☆ Sanctuary ☆  Smile for you

短編ミステリー第4話



      ☆’.・*.・:★’.・* 隠された慰霊塔の秘密 第4話 ☆’.・*.・:★


(2003.07.07 ~ 07.29制作)
母が、最後に恵理に残してくれた言葉、それが意味するものは。。
その一言が、恵理の人生に思いもよらない出来事に遭遇させる。。
そして、その出来事と慰霊塔にまつわる秘密とは?
時空を超えた短編ミステリー。。。

☆ 慰霊塔の秘密 ☆

== いつもの犬の散歩 ==

あの晩の不思議な夢から、3日が過ぎた。
今日は土曜日、恵理の会社は休みだ。

恵理は部屋で、インターネットをしていた。
「もうだいぶ、古くなっちゃったからなぁ」
「そろそろクルミの首輪とリースも変えてあげないとなぁ」
「(・。・ )b あ!このショップの商品なんかいいかも」
「このブラウンのにしようかしら?」

恵理の部屋には、窓から夕陽が射し込み始めていた。
窓のほうにちらっと目を向けて、
「そろそろ、夕方のお散歩の時間ね」
恵理はPCをシャットダウンし、一階のリビングに下りていった。
平日は、母が散歩に連れて行っているのだが、
休みの日には、恵理がクルミの散歩に行くことになっている。

「クルミ!!お散歩いくよ!!」
「U^ェ^U。ワン!」
冬も近い、秋の夕暮れどき、
恵理は、いつものようにクルミを連れて散歩に出かけた。

外は、冬が近づいているとはいえ、まだ穏やかで、
過ごしやすい気候だった。
もう空は赤く染まリ始めているが、かすかな青空の中に、
とぎれとぎれの、うろこ雲が浮かんでいた。

恵理とクルミが玄関を出ると、
いつものお散歩のルートに向けて進んでいく。
途中、ケヤキの並ぶ街路樹の中を通る。
300メートルくらいはあろうかという、歩道の横に、
ケヤキがたくさん立ち並んでいる。

秋のそよ風にケヤキの葉がそよそよと揺れている。
恵理は、ケヤキを見上げながら、つぶやいた。
「そろそろ、冬も真近ね」
「U^ェ^U。ワン!」
恵理は、クルミに引っ張られるようにして、歩を進めた。

ここは、歩道も比較的広く、犬の散歩のルートに
選んでいる人も多い。
何人かの、犬の散歩をしている人とすれ違った。
恵理は軽く、会釈する。
お互い、顔見知りになっているのだ。

ケヤキの街路樹の中をぬけて、左に折れて少し行くと、
戦没者の慰霊塔がある。
前方の右に慰霊塔が見えてきた。

いつもどおり何気なく、慰霊塔の横を通り過ぎようとした時、
クルミが突然、歩く方向を変えた。
慰霊塔のほうへ向かっていく、
「(・。・ ) あ!クルミどっちいくの!」
「U・ェ・U。ワン!ワン!」
クルミの様子が、なにかいつもと違う気配を感じ取っているようだった。
「クルミ!どうしたの?そっちじゃないわよ」
「U・ェ・U。ワン!ワン!」

恵理は、クルミに慰霊塔の前に引っ張られてきた。
クルミは、その辺りを鼻でなにかを探しているような素振りをした。
ある一点で、クルミの足は止まり、ここだというように吠えた。
「U・ェ・U。ワン!ワン!」

いつもと違うクルミの気配を不思議に感じ、
恵理はクルミの止まった場所に近づいた。
「(‥ )ン?なにもこれといって変わったものはないじゃない?」
「クルミ!帰るよ!」
恵理は、クルミを引っ張ろうとしたが、クルミも引っ張り返したので、
思わずしりもちをついてしまった。
「(>д<) イタッ!! 」

と、そのとき、手をついた恵理は、小さな何かに手を触れた。
それは、単なる石ころかと思ったが、
よく見ると小さなボタンのようなものだった。
小さな石ころのような形と色をしているので、誰もが、
見過ごしてしまって、気にも留めなかったのだろう。

周りの石畳の色と同じで、石と石の隙間に隠されていたため、
今まで気づかなかったのだ。
今日は、微妙に石畳の石がづれて、その小さな石ころのような形をした
ボタンが見えていたのだ。

恵理は、そっと、その小さな石ころに似せたボタンを押してみる。
「(・。・ ) あ!」
慰霊塔が、石を擦るような小さな音とともに、少し動いた。
恵理は、慰霊塔に近づいてみた。慰霊塔の下部に、隙間が開いている。
奥のほうを覗き込んでみる。
地下へ下りる階段が見えた。
「奥になにかあるのかしら?」

恵理は、しばし奥の様子をうかがって、考えた後、
「クルミ、ここで待ってて!」
「U^ェ^U。ワン!」
恵理は、狭い隙間から、慰霊塔の中へ入り、
好奇心にあおられて、その階段を下りていった。

隠された慰霊塔の秘密 第4話


© Rakuten Group, Inc.
X
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: