弟の契りを結びました。

👒意外と縁がある

🔸 旭・・初めまして、小林です。
🔹橋蔵・・いつもお元気で。
🔸 旭・・今日は、橋蔵さんに初めて会うので、髭剃ってこようと思っているうちに、時間が来ちゃって失礼しました。(笑)実は、興味津々だったんです。本物は、いったいどんな感じかと思って…(笑)
🔹橋蔵・・会ってみたら、意外に、いい人だった?(笑)
🔸 旭 ・・ものわかりのいい兄貴って感じですよ。(といいながらビールをつぐ)  
🔹橋蔵・・(グーッと飲みながら)それはそうと、日活の撮影所って、どこにあるの。(笑)
🔸 旭 ・・京王多摩川ってご存知?あの近くです。 大映の撮影所もそばです。
🔹橋蔵・・長く東京を離れてると、さっぱりわかんなくなっちゃう。京都へは、めったに来ないんでしょう?旭ちゃんたちは。
🔸 旭・・そうでもないですよ。夜中に、車を吹っ飛ばしていくんです。今度言ったら、橋蔵さんを乗せてあげますよ。
🔹橋蔵・・いや、おっかなくて乗れないね。(笑)
🔸 旭・・ところで、僕は意外と橋蔵さんに縁があるんですよ。いつだったかな、内緒で 、橋蔵さんのお部屋を覗いたことがあるんです 。
🔹橋蔵・・京都の宿?
🔸 旭・・ええ。ここに橋蔵さん泊まってると聞いたから、「どこ」って女中さんにきくと、「いつも私が身の回りの世話をしてるんです」----そういって連れてってくれた。でも、中に入ってないから安心してください。(笑)
🔹橋蔵・・あそこには、3年間いた。よく辛抱したな。
🔸 旭・・今は一人住まい?
🔹橋蔵・・今のところへ引っ越してからは、大勢いますよ。
🔸 旭・・うちも、5、6年前までは小人数で静かでしたが、今は15,6人いますかね。その上、お客さんが多いし、すごく騒いでいくから、いつも後が大変。(笑)本当に台風一過って感じですよ。(笑)
🔹橋蔵・・僕も、適当な家があったらと思ってるけど、なかなかないね。
🔸 旭・・もちろん京都でしょ。    
🔹橋蔵・・仕事の都合で京都に住むけど、たまには東京の空気を吸って帰らないと、ダメですね。さあ、いっぱいどうぞ・・・(と、今度は、旭クンにビールをつぐと・・・)
🔸 旭・・(注がれたビールの泡がこぼれるのを素早く口に受けて) これは、初っぱなから、泡食っちゃった。(笑)(賑やかな雰囲気の中で東京の夜がふけます)

👒スパッと斬ると・・・

🔸 旭・・ところで、僕みたいに、アクションで殴っちゃうのも気持ちいいけど、スパットと刀で斬るのもいいでしょう。(笑)
🔹橋蔵・・いい気持ちだね。(笑)最も作品によって、斬り方は違うんです。うんとリアルにやるときと、ショーのように、観客を楽しませる斬り方と・・・・。だいたい、腹が立ったときとか機嫌
の悪いときが、一番いい調子に行くね。 (笑)
🔸 旭 ・・ひとりでに、熱が入っちゃうものなの。(笑) 
🔹橋蔵・・いつも立ち廻りの前には、誰かがムクレさせてくれるとありがたいね。
🔸 旭 ・・畜生!と思うと、僕らも、力いっぱい椅子をぶっこわしたり 、テーブルひっくり返したりしますからね。(笑)
🔹橋蔵・・でも、周りの人は、迷惑だろうね。
🔸 旭・・カラミの人は、わり食っちゃう。かわいそうですよ。
🔹橋蔵 ・・あれ、本当に撲るの?
🔸 旭・・本当にやるときもあるしこっちが、もろに撲られる場合もあります。それに、撲るはずじゃないときに、手元がくるって、本当にやっちゃうこともありますしね。
🔹橋蔵 ・・立ち廻りでも、それはあるね。刀を当てないと、倒れる感じがわからないから、構わずやってくれ・・・なんて。そんなときはビシビシあてるんです。
🔸 旭  そういえば、ときどき、バサって音がするときがありますね。痛えだろうなと、思わず同情しちゃう。(笑)
🔹橋蔵・・だから、 いつだったか、ワンカットの立ち廻りで4,5本刀を折ったことがありますよ 。
🔸 旭・・僕らだって、おかげで手なんか、傷だらけですよ。喧嘩のシーンで、ガラスのコップなんかを 、バッチリ握っちゃったりするから・・・。商売だからしょうがないけどさ。
🔹橋蔵・・その割に、スマートだ。(笑)
🔸 旭・・いや、節くれたってますよ、手なんか。
🔹橋蔵 ・・全く、映画俳優といっても、労働者だからね。
🔸 旭 ・・僕は、橋蔵さんの映画でこの前やった『八幡船』 ・・・あんなのがやりたい。
🔹橋蔵・・ああいうのは、ちょっと珍しい役だからね。
🔸 旭・・今度、橋蔵さんの代わりにやらせてくれないかな。(笑)

👒すごい迫力!

🔹橋蔵・・僕なんかも、西部劇調の時代劇をやってみたいね。やくざ姿で銃かなんか持って、笠を斜めにかぶって、馬にのって・・・。(笑)
🔸 旭・・ 銃っていえば、近頃は少なくなりましたが、以前は、うっかりしていると、手の中で爆発したんです。 しょっちゅう火傷をしてましたよ。向こうの西部劇なんかでは、弾が当たると 、 はじけて、体に穴が開いたりするでしょ。トリックにしても、すごい。
🔹橋蔵・・『革命児サバタ』のラストで、屋根の上へ一斉に出て射つシーンなんか、すごく迫力があった ね。
🔸 旭 ・・時代劇でも、刀でスパッと斬って構えると、すうーっと血のりが滲んでいる・・・なんて仕掛けはできないかな。
🔹橋蔵・・できるだろうね。その刀を見て、ニヤッと 冷たく笑う・・・いいだろうね。(笑)
🔸 旭・・向こうの海賊映画なんかでは 裸の胸に短銃をあててサッと引くと、ピッと切れる。 まさか本当に斬るわけじゃないでしょうが、実によく研究してますね。
🔹橋蔵・・そうかと思うと、体中火だるまになってるときがあるでしょう。あれで、本人は暑くないらしいね。
🔸 旭 ・・うちでもやったんですが 、アルコールを燃やして、手を突っ込んでも、さほど熱くない。手の部分の毛がジリジリ燃えちゃったけど。(笑)
🔹橋蔵・・『ベン・ハー』 では体中まる焦げになるところがあったし、『墓場につばをかけろ』では、吊るし首にして、 ガソリンをぶっかけて焼くシーンがあった。
🔸 旭・・とにかく、やることがすげえや。奇術でも習ってこないと、おっつかねえかな。(笑)
🔹橋蔵・・それに、向こうの映画で感心するのは、切られた方、撲られた方、そして、馬からの落っこち方・・・がうまい。もっとも、梯子段なんか、ゴムみたいなので出来ているんだってね。
🔸 旭・・スポール・グラスという、石綿みたいなのを使うと、見た目は、すごく頑丈そうで、転んでも 痛くないんですって・・・。
🔹橋蔵・・あんまりここで、ネタわっちゃうと、ファンの人が、つまんなくなっちゃうかな。(笑)

👒海中でカンパイ!

🔸 旭・・この間も格闘シーンで、二階から落っこちたけれど、向こうの映画をみてると、ちっとも痛くないらしい。僕らだと、落ちたとたん、ウーンといって、ワン・ポイントぐらいおかないと、
立ち上がれないんだ。(笑)
🔹橋蔵・・第一、向こうの俳優は、体のボリュームからしてちがうよ。少々ぶっ叩いたって、こわれそうにないもの。(笑)
🔸 旭・・『ベン・ハー』なんかで、馬車に轢かれて、ひきずられたりしても、ぜんぜん平気。
🔹橋蔵・・いくら月給もらっても、いやだね。(笑)東映でも高いところから飛びおりたり、飛び上がったり、平気な人がいたけれど、『七つの誓い』でぼくの吹替えをやって、そのとき捻挫してか
ら一年くらい寝ちゃった人がいましたよ。
🔸 旭・・幸い僕らは、撲るほうでよかったな。(笑)
🔹橋蔵・・ところで、旭ちゃんは、マドロスものが多いでしょ。
🔸 旭・・『流れもの』シリーズは海が舞台で、『渡り鳥』シリーズが山の舞台です。その間に、『都会の空の非常線』なんて空を舞台にして。
🔹橋蔵・・自衛隊みたいだね。空、陸、海・・・。しかしおもしろいだろうな。
🔸 旭・・とにかく、暴れていると、ご機嫌ですね。ラブ・シーンやってるより、ずっといいですよ。
🔹橋蔵・・海っていえば 、夏になっても、京都 は、海が遠いから、つまんないですよ。
🔸 旭・・泳ぎはできるし、モーターボートは回せるし ・・・。
🔹橋蔵 ・・僕は、ヨットが欲しくて、この間、カタログ集めてみたんだけど、結局 、この夏も、ヨットに乗ってる暇がないと聞いて、よしちゃった。
🔸 旭 ・・うちじゃ、裕ちゃんが、いいの買いましたよ。ベッドが四つ付いていて 、キッチンルームやバス、 トイレまであるんです。
🔹橋蔵・・そういう話聞くと、 羨ましくなっちゃう。(笑)それに、 京都の近くじゃ、琵琶湖ぐらいでしょ。
🔸 旭・・裕ちゃんのヨットは、大島ぐらい行けるって・・・。
🔹橋蔵 ・・昔は僕も、夏になると葉山へ行ってヨットに乗ってたんだ。あるときは、江ノ島までヨットで出かけたんだけど、途中でばったり風が止まっちゃってね。
🔸 旭 ・・ヨットで風が止まるほど、情けないことはないですね。
🔹橋蔵 ・・まさか、自分たちが海へ飛び込んで、ヨットを引っ張ってくるのも・・・ね。
🔸 旭・・それは、馬鹿らしいや。とてもじゃないけど 。(笑)
🔹橋蔵・・ 結局、漁船に頼んで引っ張ってもらったら、帰り着いたら真夜中。(笑)
🔸 旭 ・・いっそ、今度は、潜水艦買っちゃおうか。(笑)
🔹橋蔵・・ 自家用潜水艦てのはいいね。僕を乗っけてよ。
🔸 旭 ・・海の底でカンパイしましょう。 イカスな、このアイディア。
🔹橋蔵・・でも、考えてみると、僕たち名前だって縁があるね。大川と小林なんて・・・。川と林に 、大と小だろ?
🔸 旭・・そうか、やっぱり兄貴だな。(笑)


2023.7.15
(25)・・●◇剣と銃の№1初顔合わせ【義兄弟になりました】 大川橋蔵さん ・ 小林 旭さん
(1961年7月号明星から)
この画像は、livedoorの ブログ"心の軌跡"のほうの掲載記事とリンクさせています
1961年7月号明星から

刀もったら一文字崩し、ガンでゆくなら流し打ち、時代劇の№1美剣士橋蔵さんと、アクション現代劇トップの旭くん、こんなかけ値なしに百万ドルの義兄弟コンビが誕生しました。さあ拍手してください。

このお二人、ホントにこの日まで初対面だったんです。イガイです。
でも、テンデ話がのっちゃったんです。徹夜になっちゃったんです。
「義兄弟になろう!」とこうきちゃったワケです。でもそんな詳しいとこは対談のページをゆっくり読んでください。
「昔から橋蔵さんに会ってみたかったんですよ。刀持つのも大好きだけど、サマにならないな」という旭ちゃん。
「ピストルなんて子供の頃からもったことがないよ」という橋蔵さん。
いざ!いざ!とこんな具合になります。
(画像)
1 「写真より実物の方がいい男だね、旭ちゃん」「橋蔵さん、ぜんぜんスマートですよ」こんな
   顔合わせの映画ができたら、大変な騒ぎでしょうね。
2 浴衣でのんびりムーディーに、碁などを持ちだしちゃって、初夏を楽しんじゃったんです。
3 笑っちゃいけません、マジメでいきますシンケンで、さっ、本気でやったらどっちが強いっ 
   て?冗談言うねえ。本気でやられたら日本中の女性が困っちまうじゃねえか。



(24)・・●【ゴールデン対談】 夢ある作品で共演したいね  美空ひばりさん ・ 大川橋蔵さん
(1961年6月近代映画から)
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1961年6月近代映画から(2)
私たちは喧嘩したのではないか、と言われていますが、それはウソです!

🌸恋人がいたら
(橋蔵さんが部屋に入ってきて座りながら)
👘トミイ----マミイ、二人で対談するのは久しぶりだね。2年ぶりかな
(二人はお互いに飲み物を注ぎ合う)
🎀マミイ---トミイ、何歳?
👘トミイ----23
🎀マミイ---23は昔です。( 笑 )
👘トミイ----ハロー。(笑)
🎀マミイ---では、 健康と幸福のために・・・乾杯( 二人は楽しそうにグラスを合わせる)
🎀マミイ---どうしたの? 目・・・薬塗ってるの?
👘トミイ----塗ってる。こんなになったの。( 赤くなった瞼を指して) マミイは大丈夫だね。
🎀マミイ---この間、初めてものもらいができたわ。でも、顔が荒れて休んだことってないわ。トミイもないでしょう。ところでハワイはどうだった?
👘トミイ---十日間ぐらいだったんだけど、帰る間際に夜中の3時頃海岸のそばのビレッジ・ホテルのプールに泳ぎに行った・・・ヤシの葉音と水の音、遠くから ハワイアンが流れてくる。 途端に哀愁を感じて恋人がいたらいいなあと思ったね。(笑)
🎀マミイ---ハワイは仕事じゃつまらないわね。
👘トミイ----マミイも泳ぎに行ったの?
🎀マミイ---恥ずかしい・・・そんなこと聞かないで ・・・私は泳げないの。弟たちは飛行機に乗るまで泳いでたけど、私はもっぱらカメラマンですよ。みんなが泳いでいるのね。情けないと思ったわ。少しくらい泳げたら楽しいだろうなあと思った。
👘トミイ----泳がなくても素敵よ。
🎀マミイ---そうね。そういうロマンチックな雰囲気だけで十分だったわ。
👘トミイ----もし、二人で行く機会があったら、どうだろう。
🎀マミイ---だけど、二人でハワイ遊びに行ったら大変ですよ。 週刊誌が・・・。待ってましたとばかり「ひばり、新婚旅行の準備に・・」とかなんとか。
👘トミイ----「準備にさきがけて・・・」なんて、言われそうだね。
🎀マミイ---きっと、そんなことね。とにかく、私、飛行機に乗るのが嫌いだから・・・。
👘トミイ----ほんと?
🎀マミイ---全然、ダメ。エレベーターでもダメなんですもの。 だから今度は、ジェット機でしょう。プロペラがないから気持ち悪かったわよ。近代人のくせにそういうこと言うと笑われるけど・・・。
👘トミイ----エア・ポケットでもあったの?
🎀マミイ---ええ。ものすごいの。びっくりした。
👘トミイ----僕のときはスムーズだった。行くときは二日酔いだったから、とても楽だったけど、ただ窓から見るとプロペラがないから変な感じがしたね。
🎀マミイ---うちのお父さんが飛行場に送ってきて、みんな発っちゃってから考えたんだって・・・。プロペラがないから、あれが落っこちたらどうにもならないだろうと。そして、俺ひとりぼっちになったらどうしようと思ったんだって。
👘トミイ----毎年一回どこか旅行しようと計画するんだけど、実現できない。今年も行けなくなっちゃった・・・。しかし海外旅行はできないにしろ、休養をとらないとダメだ。やはり近代的な時代環境にひたらなきゃいけない。そういう意味でつとめて東京へ行くようにしているの。いろんな勉強になりますね。銀座一時間歩いても。
🎀マミイ---トミイは銀座歩くんでしょう。
👘トミイ----歩くよ。

🌸私は独占家
🎀マミイ---この頃流行のタイツスタイルを見たことある?
👘トミイ----見たことないけど、軽装の人が多いね。女の人・・・。
🎀マミイ---私はいくら割り切ってもできないわ。流行が変わってきちゃったわね。随分…(笑)
👘トミイ----私が若かった頃はそういうことなかったのに・・・だろう。(笑)銀座のアベックを見
ても男性が彼女の荷物を持って・・・。
🎀マミイ---いいことよ、そういうことは。 ・・・女は弱いですからね。男性がいたわってくれないと・・・今後もぜひやって欲しいわ。
👘トミイ----外国人はとても日本女性がいいっていうね。旦那さんオンリーだからね。
🎀マミイ---日本の男から見れば、女尊のハワイの男性はかわいそうね。女から見れば羨ましいと思うけど。しかし、あそこまで行き過ぎなくてもいいわね。ただ、日本とハワイの中間を取って、女は弱いものという観念のもとに女に対して行動してくれたら、すごく美しいものだろうなと思うの。今の若い人たち、そういう傾向になってるわね、だんだん・・・トミイは昔からそうだものね。
👘トミイ----そうだろうね。(笑)
🎀マミイ---私はやって会ったことないもらったことがないけど…(笑)
👘トミイ----女性というものは弱いものだからね。男はダメ。だから俺は男が嫌いなんだ。女性が好きなんだ。(笑)
🎀マミイ---いい言葉ね。(笑)トミイ、今度生まれるとき女の方がいい? それとも男?
👘トミイ----そりゃ、男だよ。
🎀マミイ---それ、ごらんなさい。私も今度生まれるとき、男になりたいわ。
👘トミイ----いいことないよ。(笑)
🎀マミイ---私なんか、ファンから気の強い女だと思われてるでしょうね、きっと・・・映画で大の男をバッタバッタと倒しちゃっているだからね・・・。
👘トミイ----しかし僕が思うに、マミイが旦那さんをもった場合、すごく旦那さん本意になっちゃうんじゃない?
🎀マミイ---そう思われるのは幸せね。そう思われないんじゃないかと私は思ってるのに・・。
👘トミイ----僕がそういったことを感じるね。
🎀マミイ---本当に真剣でしょうね。私ってすごく独占家で、ものすごく寂しがりやで、やきもちやきそうだろうと思うわ。例えば、旦那様が酔って夜遅く帰ってくるでしょう。自分はご飯を食べないで待っているとするでしょう。よく、 映画にあるように。ネクタイをこう締めて (お地蔵さんの首を締める手つきをして)女房が怒っているでしょう、そういうのは私はあまり好まないわね。
👘トミイ----すると、シクシク泣いているの?
🎀マミイ---そんなのないわよ。何か他のことで怒る形をとるのよ。
👘トミイ----(冷やかして)そういう時には刃物を持たさないことだね。
🎀マミイ---なんですって・・・(笑)まずお酒を出すのよ。そこで「やはり、家で飲むお酒はいいでしょう」って、言ってやるわよ。「家で飲むお酒とよそのお酒とどっちが美味しい ?」とかいって・・・。

🌸二人の合言葉
🎀マミイ--- 「月形半平太」ですごく女の人に惚れちゃうの?
👘トミイ----殺し屋でいくの。でもやはり、ちょっと、男女の関係がね。でも、梅松オンリーでいくわけさ。マミイは、今度「白馬城の花嫁」?
🎀マミイ---そう、その役が純情可憐な娘の役なんですよ。人を疑わない、なんでも信じてしまう。夢の多いお姫様なの・・・。
👘トミイ----たまにはそういうのもいいね、女だから・・・。
🎀マミイ---はい、女でございます。このままで演れるんです!(笑)
👘トミイ----ぼくたちが、今後、共演することになったら、ファンが思っているような、つまり、ムードのある・・・のを演りたいね。
🎀マミイ--- 「笛吹若武者」のようなのね。ファンからの投書が多いのよ・・・。 トミイとマミイは喧嘩したのでしょうか。同じ 東映にいて、なぜ、二人を出してくれないのか、私たちの夢を実現してください」というの。
👘トミイ----そう。・・・やはり現実的なものは絶対ダメですね。 夢が豊富にあるものでないと・・・。
🎀マミイ---トミイは男性的であり、女性を優しくするところがあるというひとつのムードがあっ
て・・・だから、今度沢島監督の純情可憐の娘を演ってみることがすごく楽しみなのよ。今までは勝気な役だったでしょう。それだけに私の今までのイメージを持っているファンには、印象的だと思うわ。
👘トミイ---マミイは情熱を燃やしているわけだ・・・。
🎀マミイ---何事も情熱よ。恋だってそうだと思うわ。 どっちが先に「愛しています」とか…(笑)
👘トミイ----昔から二人で会うと面白いね。今でも延長だね。
🎀マミイ---そうよ・・・。私も内向性だけどだけど、トミイもそういう傾向があったでしょう。だけど、この頃すごくウワッと発散するのね。 なんでも言いたいことをいうようになったじゃない、昔よりは・・・。
👘トミイ----昔もいってますよ。
🎀マミイ---私たち そういう風に感じなかったわ。本当は甘えて欲しいんだもの。
👘トミイ----そういう意味とお母さんの気持ちでマミイといったんだもの。僕の方が年が下だからさ。(笑)
🎀マミイ---トミイ・マミイの起原ねトミイがマミイというのに私が橋蔵さんじゃおかしいし、富さんじゃ大工さんみたいだし、結局トミイと 呼び出したの。本当からいうと、一般の人たちに知られたくない二人の合言葉だったわけよ。他の人に呼ばせたくないというのはわがままだけど、でも、でもみんな呼ぶようになったからつまらないと思っちゃったの。
👘トミイ---その点、僕が大変恵まれたんだ。・・・ファンが「トミイ」親しくいえるようにしてくれたのがマミイだからね。
🎀マミイ---この頃ノニ(チエミちゃん)ご夫婦と私の3人が話す時は「キサン」と呼び合うの。「貴様」のことを「キサン」というもんだからいい言葉じゃないですけれど。そういう意味で呼んでいるんじゃないのよ。 これからはトミイを「キサン」と呼ぶことにするわ。では、「キサン」のために乾杯!(再びグラスを合わせる)
👘トミイ----ありがとう。
🎀マミイ---いいでしょう。「貴様」という言葉は男同士で無二の親友が呼ぶ言葉ですものね。こう呼び合うあのご夫婦は結婚してもまだまだ、恋愛しているのね。
👘トミイ----いいことだね。
🎀マミイ---いいですね。あまり、羨ましがるとまた、出されちゃう。「ひばりはチエミちゃんに刺激されて・・・」なんで・・・(笑)長い間週刊誌にいじめられたからね、そのためにファンが心配して電話をかけてよこすのよ。その時私が百万べん違うといったって、ファンが嘘ついていると思ったら、それで終わりでしょう。だから、「あなたはどうお思いですか、その 週刊誌を信じるか、私を信じてくれるか、あなたの判断にお任せします。私は信念を持って生きているんですから・・・」と。 長い目で見てもらったら真実が分かることですよ。週刊誌に叩かれるのは嫌だったら、芸能界をやめることだと思うの。私はやはり、芸能界で生きたいし、それにはゴシップと戦わなきゃならないと覚悟しているの。
👘トミイ---そりゃそうだ!

🌸見学者に一言
👘トミイ----ところで、最近の所内は見学者でいっぱいだね・・・。
🎀マミイ---私達だけじゃないのよそう思っているのは。仕事に入る前には本当に仕事のことだけ考えさしてもらいたいわ。
👘トミイ----影所の門を出たら、映画俳優として愛嬌も示すけれども、仕事場は仕事オンリーにたいわけよ。セットまで行く途中においても役柄を考えているし、そのときにファンが集まってきて来て、「 あら、ふくれずらしているわ」「難しい顔してるわ」という。役になりきろうと思って苦心しているんだよ。撮影所に入ったら、少しは俳優の心境も立場も考えて見学してほしいということね。
🎀マミイ---絶対にそうだわ。化粧してる最中にラッシュだって放送されれば、お化粧の途中で外に駆け出すでしょう。すると、大勢寄ってきて写真とるでしょう。「素顔はたしたことないわ」何ていうのよ。向こうも嫌だろうし、こっちも嫌ですよね。
👘トミイ----とにかく、撮影所に見学に来るファンの人はこちらの身にもなってほしいね。いいたいことは・・。
🎀マミイ---私は枕の下に写真を入れてその人の夢を見ようとか、そういうことじゃないとつまらないわよ。現実に見たんじゃね。
👘トミイ---あまり汚い楽屋裏まで見せたくないね。そういったことはやはり、一般の人間と変わりないんだ・・・。あまりにも現実に近いところを見せるということは、夢がなくなっちゃうんじゃない。
🎀マミイ---本当よ。
👘トミイ--- サインしてくれって、とんできて、体当たりするでしょう。衣装へパッとマジックがつく。そんな状態だから逃げ廻っちやんですよ。本当に情けないよ。そういった仕事場へドカドカと入れる方も僕はおかしいと思うよ。
🎀マミイ---本当にそうね。


(23)・・●剣と歌との№1”ご対面” 私たちはファン同士です  大川橋蔵 ・ 三橋美智也
(1961年5月号明星から)
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1961年5月号明星・・②
《久しぶりに逢うファン同士の対話はほのかな友情につつまれて、あたたかな空気の流れる春宵の2時間でした》

何カ月ぶり、いや何年ぶりでしょうか---お互いがファン同士で、橋蔵さんは三橋さんの歌を愛し、三橋さんはスクリーンの颯爽とした橋蔵さんの姿にみとれる・・・といった話をしあったのがついこのあいだのように思える----
そんな思い出を車の中で語りながら、三橋さんが対談の会場へ着いたとき、もう橋蔵さんはシックな着物姿で、紫檀のテーブルを前に、ゆったりと寛いでいました。------久しぶりの再会に、思わず三橋さんの顔がほころんで「やあ・・・どうも」などといいながら、座るまもなく対談が始まってしまいました。
司会もなにもいりません。お酒がでて、さしつさされつ、春宵のひとときが静かに更けて-----

🏌️二人のレジャー・タイム

🟣橋蔵-----ふとりましたね。
🟨三橋-----いやぁ・・・(と、照れて)63キロくらいはあるでしょう。あまりふとらないようにしているんだけれど・・・歌のほうはふとったほうが本当は疲れないですむんですけれど・・・
🟣橋蔵-----そうですか------
🟨三橋-----それでこの頃はすっかりゴルフにこっちゃってね。美容のためと・・・(笑)それに、第一おもしろいですよ。
🟣橋蔵-----ぼくも、ハワイへ行ったときクラブだけは買って来たんだけれど、なかなか暇が・・・
🟨三橋-----ぼくはワリと暇がつくれるんですよ。仮に一ヵ月に十日なら十日、実演と決めてしまうと、それから割り出して、自分の勉強の時間とか、休養の時間とか・・・そこへゆくと映画に入ったときは、本当にシビレましたよ、末だけのことで・・・
🟣橋蔵-----映画は待つのが仕事みたいなもんだから・・・それに今年は会社から、15本撮ってくれなんていわれているから・・・
🟨三橋-----15本ということは一ヵ月に1本半ですか・・・つらいですね。
🟣橋蔵-----だから、今年も外国へはゆけないし、いまはやりのレジャー・タイム、なんていうものは楽しめない。(笑)
🟨三橋-----しかし、あなたは身体が丈夫だから・・・
🟣橋蔵-----ええ、ワリと・・・
🟨三橋-----でも、できるだけ遊ぶ時間は作りなさいよ。ぼく、昨日イノシシの75キロあるのをとりましたよ。
🟣橋蔵-----鉄砲もおやりになめ!
🟨三橋-----(笑いながら)・・・ええ、よくでかけるんですよ。
🟣橋蔵-----鉄砲には、こっちにものすごくいいところがありますよ。丹波はハトでもキジでも、自動車でちょっと1時間くらい飛ばしていくと、いくらでもいるんだもの。
🟨三橋-----度、一緒に行きましょうよ。
🟣橋蔵-----ええ、レジャーを作ったらね。(笑)

🍶働いたあとはお酒が
・・・こんな、くだけた話が続いて・・・

🟨三橋-----橋蔵さん、タバコは吸わないんですか?
🟣橋蔵-----ええ・・・
🟨三橋-----それは、めずらしいね。やっぱり、その・・・美容の関係から・・・
🟣橋蔵---- (笑って) いや、そういうわけではないんだけれど・・・二十のときかな、二十一のときか、一度吸ったことがあるんですよ、そうしたらクラクラッときちゃったからそれで、すぐやめちゃったんです。
🟨三橋-----じゃあ、撮影のときなんか・・・
🟣橋蔵-----ええ、映画でタバコを吸うシーンがあるでしょう。ぼく、本当に吸えないんだから、ふかしているの。あとで、ラッシュを見ると、やっぱりふかしているように、写っていましたよ。(笑)
🟨三橋-----なぁるほど・・・(と、感心してしばらくたってから)なんだ、当たり前の話なんでしょう。橋蔵さんもヒトがわるいや。(笑)
🟣橋蔵-----でも・・・。お酒はナミですよ。
🟨三橋------ぼくも、お酒はナミ・・・いや、ゴーケツのほうかも知れないね・・・(笑)
🟣橋蔵-----飲みすぎると、ノドを痛めませんか。
🟨三橋-----いや・・・飲みすぎるほどなんて、飲んだことないですよ。やはり、無意識のうちに自分で節制しているのかもしれませんがね。
🟣橋蔵-----ぼくも、疲れて帰って来て、それから一杯・・・っていう気分わるくないと思いますよ。・・・このごろ、つくづくそう思う。
🟨三橋-----働き過ぎ・・・じゃないですか?
🟣橋蔵-----そりゃ・・・自分でいうのもおかしいけれど、よく、ぼくは仕事をしますよ。なんの文句もいわずに・・・賞でももらわなくちゃ・・・(笑)
🟨三橋-----それに、全部主演でやっていらっしゃるから・・・たいへんですよ、ね。
🟣橋蔵-----でもね、死んだうちのお父さんの教訓でね、人間はやっぱり働いているときが一番いいんだ・・・なにをおいても働いていれば人生に間違いはない・・・って。
🟨三橋-----それを守っていらっしゃる。確かに、そうだね。ぼくだって、実演のないときなんか淋しくなってくる。そのお父さんの言葉、確かに真理ですね。
🟣橋蔵-----だから・・・働いたあとのお酒は気持ちがいい・・・っていうわけですよ。
🟨三橋-----思い通り、働いたあとは本当にいい気分ですね。


🍀仕事はがめつく
遊びの話からお酒の話・・・とすすんでくると、その次は仕事の話にかわってき
ます-----

🟨三橋-----ところで、いまお仕事は・・・
🟣橋蔵-----若き日の頼朝、「富士に立つ若武者」なんです。
🟨三橋-----現代劇なんかどうですか・・・
🟣橋蔵-----それが・・・すごくやりたいんですよ。今年は無理だとしても、来年は是非・・・と思ってるんですよ。ただぼくのやりたいという現代劇と会社がやらせようと思った場合の現代劇と違うでしょうけど・・・
🟨三橋-----会社ではやはり現代劇でも美男美女といった・・・そういうイメージのものをさせたいのでしょうね。
🟣橋蔵-----そうそう、例えば、「残月物語」だとか「鶴八鶴次郎」だとか・・・。ぼくは、それだったらイヤなんですよ。ぼくはやはり、現代の生活の息吹が感じられるテーマの主人公----そういうものでなけりゃ、現代劇をやっても、おもしろくないと思うんですよ。
🟨三橋-----いまの若い人には、心中ものとか、そういうものわかんないでしょうね。
🟣橋蔵-----ええ、だけど去年のヌーベル・バーグみたいなものはついていけないと思うんですよ。
🟨三橋-----ただ、現代劇をやる以上、なにか橋蔵さんらしいものを、やってもらいたいな。
🟣橋蔵-----そう・・・それに、おなじ現代劇という冒険をするのならば、トコトンまで冒険したい、っていう気があるんですよ。
🟨三橋-----でも、会社としても冒険になってくるから、なかなかウンとはいわないでしょうね。しかし・・・そういう意欲というか、抱負を持つことは、これからの芸能人には必要なことなんでしょうね。
🟣橋蔵-----そう思いますね。三橋さんだって、いつも新しいゆき方を研究しているじゃないですか。
🟨三橋-----ええ、今年のお正月にね、「キサス」を歌ってみたんですよ。まぁ・・・ぼくがああいうポピュラー・ミュージックを歌うなんて、思いもよらぬことらしいんですがね、ファンには・・・。でも、好評だったですよ。是非日劇でやってくれ、なんて・・・恥ずかしいからやめちゃったけれども・・・
🟣橋蔵-----かえって観客が喜ぶんじゃないですか。
🟨三橋-----・・・とも、思うんです。だから、ペリー・コモ・ショウみたいなのも狙っているんですが・・・。今度、海外へいって、新しいスタイルを、ナイトクラブとかいろいろ見たりして、ネタを仕入れてきますよ。日本だけにとどまらないで・・・

🍀ほしい暮しのムード
・・・と、仕事のかたい話にはずんだところで、お茶漬けがでると、今度はぐっと家庭的な話題にかわっていきます----

🟨三橋-----橋蔵さん、家を建てられたんでしょ。このあいだ雑誌にでていた・・・明星かな?
🟣橋蔵-----買ったんですよ。買ってちょっと直しましてね。自分の気に入るようにしたんですが、おヒマだったら寄ってくださいよ。
🟨三橋-----やあ、どうも・・・。実はぼくも家を建てているんです。
🟣橋蔵-----ほう、洋風ですか?
🟨三橋-----鉄筋で、冷暖房出来るように建てているんですけどね。家を建てれば、また稼ごうって仕事のファイトも湧いてくるというものですよ。(笑)
🟣橋蔵-----ぼくも・・・東京の家を引越さなければならないので----
🟨三橋-----京都へ引越すわけにはいかないんですか?
🟣橋蔵-----そうはいかないんですよね。やはり、東京に一軒もたないと・・・。だから、困るんですよ。おおいに働かないと・・・(笑)
🟨三橋-----それがいいですよ。そして家を建てたら、いよいよ結婚ということですね。(笑)
🟣橋蔵-----わはゝゝゝ(と、大笑い)
🟨三橋-----笑っちゃいけないよ。
🟣橋蔵-----ぼくはしませんよ、当分のあいだ・・・
🟨三橋-----ゆくゆくはするだろう。
🟣橋蔵-----そりゃ・・・やはり、男だからね。
🟨三橋-----ぼくははやかったですよ。25のときだから・・・でも、ぼくの場合はよかったような気がしますよ、仕事に対して・・・。だから、あなたも・・・
🟣橋蔵-----現在はちょっと、精神的に難しいでしょうね。なにしろ、いまの状態だったら生活にムードがないね。
🟨三橋-----忙しすぎるということだね。
🟣橋蔵-----生活がないもん。人間的、精神的な余裕がなくっちゃ・・・結婚はできないと思うんです。たとえば、気候のいいときなんか海辺へ行ってスーッとしてると、情緒というか、なにか感じとれる場合があるでしょ。小さいとき、よくそういうことがありましたよ。なにか、そういった詩情みたいなものが私生活のどこかにいつもあるわけですよ。それが精神的に落ち着いてないから、感じとれないんですよ。そういう一つの余裕というものがほしい・・・というのが現在のぼくの最大の希望ですね。
🟨三橋-----(しんみりと・・・) なるほど、同感だな。ひとつ、ゆっくりと海外旅行でもしたらどうなの・・・
🟣橋蔵-----それができればね・・・

🍀また、橋蔵まつりで
-----と、いつか二人の会話は”友情”の感じとれるような話になっていました。
街は-----もう灯も消えようとする11時に近く、朝の早い橋蔵さんは、そろそろ帰らねばならない時間です。でも、名残り惜しそうに----

🟣橋蔵-----明日はロケなんだ。今度はいつ逢えるかな。(と、思い出したように)あ、そうそう、9月の歌舞伎座頼みますよ。(9月17日予定の橋蔵まつりのこと)
🟨三橋-----大丈夫、大丈夫。もうちゃんと、スケジュールとってある。盛会を祈るよ。
🟣橋蔵-----また、それまでに逢えるでしょう。
🟨三橋-----そうね、あんたがレジャーをつくったら、東京から飛んでくるよ、鉄砲にでも一緒にいこうよ。
🟣橋蔵-----ああ、約束はできないけどね・・・
(と、色紙に書いた三橋さんのサインを見て)
🟣橋蔵-----随分、変わった字だなあ。(笑)
🟨三橋-----小切手に使うんですよ。小切手はこの字でないと、銀行から帰ってきますよ。
🟣橋蔵-----銀行の字ですね。(笑)
🟨三橋-----人には絶対マネできないですよ。
🟣橋蔵-----そうだろうね(と、感心しながら立ち上がる)
三橋さんも立ち上がって、玄関まで送る・・・
🟨三橋-----じゃあ、お元気で、体だけは気をつけてね。
橋蔵さんの車が立ち去るまで見送る三橋さん。
空には春の月がおぼろで------明日も天気はいいらしい。



(22)・・●初夢対談 『若さまとあんみつ姫』 大川橋蔵さん・鰐淵晴子さん(1961年3月号近代映画から)
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1961年近代映画3月号から
僕は現代劇で共演したいねと橋蔵さん!私は時代劇で共演したいわと晴子ちゃん!なにはともあれ、橋蔵さんと晴子ちゃんのご両人は、そろって共演したいのが夢だとか・・・。銀幕より一足お先に誌上で二人のお喋りを聞けば!

✈️憧れのヨーロッパ
◆橋蔵---晴子ちゃん、今年からはママと一緒じゃなくても大丈夫?一人歩きできる?
◇鰐淵---まあ、ひどい(笑)私、もうそんな子供じゃなくなってよ。
◆橋蔵---ごめんごめん。(笑)それはそうとお正月映画の「あんみつ姫」で初めて時代劇に出たそうだね。
◇鰐淵---ええ、とても楽しかったわ。時代劇には夢があるわね。でも着物にカツラは弱いわ。とくにカツラは頭が痛くって参っちゃった。
◆橋蔵---本当に時代劇は夢があるね。メーキャップ一つで顔から年齢まである程度、自由に変えられるし、スーパーマンにだってなれるしね。
◇鰐淵---時代劇は「あんみつ姫」一本きりだったけれど、大変好きになっちゃった、出ている間は毎日が面白かったわ。
◆橋蔵---それはよかった。でも僕は晴子ちゃんの魅力はフレッシュでぴちぴちしたそのままの姿にあると思うね。その意味では時代劇もタマにはいいけれど、本命はやはり現代劇のほうじゃないかな?
◇鰐淵---そうかしら?自分ではよく分からないけど。
◆橋蔵---そうだよ。僕は一度晴子ちゃんと現代劇で共演してみたいとおもっているくらいだ。
◇鰐淵---あら反対ね。わたしはまた橋蔵さんと時代劇でご一緒してみたい。夢でしょうけど実現できれば晴子最高だわ。
◆橋蔵---おやおや(笑)真向から意見が対立してしまったね(笑)これじゃ、残念だけれど二人一緒に仕事が出来ないことになる(笑)
◇鰐淵---私はこれからも何でもやるつもりなの。だってまだ若いんですもの(笑)
◆橋蔵---大いに賛成。若いうちに何でもやっておくことだよ。晴子ちゃんほどじゃないけれど僕だって若いんだからそう思っているよ。夢を大きく持つことは毎日が楽しいからね。たとえ、それが実現できても、出来なくっても🈂。人生に希望がもてるというもんだよ。何だか人生論になってしまったけれど(笑)夢と希望をもつことは若いものの特権だものね。
◇鰐淵---話が変わるけれど、私ね、去年、欧州へ旅行にいったでしょ。これは大へん楽しかった、勉強にもなったと思っているの。
◆橋蔵---そういえば晴子ちゃんの旅行記を雑誌や新聞でいろいろ読んだね。あれは確か5月頃だったね。
◇鰐淵---ええ。5月5日から7月20日までの旅行だったの----。橋蔵さんが外国へ行くとしたらどこへいらっしゃる?
◆橋蔵---そうだね。僕なら北欧だね。知らないけれど何だか地味な感じで好感がもてそうだ。
◇鰐淵---スウェーデンの女の人はとても美しかったわ。是非、一度行ってください(笑)
◆橋蔵---どうもありがとう。(笑)何だか今年あたり行かないと晴子ちゃんに悪いみたいな気がしてきた(笑)
◇鰐淵---あまり宣伝して橋蔵さんが行ったきりになったりしちゃファンの方に叱られるかな(笑)
◆橋蔵---向こうが気に入って住み着いたりしちゃ大へんだね(笑)僕もね、去年の4月に十日ほど、ハワイに舞台挨拶へ行ったけど、なんだか、命の洗濯ができたような気がしたね。
◇鰐淵---外国へ行って一番に感じたことは、日本の食べ物が一番おいしいということ。
◆橋蔵---うん、そうかもしれないね。日本位、あらゆる食べ物、各国の料理が簡単に食べられるところはないだろうよ。晴子ちゃんは食べ物では何がお気に入りなの。
◇鰐淵---私、あまり好き嫌いしない方なの。たいていのものなら、おいしくいただいちゃう方だわ(笑)

🎩お餅が大好き
◆橋蔵---僕もなんでもおいしくいただく方だ(笑)それで健康なんだよ。きっと(笑)
◇鰐淵---そう。私もだわ(笑)
◆橋蔵---ところでお正月とお餅はつきものだけれど、晴子ちゃん、お餅好き?
◇鰐淵---私大好き(笑)ママも好きよ。安倍川なども。それにおぜんざいも。大の甘党なの。
◆橋蔵---僕も好きなんだ。だからお正月休みで東京へ行き今度来ると俄然肥って丸くなっている(笑)お正月にまつわる何か面白い話ない?
◇鰐淵---そうね。4年ほど前のお正月だったと思うけど、家のスピッツが近所の大きな犬に追っかけられて逃げ場を失ってドブの中にはまったことがあるわ。私とママと書生さんの三人が雪の中を滑ったり転んだリ、助けるのに泥んこになって本当に大へんだったわ(笑)折角のお正月の洋服も顔も真っ黒になってしまって、三人顔を見合わせて大笑いしたわ(笑)助けるのに一生懸命で夢中だったのね。
◆橋蔵---見たかったね。その時の晴子ちゃんの顔を(笑)
◇鰐淵---まあ、ひどい(笑)
◆橋蔵---僕は子供の頃から歌舞伎の世界で育ったでしょう。だから、昔からのシキタリに従って、子供でも朝から紋付き袴に威儀を正して、夜おそくまで挨拶廻りをさせられた。ほんの子供だったもの、辛かったね。他の子供たちと一緒に凧揚げやかるたをしたい気持ち分かるだろう?それが一日中大人たちと一緒で遊べなかったんだから、心から楽しい子供の頃の正月はなかったね。
◇鰐淵---私など歌舞伎の世界のことは全然わからないけれど、大変ね。でも、歌舞伎は時代劇と似ているんだから今考えると、よかったんじゃない?
◆橋蔵---それはいえるね。僕なんか、7つの時から舞台で鍛えられたから、映画の世界でも、ちょっとやそっとのことではへこたれないだけの自信はあるね。それにお芝居の上でもいい勉強になっているのも間違いないね。
◇鰐淵---私なんか、これからどんどん鍛えてもらわなくちゃならない方ね(笑)
◆橋蔵---いいね(笑)その意気込みで・・・。

🐧トンカチ克服!
◇鰐淵---話が変わるけれど、橋蔵さんは時候ではどの季節が一番お好き?
◆橋蔵---僕は夏が一番好きだ。
◇鰐淵---私も断然、夏よ。でも残念なことに泳げないのよ。
◆橋蔵---へえ!全然駄目なの。
◇鰐淵---ええ、カナヅチ(笑)
◆橋蔵---海は危ないから、ママが出してくれないんだろう。
◇鰐淵---それもあるけど、水に弱いのかも知れないわ。
◆橋蔵---これからの近代女性たるもの、泳ぎぐらい出来なくては駄目だよ。僕が先生になろうか?
◇鰐淵---ええ、お願いします。今年の夏は一番に泳ぎの練習をやるわ。
◆橋蔵---それ以外に晴子ちゃんの好きな夏のスポーツは?
◇鰐淵---私ね、毎年。軽井沢でテニスをやるの。とても楽しい。
◆橋蔵---皇太子御夫妻だね(笑)とにかく、何もかも忘れて思いきり遊ぶことも時には必要だね。我々のように年中仕事に追われている人間にとっては絶対欠かせないと思うね。
◇鰐淵---私も大賛成(笑)
◆橋蔵---大人になって悔いのないよう、晴子ちゃんも楽しい思い出を沢山作っておくことだね。それに、これからの俳優さんは、どんなスポーツでも知っていればプラスになるからね。身につけておけば、きっと役にたつよ。
◇鰐淵---そうね、これからの若い人には絶対必要でしょうね。
◆橋蔵---それはそうと晴子ちゃんは何人家族?
◇鰐淵---パパとママと妹の四人家族なの。
◆橋蔵---お正月は四人が全部揃ったというわけね。
◇鰐淵---ええそうなの。今日もお雑煮をうんと食べてきたとこなの。
◆橋蔵---妹さんは学校?
◇鰐淵---ええ、新制中学。それがね、私より背が高いのよ。だもんだから、妹と一緒に歩いていると「お姉さんですか?」っていわれる時もあるの(笑)
◆橋蔵---ホウそんなに大きいの。すると喧嘩をすると晴子ちゃんの方が負けるんじゃない(笑)
◇鰐淵---とんでもない。第一喧嘩なんかしないもの。
◆橋蔵---去年の暮は「あんみつ・・」で京都暮しだったんだろうけど、京都はどうだった?
◇鰐淵---晴子大好きになっちゃったの。ママも「落ち着いていい」って。お宮やお寺が美しいし、女の人の着物姿がとても素晴らしいと思ったわ。
◆橋蔵---えらく気に入ったようだね。
◇鰐淵---ええ。とっても。ママと話したんだけど「京都に住もうかしら」って(笑)
◆橋蔵---晴子ちゃんなど京都の町より東京の方が好きじゃないかと思うんだけど。
◇鰐淵---そう勝手に決められちゃ困るわ(笑)
◆橋蔵---僕も映画に入って以来、京都に住んで京都のよさも分かるけど、僕はたまに東京に出て何か新しいものを吸収したいね。京都だけに安住しないで、東京の刺激も必要だと思うよ。
◇鰐淵---そうすると、橋蔵さんも時には東京で現代劇をとることだわ。
◆橋蔵---そう早合点してもらっては、こんどは僕が困る番だよ(笑)
◇鰐淵---京都で感じたことをもう一度いうと、東京に較べて着物姿の雰囲気がとてもよかったことだわ。東京の若い人は殆どスラックス・スタイルでしょう。特に印象に強かったのね。
◆橋蔵---晴子ちゃんは洋服もいいけど、着物姿も美しいだろうね。
◇鰐淵---どうも有難う。でもね、今思い出してもおかしいけれど、「あんみつ姫」のお仕事で着物を着た時は、足がしびれて本当にこまっちゃったのよ(笑)
◆橋蔵---時代劇は、座ってのお芝居が何といっても多いから、着物を着慣れない人はみんなそうだね。けど、そんな風じゃ、さっき時代劇に出たいなんていってたけど、本格的な時代劇じゃ大へんだよ。
◇鰐淵---平気よ。足がしびれる位。今年はもりもりとお仕事をやるつもりなんだから。
◆橋蔵---よろしい、そのファイトだ(笑)もっと欲をいえば時代劇だけでなく、テレビ・ドラマや舞台などもやってみることだね。
◇鰐淵---ええ、その積りよ。

☘うし年でも暴れよう
◆橋蔵---僕は歌舞伎にいた時分は、大人の人たちが相手だっただけに、年齢よりも老けてみられていたんだよ。されが映画に入った途端に若い人たちばかりが相手なものだから一ぺんに若くみられるようになったね。事実気持ちもぐっと若返って、ファイト満々というわけだけどさ。
◇鰐淵---そうね。若さをいつまでも大切にすることが一番必要なんでしょうね。
◆橋蔵---ところで晴子ちゃん、去年は映画、何本でたの。
◇鰐淵---昨年は、さっきいってた旅行で抜けたせいもあって5本なの。でも、外国へ行ったことが、きっと、映画の上でも役に立つことがあると思うのよ。
◆橋蔵---もちろん、そうだよ。僕もいろんな意味で収穫があったと思ってるんだ。「海賊八幡船」があったし、「炎の城」も撮ったからね。意欲に満ちた年であったと思うね。むろん、今年も頑張るけれどさ・・・。晴子ちゃん、今急に思い出したんだが、本職の方はどうなの?
◇鰐淵---本職?
◆橋蔵---話が終りに近づいて聞くのもおかしいけど、ヴァイオリンの方だよ。
◇鰐淵---何時も持ち歩いているのよ。去年、京都へ行っていた時も、撮影の合い間やら、宿屋らで、ひいていたわ。
◆橋蔵---えらいね。今日、ひいてもらえないのが残念至極(笑)
◇鰐淵---京都の宿で、キイキイいわしている時は、隣りの部屋の人に気の毒だったわ。
◆橋蔵---えらくご謙遜だね(笑)そうそう、若さの話をしていたんだね。若いということは動きがあるということだから、今年はウシ年だけど、大いに動き廻って、駆け廻りたいものだね。
◇鰐淵---ええ、今年は橋増さんに負けないように頑張るわ。
◆橋蔵---僕こそ、晴子ちゃんに負けないように頑張るぞ(笑)それから、晴子ちゃんは何時もママさんと一緒だけど、甘いものを食べ過ぎてお腹をこわしたりしてママに心配かけちゃダメ。
◇鰐淵---ええ、ママには何時も感謝のし通しよ。だから、その点は大丈夫。本当に一度、橋蔵さんとご一緒にお仕事をしましょうね。
◆橋蔵---うん、是非ね。晴子ちゃんと一緒にやろう。それを楽しみにさようなら。
◇鰐淵---さようなら。



(21)・・・●フォトストーリー『雪の鶴』  作・・大島 渚
  北川 明・・大川橋蔵  藤原ゆき子・・丘さとみ  多吉・・田中春男
この画像は、livedoorの ブログ"心の軌跡"のほうの掲載記事とリンクさせています
フォトストーリー『雪の鶴』

高校生時代に誓った清らかな愛情、そして雪の夜に、はかなく消えた、悲しい慕情・・・映画では見られないトミイの現代劇ここに初公開!

『夕鶴』は、鶴の恩返しのものがたり、鶴は人間の女「つう」に姿を変え、恩人の男「与ひょう」のために羽をぬいて美しい布を織る。布は高く売れ、やさしかった男の心にいつしか欲がめばえ、むりじいに降り続けさせる。鶴はやせ衰え、ついに男のもとを去って行く。

ここは織物の街、京都西陣 
冬の夜、
紅がらごうしの立ち並ぶ小さな路地、その凍りついた人けのない通りを、旅姿の一人の男が歩いていく、北川明
明は一軒の店の表に立つ
しかしその表札は、明の知っているものとは変わっていた、織機の音は昔のままに聞こえるのだけど
無理もない、明が捨てるようにこの街を出て東京へ去って7年も経つのだ
明は、かじかんだ手を粋で温めながら発ち尽す、そして、思い起こす-----

そこには藤原ゆき子がすんでいた、父と二人で小さな機織りの店を守っていた
ゆき子は病身の父を助けて、高校生の身で職人たちを使い、学校から帰るとみずから機の前に立つのだった
そんなゆき子を、明はいとおしみ、人並みの明るい学校生活を送れなかったせめてもの想い出にと、卒業前の文化祭の演劇に引っぱりだした、
それが『夕鶴』だった

ゆき子の「つう」は、美しく、悲しく、気高かった
明の「与ひょう」は見事に素朴であった
舞台の上の二人は、本当に愛し合っているように見えた
「・・・与ひょう、あたしを忘れないでね、あたしもあんたを忘れない、ほんの短い間だったけれど、あんたの本当に清い愛情に包まれて・・・あたしは決して決して忘れないわ、どんなところへ行っても・・・いつまでも」

二人は北山の小さな寺にあるゆき子の母の墓の前で愛を誓った
と同時に、それは悲しい別れでもあった
明は、演劇への情熱に燃え、東京へ出るのだった、ゆき子にはもちろんその自由はなかった
明は家の反対をおして行くのだった、悲壮だった、数年の後、ゆき子を連れに帰るだけが希望だった
そして二人はその日まで、手紙も出さずに待つことに決めた

それから7年、今は自分の家もない京都に、明は希望に燃えてゆき子を連れに帰って来たのではなかった。
しかも、ゆき子はいない、明は空しい自嘲の笑いを浮かべながら屋台にすわった
「あんたはん・・・」とおやじが声をかけた
明は驚いた、ゆき子の家の職人だった多吉という男である
「おう・・・お店はどうなったの?」
ゆき子の父が死んだこと、ゆき子一人ではやはり無理で店を手離したこと・・・
「そいから、お嬢はんは今・・・」
明は胸がふさがった
「・・・祗園でバーのやとわれマダムしてはります」
明は胸がつぶれる思いであった。

おやじに連れられて、明はゆき子のバーの表へ行った
そして、はなやかに装い、はなやかに客を送り出すゆき子を見た
声をかける気にはならなかった

翌日、一夜をおやじの好意で過ごした明は、北山の小さな寺に来た
そこにはゆき子が立っていた
「ゆきちゃん!・・・どうしてここへ?」
ゆき子は、おやじに明がここに来ることを知らされたのだった
二人は手をとりあった、ゆき子の眼には涙があふれ明の眼もうるんでいた

二人は川のほとりの料理屋に入った
「奥様」と女中に呼ばれて、ゆき子は手すりにもたれつぶやいた
「よひょう、あたしを忘れないでね、あたしもあんたを忘れない、ほんの短い間だったけれど、あんたのほんとうに清い愛情につつまれて・・・」
明は驚いてみつめた
「これ、私の口癖、お店にいて少し酔うといつもでるの・・・」
そう言ってゆき子も見つめ返した
障子越しに見える二人は、まるでかつての「与ひょう」と「つう」であった
「お仕事は? 演劇、つづけてはる?」
明は言葉をにごして答えなかった
「京都へは? 何しに?」
「・・・ごめんよ、君を連れにじゃないんだ」
明は鐘がいるのだった、劇団の公演で出した赤字を埋めるために借金をかさね、それを返すために預かった公金を使ってしまったのだった、その金を都合するために京都へ来た、明はそう言った
しかし、明はすべてを言ったわけではなかった、明はすでに公金を持ちだしたことで警察に追われる身だったのである、それを逃れあるいは捕まる前に一目ゆき子に会いたかったのであった。
「いつ、私を迎えに来てくれはる」
話を聞き終わって、ゆき子はそう聞いた、明は答えない
ゆき子の顔には絶望とある決意が浮かんだ
「私が、お金、都合します、さしてください、お願い----」

その夜はクリスマスだった
バーは、はなやかににぎわっていた
ゆき子は、長い間彼女を追いかけていた客に金の都合を頼んだ、もちろん体を任せるという条件がついていた

明は、屋台でおやじを相手に飲んでいた
それはさびしい、しかし明にとっては再生のクリスマスであった
「おやじ、ほんとうにありがとう、ぼくはただ金の都合がつくだけじゃなく、もう一ぺん元気をだして何もかもやり直す勇気が出た、あえてよかったよ、ほんとに」

粋な日本座敷の障子のかげ、ゆき子は着物を脱いだ、「つう」が羽をぬいて「与ひょう」のために布を織ったように
明は、ゆき子のバーの表に立った、約束の時間であった
その時、明の腕は両方から捕まれた、私服の刑事であった
クリスマスの喧騒の中を明はひかれて行った

凍りついた小路を、ゆき子は裾野乱れを気にせずに急いでいた、その表情には深い満足があった
突然、その前におやじが立った----、ゆき子の表情は凍りついた
ゆき子は手にしたハンケチ包みを投げた、紙幣が雪のように乱れ散った
ゆき子はその雪の向こうに一羽の鶴を見たのかもしれない
そして立ち尽すゆき子の上にはほんものの雪が降り始めた     (おわり


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