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一網打尽に抑えろと紅鶴様のお告げかな翌日、舟祭りで浜辺も沖もにぎわっています。浜辺は神輿が繰り出し大変な人混みになっています。沖には大漁旗をなびかせた華やかな舟が浮かんでいます。その一艘に若さまが網元の酌で杯をかたむけ楽しそうな表情でいます。 ゴマ壇が設けられた祈祷所では和尚や僧侶が祈りをあげています。爆竹が鳴り、神輿が海の中に入り祭りが佳境に入ってきた時、「火事だー」という声がします。沖に出ている舟に乗っていた若さまや網元たちがびっくりして浜辺の方を見ると、祈祷所が火に囲まれ燃え上がっています。若さまは急ぎ舟を力一杯漕いで浜辺に行きます。 「どうしたんだ」という若さまに、糸平が「和尚さんが火の中に・・」と聞き、「なに」と言う若さまの表情には、何か厳しいものがあります。 その日の夜、寺の本堂では火事で助からなかった和尚の葬儀が行われています。黒い影が紅鶴屋敷の密室に近づいていきます。その密室の中には兄の来るのを待っているお千代がいます。「兄さん」というお千代に黒い影が覆いかぶさります。「きゃーっ」と叫ぶ声に天井から飛び降りたのは若さまです。黒い影はもの凄い勢いで逃げていきます。かけつけた小吉と甚兵衛と共に若さまももの凄い勢いで追います。 黒い影は網元茂兵衛の家に逃げ込みます。若さまたちもすぐにかけ込み、見たものは・・・土間にぶら下がった網元の死体でした。若さまは思わず「網元」と言葉を発します・・そして何かを分かったように、若さま「小吉、来い」 若さまが行った先は越後屋清左衛門が埋められている墓・・・小吉と甚兵衛が墓を掘り返して棺桶を開けてみると中は空っぽです。若さま、小吉、甚兵衛が「あっ」とした顔を・・若さまはやっぱりというような表情をします。 小吉 「清左衛門、清左衛門の死体は?」若さま「舟祭りで黒焦げさ」その時、背後に殺気を感じとります。 和尚 「若僧、おとなしく手を引け」若さま「はっはっはあ、とうとう海賊の正体現したな」 和尚 「なにぃ」若さま「さすがは抜けに買いの大頭目だ、一度死んでもまた生き返る。見事な手品 うつじゃねえか」和尚 「やかましいやい」若さま「ところがだ、上手の手から水が漏れた。江戸の殺しも清左衛門も、見せし めの鶴さえ置かなきゃバレなかったのよ」和尚 「命のあるうち、とっとと帰れ」若さま「けえれねえな」和尚 「若僧、あれが見えぬか」和尚が指さすと、若さまのまわりをぐるりと海賊どもが取り囲みます。若さまは笑い出しこう言うのです。若さま「こいつは面白くなって来た。舟祭りに事寄せて、より集まった抜けに買 い、一網打尽に抑えろと紅鶴様のお告げかな。小吉、急ぎな」と言い、小吉が行こうとしたとき、和尚の「叩き斬れ」で立廻りになります。 (立廻り) 葬式が行われている本堂へと場所は変わっていきます。和尚を追って若さまが本堂へ入っていきます。不気味な静寂の中、若さまが本堂の中心へ来たとき、鎖がまの分銅が若さまを狙ってきます。 和尚のふり回す鎖がまに若さまも苦戦します。分銅が若さまの大刀に絡みます。和尚が鎖を引いていき若さまは刀を落してしまいます。若さまとっさに小刀を抜き、かかって来た和尚を差します。 残っている海賊たちがまた若さまにかかって来ます。若さま、大刀を取り、二刀流で立ち向かいます。「若さまー」と大勢の撮り方を連れた小吉の声が聞こえます。 町の皆が紅鶴屋敷に集まっています。若さまがいろいろ起った事件の謎解きをしています。紅鶴は海賊のしるしだった。和尚は抜けに買いの頭目、毎年舟祭りを名目に抜けに買いの集まりがあった。越後屋清左衛門は抜けに買いの一味で、和尚とあの晩仲間割れをした、そのため清吉を締めあげている越後屋を後ろから一突き。六助があの晩帰って来たと思ったのは佐竹で、佐竹が網元に殺されたというのはよだれくりの丁松の真似で分かった。網元は佐竹を殺して折角獲った金を和尚に巻き上げられ、紅鶴屋敷の密室のことまで喋ってしまった。佐竹が殺された晩にきたのは和尚だ。若さま「ところで、・・ここで俺は困ったよ。舟火事で和尚が死んでいるんだ。それで、お千代坊と張っているところへ来たんだね、これが」皆が声を揃えて「誰が?」と言うと若さま「死んだはずの和尚なんだよ」甚兵衛「網元がころされたのは?」若さま「あいつは、和尚の悪事を知り過ぎたのさ」 (お千代のナレーションで)こうして紅鶴屋敷の謎も解かれ、また元通りの静かな漁師町に戻りました。若さまは紅鶴の船の若者さながらに、朝日の中を去って行かれました。折鶴の姫の願いをかけた私を残して・・・「若さま、若さま、若さまー」 (完)
2019年05月26日
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紅鶴の船ってえのは海賊船かあお寺の本堂には、明日の舟祭りのために大勢の信者たちが集まり酒盛りが始まろうとしたところに、本堂の表に若さまの「頼もう」という大きな声がします。その声に驚いて和尚、網元を始め信者達が顔を見合わせていると、若さまは遠慮なくどんどん入って来て若さま「和尚、ご馳走にあやかりたい」そう言って、若さまは和尚の前に座り込みます。 和尚 「ようこそようこそ、信者の衆にお引き合わせ申そう。皆の衆、このお武家 は江戸のお方でな・・」その後は、若さまが自分で自己紹介します。若さま「数日前よりこの町にご厄介になっておる、江戸は柳橋米沢町、喜仙舟宿の 居候、人呼んで若さまってんだあ。よろしん頼むぜ」と言うと、和尚のお膳から盃とお銚子を取り、若さま「おう、さあさあ、さあ皆遠慮しないで、がぶがぶやってくれ。酒はいくら でもあるからなあ、えぇ」 信者達が呆気にとられていますと、和尚が「めでたい舟祭りの前祝いじゃ、どんどんやってくだされ」と言いますので、一同も落ち着き飲み始めます。ぐっと一杯飲みほした若さまは和尚に切りだします。 若さま「和尚、そのめでてえ舟祭りの起りが知りたくてなあ、ちょっと庫裏へ行っ て縁起絵巻を借りて来たぜ」和尚は黙って若さまを見つめます。 若さま「和尚、詳しく説明してくれよ」と言い、絵巻をパッとひろげます。 一同も絵巻に見いります。若さまは広げた絵巻の中を見ると、帆先に紅鶴が描かれた船もありました。若さま「こいつは驚いた、舟祭りてえのは海賊の祭りかい・・・おい、網元、そん な渋い顔をしてねえで教えろよ」と、二人の顔を眺めながら食い下がります。 「はははっはは、・・なるほど、紅鶴の船ってえのは海賊船かあ。するてえと、死骸の傍の紅鶴は海賊の仕返えしかな、ええ、和尚」と若さまはおもしろそうに和尚と網元の様子を窺うのです。 本堂で一杯やり、絵巻物を見せ和尚と網元をたきつけた若さまが鼻歌を歌いながらいい気分で帰っていきます。突然、若さまめがけて一本の銛が飛んできます。ひらりと体を交わしますが、次から次へと銛がとんできますが、若さまの体のかわしが速いため失敗したとみるや、黒覆面黒装束の一味が現れます。 若さま「おいおい、冗談じゃねえぜ。おかの上に魚がいるかい」一斉に斬りかかって来ます。若さま、最初は素手て立ち合い、次に近くにあった櫂で立ち合います。 暫くして櫂を捨てると刀を抜き、一文字崩しの構えをしますと、かなわぬと見たのか黒覆面黒装束の一味は引き上げてしまいます。 そこへ、小吉がやって来ます。逃げて行く一味を見て、「どうなさいました」という小吉に、着物のほこりを払いながら「心配するな」と言うと、小吉の方はどうだったと聞きますと小吉 「御推察通り、浪人の死体が埋められていました」若さま「そうかい。可哀想にな、お千代坊・・・俺の口から、どうしても言えなかったよ」 「星だと思っていた奴が殺される・・ますますわからない」と事件解決に悩む小吉を見て、若さまはニヤッとして、「これだよ」と言って、銛を見せます。小吉「これは網元の・・」若さま「ばかりじゃねえ。だいぶ舞台は大きいぜ」 若さまは、そういうと夜空を見上げ「明日の舟祭りが楽しみだ」明るい笑みを見せる若さまです。 続きます。
2019年05月23日
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(ケガ入院中のため、ベッドの上での作業になるため、しばらくの間少しずつになりますが掲載してまいります。 )そんなことははなから分かっているよ丁松がお千代を引っ張ってきたところは浪人の佐竹が網元に殺されたところです。土が盛り上がったところにお千代をひっぱり、「地獄地獄」と、それにおびえているお千代を救ったのは、若さまでした。土が盛り上がっているところを指し「地獄地獄」と言う丁松に、若さまは不審をを持ち懐から紅鶴を出し、丁松に見せ、土の盛り上がったところに落とします。 すると、丁松は紅鶴を持って喜んでかけ去ります。若さまは、その様子を見て呟きます。若さま「そうか、紅鶴は落さなかったのか」 土が盛られたところが気になった若さま・・そして、若さまは振返って、厳しい顔でお千代を見つめます。びくびくしたようにお千代は若さまの前から逃げるのです。 「待てっ」・・若さまが逃げるお千代を追いかけ追いつきます。お千代は必死に振りきろうとします。「何故逃げるんだ」と若さま。 若さまが、お千代を捕まえながら゛「浪人者は、お前の兄貴だろう」というと、お千代はビクッとします。 若さま「お千代坊、本当のことを言うのだ。お前の親は、紅鶴屋敷の持ち主だった はずだ」お千代「違います、違います」と言って、若さまを振りきろうとするので、若さま「嘘つくんじゃねえ」と厳しい調子でお千代に言います。お千代が舟のへりに泣き崩れます。 お千代「私達は何も悪いことはしておりません」若さま「そんなことははなから分かっているよ」そういうと、舟のところで泣き崩れているお千代の傍に座り、若さま「お前の目を見りゃ切羽詰った人騒がせに、死ぬほどの思いをしてるじゃね えか」 (ここで、若さまが舟のへりに座ったとき、右袖が、若さまが座った下に入ってしまっていたのです。それをここで何気なく袖を引出すのですよ)お千代は、若さまに、旦那様を殺したのは兄なのか、と聞きますと、若さま「そんなつまらねえ、取り越し苦労をするんじゃねえ。清左衛門が殺された ときは、丑三つの金がなったんだ。その時兄貴は、紅鶴屋敷へ入ったはず だ」お千代は「兄ではなかったのですね」とやっと安心して落ち着きます。若さまは愛おしく思いお千代の髪にちょっと手をやり直してあげます。 若さまが、お千代に、紅鶴屋敷の何が欲しかったのか聞きますと、お千代は素直に話します。親が残したお守りの中に、先祖が紅鶴屋敷の密室に五千両の小判を隠していることが書かれていた、というのです。若さま「そのときはもう、越後屋の別荘になっていたんだなあ」お千代「そのために、私は女中に住みこみ・・」若さま「兄は、煙を合図に忍び込みか・・」 お千代が「その兄がいない。私をおいて何処へも行く兄ではない。兄はどうしたのでしょう?」と若さまに必死の思いで聞くのです。 その問いに、若さまは返事ができません。殺されあの紅鶴を落とした盛り土の下に眠っているとは、若さまには言えないのです。 お千代「夕べ煙りの合図もしていないのに、忍び込んだ男があるのです。兄でしょ うか?」若さま「・・分からん・・・」 暗い声で言うと、若さまは立ち上がり、若さま「お千代坊・・元気を出して煙りの合図を続けるんだ。・・・今度入って来 た男が何もかも知っているぞ」お千代「はい」若さまは辛くてお千代の顔を見ることが出来ません。 鐘の音が鳴り響きます。その方を見ると何もかも見通したように、何か決意をしたような若さまです。 続きます。
2019年05月13日
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大分出来上がってきだぜ喜仙の寮では、小吉が若さまに、死体の傍にはやっぱり紅鶴があったと言っています。「呪いか、恨みか、裏切りか」と若さまが考えています。若さま「紅鶴のことは、清吉は何も知らなかったろう」と小吉に言います。本当に知らないらしい、屋敷は清吉が勘当になってから越後屋の別荘になった、いろんなからくりは死んだ清左衛門しか分からないようだ、と小吉が言います。 横になっていた若さまが起き上がり若さま「前の持ち主は、確かに死に絶えているんだな」と小吉に聞きます。 15,6年前の古いことで、この土地を離れるとき子供が二人いたようだ、というのです。若さま「うぅーん、子供が二人か」難しいような顔をしていた若さまの顔が明るくなり若さま「大分出来上がってきだぜ、小吉」 小吉 「へーえ?・・と言いますと」小吉には若さまの言った言葉の意味が分かりません。若さま「紅鶴屋敷の忍び込みと人殺し・・」 そこへおいとが気違いみたく笑ってやって来ます。理由を聞かれ、バカ(丁松)が網元に追いかけられ逃げること、逃げること・・それがおかしくて、と。それを聞いていた若さまは、「なに?網元がバカを」と身を乗り出して言います。 今夜も紅鶴屋敷には、六助、与吉、十手の甚兵衛が土間に張込んでいます。与吉がお千代のことで悩んでいるのを知って六助が話をしていると、廊下をきしませる不気味な音が聞こえてきます。お千代は兄では?と気になり起きて、障子を開けた音にいびきをかいて寝ていた女中が飛び起き「でたあ」と騒いだので、忍んだ賊は慌てて逃げだします。その賊が逃げて来たところを捕まえた六助は、賊の顔を見て「あっ」と・・賊は六助を振りきり逃げていきます。 穏やかな海岸突堤に若さまと小吉の姿があります。小吉は、若さまに言われた通り張り込んでいたが、網元は近づいて来ない、浪人者は一晩中帰ってこなかった、という報告でした。小吉が、浪人者が清左衛門を殺しいなくなったのではと言いますと、若さま「とすると、昨夜紅鶴屋敷に入ったやつは」 小吉「それが、甚兵衛の話によりますと、どうもあの浪人者じゃなさそうなんで」若さま「浪人者でもなく、網元の仕業でもないと・・はっはつ、いよいよ幽霊の仕 業かな」 小吉 「はあぁ、その幽霊には、足があるとね」若さま「足のある幽霊か・・・必ずこの町の何処かにいるはずだが」と言い、紅鶴屋敷の方を見たとき、若さまの目の色が変わります。若さま「ほほう、浪人がいないと、紅鶴屋敷に煙がたたぬか」 お千代は海岸にいました。ぽっーとしている六助のところにいると、丁松が「地獄地獄」と言いながら嫌がるお千代を、どんどん引っ張っていきます。浪人の佐竹が網元に殺されたところへ連れて行きます。 続きます。
2019年04月27日
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紅鶴屋敷のみなしごは、紅鶴の船を待つか旅籠屋では皆が集まって清左衛門殺しがどのような手口で行われたのかと、十手の甚兵衛と旅籠屋の主人糸平が、実演をやって見せています。犯人は清吉だと決め込んでいます。若さまも酒を飲みながら、面白そうにその様子を見ていましたが大笑いをして若さま「だけど、おめえ、清吉じゃねえとしたらどうなる」 すると、皆が揃って、清吉しか考えられないと、若さまに食ってかかります。そこで、若さまはみんなにこう聞くのです。若さま「じゃあ、昨夜紅鶴屋敷にへえった化け物はどうなんのかな」 甚兵衛が、六助の話では、清左衛門は家に帰って来たと言っていた、というと、糸平が、夕べは気味の悪い番だった、寺の鐘がなったときは、一人だったので、どうしようかと思った、と言います。すると若さまは糸平に聞きます。若さま「その時は、網元はここにいたんじゃねえのか」というと、網元が来たのは、あれから一時ほどしてからだと言います。 その時、急に扉が開いて、丁松が「地獄、地獄、地獄」と櫂を地面に叩きつけて言うのです。網元の茂兵衛が外から紅鶴屋敷を覗くようにしているのを若さまが見ています。若さまと目が合った網元は、ばつが悪そうです。 網元 「いや、これは・・」若さま「網元、お前んとこの居候人はどうしたい」さっきも役人が訪ねてきたが、夕べ家を出たっきりだ、と言います。 若さま「あの浪人者は、この町へ何しに来てるんだ」網元 「ああ、舟祭りが近づくと、いろんな人がこの町へきますからね、旦那もそ うですかい」 そう話していると、遠くから丁松が礼の如く櫂を持ち「地獄、地獄」と言いながら近づいてきます。若さまは旅籠屋に入って来たのも見ているのもあり、丁松の行動に不審をもったようです。若さまを見ると、網元は急いで丁松を静止して追い返すように連れて行きます。 その騒ぎで、紅鶴屋敷の庭からお千代が姿を見せます。すかさず若さまが「やぁー」とお千代に声をかけます。お千代「若さま」若さま「また会ったな」というと、石垣を登り、屋敷の庭に入ります。 若さまはお千代に話しかけます。若さま「お千代坊は、いつも一人ぼっちだな・・・親も兄妹もないのかい?」お千代「はい」お千代「可哀想に・・・紅鶴屋敷のみなしごは、紅鶴の船を待つか」お千代が急に若さまの傍に来て、誰が旦那様を殺したのか、と詰め寄り聞きます。 若さまがそれには答えずにいると、「黙っていないで教えてください」と、若さまに食い下がります。 お千代「若さまは、何でも知ってるとおっしゃったじゃないですか」若さま「お千代坊はみなしごのくせに、誰のことを心配してるんだい」お千代の目が泳ぎます。若さま「あんまりイライラすると、紅鶴の船は来ないぜ」と強くいい、若さまは去って行きます。 続きます。
2019年04月19日
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腹一杯に息を吸い込むんだ翌日、殺人事件があったということで町は大さわぎ、お縄になっている清吉に、遠州屋小吉が、仏の顔を見ても自分がやったことを白状しないのか、と責めています。清吉は、自分が清左衛門に殺されかかったのだと言うのです。何かの間違いだと清吉をかばう母お崎に小吉は、正左衛門の背中に刺さっていたのは清吉のドス、しかも二人が折り重なっていたのだから、間違いはないと言います。清吉は、殺したのは網元だ、二人が言い争っているのを見たと、網元と清吉がもめはじめます。後ろの方にいてその様子を見ていたお千代が・・どうしたのでしょう、突然お千代は逃げるようにして突堤に行き辺りを見回すと座り込み悲しそうな顔をして水面をみつめています。その水面に赤いウキがポンと投げ込まれたので、驚いてお千代が振返ると、そこに若さまが釣り竿を垂らして立っていました、若さま「はっははは、遠い海のかなたから現れてくる紅鶴の船を待っていたのか」お千代は、この漁師町に来た時から憧れを持っていた若さまを傍にして、ポッと頬を染めます。 若さまがお千代に話しかけます。若さま「お千代坊」お千代は名前を呼ばれてびっくりします。 お千代「どうして私を・・」若さま「はっはっはは、俺は何でも知ってるよ・・・紅鶴の船の穂先には舳先に は、素敵な若者が立っているんだろう?」お千代が頷きます。 若さまが、海は好きかと聞くと、お千代は「はい」と言います。そして、若さまはお千代に言います。若さま「困った時はな、海へ向かって、大きく手を広げて、腹一杯に息を吸い込む んだ」お千代は頷きます。 若さま「海はきっと、お千代坊に幸せを持ってきてくれるぞ」 お千代を呼ぶ与吉の声がします。与吉は、夕べ紅鶴屋敷に入っていったお侍を見た、「奴に違いない」と若さまの方を見ますと、「あの人は、そんな人じゃないわ」と言い、お千代は去って行きます。お千代は海に向い、若さまに言われたように、大きく手を広げ息を一杯吸い込みます。そして、「兄さん、兄さん、兄さーん」と海に向って呼ぶのです。お千代が兄さんと呼ぶのは、若さまが突堤であった浪人、そしてあの夜紅鶴屋敷に入り込んだ侍で、網元のところに居候をしている佐竹半次郎という者です。その佐竹は、海辺の草深いところで、紅鶴屋敷から盗んできた小判を、紅鶴の印のある千両箱に入れ埋めようとしていると、「地獄、地獄へ落ちるぞ」と言う丁松が、背後には網元がいます。網元は、佐竹に独り占めはよくない、屋敷から誰も知らない金を持ちだし、そのうえ清左衛門を殺した。佐竹は清左衛門は殺していないというと、筋書きは出来ている、山分けといこう、紅鶴屋敷に隠されている金のありかを教えろと言ってきます。佐竹が刀を抜くと、網元は「斬るのかい」丁松が見てると言います。佐竹が丁松の方を見たすきに網元は佐竹をめがけ鍬を持ち力いっぱい振りかぶせます。 続きます。
2019年04月15日
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若さまのお知恵を拝借・・突堤にいた濡れねずみの浪人が寺を通って行き過ぎようとしていたのを江戸からやって来た遠州屋の小吉が見て、「はてな、あの濡れねずみ・・?」と考え込んでいるところへ「おい、遠州屋」と呼ぶ声に振り向きます。声をかけたのは若様です。小吉はその姿を見て慌てて小吉 「若さま」若さま「ここにも、濡れねずみがいるぞ」と屈託のない笑顔を振りまいて言う若さまです。小吉はびっくりした様子で、若さまを眺めています。 喜仙の寮に帰った若さまは、おいとと小吉に濡れねずみになったいきさつを話します。 お糸が、その浪人は網元の離れに半年ほど前から居候をしていることを話しますと、若さま「半年ほど前からの居候が釣りをしていたか」 すると、小吉が江戸で起こった事件も・・と話します。小吉 「若さま、実は大川端の殺しも、子供の釣り竿に引っかかってきたんです」若さま「大川端の殺し?」 小吉 「へーえ・・こりゃどうも、話しが前後して申し訳ありやせん。どうも腑に 落ちねえことばっかりなので、・・またひとつ、若さまのお知恵を拝借に あがったんで」若さま「遠州屋小吉、得意の切りだしだな」小吉「へっへっ」 そして、小吉が江戸の事件の内容を話し始めます。一昨日、江戸の越後屋の川岸で、身元の分からない土挫衛門があがった。そいつが不思議なことに水も飲んでいないし傷もなく、おまけに二の腕に日本の入墨があるというのです。若さま「島破りか、島帰り」 すると、小吉が、小吉 「一番分からないのは、ぴったり胸にくっ付いている油紙に包んだ真っ赤な 折鶴」と言うと、若さまの表情が変わり、瞳がきらりと光ります。若さま「なに、紅鶴」 その夜、越後谷の紅鶴屋敷には、お千代に頼まれた六助と与吉が夜回りに来ています。清左衛門が、覚全和尚のところからの帰り道、網元の茂兵衛が話があるとしつこくするのを振りきり少し行ったところで、清吉と江戸からのつけ馬の勘八達が清左衛門を待ち伏せしています。博打の金ぐらい何故出せない、お前をたたき斬れば越後屋は清吉のものと言われ、清左衛門は清吉に耐えず心配しているのだと言いますと、清吉がそんな言い訳は通らないといい、清左衛門に斬りかかっていきます。すると清左衛門は「馬鹿野郎」と大声でいうと、かかって来た勘八の刀を取り上げ勘八を斬ります。あとの二人も斬り、逃げる清吉を捕まえ「やい、てめえのようなかけだしにちょっかいを出されてたまるか」と清吉をはり倒していた清左衛門の顔がゆがみ、清吉に覆いかぶさります。背中に短刀が突き刺さり、その上にひらりと落されたのは紅鶴でした。 紅鶴屋敷の天井から吊ってある紅鶴が不気味に揺れています。酔った六助が寝ている勝手口から、黒装束覆面の男が部屋の方へ床をきしませて入っていきます。清吉の母お崎が清吉が帰って来たのかと思い「清吉かい?」と言いますが、返事がありませんので、清左衛門が帰って来たのだと思います。お千代も起きて耳を澄まし様子を見守っている様子です。覆面の男が奥へ奥へと進んで行き蔵に行ったのを確認したお千代が安心したような顔をします。男は蔵の奥に行き紅鶴の絵が書いてある箱から大量の小判を懐に入れます。天井の紅鶴が揺れています。その男は若さまが知っているあの浪人です。 続きます。
2019年04月10日
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「紅鶴屋敷か」何事かあったのでしょうか、紅鶴屋敷から飛び出してきて口論をしているのは、この屋敷の持ち主越後屋の江戸から帰って来た長男清吉と伯父の清左衛門です。清吉が清左衛門に見つかり追い出されたところです。清吉の父親がなくなったのをいいことに、江戸の店を乗っ取ったと清吉が清左衛門に食って掛かっています。清吉が短刀を出し清左衛門にかかって行こうとしたとき、網元の茂兵衛が止めに入りますが、清吉はしつこくかかって行こうとしています。その光景を海辺にいた若さまとおいとが見ています。おいとが若さまに止めに入るようせかしますが、若さまは、笑って見ているだけで動こうとはしません。若さま「はっはっ、大丈夫だい、腕が違うわい」その通り、網元の茂兵衛に投げ飛ばされ清吉は、捨てゼリフを吐いて逃げていきます。決着がついた様子に、面白そうに見ていた若さまも帰っていきます。 清吉が旅籠ほかけ屋の主人糸平を生きよいよくつき飛ばして旅籠に入っていきます。糸平は清吉が夕べ江戸から3人のごろつきと来たことの話をしていて、どうしようもない与吉からはお金が取れないことに今まで気が付かなかったことに「頭が痛い」と頭を抱えているところへ、若さまが糸平に声をかけにこやかに通り過ぎていきます。 (このシーン、私大好きな所の一つです。橋蔵さまと堺駿二さんの、何気ない、どうでもいい通り過ぎながらの会話なのですかが、息の合った掛合いから、何となく笑みがこぼれてしまうのです)若さま「亭主、飲み過ぎか?」糸平 「あっ、これは、おはようございます、釣りでございますか?」 若さま「いやーっ、この土地の魚は頑固で、わしになつきよらん」 糸平 「近頃の魚は、利口でございますかななあ」若さま「馬鹿ッ野郎、あはっはっはっは」 若さまが、浜を歩いていて突堤辺りまで来たとき、突堤で釣り糸を垂れている浪人がいます。若さまは浪人に声をかけます。若さま「つれますかなどと文王そばへゆき」 浪人は若さまを見てもぷすっとして黙っています。若さまは笑って近くで釣り糸を垂れます。 若さまは、浪人の釣り糸を見ます。大きく動いているのにそんなことには知らぬ顔でいる浪人です。 若さま「はっははっは、こいつはいいや、お前さん太公望だな、食おうと引こうと、てんで気にしねえところをみると・・当ては釣りにあらずして・・・」と言い、じっと正面に目を見据えたとき、浪人は刀を抜き若さまに斬りつけます。 おっと、危ねえ」というと若さまは海へドボンと落ちます。若さま「うあっ、うあっつと、うああ冷てえ・・おいおい、冗談はやめろ」 浪人は、突堤の上から刀をかまえています。若さま「それそれ、まだそんな怖い顔して・・野暮なものを振り廻して、何がそん なに気に障ったんだい」と言いますと、浪人は海へ入り、「貴様頼まれたな」と、若さまが「何のことだい」と言うとまた斬りかかってきます。若さまは身をひるがえし突堤の上に、今度は浪人がずぶ濡れになります。 若さま「あっはははは、こりゃあ付き合いがいいや、恨みっこなしだぜ」 浪人は帰っていったあと、若さまは、浪人が見ていた正面の紅鶴屋敷に目がいきます。 その正面では、お千代が落葉を焚き煙りを出しています。若さまは「紅鶴屋敷か」と呟きます。 続きます。
2019年04月04日
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この作品の撮影時期は、お正月映画「忠臣蔵」の撮影のため、セットもスターも持っていかれてしまうそうで、並行してかかっている作品は撮るセットがなくなってしまったようです。そこで、沢島監督は「紅鶴屋敷」のセットでの撮影は少しにして、大部分は漁師町への地方ロケという映画にしたのだそうです。琵琶湖湖畔・近江一帯の浜辺がロケ地になっています。気持ちがよい景色ですが、撮影時期は冬に入った頃、琵琶湖畔は寒かったでしょう。古の映画でのロケ地を見ていると、本当に素晴らしい、よい日本の景色がありましたね。「紅鶴屋敷」でも、素晴らしかった近江舞子ホテルの庭を使わせてもらっての撮影もあり、今は見ることが出来なくなったよき風景は、古の時代劇から懐かしがることしか出来なくなりました。1年4ヵ月ぶりに”若さま”がお目見えになりました。今回は、おいとちゃんに花園ひろみさん、遠州屋小吉に沢村宗之助さんと新しいメンバーになり、橋蔵若さまも気分を新たにして取り組んだ作品です。スリラー物の本家ヒッチコックに対抗しようという意気込みの沢島忠監督が撮るだけに、従来の若さま侍とは趣をかえています。伝説の紅鶴屋敷に伝わる連続殺人事件の鍵をとく若さまの素晴らしい推理。この作品では橋蔵さまは静かに演じて従来の若さまの壁を破りました。◆第43作品目 1958年12月15日封切 「若さま侍捕物帖・紅鶴屋敷」 若さま侍捕物帖シリーズ7作品 若さま 大川橋蔵お千代 桜町弘子おいと 花園ひろみ覚全和尚 月形龍之介与吉 尾上鯉之助茂兵衛 進藤英太郎清左衛門 原健策佐竹半次郎 河野秋武勘八 富田仲次郎遠州屋小吉 沢村宗之助糸平 堺駿二誠吉 片岡栄二郎丁松 岸井明お崎 東竜子六助 水野浩十手の甚兵衛 杉狂児猪之吉 中野文男鯉三 東日出雄千羽の紅鶴が不気味にゆれて、妖気をはらむ紅鶴屋敷の密室に眠る五千両の小判の秘密をめぐって、ひなびた漁村に次々と起きる殺人事件。紅鶴を掲げた舟の正体は・・。紅鶴の船の若さま! オープニング、何か不思議な事件が起こるという様なミステリーな音楽をバックミュージックにして、スタッフ、キャストが流れます、天井から相当な紅鶴が吊ってある屋敷の内部映像が映し出されるなか、お千代のナレーションで始まります。「紅鶴屋敷とは、江戸からほど遠からぬ、海沿いのひなびた漁師町にある別荘のことでございます。あの屋敷の不気味な出来事、そして、その折ちょうど江戸から来合わせていたお侍のことは、町中の人も、いいえ、私の一生に、忘れることのできない人になってしまいました。その明るい、そして頼もしいお侍は・・「若さま」・・そうです、「若さま」とおっしゃいました」ここから、この物語に入っていきます。 漁師たちが漁に出ている朝焼けの海辺に、若さまが釣り竿と魚籠を持ちやってきます。その若さまを遠くから興味深くうれしそうに見ている娘がいます。この娘が紅鶴屋敷に住みこんでいるお千代です。 「若さまー」というおいとの声が聞こえてきます。そのとき、お千代はその人が「若さま」と知ります。朝の潮風をぞんぶんに吸っていた若さまがおいとの声に振り向きます。 「随分お早いんですね」おいとが言いますと、若さまは、おいと傍得意のガアーァといういびきが聞こえて来て寝ていられない、と言います。おいとは、いびきは伯母さんのいびきだと。若さま「うそいえ。折角保養に来たのに、お前のいびきに悩まされちゃ、たまらね えよ」笑いながら逃げる若さまを、おいとがい追いかけていきます。 追っていたおいとが干してある網に足を取られ転んでしまうと、若さま「ほらほら、足元に気をつけねえと、網ばんの親父に怒られるぞ」と言って、さっさと行ってしまいます。 お千代は網ばんの六助から、喜仙の寮に遊びに来ているお嬢さんと侍と聞き、二人の姿を見ています。(そうです、若さまは、江戸からほど近いひなびた漁師町にある、舟宿喜仙の寮に来ていたのです)お千代は、六助に今夜も屋敷へ張り番に来てほしいと頼みます。屋敷とは、紅鶴屋敷のことです。六助は、近頃あの家は気持ちが悪いと言います。紅鶴屋敷に、夜ともなると無気味に廊下をきしらせては消える人影があるとの噂が立っていたのです。お千代が水車小屋に向う途中、知的障害のある丁松に脅かされ、慌てて小屋の中に逃げ込みます。小屋の中には、お千代を好いている与吉がいました。お千代は、与吉にも今夜屋敷に来てほしいことを告げます。「また何かあったのかい」と聞く与吉に、江戸から旦那様が見えてることを言うと、「もうじき舟祭りも近いから」と与吉が言うことに、「うん」といい、夢をみるように与吉に「若さまって知ってる?」と聞くのです。その若さまは、おいとと一緒に紅鶴屋敷の前に来ています。若さま「はあ、これが紅鶴屋敷か」 おいとが、紅鶴屋敷の謂れを話します。昔々、この屋敷でとっても綺麗なお姫様が、三国一のお婿様を得たいと祈りをこめて、毎日毎日紅鶴を折った・・、若さま「ふうーん、それで」 ちょうど千羽になった時、海の向こうに見たこともない立派な船が現れた、その帆には赤々と紅鶴が染め抜かれてあった。それを聞いていた若さまは、「はっははっは」と笑いながら若さま「そしてその舳先には素敵な若者が立っていたんだろう」 水車小屋では、お千代が紅鶴を手にしながら、若さまのことを与吉に語ります。お千代「その若さまが、朝焼けの海辺に立っていたとき、私夢かと思った。紅鶴の船の若さまと思ったわ」それを聞いていた与吉は「あのお侍は、海から来たんじゃねえ、江戸から来たんだよお」とあきれたように言います。若さまに心を奪われているお千代には、与吉が何と言おうと聞く耳もたぬ・・でしょう。若さまはそのとき紅鶴屋敷の前でひと悶着が起きるのを目にします。 続きます。
2019年03月28日
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天下のために成敗いたす館では出発の準備をしている最中です。我ら必ず名古屋城を手中に収め迎えにくると左門がうつぼ姫にいった時、笑い声が聞こえ、現れたのは若さまです。若さま「大層な景気だな・・・だがな、謀反なんて容易な業じゃねえ。おめえ達、 玄蕃や了巴の口車に乗っちゃいけねえぜ」 「こやつを血祭りにあげろ」と玄蕃は言います。若さま「黙れ、青山玄蕃。その方、尾張大納言の重臣の身にありながら、兇徒に 惑わされて主家を滅ぼさんとする大逆臣。下がりおれ」 了巴の「斬れっ」の一声で一同若さまに斬りかかります。若さまは左右に交わしながら了巴めがけて扇子を投げます。了巴それをよけると刀を抜きます。若さま「九鬼の侍は引け、元凶江川了巴を天下のために成敗いたす」 と言い、若さまも刀を抜きます。(立回りになります)館内から庭へそして海岸へ (この後の立回りは、海岸での壮大な立回りになります) 徐々に海岸沿いに了巴を追い詰めていきます。ところが、かかって来るはずの家臣が引いていきます。若さま「おやっ」と思います。了巴を追い詰めた若さまが言います。若さま「了巴、もはや最後じゃ。覚悟」すると、「それは、そのままお前に言えることだ」と言うと、上から降りてきた綱につかまると引き上げられていきます。若さま、どうにもできません。 若さまが崖の上をぐるっと見渡すと、火をつけられ次々と爆発が起こり岩石が次から次へと崩れてきます。どうにか若さまは洞窟に逃げ込んだ模様です。爆発の音に驚いたおさいが若さまが危ない様子を見ていましたが、無事に逃げ込んだ様子を見て安心したようです。おさいが何か決心をしたようです。 九鬼家の者達に、出発するのだ、火薬を運ぶのだ、舟をだせ、という了巴達の言うことを必死に止めるうつぼ姫。火薬を運べということに動かぬ者達を見て、うつぼ姫と左門に短銃を突き付けます。その頃、小吉親分と頓平が火薬倉庫まで導火線をのばし火をつけました。崖の上では、うつぼ姫と左門が人質になっているので、家臣達が仕方なしに了巴に従おうとした時、火薬庫が爆発しその音に気を取られているところに、若さまがやってきていました。若さまはうつぼ姫に短銃を向けている玄蕃を背後から斬りつけます。そして、うつぼ姫を助けます。了巴が若さまに短銃を向けます。後ろは断崖、後ずさりはできません。 了巴が引きがねに力を入れようとしたその時、了巴が一発の銃声に倒れます。若さまもびっくり。撃ったのはおさいでした。了巴がおさいを打ちます。その隙に、若さまは了巴を斬り、「おさい」と叫び駆け寄ります。 撃たれたおさいは「若さま」と言ってこと切れます。 若さまのおかげで人魚島は九鬼一族の自由になりめでたしめでたしの旅になりました。若さま「幸せに生きるよう祈ってやろうぜ」頓平が前方から見たことのある駕籠かきがと言います・・その方を見ると、おいとちゃんの姿があります。 おいとちゃんが若さまに気がつき、走り寄って行きます。若さま「おう、おいとちゃん」若さまも嬉しそうに駆け寄り、仲良く江戸に向って行きました。 (完)
2018年01月12日
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海に出て、探し物をしなければなりません利倉屋一味は茶店で休んでいると漁師が人魚島の話をしているのを聞きつけ、案内するように小判を握らせます。頓平が若さま達を見かけやって来ます。小吉親分が了巴達が通ったか聞きますと、誰も通らなかったというのです。それを聞いた若さまは虚無僧姿の侍を見て、若さま「嘘を言ったね。了巴は名古屋に向わねえ。あはっはっは、嘘も忠義のうち かあ。あっはっはっは・・・」 と笑い、海の方を見つめ、若さまの表情が変わりました。 若さま「親分、了巴達の消えた訳が分かったぜ」小吉 「えっ」若さま「舟に乗ったよ」 若さまが三人にうつぼ姫の家来か、尾張の家中かと問いただしますと、尾張の家臣という返事がかえってきます。尾張の殿様は長らく病気のため、刈屋の浜屋敷にご静養中だというのです。若さま「なるほど。そこが敵の付け目なんだな。親分、この事件は容易じゃ ねえぜ」小吉親分がどういう訳だと聞きますと、若さま「花火や人魚どころの騒ぎじゃねえってことさ」 と言うと、若さま立ち上がり、若さま「刈屋か、近いな、寄ってみるか」 その夜、若さまは浜屋敷に静養中の治行を訪ねます。 若さま「治行殿とは、何年ぶりかな」治行 「全く意外な対面です。いつもながら、気ままなあなたの立場が羨ましい」若さま「これはひどい。まるで道楽息子あつかいだな」 治行 「天下御免、けた外れの道楽息子ですよ」若さま「いやあ、そのけた外れの道楽が幸いして、尾張家浮沈の大事に馳せ参ずる ことができたのですからなあ」わが不明を恥じるのみという治行に、若さまは病気のため治れば何のことはないと言い、若さま「それまでは治行殿に変わって、六十二万石、浮沈をかけた仕事をかたずけ たいのだが」 治行はお願いしたいと言います。若さま「さあ、百万人分のお役に立てるかどうか。とにかくやってみましょう」と言い、盃のお酒を飲みほします。若さまは治行に、密かに尾張に立ち返り、成り行きを見ていてほしいといい、若さま「わたしは、これから海に出て、探し物をしなければなりません」 金をやった漁師の舟で利倉屋一味が人魚島に近づいたとき、人魚が出てきて舟を転覆させられやっとの思いで利倉屋と岳庵と用心棒は島に泳ぎ着きます。うつぼ姫の館では明日にでも浜屋敷を襲って治行を手中におさめ、直ちに名古屋に入ると、了巴と玄蕃。城を乗っ取った上、天下に号令すれば、味方するもの万をくだらない。その前に了巴が心魂を傾けた島の火薬を移せば、天下を相手にしても恐れることはないというのです。利倉屋達は火薬を運んで洞窟に入って行く男達をつけて中まで入って行こうとした時戸が閉まり、了巴の思惑にはまった利倉屋達は四方からの銃に倒れました。 続きます。
2018年01月08日
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年をまたいてしまいましたが「若さま侍捕物帖・鮮血の人魚」の続きとなります。おれは暇人だから若さまは奥にある寺へ行こうとすると、「待て、何処へ行く」と虚無僧姿の男が現れます。若さま 「そこの寺へだ」虚無僧 「何しに」若さま 「そうだなあ、・・まあ、お経でもあげるか」と言って行き過ぎる若さま。虚無僧の抜打ちを交わし峰内にすると、何かありそうな・・寺へ向かいます。 若さまが寺の中に入ると、二人の巡礼がいます。身構え立ち上がった二人に、「しっー」と言い、怪しいものではないといいます。そして、若さまは巡礼(うつぼ姫)に言うのです。若さま 「あなたは尾張家の姫ではないでしょう」言いたくなければ言わなくてよいが、ただ一つ聞いておかなければならないことがあると。若さま 「仮にも、尾張家の侍達がお駕籠を守ってのニセ行列まで作っているか らにゃ、大きな事情があってのことだろうが、それをあんた、その方 がいいと思っていなさることかね」 うつぼ姫が「そうです」と応えますと、若さまは「なるほど」と言い、若さま 「じゃあ、もう一つだけ。・・そうまでして、あんた、一体何をする気 なんだい」うつぼ姫「聞いてどうするです」若さま 「もしそれが、世間の人のためになることだったら、おれは黙ってここ から江戸へ帰ろうと思うのだが、・・・万一、・・あんた自身自分の 胸に聞いてみて、誰か一人でも不幸な人が生まれるようなことだった ら、おれは帰るわけにはいかねえな」 うつぼ姫「あなた、お役人ですか」若さま 「役人だけが、人の幸せを守るのではない」うつぼ姫「幸せを・・」若さま 「両国の花火の夜から翌朝までに三人の男が死んだ、殺されたんだ。 ・・ただ、いい花火を打ち上げようとした花火職人や、その職人が何を 脅かされていたかを聞いただけの兄弟子や、その職人を海から助けてや った真面目な船頭・・・三人とも、これっぽっちも悪いことをしてねえ 男達だ。・・もしこれから先にも、そのな真面目な人間が一人でも訳も なく殺されるようだったら」と、若さまがいった時、うつぼ姫が「待ってください」と言って声をつまらせます。若さまが、外に気配を感じたようで、若さま 「おれは暇人だから、やり出したらとことんまでやる気だぜ。じゃ、お休 み」と言って、若さまは闇の中へ消えます。 利倉屋の手先でありながら若さまに味方するおさい、両国の花火に絡んだ経緯を若さまから聞かされ人としての心を教えられたうつぼ姫。翌日、うつぼ姫一行の駕籠行列が動き出しました。夜明け前、御油宿を駕籠行列が出て山道に入ってくるところを、利倉屋一味が待ち伏せをしています。うつぼ姫が乗っていると思う駕籠を襲おうとしているのです。 岳庵はおさいを見失った道で、虚無僧の男が巡礼に「姫こちらへ」と脇道へ誘導するのを見かけ、夢中で走り駕籠を襲おうとしている利倉屋に伝えます。その頃、若さまと小吉親分はこのような話をしながら山道を歩いていました。小吉 「ねえ、若さま、若さまはあの巡礼娘をどうして姫とお気づきになりまし たんで」若さま 「第一あの駕籠は子供だましだよ。うつぼ姫が入っているなら了巴や玄蕃 が付き添うはずだ、誰もついていない」小吉 「へえ」 若さま 「それで考えたんだ・・・すると小森とかゆう侍だ、あいつ何故か一人で 旅をしてるだろう。腕のたつ男だし、さてはこいつが姫を守っているな と見当をつけた」小吉 「なるほど」若さま 「案の定、へっ、あいつは巡礼娘の後になり先になり、ちっともはなれね え」小吉 「へえ」若さま 「そこで夕べ、わしは巡礼が泊まったと思しい寺を見に行ったんだ。・・ それから先は、どうでもいいがねえ」 (それから先は小吉親分にはどうでもいいことなのですって?・・・若さま含み笑いなどなさって、どういうことなの?) 利倉屋一味が巡礼を見つけ囲みます。若さまが下の道での騒ぎに気がつきます。 二人の巡礼と侍が不利になっています。巡礼二人が笠を取りました。それを見て、若さま「おっ、違う」と言い、駆けだします。そして、睨みあっているところに割って入ります。若さま 「おい、待て待て。とんだ飛び入りで恐縮だな・・だが、この巡礼は、 お前たちが狙う、うつぼ姫じゃねえぜ」はっきり確かめたのだから間違いはないという一味に若さま 「ところが、了巴は裏の裏をかいたらしい。太夫相変わりまして相勤めま すときた。あはっはっはっ」 岳庵もよく見て違うと言います。若さま 「そう思ったら刀を引くがいい」黒坂が、みんなたたき斬れというのを利倉屋が若さまに「今日の勝負は預かりにしておく」といい引き上げて行きます。虚無僧姿の侍が礼を言いますと、若さま 「礼なんぞいいいさ。まっ、一緒に行こうぜ・・もう夜明けだなあ」綺麗な雲の合間から日がさし始めています。 続きます。
2018年01月04日
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あとには引かねえ性分なんだよ尾張屋敷では、うつぼ姫に了巴が島抜けをした六兵衛の始末もつけたので早速国元へ立帰り万全の構えをするのが上策ということになりました。おいとちゃんに若さまから旅に出るという手紙が届きます。若さまは、そのころ青空の下、編み笠を片手に、のんびりと街道を歩いていますと、おさいの姿がありました。 おさい「まあ、お武家様。どうしてこんな所へ」若さま「わしも旅に出たのさ」 おとい「えっ、旅に・・ですか。どちらまで」 若さま「そうよなあ、お前の行くところまで行こうか」 おさい「まあ、うれしがらせて泣かせて消える、なんてんじゃないんですか。・・ でもまあよござんす、・めではご一緒に」 若さま「美人と道連れとは光栄だなあ。だが、お前は利倉屋の手伝いをして、一体 いくらになるんだねえ」 おさい「おや、何のことかしら」 若さま「まあいいさ、いいたくなければ、はっはっはっ」 若さまの前を、巡礼姿の二人ずれが行きます。そして若さまの後ろからも、一人の男が見張るように歩いて行きます。 うつぼ姫、江川了巴の動きを見ながら利倉屋一味も動き始めました。 若さまはおさいとのんびりと道中です。どうしてこんなことに関わり合うのか、というおさいに、野次馬みたいなものかな、と答えている若さまですが、下の道で休んでいる二人の巡礼に目がいっている若さまなのです。道中前を歩いていた時から、どうも気にかかるようです。 事件に関係する者達が、御油宿(ごゆしゅく)に揃いました。うつぼ姫一行、利倉屋一味、そして若さま、おさい、小吉親分とみんなが御油宿に入ってきました。御油宿の祭りの最中です。 宿で一杯やっている利倉屋は、うつぼ姫一行を襲うのは慌てなくてもよい、それより若造(若さまのことです)を先に片づけることだと言い、ちょうど部屋にやって来たおさいに若さまの泊まっている宿を聞きます。黒坂達が出てゆきますと、おさいが心配そうな顔つきです。その頃、若さまは巡礼が止まりそうな宿を一軒ずつあたっていますが、見つからず、町の盆踊りで賑わうところから外れた道に来た時、忍び寄る気配を感じた若さまの足が止まります。「来たな」というように若さま笑みを浮かべます。 一味は若さまのまわりを囲むと無言で斬りかかっていきます。 若さま「えっへっ、江戸お馴染みの顔ぶれらしいな」 若さまも刀を抜き、一文字崩しの構えから、立回りになります。(前回までより、若さまの太刀さばきにキレが出てきてより綺麗になってきました。この一年位の間に、橋蔵さまの殺陣が非常に上手くなった!という声が聞こえてきました) (若さまの素晴らしい殺陣なので流れが分かるように画像を多く載せてみました・・分かっていただけますでしょうか) その時、暗闇から石つぶてが飛んできて若さまの見方をするものがありました。 若さま「どうやら俺の方に助っ人がついたようだぜ。不利を承知でかかってくる かい」 利倉屋一味は引きあげて行きます。 すると、「お武家様」と声をかけてきたのはおさいです。「今の石つぶてはお前かい」という若さまに、「さあね」ととぼけ、おさいは江戸へ帰ったほうが良いのでは、と言います。 若さま「ふっっ、折角のお言葉再三無にして済まねえが、おれは猪武者であとには 引かねえ性分なんだよ」 (おさいは、危ないというのに引かない若さまに驚きます) 若さま「お前こそ、暗剣殺を承知で進むおれに、あんまり付きまとわねえほうが いいぜ」 おさいが何かを言おうとしましたが、 若さま「それに、身内仲間に石なんか投げると、あとが大変なんじゃねえのか」 おさいは何も言えず下を向いたままです。 若さま「じゃ、あばよ」 と言ってさっさと行く若さまに、ハッとして言葉もなく見送るのです。 (若さまは冷たい言い方をしていますが、おさいの気持ちを読んでいるからなのですよね) その様子を舞岳庵が見ていました。 続きます。
2017年12月26日
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このままじゃおけねえぜあとをつけさせ若さまの居所を突き止めた江川了巴が、翌日喜仙にやって来ます。一緒に出かけたい所があるという見知らぬ侍に興味を持った若さまは出かけてくるかと、おいとは心配でなりません。材木置き場までついて行った若さまがどこまで行くのか聞くと、決まってはいないとの返事。若さま「これは驚いた、じゃ、もうこの辺にしとこう。帰りが大変だぁ」了巴は歩きながら話し始めます。若さまに「何も知らなかったことにして、身を引いてほしい」と言うのです。若さま「身を引く? 」 侍達を見て、若さま「お前たちは、利倉屋のものか」の問に、了巴は「違う、名乗る必要はない」若さまの身に万一の事があってはと思って言うことだ、というのです。若さま「ああ、分かった。お前たちは、尾張家の侍だな」了巴 「いいや、違う」若さま「どうだい、お前んところに盗人が入らなかったかい。つい昨夜のことだ」了巴 「知らん」若さま「と言うだろうな、一応は。じゃ、その盗人や六兵衛を殺したのはお前たち か、と聞いても知らぬという」若さまがそう言った時、了巴の家臣が刀を抜いてかかってきます。 若さま「ほい来た、へっへっへ、問うに落ちるっていうやつよ・・・ほほう、なかなかできそうだな」 若さま「あぶねえついでにもう一つ聞くが、御三家筆頭の尾張藩と、廻船問屋の 利倉屋が、何をこそこそ探りあっているのかね」了巴 「どうしても引かんな」若さま「引くも引かぬもねえ、おれは、暇人の面倒くさがり屋だ。お前の方から 勝手に引いたらどうだい」 周りを気にした了巴は「後悔するな」と言い残し帰って行きます。 利倉屋から若さまを見張っていてほしいと頼まれたおさいは、その夜早速、喜仙をはりこんで若さまが出かけた後をつけて行きます。若さまは何も気にしないようにさっさと歩いていきます。しかし、しばらくして角を曲がった時、若さまを見失ったと思いきや、若さまが現れたので、おさいはビクッとします。若さま「何を驚いている」おさい「何をって」若さま「あとをつけるんのはやめにしな。うろうろしたって無駄だよ。・・それと も、おれはこれから、目明しのうちへ行くんだが、一緒にいくかい」そう言われたお才は逃げていきます。そこへ小吉親分が、若さまに頼まれて聞き込みをした結果を持って来ました。盗みに入られた尾張様も身内を斬られた利倉屋も届けは出していないというのです。若さま「出すわけがねえ。おれは、初手のうちは利倉屋と花火職人が作った火薬のいざこざぐれえに思っていたが、尾張家が何か関わりを持つとすると」(若さま何か考えを巡らした様子です) おいとは若さまが何処へ行ったのか気もそぞろですが、外には喜仙を見張っている侍達がいます。というわけで、喜仙へ帰るとおいとちゃん親子が怪我でもするといけないので、小吉の家に泊まると話しながら歩いていると、若さまが足を止めます。 殺された鍵屋の番頭の女房が、道端で幼い子と乳飲み子をかかえてお菓子を売っている姿が目にはいりました。若さま「親分、どうもこのままじゃおけねえぜ。・・・・許せねえことだあ」 続きます。
2017年12月23日
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近頃の大名屋敷は・・あれほどの火薬は何処にもあるものではない、どうしても手に入れたい、と利倉屋は言います。岳庵は昨日尾張藩の行列にいた江川了巴が花火を見に来ていたのはおかしい。自分が工夫した火薬で打ち上げさせその効力を確かめたに違いない、といいます。たとえ相手が誰であろうと、儲かると知った仕事は後にはひけない、尾張藩をあたってみよう、下っ端役人が気がつくと面倒なことになる、と利倉屋が言った時、「もう、気がついている人がいますって・・」と掏りのおさいが入ってきます。(若さまがじっと利倉屋に目を付けていたのを見ていた女です)正体が知りたくて、夜も眠れない娘が沢山いるという、人呼んで若さまというお人だというのです。利倉屋から戻る道がら、小吉が、板造が殺されたのは人魚のたたりだと噂をしていると若さまに言っています。 若さま「なるほどねえ、人魚のたたりか」 若さま足を止めます。 まだその程度の調べではダメでしょうかという小吉に、 若さま「うぅん、かいもく分からねえな。・・まぁっ、俺の出る幕じゃなさそうだな」 小吉「そんな水臭せえこと言わねえで、何とかお知恵を」 (この時、若さまは、右足で地面の砂をいじっています。子供が拗ねた時やるような仕草です・・可愛いですよ) 小吉と頓平が頭をさげてお願いをします。 若さま「知恵でもないが、そうだな、・・今夜、利倉屋の表でも張って見るん だな」 若さまが歩きだしました。 両国の六兵衛殺しの時にも、品川の板造殺しの野次馬の中にも、利倉屋の用心棒が混じっていたが、「同じように人魚を珍しがっている男らしいぜ」と若さまが言いますが、小吉と頓平はポカンとしています。 若さまに言われたように、小吉と頓平は利倉屋を見張っていますと、利倉屋の男が尾張屋敷に忍び込むのを目撃しました。若さまを呼びに頓平を走らせます。若さまもやってきて見張っていますと、尾張藩の侍が人を担いで出てきました。若さま一人で男達をつけて行きます。すると、侍たちは担いできた男を木の下において去って行きます。後をつけていた若さまは男に近づきます。男は殺されていました。(第四の殺人)若さま「物取りにみせかけたな」 そこへ、利倉屋の一味がやって来ます。利倉屋「おめえさんかね、やったのは」若さま「見当ちげえだな・・あんたが利倉屋さんか。身内の部下が可哀想に、引き 取ってやんなよ」 一緒にいた侍達が身がまえます。若さま「おい、利倉屋さん、あんたもちっとは知られた廻船問屋だ、何だって身内 を大名屋敷に盗みになんかやったんだね」利倉屋は知らないこと、自分で勝手には入ったんだろう、と言います。若さま「うはっはっはっは、 語るに落ちたって言うぜ。その勝手に入った男の身を 案じて、御一同、ぞろぞろ迎えに来たっていうわけか」 利倉屋が「やっちまえ」というと、用心棒たちが若さまに向います。(ここでちょっと・・・作品を見る時に、ここのところの橋蔵さまの仕草に気をつけてくださいね。黒坂がかかってきたのを払った後に、右袖が懐に入れている懐紙に引っかかってしまっています。それをセリフと共に何気なく処理するのです。上手い・・その動作が作品の中に自然と溶け込んでいるのでよく見ていなければ気がつきません。・・以後の作品の中でもこういうところがありますよ。)若さま「木の葉流に新陰流か、もったいねえぜ、廻船問屋の用心棒じゃ」 かかってきたので、若さま剣を抜き、構えます。一文字崩しです。 その時、呼び子が聞こえ、利倉屋一味は逃げていきます。 駆けつけた小吉に、若さま「親分、呼び子はまずかったぜ」 小吉が「どうしてで・・」と言います。 若さまは、尾張藩屋敷の塀の向こう側見透かしているようです。若さま「座敷へ忍び込んだ男をわざわざ道端へ捨てに来る。近くで呼び子が鳴っ ても、忠言一人出て来ねえ。近頃の大名屋敷は変わったぜ」 尾張藩屋敷の塀の内では、外の様子をじっと伺っていました。若さまが立ち去ったのを見届けると、玄蕃は気づかれないよう若さまを追えと言います。若さまが喜仙に帰ってきました。後をつけている侍は確認をすると帰って行きます。 若さまは、あとをつけていることを分かっていました。(これは面白いことになるな・・・というところでしょうか、若さまは) 若さまが事件に乗り出したことで、まずは利倉屋一味が動き出し、次は江川了巴一味が動き出します。花火大会からの殺人事件と人魚が尾張藩とどのように関わってくるのでしょう。単なる事件ではなさそうです。若さまの推理は如何に、、、。 続きます。
2017年12月20日
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人魚を探しにさ翌日、小吉親分が若さまのところにやってきています。小吉「へえ、何しろ死人に口なしで、六兵衛が番頭に何を喋ったか、番頭が六兵衛 から何を聞いたか判らねえんで」若さま「そう何も判らないでは、どうやって調べるんだ」せめてもう一つ別の手掛かりでもあれば・・と、困ってやってきています。(若さまは、ひとごとですから小吉の言うことを面白そうに聞いていますよ)その時、頓平が大変だ、また一人殺されたと慌ててやって来ます。 事件が起きた長屋に来ています。長屋で殺されていたのは板蔵という男です。 (第三の殺人)(ここからは、若さまと小吉親分のやり取りを聞き逃さないでください。若さまが事件の入口を・・小吉親分は若さまの言うことがまだ呑みこめていないようです)小吉親分が困ったように深いため息をつきますと、若さま「どうだな、親分。何か手掛かりはついたかい」(若さま、小吉親分をからかうような感じでいいます)板造という男は、人様から恩に着られることがあっても恨まれたりすることはないという、この長屋住まいから物取りでもないと、小吉親分が言うのを聞いていた若さまが、若さま「花火に関わりはねえかな」との問いに、かかわりはないと、小吉親分が答えます。小吉「夕べも花火見物には行かなかった様子で、可哀想に、ついひと月めえにも、 海におぼれている人間を助けて、仏の板造と言われるほどのいい人間だ そうで」(”海におぼれている人間を助けて”と聞いた時、若さまの目が一瞬キラッと光ります) 若さま「いい人間か」 と言って横を見た時、若さまの視線は野次馬の中にいる侍(黒坂)を見逃しませんでした。 若さま「親分、ちょっと」 外へ出て来た若さまは、野次馬の中にいた侍が去って行くのを見つめていましたが、小吉親分に、若さま「もう一つ欲しいと言っていた手掛かりが出来たんだ。何とかしてやらねえ と、板造も成仏できねえぜ」 小吉「そうなんで、どうも」若さま「俺なら目を付けるな」小吉「えっ、な、何ですって」若さま「うん、人魚だよ」小吉「人魚?」 若さま「六兵衛が殺された両国の川の中にも人魚が出たという。板造が助けた男も 六兵衛だったら・・・」と言い歩きだす若さまに、小吉親分がどちらへと言いますと、若さま「人魚を探しにさ」というと足早に、何事もないように黒坂をつけて行きます。 黒坂は利倉屋に入って行きました。なるほどというように見ている若さまの方を見ている女がいます。若さまは、気にせず立ち去って行きます。 続きます。
2017年12月16日
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いよいよ「若さま侍捕物帖」がカラ―で登場となります。原作は城昌幸の『人魚鬼』を脚色したもので、イーストマンカラーのワイド映画です。まだ、カラーが一定していない時期の作品のため、色に難点があるのは仕方ないですね。前回の「深夜の死美人」から約6か月ぶりの”橋蔵若さま”は、一回り成長していて、ますます粋で砕けた素敵な若さまになっていて嬉しいかぎりです。複雑な事件になってきています。若さまの推理や如何に。橋蔵若さまこの6作品目から少し大人になりました。両国の川開きの夜、殺された花火師のまわりに踊る人魚の群れ。怪奇な発端と、人魚島の大爆発のトリック撮影が見ものです。 ◆第29作品 1957年封切 「若さま侍捕物帖・鮮血の人魚」 若さま捕物帖シリーズ6作品目になります。 若さま 大川橋蔵治行 伏見扇太郎おいと 星美智子うつぼ姫 大川恵子おさい 千原しのぶ頓平 岸井明遠州屋小吉 星十郎宝田弥兵衛 上代悠司蜷川七兵衛 月形哲之介六兵衛 中野雅晴黒坂丹助 仁礼巧太郎お花 美山れい子小森新太郎 立松晃舞岳庵 渡辺篤江川了巴 進藤英太郎青山玄蕃 坂東蓑助よっぽど大きいやつがねえ 作品のオープニングシーンは今までと違っています。夜明けの人魚島海岸、ずぶ濡れの男が舟から降ろされ一発の銃声が響き、殺されてしまいます。裏切り者や島ぬけをするものは殺すというのです。六兵衛という者を取り逃がしてしまったようで、江川了巴は「どのようなことがあっても探しだせ」というのです。その六兵衛が必死で泳いでいく後を人魚が追います。途中舟に助けられた六兵衛は「人魚・・人魚」とうわごとをいうのです。ここから、スタッフ、キャストの字幕になります。 両国の夜空に上がる花火に、「玉屋」「鍵屋」と民衆が騒いでいます。若さまと遠州屋小吉も、喜仙の二階から、おいとのお酌で気分よく飲みながら花火を見ています。おいとが、近ごろ花火は玉屋に人気が偏ってしまってと、鍵屋はどうしたんだろうと言いますと、いい職人がいないのだ、しかし今年はあっといわせると言ってると、小吉が言います。若さま「おもしれえな、江戸っ子は、そうなくっちゃいけねえ。上手い工夫でも ついたのかな」 風に揺れ風鈴が涼やかな音をたてています。若さま「こっちはいい気持ちで涼んでいるが、頓平は今頃汗だくだろうぜ」 その頃、頓平は群衆の整理に大わらわ。その混雑のどさくさに紛れ、スリのおさいが、懐から財布を抜いていきます。川には屋形舟がいっぱいの中の一艘の屋形舟に、あとで事件に関わってくる、廻船問屋利倉屋金左衛門、用心棒の佐山八十兵衛、黒坂丹助、蘭学者舞岳庵が芸者をはべらせ花火に興じ、鍵屋の打ち上げる花火を待っているようです。自慢の花火を打ち上げるとの評判が高くなっている鍵屋の花火の筒が並んでいる船では、鍵屋の番頭や職人たちが、六兵衛が来るのを今か今かと待っています。六兵衛が暗闇の中小舟でやって来て、鍵屋の花火が打ち上げられます。高い音の見事な花火が上がりました。それを立派な屋形舟に乗っていた蘭学者青山了巴が「間違いない」と呟くと、うつぼ姫、家老の青山玄蕃らが了巴の顔を見ます。利倉屋金挫衛門の屋形舟でも、「只事ではない」「行ってみるか」と・・何かありそうです。喜仙の二階から見ていたおいとと小吉は「ああ、きれい」「てえしたもんだ」と感心していますと若さま「おっそろしく、強い火薬だなあ」若さまも火薬の強さに不審を抱いたようです。 六兵衛は花火を打ち上げると逃げるように、急いで賑わっている中舟を漕いで行きます。その六兵衛ををじっと追っている青山了巴の目がありました。川岸についた六兵衛は群衆に押され川の中に落ちてしまいます。しばらくして、舟にあおむけになり胸に銛が刺さった六兵衛が死んでいる舟が漂っていました。そばには、人魚が数匹尾びれをひるがえしていました。六兵衛の死体が引き上げられ、人垣ができている中、小吉と若さまがやって来ます。役人が「銛で刺し殺されたんだな」と、小吉が「へええ」と言いますと、若さま「そうじゃないね」 と言い、死体の傍へかがみ込みんで、死体から銛を引き抜きました。(若さま、死体から抜き取った銛の先を見つめ頷きます) 若さま「銛は殺した後で突き刺したんだ。証拠にゃ血糊がついてねえ」(さすが若さま、見落としはありません) そう言って、六兵衛の背中をくるりと返すと鉄砲傷がありました。若さま「これだよ、うしろから一発ズドンとね。花火の音で誰にも気がつかねえ」(いつものように胸のすく若さまの絵解きです。第一の殺人が起こりました) その時、若さまは、一人の侍が立ち去るのに目を止めます。(利倉屋の手先の黒坂という侍です) 小吉「若さま・・何処へ」若さま「と、聞くほど親分のカンが狂っちゃ仕方がねえよ」 (あきれた様な言い方です) 小吉「へえ」、と返事をしたのはいいが、「いや、ちょっと・・」と、若さまを慌てて追いかけます。侍は、若さまがあとをつけているのが分かったようです。急ぎ足の若さまの後から小吉もついて行きます。途中、若さまは向こう側の道を走り抜ける人影を見て 若さま「親分」 (無言で、あとをつけな、というように首を動かし合図をします)小吉「へい」 といって後を追います。 若さま「どうも、花火がいけねえな」と言って、若さまが人影が通った道に出た時、人の声が・・急いで行くと、鍵屋舟が繋がれている場所で鍵屋の番頭が殺されています。(第二の殺人)小吉が、逃げ足が速くて見失ったともどってきて、死体を見て、小吉「若さま、こりゃ只事じゃねえようで。ちきしょう、花火、人混み、夜。お膳 立てが揃い過ぎてやがら」若さま「どうやら、一人や二人で出来る仕事じゃねえな」 小吉「へっ、するってえと、この殺しの陰には、何かでっけえやつでも」若さま「控えてるね。多分、どんと上がった打ち上げ花火より、よっぽど大きい やつがねえ」(若さまは事件に関する何かを探り当てたのでしょうか)さあ、事件はどのように展開していくのでしょう?若さまの笑みを浮かべた表情からは・・・。 橋蔵若さまも、前回までまだちょっと見えた硬さが、セリフの上でも、仕草にも、余裕がでてきました。橋蔵若さまの本領発揮してきたというところでしょうか。いろいろな役を、助演という作品にもどんどん出て、自信をつけてきましたね。 続きます。
2017年12月11日
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今度はちょいと遠出だぜ水茶屋に若さまと小吉が姿を見せました。金正親子を締め上げてみましょうかと言う小吉に、娘が殺されたのも隠そうとするのだから、脅かしたって白状はしないと若さまは言います。若さま「まあ、わしが両方の尻に火をつけて歩いたから、慌てて何かやり出すかも しれねえ。そうすりゃ、」 若さまがそこまで言った時、茶店の奥からおゆきと政太郎の話している声が聞こえてきたので耳を傾けます。 政太郎は父みたいに立派な大工ではないと言い、おゆきは泣いて茶店を出て行きます。おつやに何があったのかと探りをいれます。政太郎はいい人なのだけれど、お父つぁんの腕が良すぎて、政五郎の名を汚すと叱られてばかり。まるでお武家様みたいだが、権現様以来の頭領らしいと、言います。(話を聞いている若さまの表情です。この表情が次の話を聞いていて変わります) おつや「何でも、ご先祖様が久能山の東照宮・・・あるんですか、そんなお宮が」 若さま「あるな」 おつや「その東照宮の御宝蔵を作ったと言うのが自慢なんですよ」(若さまの目が・・何かを・・小吉も若さまが何かを、というような感じで若さまをじっと見ます・・この時の目の動きがすごい・・アップもすごい、橋蔵さまはアップが綺麗) 若さま「それなら、大した大工だ、政五郎の先祖は・・。久能山の東照宮を造った のか。」おつや「そういう、言い伝えなのですって」若さま「親分」小吉 「えっ」若さま「忙しくなりそうだぜ」小吉 「へい」 茶店から腰をあげた時に、しょぼんとして歩いて来る伝七の姿が・・おゆみが金正に捕まってしまったと言うのです。若さま「なに、おゆみが」 金正はおゆみは着物を脱がし、書きつけを探しているようです。襦袢まで脱がされそうになったところへ、若さまと小吉がやってきます。取られた物を調べるのに何が悪いという金正、出過ぎたまねだという小吉。女スリと一緒になっている岡っ引きにまかしておけるかと言われ、小吉「何だと、てめえ」と向っていこうとした時若さま「親分」(この時の若さまの戸に持たれている時の足ですが、左足をクロスさせているんです・・どうでもいいことですが)小吉 「えっ」若さま「間に合えばそれでいいんだ。おゆみ、行こうぜ」その時、おゆみは宗七に倒れかかります。おゆみ「ふん、やんなっちゃうね、どうせ転ぶんなら、お武家さんの方へころびゃ いいのに」(この時若さまの顔が笑っているのですよ。若さまは何か分かったようです) 喜仙の二階に来ています。若さま「おゆみ、金正が欲しがっていたもの、わしにくれぬかな」小吉 「若さま、おゆみは持っちぁいませんよ」おゆみ「いいえ、親分さん・・・どうぞお受け取りくださいまし」と、おゆみは懐から書きつけを出し、若さまの前におきます。小吉 「よく、金正に見つからねえで」若さま「親分、さっき金正の蔵から出る時、おゆみがよろめいたろう」小吉 「へい」若さま「見ていると宗七の懐からこれを抜きとったものさ。裸にされる前に、あい つの懐に投げ込んでおいたとみえる。あははっはっは」小吉 「なるほど、天晴れな腕めえで」 若さま、書きつけを広げると、若さま「これ、半分しかねえ。それでかぁ、・・どうやら分かってきたな」小吉 「お分かりになりましたんで」若さま「うーん、うん」と言って、にっこりとして、おゆみに書きつけを森田のところへ持っていくように、そして宗七が表に隠れていておゆみをつけるだろうが、かまわず行くように言います。 若さま「親分、早籠を仕立ててくれ、大急ぎだ」小吉 「へつ」若さま「ついでに、佐々島を呼んでくれ。今度はちょいと遠出だぜ」小吉 「へい、ようがす」 おゆみが書きつけを森田のところへ持っていった後、みんなが動き出します。向かうところは、久能山。森田兄弟は金正を仲間に入れることとし、財宝が隠されているというお堂をあけてみますと、像がありました。森田市郎兵衛自身がお堂へ入った時、若さまが現れます。若さま「待ちかねたぜ、久能山の御宝蔵を狙う盗賊め。現場を抑えてやろうと待っ ていたんだ。あっはっはっは、今さら目をむいたってはじまらねえ。私利 私欲のために大勢の罪なき人々を殺肉して飽き足らず、天下の御宝蔵を 土足にかけんとする不所存者。覚悟を決めて神妙にいたせ」 (大詰めの大立回りになります)市郎兵衛「相手は一人だ、逃がすな」若さま「馬鹿め、これほどの盗賊に、備えがねえと思うのかい」一文字崩しがでました。手をまわしておいた町方もやってきます。 若さま「佐々島、小吉、早く江戸へ帰ろうぜ」 (江戸の町(ここで若さま侍の歌が流れます)若さま達が歩きながら、事件の経過を話しています。(ここから今回の事件の流れを若さまが解説していきます)◇政五郎から買った衝立を張り直そうとして、裏張りの図面を見つけ出した。かねがね政五郎の自慢話を聞いていたから、久能山御宝蔵の図面と判断したが、生憎図面は半分。抜け穴があるのは分かったが、入口が分からない。残りの半分は政五郎の家にあると見当をつけ、うまく騙して探しださせた。金正は欲が深すぎ財宝を一人占めにしたので、森田が政五郎を殺し図面を奪い、おゆみを使って金正の持っていた分まで掏り取らせた。おあいは、政五郎が死んだのは、金正と関係があると睨んだ。おあいは政五郎が金正のところへ何か持っていったのを知っていたのがかえって悪かった。金正のおさとを殺したのは森田。金正がおあいを殺したので、金正を脅すつもりでやったこと。◇ 若さま「殺したり殺されたり、物の欲に取りつかれた奴らのすることは、常人じゃ 想像もつかねえことだよ」 小吉「それならそうと早く・・・」若さま「しかし、親分、あの男は疑われることばかりで潔白を示す証拠がないじゃ ないか。だから、自分で下手人を探したのさ」小吉「なるほど、どうも、恐れ入りやした」若さま達が入った茶店に、まっとうになったおゆみと伝七が働いていました。お弓がお茶を持ってきました。若さまにも・・・ お弓「はい、これは若さまのお茶」若さま「うん」お茶を飲んだ若さま、お弓に若さま「こりゃうめえ。お弓、このお茶をもう一本つけておいてくれ」みんな大笑いです。あっはっはっは。 町の女の子たちが、若さまを見つけて「きゃあー」と茶店になだれ込んで来ました。若さまはおいとの手をとり、慌てて逃げてゆきます。 今回も若さまの冴えた推理と活躍で無事に事件も解決いたしました。 ( 完 ) いつもながらの若さまふところ手でのんびりした風情で演じていましたが、この「深夜の死美人」の撮影期間は、京都は雪の日や寒い日の連続だったようで、雪の降る日は火にあたりながら、晴れ間を見ては撮影を続けるという具合だったようです。そのため、江戸前の粋な橋蔵若さまも、京都の寒さにはすっかり閉口しましたので、それが画面に現われていやしないかとハラハラしたようです。ちょっと先になりますが、次回の若さま侍シリーズ第6作品からはいよいよカラーでお目見えとなります。次回は、橋蔵さま、股旅やくざもの初挑戦となる「喧嘩道中」に。
2017年07月19日
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先刻お馴染みの仲じゃねえかある夜、死んでいるおさとを金正の宗七がおぶり重右衛門と歩いているところに岡っ引きが通りあわせます。次の日、若さまと小吉親分が金正にやってきています。小吉に、娘が殺されているのに何故届けないと言われ、自分の娘が死んだのだから、他人が知ったことではないと、触れたくない様子の金正重右衛門です。若さまは、そのやりとりを聞きながら周りを見渡したりして、衝立の前を行ったり来たりしています。若さは古い衝立に目をつけたようです。小吉が娘の死骸を見に行くと言うので重右衛門も席を立ちます。若さまと宗七の二人きりになりました。若さまニコッとした顔つきで宗七に聞きます。 若さま「あれはどっから仕入れたい」 衝立を見て挙動不審な様子を見せた宗七に、若さまのにこやかだった表情が変わります。若さま「有り体に申せ」 宗七は、大工の政五郎のところから、決して隠すつもりではない、と言います。若さま「へっ、おまえ、とっさに嘘が浮かんでこなかったんだろう」 若さま「嘘をついても調べりゃ分かるぜ」宗七 「とんでもない。ただ、あんなことがありましたんで・・なんですか、気味 が悪くて」若さま「そうかい。じゃ、あの破れ衝立をどうしようというんだい」紙で裏張りしてあったが、素人仕事であったので張り替えようと思っているというのです。若さま「どんな紙が貼ってあったい」 宗七が、ありふれた紙だったと答えると、若さまは立ち上がり、徐に「おさとを殺した奴を知っているな」と・・・宗七は「知るもんですか」と答えます。若さま「下手人をおめえたちだけ知っていて、他に知られたくねえって言うのは どういう訳だい。ここんところが・・」 その時、巾着切りの仲間なんかと話はするなと重右衛門来て宗七に言います。若さま「あはっはっは、おおきにそうだ。ところで、森田市郎兵衛は、あれから碁を打ちに来るかい」重右衛門は黙って障子を締めて行ってしまいます。 大勢が稽古をしている森田道場に若さまが現れました。若さま例の調子で稽古風景を見ていますと、森田「貴公は何者だ。誰に断って入ってきた」若さま「勝手に入ってきたよ。・・先刻お馴染みの仲じゃねえか。・・それより金正のところで人殺しがあったぜ、知ってるかい」(若さまは、いつでも勝手に入っていってしまいますね) 森田「うん、いやあ、それで貴公知らせに来てくれたのか」若さま「親しい間柄だそうだな」金正も力を落しているだろう、と市郎兵衛が言うと、三郎兵衛が「変死では諦めきれまい」と言います。若さまその言葉を聞くと、若さま「あはっはっはっは、おめえたち慌てちゃいけねえよ」森田「なにっ」若さま「金正で人殺しがあったっていうのに、誰が殺されたか、いっこうに聞いてこねえな。そのくせ、娘が殺されたってことは、知っているらしい。こいつは面白れえ、あっはっはっはっは」言いがかりをつけに来たなと、三郎兵衛がいきり立ち、若さまにかかって行きますが、若さまひらりと身をかわします。門弟達がいきりたっているのを見て、若さまは市郎兵衛に何とかしてくれと言います。市郎兵衛みんなに「下がれ」というと、市郎兵衛「我らに疑いがあるなら、しかるべき役むきの者に来いと言ってくれ。 なんとでも申し開きをする」若さま「ほっほっほー、こいつはうまい。役人が来るまでに、申し開きの相談をす る手があるな」 その時、ひとりが若さまに向ってきたので、サッと刀を抜いたと思ったら刀を素早く鞘におさめました。その瞬間、かかってきた男の袴が落ちました。若さま「君子危うきに近寄らず」と言って、笑いながら出て行きます。 若さまが去った後、三郎兵衛が、若さまをあのまま返していいのかと市郎兵衛に言いますと、「かまわん。あいつよりおゆみのことだ」と言うのです。おゆみは伝七から森田道場の者達が来ると言うことで逃げた後に、おゆみの家に森田三郎兵衛たちがやってきて、書きつけを探すため家探しをします。 続きます。
2017年07月14日
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最初から考えてみよう玄関の戸が開き入ってきたのは、昨日の夜もおゆみの家に来ていた金正です。気味が悪い感じがしますね。金正は酒を注いで飲んでいる若さまを見ておゆみに仲間かと聞きます。若さま「いやぁ、野次馬みてえなもんさ」金正「返せよ、素直に返せよ」 おゆみが、うるさいほかに言いようがないのかと言いますと、買い取ってやろうと金正が言います。金正「あいつが十両出すはずがない。おれは二十両出してやる。それとも三十両 かい」二人の様子をお酒を飲みながら見ていた若さまでしたが、 若さま「五十両。わしが出す。・・・どうだい、思い切って百両と出るかい」 金正「おい、お侍、覚悟はしておろうな」 若さま「何の覚悟だい」 金正「いらざるところに割って入り、邪魔する分には捨ておかんぞ」金正は刀に手をかけるようにして取り出し、刀を抜くように煙草入れをポンと鳴らします。それを見ていて、若さま「なーるほど、おまえ、元は侍だな。そのかまえ、なかなかできる。あいに く刀がねえんで困るだろう。わしのを貸そうか」 刀を金正の前に置いた若さまを睨みます。その金正の動向を面白そうに見ている若さまです。 金正はおゆみに今日は帰る絶対他人には渡すなと言って帰って行きます。 若さまが帰ると言うのでおゆみも一緒に出ていきます。その道すがら、若さまはおゆみに、巾着切りなど止めて暮らせと言います。そこへふいに侍達がかかってきます。若さま「とうとうやって来やがった。しかし、おまえたちはなにもんだい」三郎兵衛「問答無用。ただし刀を抜く暇だけは与えてやる」若さま「はっはっはっ、人殺しがたいそうお情け深いことだな。ははっはっ、わし を脅かそうと言うのか。でなきゃ、たいそう腕自慢のようだが、そっちの 思惑通りにいくかどうか」若さま刀に手をかけます。 三郎兵衛「ええい面倒、斬れ」(立回りです。ここでは若さまは、相手の刀を次から次に宙に飛ばしていきます) 相手が足を狙ってきたので、若さま宙に舞い上がります。 若さま「こいつは珍しい、足を狙って来やがった。柳剛流だな」小吉達町方の呼び子が聞こえたので、三郎兵衛たちは消えて行きました。若さまはあいつらは、おゆみをどうかしようとしたのだと。おゆみに頼んだのはあいつらで、書きつけを金正から掏り取っておきながら持っていかないから、とりあげにきたのだろうと言います。若さま「おゆみ、気をつけなくちゃいけねえぜ」 喜仙の二階で、若さまと小吉が考えています。(ここでの会話の時の若さまの持っている、扇子の使い方にも注目して見てくださいね)小吉「そうすると、一体どういう事になるんでしょうね」若さま「親分、最初から考えてみよう。政五郎は金正のうちへ行くと言ってうちを 出た」小吉「その時政五郎が何かを持っていたかどうかなんですが、おあいは持っていた と言うし、おゆきは手ぶらだと言うし、どっちが本当なんでござんしょう」若さま「どっちも、本当だろうよ。二人ともそんな嘘をつく必要がねえ」 小吉「へえ、すると・・・」若さま「小さな懐に入るようなものなら、何にも知らねえおゆきは手ぶらだと思う よ。例えば、お弓が掏り取った書きつけのような」小吉「なるほど、それじゃ、そいつを金正のやつが」若さま「そいつは分からん。金正が政五郎を殺す必要があったかどうか、そこがお かしい。しかし、おあいは金正の仕業だと思って掛け合ったが、埒があか ねえ。そこでおゆみのうちまで追いかけていって、あのうちで殺された」 小吉「おあいはやっばりおゆみのうちで。じゃ、今度こそ金正が」若さま「どうかな。その時金正がいたかどうか。・・・うん、それからおゆみを 使って書きつけを奪わせたのは、柳剛流の使い手森田市郎兵衛とかいった な。あいつらしいよ」小吉「難しくなりやしたねえ。仲のいい森田と金正が何故そんなことをするのか」その時、おいとがお酒を持って入ってきました。小吉はおいとが注いだお酒を飲もうとした時、速水真之助が刀を研ぎに出したことを思い出し若さまに言います。そして、その刀に血のくもりがあったというのです。 続きます。
2017年07月09日
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書きつけ・・頼んだのは何処の誰でい川っぷちで殺されたおゆみの事件を調べている時、お弓から着流しで、ぶらぶら暇そうに歩いて、うすぼんやりしている侍がうろついていたことを聞いた小吉親分でしたが、どこから手を付けてよいかさっぱり分からず、いつものように喜仙の二階、若さまのところへとやってきていました。小吉 「でー、そのうすぼんやりした侍って奴が怪しいってことになりやすが」若さま「あははっは、親分、そのぼんやり侍というのは、わしだよ」小吉 「えっ、若さま。じゃ・・じゃ・・若さま辻斬りを!・・」若さま「えぇっ」おいと「親分さんたら、いやだわ」三人で大笑い。小吉「なるほど、これはどうも」 若さまの推理が始まります。おあいはおゆみの家で誰かに斬られ、自分で逃げてきて川っぷちで倒れた。その証拠には、腰から足へかけて血が流れていたし、道には点々と血の跡が残っていた。小吉 「じゃ、若さま夕べはあの、現場へ」若さま「通りあわせたのさ」 といって盃を飲みほした後、真之助の刀は抜いて見なかったのかと小吉に聞きますと、旗本ということもあり、手続きもとらずに行ったので、そこまで言えなかった、と小吉は答えます。 小吉が「早まった」と悔やんでいると、若さま「そう、悔やむこともあるまい。両方の事件を組みあわせていきゃ、何か出 てくるかも知れねえよ」 それに答えて小吉が、今のところは、真之助とおあいの死骸を見ていった侍たち、になると言います。次々に殺されておゆきさんは大丈夫かと心配するおいとに、若さま「真之助が下手人なら大丈夫だが」と答えます。 若さま、小吉からの話から、おあいは真之助をかばっているように思える。そこへ、おゆきが隠すのを手伝っている様子と聞いて、若さま「それじゃ、なおさら、真之助がおあいを殺すのはおかしくなる。それか ら、スリの姐御とおかしな侍はどんな兼ね合いかな」 聞かれた小吉が困っていると、若さま「侍の一人が死骸を見て、おゆみではないと言ってたぜ」困った顔をした小吉を見ていて、おいとが大変ですね、ほんとに」というと例の調子で、若さま「大変なぐらいの方が、歯ごたえがあっていいよ。うん」 おゆみが頼まれて掏った品物がよほど大切なものだと伝八と話をしていますと、玄関の戸が「ガラっ」と開く音がしたと思ったら、若さまが部屋に入ってきました。若さま「何を驚く、化け物が出たんじゃあるまいし」というと、「おっ、やってるな」と言い 図々しくお猪口を手にし、伝八に注ぐように催促をして、美味しそうに飲み始めます。おゆみ「まあ、図々しいね、この人は」お猪口で一杯飲み干すと、もう一杯と催促するように伝八にお猪口を差し出します。伝八が「あまりなめたまねをするな」と言い返しますと、若さまお銚子を伝八から取りあげ、若さま「あはっはっはっは、おまえを川の中へ叩きこむと、この姐さんから 辻斬りにされちまうんだぁ」 若さま「遠州屋の親分がそう言ってたよ」おゆみ「えっ、あんたお役人?」の問に、「お役人はよかったな」と笑い、この前の親父が外をうろついていたと言います。おゆみ「えっ、来てるって、金正が」若さま「金正ってえのか、あの親父が。うーん」 おゆみの様子を見て、若さま「なんでそう怖がる。いってえ何をすったんだい」おゆみ「よしゃよかったねえ、書きつけみたいなものさ」若さま「書きつけ。掏られたのは金正で、お前に頼んだのは何処の誰でい」おゆみ「言えませんよ、そんなこと。巾着切りにも仁義がござんすからね」若さま「そいつは義理がてえ。おあいをばらしたのも、その義理ゆえか」 そう言われたお弓は、人殺しなんかしていないというのです。若さま「だって、おあいは、ゆんべここのうちで殺されたんだぜ。お前じゃ ねえとすると、誰が・・」その時、玄関の戸が開く音がします。おゆみが不安そうな声でおゆみ「伝八かい?」 (若さまは入ってきたのが伝七ではないことを感じとっていますね)入ってきたのは・・・金正でした。いよいよ核心に触れてきました。若さまがどのように事件を結び付けて解決していくのか。鍵を握っているおゆみと金正と若さまの三人が顔を合わせます。 続きます。
2017年07月05日
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前回の「鮮血の晴着」の撮影が終了し、すぐに次の若さまシリーズ「深夜の死美人」の撮影に入りました。昔のスターといわれた人達は休む暇はありませんでした。◆第23作品目 1957年4月2日封切「若さま侍捕物帖 深夜の死美人」」 若さま捕物帖シリーズ5作品になります。 城昌幸の原作「若さま侍」捕物シリーズの「だんまり闇」より構成、脚色した作品です。前回の「鮮血の晴着」では撮影の都合で小沢監督になったのですが、この作品では深田金之助監督が帰ってきました。”若さま侍”の歌も流れてます。大工の政五郎、政五郎の娘おあい、金正重衛門の娘おさと、と次から次へと殺されていくといった事件がどう結びついていくのでしよう。古い衝立に隠されていた絵図面。政五郎の先祖が東照宮の御宝蔵を作ったという事とスリのおゆみが金正から掏り取った絵図面から、事件は久能山ご宝蔵に隠された宝物をめぐっての争いと若さまは確信し、久能山で待ち受けます。そして、若さまの神道流一文字崩しが冴えわたります。若さま 大川橋蔵 おいと 星美智子おゆき 三笠博子金正重右衛門 薄田研二おゆみ 浦里はるみ金正宗七 徳大寺伸森田市郎兵衛 阿部九州男森田三郎兵衛 富田仲次郎あおい 若水美子遠州屋小吉 星十郎速水真之助 立花伸介佐々島俊蔵 伊東亮英 何を掏られたんだい 春祭りで賑わっている江戸の町に、若さまの姿も見えます。若さまは祭りの催しはそっちのけでお酒をうまそうに飲んでいます。お糸がお祭りの方へ行きたくてヤキモキしています。祭りの催しのうらの方で、大工の頭領の政五郎が、娘のお雪に近づかないように速水真之助を呼びつけ、娘との交際は認めないと言い表通りに出てくると、金正重右衛門が声をかけてきて、この間頼んだものはみつかったかと。政五郎はありました、と返事をします。今夜持っていくという約束をして別れます。その政五郎が殺されました。駆けつけた遠州屋小吉親分は物取りではない、たった一刺しで殺されているところから侍と判断します。小吉と顔があった侍の様子から、あとをつけさせます。笛が落ちていました。先ずは政五郎の家で二人の娘に聞き込みをします。姉のおあいが、政五郎は金正へ大事なものを届けるようなことを言っていた。しかし、妹のおゆきが出かける政五郎を見た時は手ぶらだったといいます。次に小吉は金正に聞き込みにいきます。昨夜は来なかった、政五郎が今までに金正に持ち込んだものは古い小さな衝立だけだが、ちょくちょく重右衛門や剣術道場の森田と碁を打ちに出入をしていたと聞きだす。森田の道場から出てくると、金正の息子宗七と出くわした時、宗七は笛の上手な速水真之助のことを言い忘れたと小吉に言います。その速水真之助は落ちていた笛のことも何も知らないといいはります。飲み屋に政五郎の娘のおあいが酔っている兄政太郎を連れて帰ろうとしていますが、腰をあげません。おや、お酒のある所に若さまの姿というように・・・若さまがいます。 おあい「何が自慢でお酒なんか飲むんだろうね。兄さん、飲んだくれなんかに、 ろくな奴はいないんですからね」(その言葉を耳にした時の若さまの表情です。お猪口のお酒を飲もうとしてドキッとしています・・若さまのことを言われたようですものね) お逢いは酔いつぶれている政太郎に我慢が出来ずに、店を出て行きます。若さまの好奇心が動き出したようです・・・店から表に出ると、おあいの姿はなく、 若さまがぶらりぶらりと歩いていると、足場やに若さまに近づいてきた女(おゆみ)が、迷惑はかけないから一緒に歩いてくれと言ってきます。おゆみ「気にしなくてもいいですよ。じきに消えてなくなりますから」若さま「あっはっはっは、まるで、化けもんだな。消えるかい、えっ。つけられて んのか」 まだつけてくるので、しつこいと言うおゆみに、つけてくるのは男か女かと振り向こうとする若さまに、気取られるじゃないかと。 若さま「こいつは、悪かったな。しかし、何であの親父につけられるんだい」おゆみ「おや、分かったのかいお武家さん。見た目よりはしっかりしているん だね」若さま「はっ、褒められたか。あっはっはっは、」おゆみ「大きな声出さないでくださいよ。こっちは人目につかず逃げ出そうと思っ てんだから」 おゆみの後をつけているのは金正重右衛門でした。若さま「おまえ、あの親父に捕まると、どうなるんだい」おゆみ「取替されちゃうのさ」若さま「なにを。おまえ、あの親父から何か取ったのかい」おゆみ「あたしゃ、巾着切りなのさ」若さま「スリかい、おまえは」おゆみ「ご苦労さん、消えますよ」 若さまの脇を頬かむりをした重右衛門が通り過ぎようとします。若さま「おい、おまえ、あの女に何を掏られたんだい」重右衛門は何も言わず行ってしまいます。 若さまは、おゆみの後をつけます。つけてくるのに気づいたおゆみは、途中出会った伝八達に若さまをやっつけるように言っていなくなります。平気な顔をして通り過ぎようとする若さまに「待て、この野郎」と絡みます。若さま「何か用かい、色男」 伝八達がかかってきたところに、若さま「昼間の星見せてやろうか」ビンタを思いっきり・・・(その後にこのような幾何学模様の映像が入ります) おゆみの家から悲鳴が聞こえて傷を負って出て来た女が、どういう訳か、川っぷちで死んでいます。おあいが殺されたのです。侍たちが死人をみて、おゆみでないことを確認して引き上げていきます。それを若さまが見ていました。 おゆみの家へ事情を聞きに行った小吉親分は、おゆみから「川っぷちと言えばさっき伝八が辻斬りにあった」ということを聞きます。その風体は、着流しで、ぶらぶら暇そうに歩いていて、うすぼんやりしている侍だったと。(誰のことか、皆様はお分かりですね) 続きます。
2017年06月29日
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往生際が悪いぞ、おさらいをしようかい春月には、若さまがおしゅんのところへやってきていました。おしゅんは弟の四郎吉から六左衛門がお露を口説いていたと聞き腹が立っているようです。その二人の様子をお酒を飲みながら面白そうに見ています。 若さまの「死んだ旦那のことでも思い出すと焼けるかい」に、おしゅんは腹が立つだけと答えます。若さま「気がつかなかったのかい、まるで」 「ええ・・・あっ、そういえば」とおしゅんが何かを思い出したようです。若さま「そういえば」 おしゅんは思い出したことを話しだします。六左衛門と将監が言い争いをしたことがあった。六左衛門がお嬢様を嫁にやってはいけない、持参金が多すぎると言っていたというのです。若さま「持参金が多い?」そうすると将監が、みんなお金を使ってしまうぞと怒っていたというのです。(おしゅんの話を聞き終わった時の若さまの表情です) そこへ佐々島と小吉がやってきます。 若さま「おう、早かったな」旗本八代将監のところでは三千五百石の旗本榎本織之進の息子との縁組が整ったが、式の当日になって・・と言ったところで、若さま「よい、わかった、で、大目付の月番は」佐々島「土居紀伊守様、村上主水之将様」若さま「うん、土居でよい」(若さまの顔が真剣な顔つきで、何か考えがあるようです) みんなを集めてお露が結婚すれば榎本を利用することができると話をしている将監。源二郎は牢に入れられているお露を助けに入ったが見つかってしまいます。屋敷の門から必死の思いで逃げたところへ、入れ替わり若さまにこりとして登場。 若さま「どうした、みんな鳩が豆鉄砲を食らったような顔をして」殺気立っている侍達を見て、若さま「よせ、よせ。つまらねぇ刃物遊びは」 将監 「無断立ち入りは迷惑、貴公は当屋敷には用はないはず」若さま「ところが、大事な用が残っていたんだ」将監 「では、申してみよ」若さま「盗賊の張本人と六左衛門殺しの犯人を捕まえようと思ってね」将監 「ふん、面白い、それが誰だというんだ」若さま「ふざけるねぇ、八代将監。そういうお前を縛りに来たんだ」将監 「だまれ、何の証拠がある」若さま「往生際が悪いぞ、八代将監。仕方がねえ、おさらいをしようかい」 将監が娘と金を使い榎本織之進に取り入り、立身出世をはかったが、六左衛門はそのやり方に反対だった。娘に惚れていたうえに、一緒に稼いだものを将監が金を出世のために一人で使おうとしたから。六左衛門がお露をかどわかしたが、色と欲とに目がくらんだ重蔵が、お露の晴着を証拠に六左衛門を裏切って将監のところにご注進。その結果六左衛門は殺された。西光寺で六左衛門の帰りを待っていて晴着を立てに随分六左衛門を責めた。若さまが将監の持っている杖をさして「その杖で」と言います。六左衛門も合口を抜いたが、将監が相手ではかなうはずはない。と、そこまで話したところで、愛甲が若さまに侍達が斬りかかる。若さま愛甲の太刀を交わし、愛甲の持っていたこずかを抜き取り、重蔵が殺された時のこづかを懐から取り出し合わせて見ると、若さま「思った通り、重蔵殺しはてめえの仕業か。このこずかの造雲がぴったり合 うのが動かぬしょうこよ」(初めの画像動きが速いので、画像がぶれてしまいました) 愛甲はじめ皆が斬りかかります。若さまかまえます。(出ました・・・一文字崩しです) 愛甲「一文字崩しか」秘伝の一文字崩しを持って若さまの剣が冴えわたります。 そこへ大目付土居紀伊守と佐々島、そして町方が到着します。大目付の前で、掛け軸盗の仕掛けを暴き、盗品の隠し場所を暴く若さまに、刃を向けようとした将監は、大目付土居により抑えられる。土居 「控え、将監。この御方を如何なるお方と心得る。恐れ多くも、将軍家御令 嗣なるぞ」みんなが跪きます。若さま「将監、この期におよんで恥をさらさねい方がいいぜ」と言って若さまが立ち去ると、将監はその場で切腹する。 事件解決、喜仙の二階、いつものように床柱を背においとの酌で飲んでいるところへ、佐々島と小吉がお礼にやってきた。礼を言っている間に「えっ?」いない・・若さま・・何処?」小吉 「若さま・・」若さま「いい加減にしておけよ、おめえたちに、そうペコペコされたんじゃ、酒が 不味くなっていけねえや」 みんな「どうも・・」若さま「あっはっはっはっは 々」めでたしめでたし。 粋な若さまの推理が十分に味わえる作品です。 (完)
2017年06月13日
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盗人の持ちもんだよ愛甲の屋敷をあっさりと引き払った若さまは、谷中のそば屋に来ていた四郎吉と酒を酌み交わし、いろいろ聞き出します。娘はお露といい八代将監の娘であること、娘には好きな人がいたこと、六左衛門が騙して連れてきたこと、そして六左衛門はお露に惚れていたからよく通って来ていたということです。「しかし、惚れただけでさらったのかな。六左衛門ほどの男が」と若さまは合点がいきません。命を狙われていて心配でと言う四郎吉に若さま「四郎吉、わしが命の心配のねえ所へ連れてってやるぜ」四郎吉、ご馳走になった上に色々とありがとうございますと、うれしそうについて行きますと、着いた所は番所。安心な所だが何も悪いことをしていないのにという四郎吉に、いいから入れと笑いながらいう若さまです。その後を白坂源次郎がつけていました。重蔵の取調べが続いています。中々口をわらないと言う小吉に、若さま「親分、あれを見せたかい」 小吉「いえ、まだ。出しますか」 若さま「うん」 小吉が、血に染まった綸子の晴着を広げます。重蔵は少し顔色を変えますが知らない、見たこともないと白を切ります。 若さま「重の字、これはもともと、六左衛門が隠れ家から持って帰った代物だ ぜ。・・お前、これを持ちだして、どっかへ行ったっけな。わしは見てい たよ、あの日に」 何処へ行った、何処へ持っていったと追い詰められた重蔵が、すきを見て番所の外へと飛び出した時、こずか飛んできました。歩き去っていく白坂源次郎の後ろ姿がありました。小吉が源次郎を追って呼び止めます。若さまは源次郎の腰に目をやってから、誰かの姿を見たはずだと聞きますが、源次郎は知らないと答えます。 若さま「そうかい、お前の知ってるやつだな」 源次郎「知らんと申すに」 若さま「お前、何だってそううろつき回るんだ・・こいつも知らぬか。それじゃ、 わしが教えてやろう。お露さんは、愛甲とかいう連中に連れて行かれた ぜ」 源次郎「なに」 若さま「そーれ見ろ、むきになる」 源次郎は誰をかばっているのか・・・と考えながら歩いていた若さまの足が止まります。黒覆面の侍達に囲まれます。(この時の若さまの睨む目の動きすごいです)若さま「うわっはっはっは、・・だんだん馬脚を現してくる」 (立回りになります) (斬ったあとの見得もかっこよく決まるようになりました。そして、お待ちかね!! 一文字崩しの登場です。ここではまだポーズが完全にはなっていませんね) 小吉の呼子を吹き、御用提灯が見えると黒覆面達は引いて行きました。 佐々島に調べさせていた土蔵にあった煙草入れは盗品でした。 六左衛門は盗賊の一味で商売を利用して商品の売りさばきを受け持っていたと考えられるというのです。若さまは、佐々島に八代将監の娘のこと火急に調べるように言います。 若さま八代将監の屋敷に入っていきます。将監は座敷牢に娘を入れていました。腰元がお客様が来ていると知らせに来ます。将監が通り過ぎようとした部屋から呼び止める声がします。 若さま「おい、将監殿ここだ。こちらへ失礼している」 若さま、掛け軸をみて、若さま「おい、この山水りっぱなもんだ。よく手に入れたな」将監は黙ったままで廊下に立ったままです。若さま「おい、座ったらどうだ」将監 「あっはっはっ、面白いごじんじゃ。・・ところで見知らぬご貴殿が、 何あって当屋敷へ」若さま「いろいろあるが、何といっていいか・・。あっ、まぁ、煙草をごちそう になろう。やぁ、これはすまんな」」若さま「うぅん、なかなか煙草はお好きとみえるな」将監 「水府でござるよ」若さま「ふぅーん」といい煙草を一口吸いこむなりむせり「なかなか上等」(このときの橋蔵さまの煙管の持ち方作品でよ~く見てください。とても素敵な持ち方です。この持ち方、そう簡単に出来そうもない。橋蔵さまだから様にもなります。作品の中で、橋蔵さまが煙管を使う場面の時は、必ずこの持ち方ですから気に留めて見てください。) 若さま「西光寺で見たのも水府だったが」将監 「そのお寺で煙草の品定めでもありましたかな」若さま「なーに、死体のそばにあった吸い殻の話だ」といって煙草入れを返します。若さま懐からおもむろに煙草入れを出す、それを見て将監 「ほぅ、なかなか見事な煙草入れでござるのう」若さま「阿波屋という質屋の蔵からから引っ張り出してな」若さま、将監の様子顔色をうかがう。 若さま「あっはっははっ、盗人の持ちもんだよ」将監 「貴公は煙草を吸うだけの御用かな」若さま煙草に火を付けて暫く将監を見て、その問いに、若さま「お前さんの娘は、どうして六左衛門なんかに攫われたんだ」将監、若さまの問にだまったまま、若さま「何か訳があるんじゃねえかい」 (上の画像の煙管の持ち方・・・素敵でしょう。) 将監 「何を言われる、たわいもないことを」若さま「いっそお露坊は源二郎にくれてやったらどうだい。わしがまとめてやって もいいぜ」将監 「八代将監を見損なっては困る。貴公などの出る幕ではない」若さま「はっはっはっはは、怒るなよ、だいぶ風向きがきつくなって来たようだ。 どうれ、帰るとしょうか。お露坊に会えないのは残念だが・・と。では 御免」 若さまはとぼけたように何処にでも勝手にふらっと入っていってしまうの、・・・若さまの特権ですね。それだから面白く事が進んで行く。簡単には手に入らない山水のかけ軸、吸っている煙草が水府と、八代将監に目を付けたようです。さて、六左衛門と八代将監の二人の関係をどのように解明していくのでしょう。 続きます。
2017年06月07日
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ちゃんと鍵で開けたんだ喜仙の二階、小吉が編み笠の男をつけて分かったと、飲んで寛いでいる若さまのところへやってきます。侍は旗本白坂の次男坊源二郎。愛甲新七という御家人の所へ出入りをして勘当されている。若さま「愛甲?・・春月にいた男ではないか」小吉 「さようで、どうやらごろつきの集まり場所になっておりますようで」若さま「う~ん・・うぅん」 小吉 「白坂源二郎ってあの男が殺しに何か関わり合いでも」 若さま「そこまでは分からんが、六左衛門をつけていたことがあるよ」小吉は下手人は重蔵で色と欲とで殺したのではと睨んでいたがと。それについて若さま勿論重蔵はくさい。六左衛門は人目をごまかしてまで何処へ通ったのか、という小吉に、六左衛門の体には綿ぼこりが付いていた。あの綿ぼこりは打ち直しの綿ぼこり、草履の裏の泥から谷中の山の方、あの辺りで古綿の打ち直し屋のすぐ近くにある家・・ 若さま「六左衛門がお目当てに毎日通っていたのはそのうちだよ」 小吉 「で、いってい、そのうちに何があるんでしょうかね」 若さま「あっははっ、それは無理だよ、親分」 若さまお銚子にお酒がないらしく、小吉がおいとを呼ぼうとした時、ちょうどいい具合においとがお酒を持ってきます。若さまに注ぐと、「親分さんもどうぞ」とお猪口に注ぐのかと思いきや、おいとは若さまのお猪口にお酒を注いで、小吉はそっちのけの状態です。 (小吉役の星十郎さんと若さま侍の橋蔵さまはどちらもべらんめえの江戸弁がお上手ですので、見ていて聞いていて気持ちが良いです) あきれ顔の小吉に、若さま阿波屋に見張りはつけているだろうな、と念を押します。ところが、その夜見張っていた岡っ引きは当て身をくらい、賊が阿波屋の蔵に押し入りました。 蔵の奥の主人専用だった蔵の鍵が開けられていました。若さまが辺りを見ていますと、隅の方に、奥の蔵を開けた錠前が落ちているのを見つけました。それを手に取って若さまにこりとして重蔵を呼びます。 若さま「重の字、六左衛門は殺された時にも鍵は持っていたはずだな」 重蔵 「はい、昨日も申し上げましたとおり」 若さま「ところが、不思議なことに、六左衛門が持っていたはずの鍵が、夕べこ の蔵の中で立派に使われているぜ」若さま振返って、若さま「見ろ、この錠前は壊したんじゃねえ、ちゃんと鍵で開けたんだぜ。する と、六左衛門を殺して鍵を奪った下手人は、夕べ押し入った盗人たちの 仲間だということになる」 そんなことは知らないという重蔵に、若さま「あったりめえよ、知っていたならてめえも・・」重蔵 「とんでもない・・・」蔵の隅に落ちていたという煙草入れを、佐々島に目利きさせてみるように言います。 小吉が、いつもの手口ではない、質ぐさには手を付けず、奥の蔵のものだけ持っていってますからと。すると、若さま「それは親分、わしが昨日、あの奥の蔵に目を付けたからだよ」 小吉 「えっ」 若さま「ところが、わしがあすこへ目を付けたのは・・・困ったな重の字、おまえ だけしか知らねえはずなんだが」 若さまは重蔵に夕べでかけた先を聞くと、二転三転ということで・・小吉に調べるように言って若さまはちょっと歩いてくると出かけます。 そば屋に春月のおしゅんの弟四郎吉の居所を聞いている侍がいましたが、4、5日見えないと聞き帰って行きます。その侍の通り過ぎていくのを見ていた若さまが、そば屋に古綿の打ち直し屋があるか聞きます。若さまは谷中へ六左衛門が通っていた家を探しに来たのです。若さまが綿を打ちなおしている店の前に来ました。すごい綿ぼこりです。 急いで走って来た四郎吉が若さまにぶつかって行きます。腰の曲がった顎髭の年寄が出入りしていた家を綿の打ち直し屋が教えてくれたのは、四郎吉が出て来た家でした。若さまがその家に行こうとした時、今度は武家風の娘が飛び出して走って逃げていきます。若さまその後追って行きます。娘の早い逃げ足に若さまも相当走りました。追いついた若さま、これから何処へ行くつもりか、娘に問います。 武家育ちの娘が、阿波屋の六左衛門とどういう関わり合いがあるのかと、若さまが問いただしていると、通りかかった侍から逃げるように走り出した娘は、数人の侍に捕まり駕籠で連れていかれた先は愛甲邸・・・若さま屋敷内に入っていきます。侍どもが博打をやっている最中のところへ 若さま「ほぉ、やってるな」 貴公どこから来たといわれ 若さま「表から」 誰に断って入ってきたといわれ 、若さま「うぅん、止めるものがいないから入ってきたまでさ。さぁ、わしも仲間入 りしょう。はずんでいるようだな。おぅ、どうした、やらんのか」 帰った方がいいな、といった侍に、 若さま「お前さん達、娘の駕籠に付いてきた人たちだな。お前さん達はここにいる のに、娘も駕籠も消えてしまって見えないが、こりゃ一体どうしたことだ い」 隣の部屋が気になっている若さまがふすまを開けようとした時、その襖が開きます。若さま「おっと・・」 愛甲 「帰れ」 若さま「うん、嫌われたか、それじゃ仕方がねえ」 とすんなりその場を立ち去る若さまです。 (若さま侍の捕物帖は真面目一方でなく、とぼけたところがあるから楽しいですね。そのとぼけぶりが橋蔵さまは上手くなりました。可愛いしね。橋蔵さまにしか出せない独特のものがあります。この雰囲気がこの後の作品でより魅力的になってきます) 続きます。
2017年06月01日
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上物だよ、水府らしいな喜仙二階、のんびり本を読んでいる若さまのところに、小吉が慌ててやってきます。若さま「盗人どもの手掛かりでもあったのかい」小吉 「いえ、別口でございます」若さま「別口⤴ 」若さま起き上がります。 小吉 「殺しなんで それがあいにくお寺の境内でございまして」若さま「寺?どこだい」小吉 「へっ、西光寺というお寺でございます」 若さま「なに⤴、西光寺」 いよいよ若さまのご出馬とあいなります。お堂の中、うつ伏せになっている仏をあおむけにした時の顔を見て、若さま一瞬ニヤリとします。 そして、小吉に、新堀端まで誰かを走らせ、阿波屋という質屋の者にすぐ来るように、と言うのです。殺された仏のそばには、血に染まった綸子地模様の武家娘の晴着がありました。若さまが細かい所に目をつけたのは、第一にたばこの吸い殻、仏は煙草入れは持っていませんでした。若さま「これは誰の吸い殻かなぁ。上物だよ、水府らしいな。この分量からみると 大分長い間いたようだ」若さま、次に仏についている綿ぼこりと草履の土にも目をつます。小吉 「綿ぼこりでございますねぇ。気が付かなかったけれど、どうしてこんなに 綿ぼこりがついているんでござんしょう」 そこに、阿波屋の番頭ら2人がやって来ました。番頭の重蔵が、主人六左衛門が留守なので自分たちが来たと言います。 若さま「いいとも。親分、この二人に仏を拝ましてやんな」 お堂の中に入った二人は仏を見ても何の反応も見せません。若さま「誰だか知らねえかい」 という、若さまの言葉に、もう一度仏を覗きこみますが、知らないという返事をする二人です。 若さま「じゃ、もう一度見なおしてくれ」 といって仏が変装していた眉、髭を外しますとびっくり、阿波屋の主人六左衛門でした。合口の鞘を確認させますと、主人六左衛門の物だと言います。そうすると、自分の 合口で頃れたことになる、と小吉が言います。 阿波屋の探索に土蔵の中を案内させますと。土蔵の奥に鍵のかかっているところがあるのに若さま直ぐに気がつきます。 若さま「おい、重の字、ありゃ何だ」 重蔵 「あれは・・」 若さま「あっはっはっは、土蔵の中に別口の蔵があるとは念がいったものだ」 重蔵 「あれは、旦那が特別に」 若さま「なーるほど、主人専用か」 鍵がかかっている。 若さま「鍵はねえのかい」 重蔵 「はい、それが・・いつも旦那が持っておりましたので」 若さま「六左衛門が鍵をねぇ」六左衛門がなくなった後阿波屋を継ぐのは重蔵だということらしい。また六左衛門には池之端で春月という小料理屋をやらせているお春という囲い女がいたと聞きだします。 池之端の春月二階に侍達が集まっています。「どうもこの家ではないらしい。とすると他を探さなければならない」と話をしています。 若さまと小吉がこの時、春月の玄関に来ていました。どうぞあがってくださいというお春の言葉に、若さまはおかまいなしの様子で部屋に入り、主人が据わる方にちゃっかりと座ってしまいます。(お春はあきれ顔をしています) 若さまは呑気な顔をして、火箸で灰をいじりながら小吉とお春の話をきいていないような態度をとっていますが、時々動かしている手が止まり、お春の方をグッと見ています。 六左衛門のことをおしゅんに聞くと4~5日来ていない、来るのは重蔵ばっかりというお春。小吉がなんで来るんだと聞きますと、お春の様子を見ていて 若さま「口説きに通うんだろう。よせばいいのに」お春が六左衛門には、自分で時期を見て話すから内緒にしておいてくれと言います。若さま「殺されたぜ、旦那は」 二階に集まって話をしている侍の数人が下りてきました。二階に戻る時、小吉が腰に差していた十手が目に入ったようです。 若さまがお春に訊ねます・・六左衛門は酒は飲んだがたばこはからっきし、とお春。2階で馬鹿騒ぎをしている客が妻恋稲荷の御家人愛甲新七と聞き、何か気になったのか 若さま「親分、どうでい、こっちも派手にやろうぜ」 小吉 「えっ、へっ、たまには結構なことで」 2階に上がって行くと、侍達が出てきて何しにきたと、若さま「何しにきたとは、無粋な。料理屋に論語を読みに来る奴はいねえよ」 侍の一人が愛甲に何か耳打ちをしが、若さま愛甲ににらみをきかし、愛甲が立ち上がり刀を・・との瞬間 若さま「邪魔はせん、わしたちにかまわず、派手にやることだな、おっ」小吉 「へい」 部屋に入り、障子を開けてみるとあの時六左衛門をつけていた編み笠の侍が春月の様子を伺っていました。 小吉 「おっ、あいつは」 若さま「親分、折角2階に上がったんだが」 小吉 「なあに、またという日がございますよ」 若さま「じぁ、悟られねえように後をつけて洗ってくれ。 俺は喜仙に帰って待って るぜ」 (橋蔵若さま綺麗で素敵です。ほんと、自信がついてきたのがわかります。) 続きます。
2017年05月29日
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若さま侍捕物帖シリーズを見なおして見て、私は「鮮血の晴着」が若さま侍の作品の中で一番好きかもしれません。橋蔵若さまちょっとお顔が丸くなってきました。若さまのお化粧もこの「鮮血の晴着」はいいですね。そして、いよいよ若さまの秘剣「一文字崩し」が堂々登場します。着流しで片腕懐に入れての歩き方、立姿もより綺麗に、流れるようなべらんめえ口調、とぼけた様子もいい感じに、秘剣神道流一文字崩しという剣法も披露、目の使い方にもこれぞ橋蔵若さま、というものが出来あがった時です。それに若さまの活躍がよく描かれている作品です。久しぶりの若さま侍捕物帖シリーズ・・待ちに待っていたファンも多かったのではないでしょうか。今回はどのような事件を若さまが解いてゆくのでしょう。 作品を見ていただくと、分かりますが、前回の「修羅時鳥」も京都の底冷えのする時の撮影でしたが。この作品も、2月の撮影。台詞を言いますと、白く息がなっています。撮影所の中も外も寒い中での撮影だったことが分かります。 ★第22作品目 1957年3月4日封切「若さま侍捕物帖 鮮血の晴着」 若さま捕物帖シリーズ4作品目になります。城昌幸の原作「若さま侍」捕物シリーズの「五月雨ごろし」より構成、脚色した作品です。監督は小沢茂弘さん、この作品の前後を撮っている深田金之助監督とは違った魅力のある橋蔵若さまが見られるのも楽しみです。 若さま 大川橋蔵おいと 星美智子露 三笠博子おしゅん 浦里はるみ八代将監 薄田研二土居紀伊守 阿部九州男阿波屋六左衛門 徳大寺伸白坂源次郎 片岡栄二郎重蔵 富田仲次郎佐々島俊蔵 伊東亮英愛甲新七 山口勇遠州屋小吉 星十郎奥村勘解由 有馬宏治おかしな奴だったよ奴だったよ 最初から若さま登場になる作品です。江戸の深夜に豪商を狙って強盗団が密かに動いていました。佐々島や小吉たち町方は毎晩走り回っていました。そんな中のある夜、若さまが西光寺の近くを歩いて来ると、門の辺りでうろうろする男がいるのに目を止めます。そして少し歩いてゆくと、今度は怪しい老人が西光寺に入って行くのを見て、気になったのか少し待って見ますと、今度は風呂包みを持った町人が出てくるのを見たのです。(画像は若さまの不振に思い伺う表情です) 後をつけてみると、質商阿波屋に入って行きました。すぐその後から番頭らしき男が帰ってきました。若さま物陰に隠れ様子を見ます。 番頭は、木戸が閉まっているので、防火用水から中に入ろうとしますが上れないようです。それを見ていた若さまが声をかけます。若さま「手伝ってやろうか」 若さま「あははははっ、そう驚くなよ。おめえが塀を越せねえようだから・・」(橋蔵さまの口ともとに白い影みたいのがあります。空気が冷たい為、台詞を言うと吐く息が白くなっているのです) 番頭 「これはどうも」若さま「夜遊びかぁ、たまにはよかろう。どれ、手を貸してやるぜ」と言い、のぼるのを手伝います。 若さまは、昨夜見た件で、阿波屋がどうも気になっているようです。翌日阿波屋の前の居酒屋に若さまの姿がありました。若さまはお酒を飲みながら、阿波屋をずっと見ている侍(源二郎)が気になっています。 阿波屋から出てきた主人のあとを、その侍はつけるように慌てて出て行きます。若さまがあとをつけて行くと西光寺に入って行きました。侍は男見失い探している様子。若さま「見えねえようだな」声をかけられビクッとする侍。若さま「何処へ消えやがったか」 源二郎「何しに来た」若さま「お前さんなんだってあの男をつけるんだ、えぇっ」 源次郎「貴公の知ったことではない」若さま「言いたくねえか、はぁて 分からねえなぁ」 源次郎「貴公は何者だ」若さま「そう脇でがみがみ言われちゃ、考えがまとまらねえよ」(坊やが拗ねたような可愛い若さま) 若さまに邪魔をされて怒って侍は帰って行きます。若さまは後ろにあるお堂が気になっています。(このシーンの若さまの表情好きな一つです。着流し姿も綺麗で良いですね) 若さまは、気になる阿波屋の店へ戻って裏路地を見ますと、裏口から周りを気にしながら風呂敷包を持ち出てゆく番頭を見かけます。八代将監の娘露が婚礼を前にいなくなったようです。先ほどの侍白坂源次郎は恋仲であったのをひきさいたため、八代は源次郎が露を隠しているのでは、と思っているのです。わた打ち直しの店の前を通り過ぎて、老人風の男が一軒家の二階に上がって行きます。奥の部屋に露らしき女がいました。 若さまが喜仙に遅く戻ってくると、おいとがおかんむり。おいと「あら、若さまどこへいらしていたんです。さっきから佐々島様と遠州屋の 親分がお待ちかねよ」若さまこんな顔をしてから、 若さま「そんなに怒るない。まるで、ふぐみたいだぜ」(ここまで表情を作ってしまうのですか若さま、それはお糸ちゃんが可哀想・・)おいと「まあ・・・」(おいとちゃんとは、あいも変わらずの調子です) 与力の佐々島と遠州屋小吉が帰りを待っていました。深夜の江戸に豪商を狙う強盗団があるのだが、一味の動向は掴むことが出来ず盗まれた品物も見つからない、このままでは町方の威信にもかかわるので若さまの力を、といつものようにご出馬願いたいとお願いに来たのです。 若さま「もう、関わっているようだぜ」佐々島「つきましては、若さまのお力を拝借したいと存知まして」若さま「うぅーん、どうも分からねえな」佐々島、小吉「えっ?」若さま「おかしな奴だったよ」 と言いながら横になり、眠てしまう。お酒を持ってきたおいとも佐々島も小吉もどうしたのか、あっけにとられています。(若さま、何も聞かないうちから、強盗団と阿波屋が関連しているとお思いなのですか・・・) 続きます。
2017年05月24日
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将軍家に代わって余が成敗いたす前回は、お蝶が若さまを訪ねて来て、「和尚が喜仙を厳重に見張れと言っているから気をつけてね」と言っていましたね。おいとちゃんをからかって楽しそうな若さまでしたが、いよいよ和尚側も動き、若さまも動いての大詰めに入っていきます。忠弥が阿部の屋敷を抜けおみよが隠れている家に行くのを、伝三が着けていました。忠弥とおみよは魅かれ合う仲になっていたのです。同じころ、船宿喜仙に若さまを訪ね和尚の回し者たちが押しかけて来ましたが、二階の物干し台から次々と川に投げ込まれてしまいます。翌日、喜仙には町方の出入りがあり様子が少しおかしいようです。若さまは将棋を、おいとちゃんは小さく溜息をしたりして浮かぬ顔です。そこへ、小吉、とん平、そして伝三がやってきました。町方が喜仙から出て行くのを見たと小吉がいうと、若さまが奉行所から禁則を申し渡されてというのです。若さま「八百万石の禄を望むとは、上を恐れざる不届きな振舞い。よって向こう 三十日間禁則を申しつける、ときたんだ」小吉 「野郎、あのくそ坊主」とん平もいてこましたい、と言います。若さま「あっはは、王手飛車ときたね。敵はこのあと何をしですかと・・・」小吉がおみよの隠れ家が分かったと言います。若さま「そうかい」伝三がつき止めて知らせてくれたのです。若さま「そいつは手柄だったな、伝こう」まさかの時の生き証人だから上手く連れ出し、佐々島のところでかくまってもらうよう小吉に言います。では早速に、と腰をあげた時、若さま「おぅおぅ、待ちな。とん平は残って将棋の相手をしてくれ」 若さま「遠州屋、十分注意して動いてくれよ。敵の目が光っているからな」と言いながら立ち上がり、若さま「ここんちも、ばかに見張りが厳しくなったんだ」(小吉もおいとちゃんもキョトンとしています。)小吉「えっ?・・」・・・(小吉は何のことか分からない様子)若さま窓の障子を開けると、見張っていた編み笠の男が立ち去りました。若さま「敵は、詰めてを急ぎだしたかな」 夜になっても、黒頭巾の侍たちが喜仙の二階を見張っています。二階の窓は開いていて、若さまの後ろ姿があり、侍たちは笑みを浮かべ安心しているようです。(あまいあまい・・若さまが貴方たちの思っているように、おとなしくはしていないと思いますが。その証拠に・・ほ~ら・・ね。)阿部伊予之助の屋敷の場面になります。夜遅くに、門をうるさくたたく者がいます。門番がこんな遅くに誰だと聞きます。すると、門をたたく者は低い声で「拙者だよ、開けてくれ」と。(うん?・・低い声ですが、どこかで聞いたような声ですよ。)門を開け「あなた様はどなた様」と言いかけた門番はあて身をくらってしまいます。その者は庭の見張りをしている侍にもあて身をして、屋敷に入り込みました。高岡雄助が周りを見回しています。(侍二人が倒れているのに、曲者と騒ぎたてません。)座敷では、増山、牧野三河守と阿部伊予之助が和尚と、側妾貞代の方が懐妊したことでの今後のことを話しています。そこへお蝶が和尚に耳に入れたいことがと廊下へうながすと、高岡が誰かが屋敷に忍び込んだようだと話をします。万全の態勢で見張れといい廊下を歩いていき、お蝶と障子が開いている部屋を通り過ぎようとした時「おいおい、坊主」・・・(若さまです。やはり、あの声は若さまだったのですね。)和尚 「き、貴様は」若さま「和尚、人間あまり欲を出しちゃいけねえぜ。・・どうだい、 この辺で思いなおさんか」 和尚は、何を言っているのかさっぱり分からない、思い違いをしているのではと白を切っているところへ、腰元がお酒の膳を持って入ってきました。(お蝶も和尚もこれはいったい・・・という顔つきです。)若さま「ああ、ご苦労ご苦労」和尚 「なんじゃ、これは」若さま「いいんだよ、おれが言いつけたんだよ」 和尚 「なに、貴様が」腰元が、お客様ではないのかと和尚に聞きます。和尚 「いや、かまわん。飲ましてやれ」と言って部屋を出て行きます。 若さま「いいんだよ、一人で飲むからいいよ。あぶねえから、向こうに行ってた ほうがいいぜ」と腰元に言い、お酒を飲んでいるところへ、お蝶がどうしてこんな所へ来たのだと、やってきました。若さま「そんな顔をしていないで酌をしてくれ。そうしろと言われて来たんだろう」この部屋は囲まれている、お酒がまわったところで斬り込むのだ、とお蝶が言います。若さま「和尚のやり口はそんなものさ。ふん、知恵のねえ話だなぁ」そう言って盃のお酒を一飲みします。 若さま「もう少し飲みたいが、お前に怪我をさせちゃいかんから、それじゃ、 こっちから出かけてとっちめるかな」そう言って立ち上がり、身構えて若さま襖を開けると、物々しくかまえている侍達に、若さま「あっはっはっは、ご苦労だったな。人が酒を飲んでるのを見張るなんぞ は、随分間の抜けた役目だぜ」うしろの障子が開き振り返ると和尚の姿がありました。若さま「坊主、本性を現したな」和尚 「雉も泣かずば撃たれぬものを、今宵こそは生かして帰せぬ」若さま「世の中には、そっちの都合通りばかりいかねえことだってあらぁな。 どうだ坊主、今のうちなら心を入れ替えりゃ許してやる。これ以上悪事を 重ねやがると、そのがん首が胴に付いちゃいねえぞ」和尚 「それを言いたいために、わざわざ命を捨てに来たのか」若さま「そうよ、武士の情けってぇやつだ。だが、聞かすがん首が足らねえ ようだぜ。三守はどうした、増山、伊予之助も居たはずだが」和尚の「こやつを討って捕れ」の声がかかります。若さま「お目当ての顔を揃えてくれなきゃ、また日を変えて改めて出直すぜ」 (ここから、立回りです。) ∞すごいですね。だんだん立回りの動きが長く激しい動きになってきています。スピードもあります。障子に素足が入ったり、そこから激しい動きで続いていき、廊下も走る。廊下の角に来た時廊下をまわって走らないで向こう側の廊下に飛ぶのです。(ちょっと・・障子が倒れているでしょう・・次に橋蔵さまが障子に足を入れる場面になるのには、障子がもう少し手前に出ていないとうまくありません・・そこで斬られ役の人が動きながら上手く少しずつずらしていっているのです。細かいところまで観ていると楽しくなってきてしまいます。)チャンバラの好きな人にはこういう動きあるものはたまらないです。橋蔵さまの流麗な動きですからなおのこと、いいですねぇ。それにしても、そうとう動いていても、橋蔵さまは着流し姿が着崩れません。∞ここでまたもや、若さまの前に高岡が現れます。奥の部屋の方へ追い込まれる若さま・・後ずさりをしていきます。 (危ない) その時、高岡の刀は灯していた蝋燭を斬ったのでした。若さまの姿がない・・(屋敷の外に逃げ出すことはできないはずですが。)お蝶が逃がしたのだ、裏切り者は殺せという和尚に、高岡がおとりに使ってはどうかと、牢へ連れていきます。牢に入れられたお蝶に声をかける者がいます。「お蝶、静かにしろよ、眠れんではないか」・・(若さまの声です。どのようにして牢にきたのでしょうね。)若さま「わしだよ」お蝶 「お武家様、こんな所にいたんですか」若さま「隠れるには一番いいな。誰も気がつかん」みんなが探しくたびれ諦めた頃に逃げ出すのだ、刀があるから錠前は壊すことができる。若さま「それまでお前もひと眠りしたらどうだい」お蝶「あたしは、いつまでもこうしていたい」・・お蝶が若さまにすり寄ります。若さま「これこれ冗談をゆうな、ここには酒がないぞ」・・若さま慌てます。喜仙の二階を見張っている者たちが若さまだと思っていたのはとん平だったのでした。和尚たちは、側妾貞代の方の懐妊をしり、おえんの方の寵愛が薄れるのを恐れ、安産祈願の参詣時を襲う計画を立てていたのです。護国寺に駕籠が入ると、門を締め取り囲み、和尚 「貞代の方出られませい」阿部 「仔細あって、一命頂戴つかまつる、お覚悟」駕籠から出てきたのは、若さまでした。若さま「忘れるはずはねえぜ、船宿喜仙の居候だ」 阿部 「図りおったな」若さま「阿部伊予之助とその一党、よーく受け賜われ。天下を狙うその方どもの陰謀すでに隠れし。将軍家に代わって余が成敗いたす」若さまを斬れと言われた高岡が翻えます。公儀隠し目付高岡雄助でした。和尚たちは、若さまが仕組んだ罠にまんまとかかったのでした。(ラストの立回りになります。)伊予之助を斬り、和尚との対決になり、一刀の下に切り捨てます。 祭の日、みんなを引き連れ、今回の事件についての話をしていると、「若さま」と町人になった忠弥とおみよがやってきました。一緒に行こうと楽しそうに歩く若さまを、物陰から見ているお蝶の姿がありました。 ( 完 )後ろ向きで飛び上がり向きを変え塀の上に、そして下へ飛び降りての場面が半ばにありましたね。そして、ラストの立回りで悪玉和尚との一対一の勝負、若さま宙に高く飛び上がり、おりてくる時に一刀のもとでという絵になりました。ここで、まさか・・観客はこのような演出になるとは思ってもいなかったでしょうね。映画館では「うわぁ」「おっー」という声が上がったのではないでしょうか。橋蔵さまの飛び、上手いですね、ポーズも決まっています。橋蔵さまは運動神経抜群、歌舞伎での鍛錬し見も軽いし高くジャンプするのはお手のもの、そして特殊技法を伴っての絵になります。今の時代に見ても違和感なくよく出来ていると、私は思いました。よく、橋蔵さまが宙に飛ぶ最初の作品は「若衆変化」の中で飛んで塀を越える場面といわれるのですが、その前にこの「魔の死美人屋敷」で飛んでいたのです。橋蔵さまの立回りは体全体を使っての動きとなっていますね。伸び、そり、と体の線もちゃんとしています。プラス舞踊で鍛えた膝の使い方でより柔軟性が出てきています。時代劇の立回りは、動、静、綺麗さ、力強さがないと、、見ている側には満足感が伝わってきません。橋蔵さまは、力強さはもう少しといったところです。まだ、橋蔵さまは女形として保ってきて細かったですから、いたし方ないです。その分、舞踊的立回りの流麗さがきわだっているのでしょう。どんどん立回りが上手くなっていますから、「魔の死美人屋敷」から立回りが多くなっています。それに、若さま出ずっぱりですから、橋蔵さま大好きの人にはたまらない作品です。「若さま侍捕物帖」シリーズの面白さは、とあなたが聞かれたら何と答えますでしょう。橋蔵さまの持っている二枚目半の軽妙さが引き出されているし、二枚目であり色っぽさがあり、颯爽としてスピード感ある殺陣で魅了させてくれる。船宿をねぐらとして着流し姿の浪人であるが、品位があり高貴なのに、べらんめえな江戸っ子口調の若さまは、橋蔵さまとそっくりなところがある。と、人それぞれにいろいろあることと思います。原作の若さまは、橋蔵さまが映画に来ることをよくぞ待ってくれました。主人公「若さま」のイメージにこれほどピタリという人は、橋蔵さま以外にはこれから先も出て来ないでしょう。品位がないといけないし、所作も見についていなければならないし、二枚目で華があり色っぽさもなければいけない。・・これだけ揃った人は・・橋蔵さま。若さまシリーズ第4作品「鮮血の晴着」は少しあとになりますが、女形の体型から立役としての体型になってきた、そしてちょっとお顔が丸くなり、橋蔵若さまもよい意味での若さまらしい貫禄が磨かれて、歩き方、殺陣、台詞にも安心して見ていられるようになります。新しい剣道の形を教えてもらい立回りにも研究中だったようです。皆様ご存知の"一文字崩し"は、お目見え間近・・ということになります。
2016年12月23日
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お蝶の恋心につれない若さまお蝶は、和尚が話があるからと若さまを下屋敷へ連れていきます。二百石三百石に縛られて和尚の言いつけを聞くなんて出来るかという若さまに、この屋敷から出ることは出来ないと和尚が言うと。若さま「ほほう、そりゃ不自由なことだな、あっはっはっ」殺気を感じた若さま、刀に手をかけると同時に、四方を囲んでいた侍達が現れました。⇒若さま、左側の襖を開けて出て来た侍達の方から右手の障子を開けてかまえる侍達に目を配り、和尚に目をやり、後ろに控える侍達の方に・・・そして、若さま「ふん、とんだ見世物だな。和尚、阿部伊予之助と言えば三千五百石 の旗本だ。それにしちゃ、家来が多すぎるようだな」 (この時の目の配りはすごい。ここまで綺麗に目が動くのには感心させられます。何コマもあるのですが全部を追ったら大変。後半3ヵ所アップします。橋蔵さまは本当に、流し目は勿論ですが、こういう目の動きを見ても、他の人にはまねをしたくてもできない。目千両といわれたのは当然ですね。)( ここから立回りです。)部屋の中から屋敷の庭の方へ移動していきます。(一回目の立回りです・・・立回りシーンが多くなってきました。動きも大きく見え上手くなってきました。でも、橋蔵さまの動きとしてはまだ序の口です。)ここで、用心棒の高岡雄助が若さまの前にまた現れ、若さまをじりじりと追い詰めていきます。塀の方へ追い詰められた若さま、飛び上がったと思うと塀の上に飛び乗り、塀を越えて逃げることができました。 和尚から、若さまに一服もれと言われたお蝶が家へ戻ると、若さまが来ていました。もう来てくれないのかと思ったというお蝶に、若さま「おまえからは、まだ、お暇がでていないからな。あっはっは、ひやでよい、さっそく頼むぞ」台所でお銚子に酒を注ぐお蝶の手が震えています。お銚子に渡された毒薬を入れるのです。毒薬を入れた冷酒を持って行き、お蝶 「何もないんですよ」若さま「ああ、いいよ」お蝶が支度している様子を若さまは何気なくか?何かを感じてか?みているのです。 若さまにお猪口を渡し、お銚子を注ぐのですが、お猪口への注ぎかたそしてお蝶の顔色を見て、 若さま「お蝶」お蝶 「えっ」若さま「なにを驚く」お蝶 「驚いたりしませんよ」若さま「あっはっはっさは、お前、わりと人がいいな。心からの悪党には なれねえな」藪から棒にどうした、盃にボーフラが湧くというお蝶。若さま「この酒を飲めって言うのかい、そりゃ、悪い冗談だよ」お蝶の表情が変わりました。若さま「それともお前、毒身をしてくれるかい」お蝶観念し申し訳ないと、・・従わないと私が殺されるので、と白状します。若さま「坊主の差し金だろう」帰り支度をしている若さまを見て、許してくれるのかというお蝶「なかったことにしようぜ」と若さま。お蝶 「お武家様、なんてお人柄なんだろう。その方にこんなことを してしまって、あたしはどうしたらいいんだろう」若さま、お蝶の様子をじっと見つめていたが、「達者で暮らせ」といって帰ろうとした時、お蝶 「お武家様」と呼び止めます。若さま「念のために言っとくがな、あの坊主とは縁を斬ったほうがいいな」と言って帰っていきます。お蝶が喜仙に若さまを訪ねてきました。おいとちゃんは、若さまは出かけていない、では待たせてもらいたいとのお蝶に、いつ帰るのかも分からないと言うのです。仕方なく帰って行くお蝶の姿を、小吉達と話を終わって出て来た若さまが見つけお蝶を追って声をかけます。若先「おいおい、お蝶」お蝶 「お武家様、今お訪ねしたんですけど、お留守で」若さま「お留守?なんの用できたんだい」知らせたいことがあって来たのだと言うのです。(おいとちゃんは、若さまを女の人が訪ねてくると、必ず嫉妬の気持ちが湧くのですよね。モテる人を好きになると・・大変ね。)和尚が喜仙を厳重に見張れと言っているから、くれぐれも気をつけてほしいと言うお蝶に、若さま「そんなこと、敵方のおれに喋っていいのかい。お前に難儀が かかるんじゃねえか」お蝶から、和尚は阿部伊予之助の兄上だと聞きます。一体何を企んでいるのかと若さまに聞かれるが、そのことは一つも言ってはくれないというお蝶です。若さまが考え込む顔を見てお蝶が近づいたところに、おいとちゃんがちょうど通りかかり、角からその様子を見て誤解をしたようですよ・・。(この感じを見たら、おや、いい感じと誰でも思います。) (二人のこの姿、雰囲気が・・ありますね。橋蔵さまの後ろ姿は素敵だし色気を感じます。ヒップの形もきれい。千原さんはこのような役はお手のもの。その二人がこのように立っているとほんと誤解をうけますね。)若さま「じゃ、気をつけて帰んなよ」お蝶 「ええ、くれぐれもご用心なすってね」若さま「ああ。お前もあまりおれに近寄らない方がいいぜ」 と、若さまに言われたお蝶は、うなだれ肩を落とし、悲しい思いで小走りに帰っていくのです。 お蝶の後ろ姿を見送って振り返ると、おいとちゃんの姿が・・・駆け寄っていく若さま。拗ねてみせるおいとちゃんです。(若さま、お蝶はあなたにほれちゃったんですよ。分かっているのでしょう。いくら、彼女の身が危なくなるからといっても、あの言い方はちょっとつれなくありませんか。、、悲しくなってしまうのが分かります。) 続きます。
2016年12月19日
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そうよなぁ・・八百万石野ざらしの伝三は町でお蝶を見かけ、この前武家屋敷で見たことでゆすろうとしましたが、2、3日したら家の方へ来てくれとあっさりあしらわれてしまいます。江戸おかまいになりまだ年数が経っていないところを江戸に戻っていた伝三は、小吉に捕まり見逃してもらうため、いいネタを教える・・大奥の女中を連れ込んで役者に口説かせるという一見の話をします。武家屋敷にいる和尚と言われる者は、大奥の女中おみよを役者が口説き落とせなかったので、今度は忠弥という若者に口説き落とすように依頼します。忠也はおみよに助けてやると言うのです。その夜、段取り通りおみよを牢から連れ出し屋敷から逃げようとした時、二人の侍が「待て、裏切ったな」と忠弥とおみよを追います。追って来る二人の侍を斬っておみよを連れて逃げます。二人をつけていたとん平が忠弥とおみよをつけて行こうとした時、先ほど斬られた二人の侍が起きあがったのにはびっくり。「貴様見ていな」とん平が追い詰められたとこへ、若さま「あっはっはっ」と笑いながら近づき若さま「面白かったな。だが、今の芝居は何のためだい」斬りかかってきた侍二人が若さまにやられたところへ、高岡雄輔という浪人が若さまの前に現れ刀を抜きます。(なかなかのかまえです。彼は和尚とどのような関係なのでしょう、気になります。)小吉に「親分どきな、こいつは出来るぜ。おめえ、斬られちゃうぜ」といい若さま身がまえるが ・・・暫くすると、刀を投げ捨て(若さまが持っていた刀は、先ほどの侍の刀ですから、ご心配なく)若さま「今夜のところは、五分と五分で幕にしようぜ」と言って去っていきます。 若さまを追おうとする二人の侍に、高岡「まて、だめだよ。きゃつもなかなかの腕だ。俺一人じゃ斬れん」と言います。その帰り道、小吉の調べて来たところから、例の下屋敷はおえんの方の父親旗本阿部伊予之助の持ち物だと聞き、若さま「すると、親父が娘の腰元をかどわかしたことになるが」与力佐々島を阿部のところへ調べに行かせることになりました。佐々島が旗本阿部伊予之助を訊ねて聞くと、屋敷は二年ほど前から空き家であると。その腰元どもがおえんの方の付き添いのものだとすると、ひょっとして、過日娘のおえんの方が流産したのも、それらの魔の手がのびたのかも知れないといいます。伊予之助は和尚や増山と会い、何とか言いくるめて佐々島を帰したが、これ以上町方が出てきては面倒になるかもしれない、というと、和尚が同席していた牧野三河守に、大目付松平和泉守にお役差し控えさせ、三河守の名において町方の探索を打ち切らせてほしいというのです。船宿喜仙の二階佐々島と小吉が来ています。若さまはお酒を飲みながら佐々島の報告を聞いています。若年寄牧野三河守からのお達しで、表面はおえんの方様の名に傷がつくということで、町方の探索を打ち切るようにという中止命令が出たというのです。これは容易なことではないと話しているところへ、おいとが取り次ぎます。阿部伊予之助の用人永井保というものが若さまに会いたいと訪ねて来たのです。佐々島に阿部の用人の名を確認すると、山崎というものだと聞いて頷く若さま・・何か??・・永井が部屋に入ってきましたが、若さまは知らぬふりでお酒を飲み、佐々島と小吉も・・知らん顔。 永井「当船宿のご浪人と申されるのは」若さま「わしが居候さ」永井が挨拶をするが、若さま相手にせず酒を飲んでいるので・・永井むっとしたように永井「貴殿のご姓名は」若さま、それには答えず、若さま「用は何だい。わしの身元調べにでも来たのかい」永井の用件は若さまを召し抱えたいとやって来たというのです。若杣「わしを召し抱える?・・・お前をよこしたのは伊予之助か、それとも 生臭坊主か・・どっちだい」永井からの返答なし。若さま「さては、わしを抱きこむこんたんだな。おえんさんの女中子に首を 突っ込んだからな。はっはっはっ、ところで、女中を殺したり連れ 込んだりするのはどうしてだい。お前知ってるだろう」 知らないという永井に、それでは用人としての手落ちになるのではと。若さま、いくらで召し抱えると言うのか、永井に問います。永井「いかほど望まれる」若さま「そうよなぁ・・先ず・・八百万石」) ⇒ ⇒ 同席していた佐々島と遠州屋小吉は吹き出しそうになってしまいます。無礼なものは当方に用はないと永井は帰っていきました。三人は大笑いします。(若さま、徳川家八百万石の金額を面白半分に言うのはきついですよ。誰だってびっくりしてしまいます。若さまの素性を知らないのですから。)若さま「さて、わしを抱きこもうとするやつが下屋敷の坊主が言うならいいが、 この間山城屋にいた増山という女中が一枚加わっていると・・・」おえんの方様の身辺にまで敵の勢力が延びているということになると・・小吉が、これは容易ならんことですと・・佐々島が言います。若さま「そのくらいでなきゃ、奉行所まで思いのままに操ることはできめえよ、 あつはっは」喜仙に行った永井という侍が、和尚と増山に、召し抱えるといっても無礼な奴でと。和尚はたかが浪人、強がってみせているだけ、味方にすると役に立つかもしれないといいます。同席していたお蝶が、自分に任せてくれないかと斬り出します。永井を使っての若さま攻略に失敗した和尚の次の手段は、お蝶の色仕掛けに賭けます。喜仙から若さまが出てきました。と、そこにお蝶が駆け寄って声をかけてきます。お蝶「ちょいとお武家様、お一人でどちらへ。お伴してかまいません? 聞いてほしいことがあるんですけど、お武家様お暇?」若さま、いぶかし気な顔をしましたが、例の調子で若さま「わしは浪人だよ」お蝶 「どうでしょ、ちょいと相談にのっていただけませんか」若さま「何の相談だい」お蝶 「いえ、お頼みなんですよ」少し義理の悪いことがあり、悪い奴にゆすられているというのです。若さま「何をゆすられてるんだい」 お蝶 「おあしですよ」若さま「くれてやるんだな、引き目があるんなら」引け目はない、ただ独り者だから脅しに来るとお蝶が言います。 若さま「独りもんか」(若さまは、お蝶さんが独り者だと知ったら、何か興味を持ったのですかね。) ということで、お蝶は若さまを家に連れて行きました。お蝶のお酌で若さまお酒を飲み、ゆすりはいつごろ出るのか聞きます。夕方頃、そろそろ・・。若さま「出るかい」 (若さま楽しそうです。)お酒がなくなったとお蝶が買物に出て行ったあとに、野ざらしの伝三がやってきました。若さま「ゆすりってえのは、おめえかい」伝三 「ゆすり?ははーん、お蝶がしゃべりましたね」若さま「夕方になると出てくると言ったよ」伝三 「コウモリだね、それじゃ」若さま「おめえ、いくらほしいんだ」伝三 「お武家さんが出してくれるわけではないでしょう、それとも出して くれますか」若さま「叩きだせと、お蝶がいたよ。腕の一本もへし折ってくれとな」伝三が叩き出してもらおうじゃないかと居直ります。若さま「お蝶に頼まれ、お前に催促されちゃ、これはどうしてもやらなきゃ ならねえな」本当にやるのかという伝三に、お蝶がかえるまで慌てることはないという若さ、暗くなったから灯りを伝三につけさせたりして。お酒を飲みながら楽しんでいるのです。お蝶が帰ってきました。伝三は悪党でもないようなので今日はおとなしく帰すが、今後ゆすりに来たら叩き斬ると、若さま「伝こう、分かったな。うんと言え」伝三 「うん、いえ、へい。へっへっへ、お武家さんには逆らえないね、全くぅ」長居をしている伝三を呼び気をきかせろと言うお蝶。若さまその間に横になって眠ってしまった?・・・ようです。いや、寝たふりかしら??、いや本当に酔って寝てしまったのかしら。お蝶が横になっている若さまを膝枕してお蝶 「ねえ、お武家様、あたしお武家様に惚れちゃってもかまわないかしら」すると、(若さま本当には寝ていませんでした。)お銚子を手に持ち、 若さま「お蝶、空だぞ」 お蝶は溜息をつき、すっかり調子がくるってしまった様子です。橋蔵さまの寝ているというか、目を閉じているアップって作品に多いですよね。目のお化粧がとても綺麗で上手いから魅力があります。茶目っ気が可愛いいし、自然に受け入れられる色気がでてきました。着物のきかたも粋になりました。そして、目の動きが物語ります。目の動き、眼差しに、ますます磨きがかかってきています。このように目を使えて、魅了出来る方は橋蔵さまだけと思います。この作品の「若さま侍」の作品から多く見られます。橋蔵さまの目の動きにも注目してついて行ってください。いよいよ若さまが敵地に乗り込んでいきます。どのような若さまが見られるか楽しみです。 続きます。
2016年12月14日
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1956年6月封切 若さま侍捕物帖「魔の死美人屋敷」 若さま侍捕物帖シリーズ3作品目になります 若さま侍第一作、二作の評判がよく大ヒット、「若さま侍」がシリーズものにすることが完全に決まりました。デビュー早々大川橋蔵の十八番になりました。「魔の死美人屋敷で、橋蔵若さまの魅力が出てきた作品です。東映と正式契約をして「おしどり囃子」「江戸三国志」三部作で力をつけた橋蔵さま。何事にも真剣に打ち込み習得の早いお方ですから、橋蔵若さまが出来上がってきました。一つ一つの表情といい、いたずらっぽい目も生きてきています。そして、橋蔵さまの素晴らしい"あの声"が出来上がってきたことだと思います。ですから、べらんめえ口調の流れもいい感じになりました。小畑実さんの「若さま侍」という軽快な歌声で物語が始まります。第五作までこの歌がテーマソングになっていました。こいつはどうでも許せねえぜ若さまは、おいとちゃんととん平と一緒に縁日からの帰り道です。遠州屋小吉が慌てたように縁日に行った若さまを探していました。小吉 「あっ、若さま」若さま「遠州屋、慌ててどうしたい。何か難しい事でも起きたのかい」小吉 「へっ、実は殺しがありましてね」若さま「殺し? 」 喜仙の二階で、小吉が事件の詳細を話しています。将軍の愛妾の奥女中おいくが、実家山城屋に宿下がりをしていて、土蔵の中で胸を矢で射ぬかれて死んだ。それを見つけたのは、土蔵の鍵を開けて入った許嫁であった文次郎。女中奉公に行ったおいくがどうして身ごもったか、誰にどうして狙われたのか、全く見当がつかない、と遠州屋小吉が事件の経緯を若さまに話します。若さま「死人に口なしではなあ、・・でっ、そのおいくっていう娘は、大奥の誰の 部屋付きになっていたか分からねえかい」小吉 「たしか、おえんの方様のお付きと申しておりました」若さま「おえんの方?」小吉 「へっ、将軍様がことのほか御寵愛の方だと聞きました」若さま「将軍家の愛妾か」 若さま、唇をぷるんぷるんとさせて、・・可愛い子供みたいね。(何を考えているのでしょう・・若さま・・小吉もおいとちゃんもキョトンとしていますよ。)若さま「遠州屋、この事件案外いただけるぜ」小吉 「じゃ、ご出馬願いますんで」若さま「乗り出そうぜ。ぐっと歯ごたえがありそうだ」 (さあ、若さまのご出馬となります。事件はどのように動いてゆくのでしょう。橋蔵若さま自然体でとってもいい感じ・・このような眼差しはどうですか。)奥女中の増山が山城屋の主人に、おいくは乱心して自害したのだと言い含めているところへ、若さま参上。増山 「何者じゃ」若さま「わしか、わしは喜仙という船宿の居候だよ」居候がどうしてこの席に、という増山に若さま「お前さんの話が面白いからだ。矢が飛んできたのではないと判断した ところなんぞ、大したものよ。お前さん、なかなかの知恵者じゃねえか。 そうかい、殺されたんじゃねえのか」増山、下がれと若さまに言います。若さま「だがなぁ、お前さん、一概に自殺と決めつけるのは、こいつは考えように よっちぁ、下手人をかばうようにもとれるが、いいのかい」 男子禁制の大奥で身ごもったのは、出入りの厳しい大奥から抜け出したのではなく、何処から逃げて来たのか、と増山を問い詰める若さま。山城屋の主人に、大奥の女中にこのような客あしらいをして、このままではすまないぞと腹を立て帰っていく増山に、若さま「相手を間違えるな、相手はわしだよ」と、そして若さま「おいくは自害したんじゃねえ、殺されたんだ。下手人は草の根わけても 探し出すから、そう思え」と増山に言い放します。 小吉が文次郎を連れてきました。最初に土蔵の中のおいくを見つけたのは許嫁の文次郎です。土蔵で実証件分が始まります。小吉がおいくの矢が刺さった死体の様子を説明・・・とすると、明かり取りの窓からかもという若さまに、小吉が窓の外はすぐに川だと。外に回って様子を見た若さま、土蔵まで戻ってくると、文次郎にその時の状況を聞きはじめます。(ここから、若さまが文次郎の話から事件の推理に入っていきます。一つ一つ若さまの目の配り、表情、台詞から・・私たちも若さまと一緒に行動をしているような気分になりますよ。作品是非見てほしい。)若さまと文次郎のやりとりです。若さまの推理が的中かな。若さま「一番最初においくさんの死骸を見たのはお前なんだ。お前が中に 入った時、おいくさんは殺された間のねえ様子だったかい、それとも、 相当間のある様子だったかい」文次郎「はい、あの・・・」若さま「もしくは、目の前で殺された」文次郎の顔色が変わりました。文次郎「いえ、ち、ちがいます」おどおどしてないで、素直に詳しく話さないか、と小吉に言われるが、文次郎「申し上げられません、どうしてもいえないのです。言えば私が殺される」と。若さま「誰に」それも言うことは出来ないという文次郎に若さま「言うことはできねえが、聞いてる分には差しさわりはねえだろう」 文次郎「はい」と答える。土蔵の中に入り、若さま「じゃ、聞いていてもらおうぜ。 明り取りの窓が一つある、おいくさんはあの窓に向って矢を射こまれ ここに倒れた。だが、矢が飛んできた窓の外は弓を引く足場がない。 従って、あそこからは矢は射こめない」と若さまが話してきた時、つかさず文次郎が、あの窓以外矢の射こめるところはないと言ってきました。若さま「じゃ、おめえ、ここへ入ってきた時、窓の所にそれらしき人影でも 見たのかい」文次郎「いいえ、そんな。それどころか、もう、私はびっくり仰天して」若さま「何だってびっくり仰天なんかしたんだ」おいくさんの胸に矢が刺さって血が・・・と文次郎。若さま「確かに見た時、突き刺さっていたかい」文次郎、小吉親分が検死をしたから間違いないと言います。若さま「だからさ、おれが言っているのは、その検死以前、つまりお前がここへ 来て飛び出す間のことさ」おいくは土蔵に入る前に死んでいた、と言う文次郎。若さま「入る前には土蔵の戸は締まっていて鍵がかかっていたはずだ。他に矢を 射こむ場所はねえ」文次郎「ですから、あの高窓から」若さま「あっはっはっ、上手の手から水が漏れるってね」高窓は見たように外には足場がない・・・文次郎「下手人は何か上手いことを考えて」若さま「そうだよ、上手いことを考えたんだ」文次郎が最初に土蔵の戸を開けた時、敵は文次郎の後ろから矢を射ったのだ、と若さま。すると、入口には屏風があっておいくの姿は外から見えない、と文次郎。若さま「あっはっはっ、いろいろ教えてくれるんで助かる。 そうかい、するとおれの考え通り。 矢は射るものだと決めてかかるから分からなくなる。 矢は手にもって突き刺すことだって出来るんだ」 (若さまの顔つきが厳しくなりました。)頭脳明晰な若さまの推理いかがですか。事件の経緯説明、テンポがよくついついこちらも引きこまれていきます。まだ始まったばかりです、これからが楽しくなってきますね。文次郎私ではない、私は殺されると言いながら、慌ててその場を逃げだした。追いかけようとする小吉ととん平に、文次郎は誰かに脅され操られただけだと。若さま「その脅したやつがホシだ」今度は文次郎が狙われる、とん平に文次郎を見張るように言います。小吉には、ぐるりとひと回りして、おいくが身を寄せていたと思しい所をあたるようにいいます。 小吉は提灯に灯りをつけずに行く不審な駕籠に出会いました。駕籠はおえんのお方様付きの女中の乗ったものだというのです。後をつけていくと駕籠は屋敷に入っていきました。その様子を野ざらしの伝三という男も見ています。そこへ周りの様子を見て屋敷に入って行く女がいました。伝三の知っているお蝶という女のようです。翌朝、喜仙の二階駕籠に乗っていた女中が入った武家屋敷を一晩中張り込んでいたが、朝になっても奥女中の駕籠は出てこなかった、と小吉が若さまの所へやって来ています。若さま「おえんの方付きの奥女中が夜更けからあさまで、誰の屋敷とも知れねえ 屋敷へ 担ぎこまれたまま出て来ねえ。遠州屋、死んだ山城屋のおいくも、 たしかおえんの方付きの女中だったな」小吉 「へい」若さま「匂ってきたぜ。その化け物屋敷に、何かからくりがありそうだな」そこへ、とん平が慌ててやってきました。文次郎が殺された。直ぐに出かけようとする小吉に若さま「無駄だよ、手遅れだよ。相手も今度はよっぽど用心してかかっている だろうから、手掛かりなんか残しちゃいねえ。 文次郎も気の毒なめぐりあわせの男だよ。おいく可愛さから悪人の うまい口車に乗せられて、おいくが殺されるなんて夢にも知らずに、 犯人を土蔵の中に誘い込んだ。犯人はおいくを殺した後で、動かぬと 今度はお前が死ぬ番だとかなんとか脅かした。 だから小心の文次郎には何も言えなかった、何も出来なかった。 そして、おれ達の調べを受けたので、とうとう殺された」おいと「可哀想に」若さま「遠州屋、誰かのくだらねえ企みの犠牲になって、罪とがもねえ人間が 二人までも殺された。こいつはどうでも許せねえぜ」小吉、どうでもホシをあげないと「若さま、お願げえします」若さま「うん」 (若さまの正義感が燃え上がりました。)(それにしても、若さまの台詞が長いです。べらんめえ口調も台詞まわしも、凄い完全に「若さま」をものにしてしまっています。橋蔵さまに惚れ惚れしてしまいます。)続きます。
2016年12月10日
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このままでいいのさ呉須の皿も山岡家の戻り一件落着したところでしたね。5月節句の鯉のぼりが泳ぐ空のもと、船宿喜仙の2階の物干し台のところで、若さまはいつもの調子でおいとを相手にお酒を飲んでいます。「横川出羽守が彦兵衛の墓を掘り返す、と聞いて慌ててやって来た時に目をつけたんだ」「役むきに届けないで、どうして若さまに事件解決を頼むのかとね」と、得意げに話す若さま。山岡家はご加増の上役付になり、布袋屋の身代は治助に、あとは隆之介とお喜代り祝言だ、という。すかさず、おいとが「あたしたちは?」 若さま「あたしたち?」⇒おいと「あたしと若さまは・・・」若さま「このままでいいんだよ」おいと「まぁ、どうして、お互いに好きあっているのに」若さま「だからこのままでいいのさ。やはり野におけれんげ草、楽しみは長く味わうほどいいんだよ」さらっと交わす若さまです。可愛い二人のやりとりでした。(見ていてこちらが恥ずかしくなってしまうわ)(おいとちゃん、お互いに好きあっていると、はっきり言いますね。 でも、残念ね、シリーズ 始まったば かりですから、そう簡単には 若さまからの「好きだ」という言葉は聞けませんよ。 若さまも若いですから可愛さもいっぱい。 シリーズが進むにつれ、橋蔵若さまは男の色気が増し、ますます惚れ惚れする 粋な江戸っ子 若さまになっていきます。)みんなが歌う若さま侍の歌にのせて、次回への期待と希望をもって、前篇「地獄の皿屋敷」と後篇「べらんめえ活人剣」は終りととなります。 (おしまい)映画館で観た人は、事件も解決、若さまの活躍もふんだんにありましたし、楽しいし、晴れ晴れとした気分で帰路についたことでしょう。これが娯楽時代劇なのです。8作品映画化された橋蔵さまの「若さま侍」是非見てほしいな。現在でも、決して劣らない推理ものであり、カラー化までのモノクロでも美しい、立回り(殺陣)も見ていてスカッとしますし、流れが綺麗です。この年代の時代劇を知る人には、今の時代劇は見るに堪えないものがあります。時代劇には夢がなければいけません。大衆が楽しめる娯楽性がなければいけないと思います。今の時代劇に携わる人たちはそこをないがしろにしているように思われます。"橋蔵若さま"誕生1955年12月が映画第1作品目デビューてあった橋蔵さま。「笛吹若武者」でひばりさんの相手役、新人の大川橋蔵はスクリーンに出るや話題になりました。第2作品目「旗本退屈男謎の決闘状」では、右衛門さんの映画に出演させ、その反響を東映は見ました。これは、スターとしてものになると確信したうえは、橋蔵さまを映画界へどうしても引っ張らなければなりませんでした。橋蔵さまは歌舞伎役者をやめて映画界でやっていけるか、まだ自信がありませんでした。橋蔵さまが映画に出たのは、1,2本位ならやってもいいかな、映画は全国に行きわたるから、という考えだったようです。東映は、十八番ものをここで作ろうと新芸プロと考え、大川橋蔵の育ちの良さと江戸っ子気質が伺えるところから、映画関係者がなかなか踏み切れなかった「若さま侍」の映画化です。橋蔵さの努力に感服感服。歌舞伎では、女形で、立役はこれからという時でしたから、まず声の出し方、歩き方が違ってきます。歌舞伎は広い舞台での動きと目線が、映画とは違います。下手すると大げさになってしまいます。でも、橋蔵さまは、カメラ目線といい、動きといい、カメラの前では完全に映画人になっていたのです。そして驚いたのは、声の出し方です。数か月の間に、あの素晴らしい声になっていたのです。デビューまもなくして、若さまのべらんめえ口調も熟すとは、そして、殺陣もすばらしくなっています。「若さま侍」は原作若さまと橋蔵さ酒脱な性格は、六代目菊五郎という芸界の名門の養子である橋蔵さまの境遇に何か通じるものがあります。新人がデビューとほとんど同時にシリーズ物をモノにするなど奇跡に近い出来事です。橋蔵さまの持って生まれた素質が江戸のヒーロー若さまとぴったり照合し、全国のファンの人気を湧き立たせることになりました。若様侍捕物手帖の原作者城昌幸先生が、橋蔵さまに初めて会ったのは、1956年2月東横ホールに出ていたときの楽屋に訪ねた時だったそうです。「因果小僧」のお女郎おその役の赤い長襦袢のままでいた時だったので、とても色っぽかったそうです。今回ご紹介しました前後篇は1956年2月封切ですから、クランクアップは遅くとも1月、まだ映画の世界の人ではなかったのです。城昌幸先生は、劇の主人公の性格と俳優の個性や持ち味がぴたりとくる、息が合うということはなかなかないらしいことなので、注文する方が無理だろうと諦めていたそうです。「若さま」を演じた人は戦前を含め4人で、それはそれで結構でしたが、欲を言うと、人柄がぴたりとこないという悩みがあったそうです。しかし、大川橋蔵という人を獲て「若さま」は初めてこの世の人間にさせていただいた、と言っています。40数年、よく映画関係の人々から「若さま」ををやりたいのだが、向いた役者がいないので・・・と言われていたそうですが、その嘆きも無用になったと言っています。ただ、橋蔵さまの若さまは美男すぎるとおっしゃっていたとか。第一作「地獄の皿屋敷」の完成試写会が行われたおり、観終って廊下に出て来た城先生は「まるで橋蔵くんに演じてもらうために、小説をかいてきたみたいだよ」と満足そうに大笑いされたというエピソードがあったようです。そういえば、若さま侍は戦後、映画では大川橋蔵。テレビや舞台では何人がやっていますが、育ちの良い若さまは感じられません。品位、所作、そして美貌・・これらが備わっている橋蔵さまであるからこそヒットしたのだと思います。時代劇には必要な立回りも、舞踊で鍛えた腰のすわりと流れが綺麗な形を作っています。若さまの歩く時の雪駄の履き方もうまい、深く履き過ぎても粋ではないのです。なにしろ、立姿が綺麗ですから、体の線がでる着流しが本当に似合います。これほど綺麗な俳優さんはいないと思います。
2016年10月10日
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頭が高い般若面の助けで難を逃れた若さまとおいとちゃんでしたね。船宿喜仙の二階。おいとが若さまのお膳を用意しています。砂を浴びた若さま、ひと風呂浴び、いつものようにおいとを相手に・・しながら、お酌で飲むところへ遠州屋ととん平がやってきます。若さま「ところで、遠州屋、お皿の一軒も今日一日になったな」遠州屋「どこから手をつけたらいいんでしょうね」若さま「手を付けるとすりゃ、やっぱり布袋屋がてじかだぜ」お猪口の酒をあけて若さま「最後のひと狂言をやらすか」 若さま、お猪口をおきます。布袋屋では、安蔵が別口帳を持ってきて、主人の死の件で豊五郎をゆすっている。それを庭から盗み聞きしていた布袋屋の娘は二人が部屋を出た後、隠してあった別口帳を探し見つける。別口帳には「呉須の皿、横川出羽守に売却済」と書いてあった。(そのことを、若さまに知らせてくれりゃよかったのに・・ね)若さまは布袋屋に行き豊五郎を呼び出していた。若さま「おい、豊五郎、おめえ、おととい彦兵衛の隠れ家にいったな。 彦兵衛を殺したのはおめえか」豊五郎「とっ、とんでもない、どうしてわたくしが」若さま「じゃ、誰がころしたんだ」豊五郎「ぞんじません。誰が惨いことをしたのか」若さま「だって、他にいなけりゃ、やっぱりお前が下手人ということになるぜ。 主殺しは罪が重いぞ」豊五郎「私は無実でございますよ、本当ですよ若さま」若さま「まあいいさ、今に分かることだ。小吉達がほうぼう洗っているんだが、 他にあの森の一軒家に行ったものが出て来ねえ限り、おめえを下手人 として、しょっ引いていくかもしれねえから、まっ、覚悟するんだな」と、脅しをかける。布袋屋から出て来た若さま、豊五郎をつけて見張るように遠州屋に合図をおくる。出かけて行く豊五郎を人を変えてつけて行きます。ゴミ拾いの格好の遠州屋がまず→忠言姿の岡っ引き→山伏姿の岡っ引きが→最後大工姿でとん平がつけます。豊五郎が行った先は横川出羽守の屋敷であった。(つけて行くのに、このように人を変えながらなんて、想像もしていませんで したので 感心してしまいました。)若さま「やっぱり、そうだったのか。遠州屋、えにしの糸が解れたぜ」遠州屋「と、申しますと」若さま「こまけえ言い訳は分からねえが、今度の一件は、横川と豊五郎が ぐるになって打った茶番の一幕よ」遠州屋「なるほど」若さま「別口帳がねえのは少々こっちの弱みだが、呉須の皿が横川の手元に あるのことは十中八九間違いはねえ」 場所は横川邸、大詰めになります。布袋屋の娘は出羽守に会いに行き皿を返すように・・ここから豊五郎、布袋屋の女将、布袋屋の娘お喜代、小百合の兄山岡隆之介が、横川の屋敷で入り乱れての様子が描かれます。宗十郎頭巾も横川出羽守とあの黒装束の頭領の楠本が話をしている部屋に現れもみ合っている。そのどさくさに紛れ、安蔵が屋敷から皿を盗んで逃げようと・・、それを見た豊五郎が皿を取り返し逃げようとした前にはだかったのは、葵の御紋入り黒の着流し侍、そう、若さまです。ここからいよいよ東映得意のスピーディーな大立ち廻りになります。若さま一太刀で豊五郎を斬ります。すると皿が放り投げられ、若さまが皿を持った者を斬ると、また次の者へと次から次へ皿がまわされていき、宗十郎頭巾に皿を追うように言う若さま。→若さまの殺陣(立回り)です。 皿を持って逃げようとした出羽守と楠本が門を開けさせると、外には捕り方がお待ちかね。門を閉めさせたところへ追いかけて来た宗十郎頭巾が。斬り合っていた時に般若面が割れる・・?? 宗十郎頭巾は山岡家の小百合であった。出羽守「己は小百合」、 出羽守が刀を振りあげた時。若さま「待て」ゆっくりと出羽守の方に近づきながら若さま「極悪人横川出羽守、おのが私欲私運を満たさんために世人を苦しめ、 神をないがしろにする不所存者、もはや叶わぬとあって観念せい」(若さま、格好いい!! いいところです。)出羽守「おのれ、推参な」若さま「うつけもの、この定紋が目に入らぬか」(葵の御紋だ、水戸黄門をおもいだしますね。) 出羽守「あっっ・・」若さま「世迷者、頭が高い」出羽守「はっ」若さま「本来ならばこの場をさらせず切り捨てるべきその方なれど、 高禄を頂戴して高家の要職にある身として、多少なりとも 武士の心は持ち合わせておるはず。 よって、せめてもの情けに切腹申しつける。 この場において潔く自決せい」(歌舞伎で長台詞は慣れている橋蔵さま、語りもさすが、将軍家です。)⇒若さまの言葉に耳をかさず出羽守と楠本は合図をして同時に若さまに斬りかかったが、若さまの刃に倒れる。小百合「若さま」そばに寄りそう小百合に、 若さま「うん」というように・・。 (般若面をつけていた小百合の若さまに対する心がやっとここで分かりましたね。 ちょっと恋心があった ような気がするのはわたしだけでしょうか。若さまも 宗十郎頭巾が女性であったこと、小百合であったことは、途中からうすうす 感じていたのでしょうね。)皿も無事山岡家に戻り事件は一件落着。 続きます。
2016年10月09日
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礼は言わんぞ、五分と五分だからな若さまが喜仙に戻ってくると、おゃ、どうしたことだ。黒装束においとちゃんが人質として連れていかれた後だった。襖に書かれた黒装束からの挑戦状には、「事件から手を引くまでおいとをあずかる。おいとを返してほしくば、単身ご存知森の一軒家まで来たれ」と。 小吉達の聞き込みも、皿の件で知っているのは山岡家と出羽守だけということしかわからなかったが、若さま「今はそれで上出来だが、敵に先手を打たれちまったよ」「お役むきへ知らせましょうか」という遠州屋に若さま「そいつはいけねえ、とんだ犠牲が出ねえもんでもねえからな。とにかく おれは、おいとを助けに行ってくる」 遠州屋「それじゃ、あっしらも一緒に・・」若さま「いけねえよ。一人で来いと書いてある」 おいとを助けに森の一軒家にのり込む若さま。一軒家には灯りがついていたが人の気配がない。各部屋の襖を開けるが部屋の中は人の気配はない、どうしたことか天井や周りを見回し、ある襖の奥に何かを感じた。用心して襖を開けると、地下に通ずる階段があった⇒⇒階段を下りていくと閂がおりている部屋があった。中の様子をうかがい、急いで開ける若さま。⇒ 扉をあけると、奥に猿ぐつわをされ縛られたおいとがいた。若さま「長居は無用、早く出るんだ出ようとしたとき扉を閉められ閂を下ろされてしまう。若さまが体当たりして壊そうとしてもびくともしない。鎖が切られ吊り天井が徐々に落ちてくる。そして落ち方が速くなってきた。危うし若さま、となると助け舟が来るのが当然ですね。来ました来ました、般若面を黒装束の侍達と斬り合いながら、扉の閂を外します。体当たりしていた若さま、扉が開きおいとと共に出たとき、天井が落ちました。かぶった宗十郎頭巾です。(若さまとおいとちゃん、間一髪のところで助かりました。それにしても、若さまのあとをつけている般若面です。若さまの危ないところをよく助けてくれますね。)般若面と若さまは黒装束一味と斬り合いながら、座敷の方へ上がってきました。またもやここで「引き揚げろ」との声がかかり、黒装束一味は退散します。逃げて行く黒装束一味を見かけた遠州屋達が、若さまのところへ走っていきます。若さま「おいとちゃん、大丈夫か」おいと「あっ、若さま」「おいとちゃん」「若さま」と向き合う二人を見ていた宗十郎頭巾に、若さま「あんたは一体誰だ、わしは救ってもらったが、礼は言わんぞ。 これで五分と五分だからな」(礼は言わんぞ、これで五分と五分だからと若さまから言われた時の般若面がうなだれた時の様子を画像にはめ込みました。)⇒その様子を見て、若さまどうしたことかと言うように、般若面を見つめます。般若面、若さまの言葉にショックを受けたよう、悲しそうに去っていきます。 ⇒⇒⇒ (宗十郎頭巾(女性ですから)には若さまをちょっと好きだという気持ちがあったと思うのね・・その前で若さまとおいとの姿を見せられ、若さまのつれない言葉には悲しくなるのは分かります。)般若路面と入れ違いに、遠州屋達がやってきました。「無事でよかった」おいとは、若さまの腕に顔をうずめて泣きじゃくります。この時の若さま、頼りがいがありました。 続きます。
2016年10月07日
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映画「若さま侍捕物手帖 地獄の皿屋敷」の後篇「べらんめえ活人剣」になります。暗闇の中、豊五郎をつけてある隠れ屋にたどり着いた若さまたちを待っていたのは、黒装束の集団。斬り合いの中鉄砲で狙われていた若さまの運命はどうなったのでしょうか。1956年2月封切 若さま侍捕物手帖 後篇「べらんめえ活人剣」 若さま侍捕物帖シリーズ2作品目です 偽物なんです 木の上から鉄砲で若さまを狙っていたのを、宗十郎頭巾の般若面をつけた男が手裏剣を投げ助けます。般若面も助太刀に入っていきます。黒装束の頭領の「名の知れた青二才の二人、はやく斬れ」ということばに、若さま「蕪ら細工じゃあるまいし、どっこいそうはいかねえよ」般若面が手傷を負ってしまいます。助けにいく若さま、これ以上無理だと思い黒装束たちは引き揚げます。若さま般若面のところへ駆け寄っていき、うずくまっているのを見て若さま「怪我をしたな」懐から取り出した手拭いを引き裂き般若面に近よると、般若面は立ち上がり後ずさりします。若さま「おぅ、縛ってやろうというんだ、何故拒む。まずその面を取ってつらを 見せろ。見せろよ」⇒般若面は逃げて行きます。(作品を見た方は、前回の集団に襲われ若さまに助けられた時の様子からとここでの様子でうっすらと分かったと思うのですが・・手傷を負ってのうずくまり方から、皆さまも宗十郎頭巾の般若面は女だ?ではないかと思った方がいるのではありませんか。若さまはまだ気づいてはいないのかしら。) 船宿喜仙、おいとのひざ枕で事件の経緯を話している若さま。彦兵衛の隠れ家を探してみたが別口帳はなかった、若さま「どうやら、事件は振り出しに戻っちゃったと言う訳さ」おいと「まあね、折角ここまで来て」若さま「なぁーに、勝負はこれからさ。今日は2日、明日は3日だ、この二日の間にかたずけてやらねえと」(第一作と第二作では、おいとちゃんがお姉さんタイプ、甘えん坊の若さまという感じです。おいとちゃんの膝枕での若さま可愛いです。)出羽守は皿を草の根わけても探し出してみせると・・・しかしその代わり、山岡家の窮地を救ってやるのだから皿が戻った時は、娘の小百合を正妻に欲しいと言ってきた。小百合は自分たちで探すので、その返事は4日まで待ってほしいという。小百合の兄隆之助は、若さまが用立てた百両(ニセ小判とも知らず)を持って、皿を返してもらうために布袋屋に行った。 喜仙に、小百合が若さまを訪ねてきた。(おいとちゃんは、席を外してほしいと若さまに言われおかんむり、焼いているのです。)小百合「そのような訳で、今しばらくあの百両を拝借願いとう存知まして」若さま「兄上が、ねぇ。何度掛け合っても無駄なんだがなあ」小百合「はっ?」若さま「皿は布袋屋にはありませんよ」小百合「まぁ・・」若さま「それにあの百両、あまり派手に持ち回られると困るんでね」小百合「と、申しますと」若さま「あなた方をかついだ様で悪いけど、皿が布袋屋にあるかないか確かめるために売った芝居、あの小判は芝居で使う小道具の小判なんです」 小百合「えっ」若さま「偽物なんです」(隆之介はニセ小判とは知らず百両あれば・・ともう一度交渉しに出かけてしまいましたよ。どうなるのでしょう。若さまもそこまでは考えていなかった?)隆之介は布袋屋に行き百両を出し皿を返してほしいと乗り込んでいた。応対する豊五郎に腹を立てた隆之介が五十両の包み一つを叩きつけた。 その瞬間ばらまかれた小判はニセ小判と分かり、隆之介を愚弄する番頭の豊五郎。お喜代にもぶざまな姿を見られた隆之介は店を出て行った。のんびりと歩いている若さまに、小吉があと一日しかないのにお散歩でもあるまいにと若さまがのんびりしているのでヤキモキしている。若さま「まあ、焦るな。犬も歩けば何とか言うだろう」 「時によりけりですぜ、何もこんな」と遠州屋が言いかけた時、若さまの足が止まり、屋敷の門から出て来た侍達の一行に目がいった。 若さま「小吉、匂ってきたぜ」小吉 「えぇっ・・」若さま「遠州屋の目にも曇りがきたか。今行った先頭の侍に、覚えはねえかい」小吉 「はってねえ・・はっ、おとといの晩の一件の」 表札を見て、横川出羽守とあの侍達といかなる繋がりを持つのか。 若さま「小吉、耳をかしな」 若さま「いいか、きずかれねえように上手く聞き出すんだぜ」 若さま青空の下、何かを考えたのか、思い浮かんだのか、そのように思える表情をみせます。 続きます。
2016年10月05日
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一芝居打つお棺の中に彦兵衛の死骸はなかった。 若さま「いっぱいくったな」 小吉 「どうりで、布袋屋のやつら来ねえはずだ」若さま「遠州屋、皿は布袋屋にはねえぜ」寺から出て遠州屋と歩いているところへ、横川出羽守が近付いてきて、山岡の為に骨を折ってくれる武家とはその方か、と。若さま「うーん、別に、山岡家のためじゃねえよ」⇒山岡の災難は自分のことからのことで気の毒、早く解決するよう頼むと言ってきた。若さま「頼まれなくたってやってはみるが、ひどく難しくなってきたぜ」傍にいた家来が「こら、口を慎め」と言うと、出羽守「かまわぬ、捨て置け」と。若さま「そうだよ、捨て置いてもらおう。こっちは忙しいんだ」遠州屋は横川出羽守に若さまがぶっきらぼうに答えていたので心配しているが、当の若さまは、こっちとらには関わり合いのない相手だとへいっちゃらである。歩いている若さまたちを短筒が狙っている、間一髪、身をかわした。⇒⤵⇒⇒若さま厳しい顔つきに、追いかけようとする遠州屋を止める。 船宿喜仙、短銃で狙われ間一髪だったことを遠州屋が話すのをきいて心配なおいと。大丈夫だと流す若さま。遠州屋に、横川出羽守が何のため寺まで来たと思うか問う。小吉 「若さまに事件の解決をお願いするためにおいでになったのでしょう」若さま「そうだろうか・・。どうやら事件も本筋に入ってきたようだぜ」小吉 「と、言いますと」若さま「はっっは、とは言っても、これからがほねだがね」彦兵衛は生きていると推測する。そこで若さま、一芝居をうつことを提案する。若さま「金をこっちで都合してやって、山岡に皿を受けだしにやるのさ」山岡が布袋屋に百両を持ってきたが、女将は大切な品なので今はここにないという。山岡の娘・小百合は2日の中に皿を持ってくるように女将に頼み、元気なくかえっていった。様子を見張っていた若さまにはこうなることは分かっていることだった。遠州屋「可哀想に、金を渡した時にゃあのように踊りあがって喜んでいたのに」若さま「うぅん、罪のようだがしかたがねえ。素直に皿はわたさねえことは初手から分かっているんだからな」⇒遠州屋、若さまの言葉に呆気に取られています。 若さま・遠州屋・とん平が夜遅くまで布袋屋を見張っている。遠州屋「的が外れたんじゃござんすまいね」若さま「そうかな・・」すると豊五郎が一目を避けるように出ていった。つけていくが、見失ってしまう。先を進んで行く若さまたちの様子をうかがう者の影が左右にある。⇒豊五郎が行った灯りがついている小屋には安蔵がいた。話をしている相手は布袋屋の主人彦兵衛である。安蔵は治助を知っているらしく、彦兵衛が生きていると知ったらたとえ父でも治助は容赦しないだろうと脅し千両出せという。豊五郎と女将の仲も話す。 小屋の様子を覗いている豊五郎を若さまたちが見つける。気が付いて逃げる豊五郎、その時小屋の中でギャー!という叫び声が聞こえ(彦兵衛がこの時殺されてしまってのです)、若さま達が振返ると後ろには黒装束の集団が。 若さま「でたな化け物」 若さま、刀を抜きます。 (立回りです) ・・(動きが速いので画像が流れてしまっていますが) 若さまを木の上から鉄砲が狙っています。若さまは気がつくのでしょうか、それとも・・。東映の立回りは動きが速いので楽しいです。それにしてもよく動き回ります。橋蔵さまは、二回目の立回りですが、一回目の旗本退屈男「つむじ風の半次」の時より動きの流れが綺麗になっていているのです。橋蔵さまの日々努力されている証が見えてきています。橋蔵若さまの着流し姿は綺麗で惚れ惚れします。あのように着こなせる俳優さんは出て来ないでしょう。橋蔵さまはデビュー三作品目で初めての着流しのお侍役とは思えない、板についています。このようなどこから見ても素敵な俳優が映画に出てきて活躍するのですからたまりません。前からの姿は勿論なのですが、後ろ姿もいいでしょう。 橋蔵さまはお尻の形もよく、足が細く線がとても綺麗だといわれていました。歩く姿も絵になるのです。立回りであれだけ足を見せても、嫌らしくなく、色気を感じます。城昌幸原作若さま侍の映画化は、本当に大川橋蔵を待ちに待っていたものなのですね。 次回は後篇「べらんめえ活人剣」に続きます。
2016年10月02日
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質ぐさは何だ船宿喜仙の二階。若さま「おっ、待ちかねたぜ。遠州屋どうだった}遠州屋が布袋屋の勘当されていた息子の治助をつれてやってきた。若さま「治助か?」治助黙ったまま頭をさげ挨拶をする。遠州屋「勘当された布袋屋の総領、治助でございます」若さま「そうか、で、分かったか」治助は最初知らず存ぜずの一転張りだったが、とうとう全部遠州屋に言ってしまったようだ。若さま「小吉(しょうきち)、山岡と布袋屋の間に何かいざこざがあったろう」遠州屋「お察しの通りでした。」この半月の間に山岡の家の隆之介と治助がひょっこりと出会い、そのいきさつを聞かされたようだ。 若さま「そんなことだろうと思った。治助、山岡が預けた質ぐさは何だ」 遠州屋が、その質ぐさは将軍家から拝領した呉須の皿といって、二代将軍様から山岡家の先祖が拝領した品物だという。若さま「なに、拝領の品?」山岡様は以前から布袋屋の客で、3両、5両と融通していたのだが、去年の暮れに、と遠州屋が説明したところで、 若さま「呉須の皿をかたに、百両借りたってゆうんだろう」遠州屋「そうなんです」 旗本と言っても小禄の貧乏暮らし、当主帯刀が病に倒れた山岡家では金に困って布袋屋に相談したら、こちらも商売なので質ぐに呉須の皿を出してくれるなら百両すぐに出すと言われ、質に入れたという。ところが、高家横川出羽守が突然山岡家を訪ねてきて、将軍家が是非呉須の皿を見たいとの所望、その日は端午の節句の日がよいと。4日以内に皿を手元に戻さなければならないのだと、布袋屋の主人彦兵衛にその日のうちだけ皿を貸してほしいと掛け合う。彦兵衛は貸すが5か月分の利子を付けてほしいと言った。という訳で、再三再四掛け合ったがだめで、そのうち彦兵衛がぽっくり死んでしまった。いきさつを聞いていた若さまが若さま「皿の行方は分からねえ。山岡の息子はしびれを切らして、布袋屋の蔵から 盗み出すことに覚悟を決めた。 (治助の方を見て) おめえはおめえで、勘当されりゃ赤の他人、後妻への面当てもあって、 山岡の息子に力を貸して我が家へ押し込んだ。どうだ、図星だろ」治助 「へえっ」遠州屋「ところが、ねえ若さま、その隆之介って山岡の息子は、刀の持ちようも 知らねえ代物なんでえ、布袋屋へ忍び込むような性根なんかありゃしま せんよ」若さま「うぅーん、とすると、おいらの感もそうあてにはならなくなるな。 だとすると、彦兵衛は誰の手にかかったか」 遠州屋「えっ、すると彦兵衛は誰かに殺されたとおっしゃるんですか」若さま「と、一応は疑ってかかるのが上等だからな」治助「きっとそうです。親父はおかくと豊五郎に」若さま「あの二人は何だい」治助「ただの中ではありません」若さま「やっぱりねぇ」若さまに言われたことを探っていたとん平がもどってきた。彦兵衛を診た医者を見つけ出したと。若さまに「よーし、親分、その野郎を調べるんだ」と言われ、遠州屋が動こうとしたとき、とん平が行っても無駄なことだという。 若さま「何故だい」⇒ とん平、その医者は彦兵衛の死んだあくる日に湯治に行くと言って旅に出てしまって、何処に行ったか誰も知らないと。若さま「うーん、いよいよくせえな」遠州屋「どうします、若さま」若さま「よーし、彦兵衛の墓を掘りかえそう」遠州屋、治助、とん平、顔を見合わせ驚く。墓を掘り返せば、彦兵衛の死因も分かるし、記帳も手に入る、という若さま。早速、遠州屋に寺社奉行の手配を支持する。そこへ、おいとが投げ文を持ってきた。「この事件から手を引け さもなくば後悔しても 追いつかなくなるものと覚悟せよ」との内容だ。若さま「ふん、小細工をしやがる」遠州屋「どうしたんです、若さま」若さま「面白くなってきたじゃねえか。かまあねえから、予定通り動いてくれ」皆が動いたあと、ゆっくりとお酒を飲む若さまを、心配そうにしているおいとちゃんです。山岡の息子隆之助と布袋屋の娘があっているところを見てた豊五郎の肩をたたくものがいた。屋台の蕎麦屋にいた怪しげな男で島抜けをした安蔵である。豊五郎に布袋屋の身代を狙っているんだろぅ、という安蔵。寺社奉行立ち合いで墓を掘り返している。 若さまもやって来た、が布袋屋からは誰も来ていない。墓を掘り返しお棺を引き上げた。遠州屋「開けさせましょうか」若さま「うん」 遠州屋「おい、開けろ」さぁ、若さまが墓をほれば何かが分かると言っていたが、どうなるのでしょう。彦兵衛の死骸は・・棺を開けたことで、事件が動きだしたようです。 続きます。
2016年09月30日
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お目当ては何だ深夜何時かの鐘の音がなった時、何かを察した若さまが目を開いた。豊次郎とおかみは起きていて蔵へ押し込んだのは勘当された息子ではないか、いや山岡の息子だと、話をしている。豊五郎が今夜こそ正体をみとどけると蔵の方へ行くと、人の気配を感じ茂みに隠れた。般若面の男?が現れた、そして三番蔵に入って行った。般若面は蔵の中を灯りで見渡していくと、蔵の奥に一人の侍が浮き上り、びっくりした様子。(部屋で寝ていた若さまではないですか。)(若さまがまさかこんなところで、賊の先回りをして蔵の中にいるなんて、誰も考えていませんでしたよ。)(いつの間に・・、鍵はかかっているはず、鍵を借りて持っていた?・・・まあ、細かいことは考えないことにいたしましょう。)若さま「はっはっは、お目当ては何だ、話によっては手伝ってやるぜ」 若さま「さりとは、遠慮ぶけえ」若さまが立ち上がると、般若面慌てて逃げて行く。追いかける若さま、ふと茂みのところで足を止め、茂みに隠れている豊五郎に若さま「また、峰打ちをくうなよ」⇒(画像がモノクロで場面が夜なので分かりずらいのですが、左下に豊五郎が隠れているのが分かりますでしょうか。)といい、逃げてゆく般若面を追いかける。(豊五郎に声をかけている間に、般若面は走って逃げているはず、若さまが速く走っても姿は見えなくなっているはずだと思うのだけれど・・どういうわけか、直ぐに追いついているのです。・・・そこは若さまだから気にしないで見ていきましょう。橋蔵若さまの走りっぷりがいいですからねぇ。東映の映画は走るところはスターであろうが全速力で走らせますから。これから後の橋蔵さまの作品には、走るところが随分でてきます。)その様子を見ていた男(屋台蕎麦を食べていたあの男です)、や豊五郎が慌て出しました。 若さま「おーい、待て待て」 般若面足を止める、追いついた若さま。若さま「へたにじたばたすると、斬りたくなるものだぜ」宗十郎頭巾、刀を抜くようなかまえをすると、若さま身をかわし暫くにらみあい⇒若さま「ほほう、出来るな貴公」般若面かまえをやめ歩き出した。若さま「おーい、待てったら」後をついて歩く若さま。若さま「だが、3日も続けて押し込むなんて無茶だぜ。もっともそれを 承知でやらなきゃならねえほど、切羽つまった事情があること は察しがつくがね」 (それを聞いていた般若面一旦足を止めまた歩き出す。)若さま「おい、黙っていちゃわからねえ。貴公が探しているものは、 いってえなんだ。そうか、いえねえのか。だが貴公が誰で、何 を探しているのか知りてえんだ。おい、しでいによっちゃ手 伝ってもいいと言っているんだぜ。おめえも強情だなぁ」(若さまのべらんめえ口調聞いてて気持ちがよいです。真似したくなっちゃいます。)若さまがしつこく問い詰めるので、突然、般若面刀を抜き斬りかかってきた。若さま鞘に手をかけるが刀は抜かず➡若さま「貴公の腕でも俺は斬れねえ」 それでも刀を引かない般若面に対し、刀を抜こうと身構えてみせるが 若さま「はっはっは、すっかり袖にされたなあ。仕方がねえ、あきらめてけえるぜ、あばよ」 般若面が走って行く後を徐につける若さま。逃げる般若面の前に豊五郎と宗十郎頭巾の男達が現れ囲まれてあわや、と思った所に、若さま「待て待て、・・その男を殺されちゃ困るんだ。みんな刀を引け」 若さまも斬れと声がかかる。若さま「いやか、いやなら俺が相手になる」(若さま、待ってました!!いよいよ見せ場、刀を抜きます。) (ここでの立回りが、映画界へ来ての初めての本格的な立回りになります。この時はまだ一つ一つの動きを考えながら、という感じですが、やはり舞踊で鍛えているので、動きは流れるように綺麗です。着流し姿での立回りをいうのは難しいのですが、橋蔵さまはいとも簡単に立ち回っています。将来が楽しみになってくる橋蔵さまの立回りです。) ➡⤵➡➡⤵ ➡ 手ごわい相手と見たのか、「ひけっ」という声にみんな去って行った。若さま「そうならねえうちに、ひきゃいいのに、目先のきかねえ奴らだぜ。 なあ、般若の面・・(若さま周りを見渡して)あいつも、また逃げ足のはえ え野郎だぜ」 刀を鞘におさめ、何事もなかったかのように、懐に右腕をいれ。夜道を歩いてゆく若さまです。⇒(若さま、これからどちらへお帰りですか。布袋屋の用心棒として入り込んでの収穫はありましたから、船宿喜仙へお帰りかな。おいとちゃんも心配しているだろうし、おいとちゃん相手にお酒が欲しくなりましたね。)続きます。
2016年09月24日
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手ごろな用心棒 賊は布袋屋の蔵にある特別な品を探しているのだ。一番蔵、二番蔵にはなかった、ということは、三番蔵が狙われると若さま。 三番蔵を見て番頭にしっかり錠をおろしておくように言って、布袋屋の家の方に行く途中、庭の隅に下駄の跡があるのを見つける。 (ちょっとわざとらしい仕草ですが、そこは強調する意味と思って見てください。)遠州屋「これはやくざがよく履く雪駄のようですが、ばかに重なり合っ ていますね」 若さま「通り抜けたんじゃなくて、ここに隠れていたのさ」 布袋屋の者たちがみんな土間に集まっていた。若さま、女将と娘を見て「親子に見えんなぁ」と番頭にいう。女将は後添えで、お喜代という娘の上の息子がいたが2年前に勘当されたのだと番頭が話す。感動されたのは女将が後妻に入ってから1年後だったと聞いた。若さま「ふうーん」遠州屋が事情聴取をしている。娘のお喜代は、一番蔵が狙われた時見た犯人らしいものはやくざ者のような風体だったと。番頭の豊五郎は、二番蔵が狙われた時の犯人は峰打ちにあったのだから般若面は侍に間違いはないと。遠州屋は一人聞き込みをしている、若さまは腰を据えてお酒を飲んでいる。(お酒には目がない若さま、うまそうに・・。といえど、若さまは布袋屋の者たちから目は離していませんよ。)今夜も賊は来るのではないかどうしましょうと言う女将、小吉は用心棒でも雇うんだなと言った、その時、遠くから声が、若さま「用心棒なら、手ごろなのがあるぜ」遠州屋若さまの方に来て小吉 「手ごろな用心棒ってえのは、いってえ」若さま「決まってるじゃねえか。いい酒のあるところ、必ず若さまあり さ」と言って大きな器の酒を飲みほした。ということで、用心棒として布袋屋に入り込んだ若さまです。夜、布袋屋の座敷、娘お喜代に酌をしてもらいながら、帳面を見ている若さま。(豊五郎とおかみは別室で若さまの様子が気になっています。ひそひそ話をしています。)店の帳面を全部部屋に持ってこらせて見ていた若さま、あるところに目がいきました。若さま「おぅ、番頭、これは何だ?」番頭が駿河台の旗本山岡家に貸した百両だという。若さま「大分困っているようにみえるが、何を預かったんだ。百両と いえば大金だぜ。 それに質ぐさがけえてねえのはどういうわけだ」 亡くなった主人が別口帳につけていたのではないか、と番頭が言う。若さま「その別口帳というのを見せな」番頭も娘もその帳面がどこにあるか見たことがなく分からないという。布袋屋の主人が亡くなったが病気は何だったのか、医者は何処の誰か若さまが二人に聞こうとしたときに、女将が部屋に入って来て、別口帳はお棺の中に入れたという。若さま腑に落ちない様子。女将にも見せなかった大事な帳面らしかったのでお棺に入れたという。「よし、分かった、もういいからみんな引き取ってくれ」と言い、娘お喜代には、休む前に酒をもう一本と頼む。部屋に酒を持って行くと若さま寝入ってしまった様子、お喜代は掻い巻き布団をかけて部屋を出て行ったが、若さまは寝てはいなかった。何かの気配を感じたのか・・・若さまが目を開けた。気配を感じた若さまが、いよいよ動き出します。橋蔵さまの目は語るのです。目に表情があるのです。目の動きを追っていると、その時何を思っているか、何を言い表そうとしているのかが、よーく分かります。目千両と言われた橋蔵さま。この時からもう具わっていたのです。それが作品ごとに磨かれていったのですね。遠州屋小吉役の星十郎さんはテンポのよい喋り方で、橋蔵若さまとはピッタリですから、江戸っ子でなくても見ていてスカッとします。この後の作品でもこのお二人の絡みは楽しいものがあります。 おいとちゃん役の星美智子さんは子役からの大ベテラン、相手役としては「若さま侍捕物帖」だけでしたが6作までやっています。橋蔵若さまのフォローがいいですね お喜代役の円山栄子さんは、映画では橋蔵さまの相手役としてはなかったのですが、橋蔵さまが毎年撮影の合間をぬってお正月当たりなどに地方へご挨拶の巡業の時には、おいと役で橋蔵さまとご一緒でした。 続きます。
2016年09月23日
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「若様侍捕物手帖 地獄の皿屋敷」前篇1956年2月 封切 若さま侍捕物帖シリーズ1作品目ですそしてデビュー三作品目での初シリーズもの、そして大川橋蔵初主演ものになります。若さま侍の第1,2作には吉田正さん作曲の「若さま侍」の歌(テーマ曲とでもいいましょうか)が流れます。第3作にはこの歌を小畑実さんが歌っています。 花の大江戸 八百八町 おいら天下の 若さまだ 伊達にゃ見せない べらんめえ堅気 腰の大小の 落とし差し 若さま侍 江戸姿 江戸姿 若さま、ご出馬の途中 「若さま侍」のテーマ歌で始まり始まり。楽しい明るい歌なのでこの映画本当に事件物なの?・・と思ってしまいます。深夜屋台の蕎麦屋で、怪しそうな男が蕎麦をすすっていると遠くで「ギャー!」という叫び声がする。遠州屋小吉ととん平が慌ててやってくると、宗十郎頭巾で般若面をつけた男の姿があり、追いかけるが取りにがしてしまう。(そばを食べていた男は遠州屋小吉を知っているのか見られたくないようだ。)倒れている男の顔を見た蕎麦屋が、布袋屋の番頭の豊五郎だと言う。気を失っているだけのようだった。昨夜も、布袋屋では一番蔵が狙われたのだが、何も盗られていないので奉行所には届けていないという。とん平が蔵を調べて血相を変えて遠州屋のところにやってきたが今日も「何も盗られてない」らしい。布袋屋は主人が亡くなっていて妻が取り仕切っているようだ。困ったあげく、遠州屋小吉ととん平がやってきたのは船宿「喜仙」。夕べのいきさつを話している相手は、扇子で顔を覆って横になっている着流しの御武家様である。小吉 「時に、若さま・・・いってぇ、この謎は・・」すると、「解けねえな」 扇子をはずし 若さま「小吉(しょうきち)親分にはさ」(スクリーンいっぱいのアップで橋蔵若さま、皆様に初お目見えです。今までに見たこともないような美しい歌舞伎役者から映画俳優になった大川橋蔵という人が目の前に映し出されているのですから、女性客は虜になったでしょう。わかりますわかります。声もすごい、「謎の決闘状」のつむじ風の半次の時から間もないのに、努力しましたね・・橋蔵さまの声が出来てきました、素敵な声です。台詞まわしも、テンポいい江戸っ子弁、べらんめえですけれど、とても品がよい。見ている側は引きずり込まれます。まだ、ちょっと歌舞伎的な化粧ですけれども、モノクロの映画ですからこの位であっても大丈夫。)若さま起き上がり、お銚子を持ち上げ空なので、 ポンポンと手をたき誰かを呼びます。 小吉 「じぁ、若さまには何か」そこへおいとちゃんが入ってきます。おいと「ごめんください」「お呼びで ございますか」若さま「酒がないぞ」そういわれても出す酒がないと言うおいとちゃん、お銚子を袂の下に隠している。若さま「酒屋の勘定、大分溜まったとみえるな」おいと「ええ、若さまがお神輿を据えてから急に」若さま「そいつは気の毒だなぁ、じゃ、よそへ行って飲むとしょう」と立ちかけたのでおいとちゃん慌てて「嘘です、はい」と隠しているお銚子を出す。若さまが差し出したお猪口に、おいとがお酌をすると、若さま「意地悪娘でも、酌は美人にかぎるな」 おいと「まぁ、存じません」若さま「はっはっはっ」 酒を一口飲み干すと、 若さま急に真面目な顔つきになり、お猪口を投げ出し若さま「遠州屋、出かけよう」 遠州屋ととん平を引き連れて外に出る。(おいてけぼりなおいとちゃんです。若さまを好きなおいとちゃんですが・・・若さまを好きだと思っている女の人にはつれない素振りの若さまです・・そこがいいのですけれどもね。)若さまたち三人が町を歩いていきます。バックには「若さま」の歌が流れています。行きかう人は若さまだ、と言うように足を止めます。 花の大江戸 八百八町 おいら天下の 若さまだ 伊達にゃ見せない べらんめぃ堅気 腰の大小の 落とし差し わかさま侍 江戸姿 江戸姿小吉 「ねえ、ねえ若さま、河岸を変えて飲むのも結構ですが、夕べの 一件を何とか・・・」若さま「だから今、ご出馬の途中じゃねえか」 小吉 「いってえ何処へ」若さま「三番蔵だよ。賊は何か布袋屋の蔵にある特別な何かを探して るんだ」 賊は布袋屋の蔵にある特別な品を探している。一番蔵、二番蔵になかった。 あとは三番蔵だけと言う若さまである。さあ、若さまがご出馬、布袋屋にのり込みます。どんな展開が待っているのでしょうか、興味深々です。橋蔵さまの品位は持って生まれたものなのですね。鼻筋が通った顔立ちがとてもよい。これだけのアップに堪えられる俳優はいないのじゃないかしら。綺麗で溜息が出てしまいますね。若さまは、橋蔵さまの明るくてさっぱりした江戸っ子らしさを引出してくれた作品でしたから、人気は確実なものになりましたね。続きます。
2016年09月21日
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