発達障害児が伸び伸びと育つために~保健師の目で見た子育て~

診断されることを躊躇する人へ



自閉症児、とくに「軽度」と言われる子を持つ親ほど、障害を否定し、「いつか普通(定型発達)の子と同じになる」と妄想してしまいます。

そして、問題行動を改善するために効果的なかかわり方をして、とりあえず「行動面」が改善されると、「もう治った!」と、思いたくなるのです。
そして、受診を取りやめたり、中断したりする人が何人もいますね。

一時的に行動面の問題がなくなると、内面に抱える課題(認知力の課題・言語力の課題・感覚器の異常など)に目を背けるようになり、問題全部が消えたように思い込んでしまいます。

仕方のないことではありますが、そのことで本人への支援が遅れたり、中断したり、大変な状況に追いつめられてしまった事例もたくさんあります。

「軽度」のお子さんを育てる親の最初の関門です。
わが子の問題を内心気にしている親ほど、過度に「バカにされた」「障害児扱いされた」(問題のある発言ですが、時に聞きますね)「放っといてください」と怒りをあらわにします。


かくいう私も、初診日直前まで、心が揺れていました。

ADHDを疑い始めてから初診日までの2ヶ月間で、かなり勉強し、TAKUYAへの対応方法を変えることができました。
集中力が続かず、衝動性も押さえにくい子なのだということがわかり、それを本人自身もコントロールできないことに苦しみ、苛立っているのだということが理解できたのです。

それまでやっていた、
「どうしてできないの?」
「きちんとやりなさい」
「まじめにやりなさい」
「ボーっとしないで」
という叱責は止めました。

「できないことをとにかくやれ、ということほど残酷なことはない」
と理解して、かなり忍耐強く、丁寧に指導し始めました。

積極的に褒めるようになりました。
例えば、100マス計算など、以前は40分もかかっていたのですが、忍耐強くかかわり、褒めちぎって、本人をその気にさせることができたら、俄然集中力を発揮するようになったのです。

なんと「4分45秒!」
「すごい!最高記録だ!TAKUYAは天才だ!」
と言って褒めまくると、本人も大喜び。

それ以来、毎日100マス計算をするようになり、タイムを伸ばすことをとても喜び始めました。
励みになり、自信にも、学力の向上にもつながりました。

私がくっついて忍耐強く勉強させたら、TAKUYAの集中力はかなり続くようになり、私がいない時でもご褒美を用意すれば、課題をこなせるようになっていったのです。


担任のE先生からは、「2学期になってから本当に落ち着いている。課題を授業中にこなせることも増えてきたし、漢字の力と計算力が伸びた」と褒めていただきました。

ところが、「かかわり方を工夫することでこんなに伸びるのか」・・・という喜びが、「医療診断が本当に必要なのか」という疑問に変わってきてしまったのです。

「だんだん問題行動も減っている。いい方向に向いている。診断を受けることで、マイナスは出ないだろうか」・・・と悩みました。

みなさんだったら、どうしますか?
診断を受けることがマイナスになるのでは・・・と、その時は悩みました。


でも、診断を受けに行くことにしたんです。


「あの子自身の問題があるのは確かだ。友達関係でのトラブル、場面に関係なく寝転がったり、はしゃいだりする。これは小2にしては、やはりどう考えても「幼い」と見える。問題がなくなったわけではない。
あの子がこれから苦しむ場面が出てくるのは、目に見えている。」

親は子どものいいところに注目していい気分でいたいものです。でも、勇気を出して、目を背けたかったことにもう一度目を向けました。

数日後、予約日に診断を受けに出かけることにしました。
本当にキャンセルしなくてよかったです。

診断を受けて、本人の必要としている支援が具体的に理解できるようになり、その後着実に伸び、学校の中でも支援体制を作ることができました。診断あってこそのことです。

迷ったけれど診断を受けてよかったと思っています。

Akiko




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