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おいしいコーヒーを見つける11のヒント
アルト北外灘店の珈琲教室にて。
自分好みのコーヒーを見つける11のヒント■
■はじめに
おいしいコーヒーって、どんなコーヒーなんでしょうね?
豆の産地や品質・焙煎の方法・入れ方(抽出方法)など、巷ではいろいろなことが言われていますが、自分好みのコーヒーが飲めているかどうかで満足度って随分違ってくる気がしませんか?
自分がおいしいと思えるコーヒーが飲めれば、細かいことは気にしなくていいんじゃないかなと思うんです。嗜好品の楽しみ方なんて、まずはそれぐらい簡単でいいと思うんですよね。(マニアックな楽しみは置いといて。)
そんなわけで今回は、
『自分好みのコーヒーを見つける11のヒント』をご紹介します。
コーヒー初心者にもわかりやすいように写真付きで解説していますので、まずは簡単に読んでください。ややこしいところは気にせず飛ばしていただけて結構ですからね。
ここに書かれたことを、頭の片隅になんとなくでも置いといていただくことが、おいしいコーヒーへ繋がる第一歩です。
なんだったかなと忘れてしまったときには、もう一度読み返してくださいね。
贅沢なコーヒーライフで心の満足感を味わっていただければ幸いです。
あなたにも最高の一杯が見つかりますように!
2008年2月19日 野村浩哉
【目次】
はじめに
1、お店やHPの雰囲気を見よう! ちょっと意識してみると・・・
2、お店の人と話をしよう! できたら仲良くなろう
3、豆を選ぼう! 豆の色を見よう
4、産地を知ろう! なんとな~くでも知っておこう
5、新鮮なコーヒー豆を手に入れよう!
6、粉じゃなくて、豆で買おう! 焙煎方法も大切なポイント
7、コーヒー豆の保存方法を知ろう! この4つを避ける
8、いろいろな入れ方(抽出方法)を知ろう! 一般的な入れ方とマニアな入れ方
9、器具に合った粉の粗さを知ろう!
10、粉の量を多めに使おう! たまには贅沢な飲み方を
11、水を知ろう! コーヒーには軟水がいいってホント?
おわりに
1、お店やHPの雰囲気を見よう! ちょっと意識してみると・・・
新しいお店に行くと「ここの雰囲気っていいな」「ここの人達っていいな」って感じるときありますよね。
その「なんとなく感じる」感覚、とっても大切です。
コーヒー屋も、色んなスタイルのお店が増えているわけで、その中でどれがいいかなんて、やっぱり一度試してみないと結局はわからないものです。
ただ、お店の雰囲気や内装、ホームページ、そこに集まっているお客さんたちの顔ぶれなど、「ここのお店っていいな」と感じる要素はお店全体から出ていますので、そこは意識して見逃さないほうがいいですね。
考えてもみてください。
汚いカップやガチャガチャうるさい場所で味わうコーヒーが、たとえ最高の味だったとしても、少し残念な気持ちになってしまいませんか。
僕が好きなコーヒー屋さんの中には、コーヒーの味は全然ダメだけど、雰囲気で許せてしまう店もよくあります(笑)
もちろん雰囲気だけじゃなくて、味がよければ言うことないんですけどね^^
味はもちろん大切ですが、たまには視点を変えて、お店の造り、雰囲気など選んでみるのもいいかなと思います。
そこのお店にしかないキラリと光るものを見つけたときには、きっと満足度は上がりますから。
アルト北外灘店はこんな感じで頑張って営業中!
2、お店の人と話をしよう! できたら仲良くなろう
お店をやっているオーナーさんや店長さん、そこで働いているスタッフ、そこのお店に関係している人達みんなが素敵なら、そのお店の素敵度、期待度はググッと上がりますよね!
そのお店にはそのお店にしかないストーリーがあります。
なんでこのお店を始めたのか、きっかけはなんだったのか、なぜこの場所なのか、どんな思いで仕事をしているのか・・・などなど、いろいろな話を聞いてみると思わぬところで面白い話が聞けるかもしれませんよ。
お店の人たちと話ができれば、そこのお店の良さもより深く分かるし、安心できて信頼できるお店なのかもよくわかります。顔を覚えてもらって常連さんになると、何かと得なことがあるかもしれないですし^^
僕的にはこのような人間的な繋がりを持つことが一番大切なことで、むしろ、他のことなんてどこまで行ってもサブ的なものだと思ってしまうぐらいです。
決して言いすぎではないかと思います。
・・・が、ちょっと言いすぎたかも(汗)
そろそろコーヒーの話にも入っていかないと怒られそうなので、次章からお話していきますね^^
少し専門的な話になってくるかもしれませんが、ややこしいところは気にせず読み飛ばしてください。
3、豆を選ぼう! 豆の色を見よう
コーヒー屋さんには、いろいろな種類のコーヒー豆がありますよね。
実はこのコーヒー豆を見ただけで、味の傾向を知ることができるんです!
見比べてもらえればわかりますが、コーヒー豆の色には黒に近いこげ茶色から、こげ茶色、茶色、薄い茶色、シナモン色などいろんな色があって、
すごく簡単に言ってしまえば、黒に近いこげ茶色のほうが苦くて、薄い茶色やシナモン色など、色が薄くなっていくほど味に酸味が出てくる傾向があるんです。
詳しくは、
コーヒーの焙煎?焙煎(ロースト)とは
(←豆の写真もあるよ)
まずは、これだけでも知っておくと、酸味のあるコーヒーが飲みたいなと思ったときには色が薄めのコーヒー豆、今日は苦めのコーヒーが飲みたいなと思ったときにはこげ茶色や黒に近い色のコーヒー豆など、自分の気分によってもコーヒーを選ぶことができますよね。
豆を選ぶときには、まずはコーヒー豆の色の濃淡を見てください。
黒に近いコーヒー豆になってくると、油が出てきて表面がテカテカに光っているものもあるんですよ。
4、産地を知ろう! なんとな~くでも知っておこう
「なんで同じ産地のコーヒーを飲んでいるのに、味が違うんだろう?」
そんなこと思ったことありませんか?
まずは下記をご覧下さい。
ブラジル:苦味と酸味のバランスがよく、柔らかな口当たり
コロンビア:まろやかな酸味とコク、マイルドコーヒーの代表
モカ:良質の酸味と豊かな香り、モカフレーバー
グァテマラ:上質な酸味、すっきりとした口当りと香り、コク
タンザニア(キリマンジャロ):キレのある酸味、コク、豊かな香り
マンデリン:奥深い苦味、濃厚なコク
雲南:上品でマイルド、繊細な香味、飲みやすさ
ロブスタ:酸味はほとんどなく、苦味とコク、独特な風味
世界の有名珈琲生産国紹介
結局のところ、コーヒーもワインと同じで、同じ地域で栽培された豆であっても、農園によって品種、品質、精製方法が変わってきますし、農作物だから同じレベルの豆でも毎年出来、不出来の違いがあるんです。
また、焙煎の方法や、焙煎の度合い(深く焼くか浅く焼くか)、入れ方によっても全く違う味わいにもなるわけです。
なので、産地などの特徴は、あくまでもこんな傾向があるということを知った上で、ひとつの目安にしておくことが大切です。
「なんでいつも同じ産地のコーヒーを飲んでいるのに、違う味なんだろう・・・」
というのは、つまりはこういうことが原因だったんですよね。
焙煎をもう少し詳しく
5、新鮮なコーヒー豆を手に入れよう! コーヒーも鮮度が大切
「コーヒーが新鮮??」
コーヒーは生鮮食品にも例えられるほど鮮度が大切なのは、最近では良く聞くようになりましたね。
「じゃあ、新鮮な豆ってどうやって選べばいいの?」って話なんですが、
それはその場で焼いてくれる(焙煎してくれる)お店なら、焼き立てでコーヒー豆の鮮度には間違いないナシですよね。
焙煎機を店内に置いてその場で焙煎してくれるお店でもいいでしょうし、そのコーヒー豆がいつ焙煎されたのかをお店の人に確認してみるのも大切です。
新鮮なコーヒー豆というのは、お湯をかけたときに「ムクムクッ」とハンバーグ状に膨らんできます。膨らまないコーヒー豆や、陥没してしまうコーヒー豆というのは、古いコーヒー豆なのか、もしくは焙煎が悪いコーヒー豆だったことが考えられますので、気をつけてくださいね。
1回目にお湯を注いだときの膨らみ写真。ハンバーグみたいに膨らんでくる
(詳しくは、7章の【いろいろな入れ方】を参照)
2回目にお湯を注いだときにはこんな感じで「プクプクッ」となってくる
(注:1回目と2回目の膨らみ(泡の出方)には違いがあります)
「新鮮だなんて、当たり前でしょ」って思っている、そこのあなた!
そんなあなたには、もうひとつ大切なことを…
『新鮮なコーヒー豆が大切』という意味は、ただ焙煎したてで焼き立てであればいいということではありません。
例えば、お米の炊き方でも、火加減や水加減を間違えてしまうと、ビチャビチャのお米や芯残りのお米になってしまいますよね。それと同じで、つまり、コーヒーも焼き加減(焙煎の方法)が悪ければ、新鮮なコーヒー豆だったとしても美味しくはなりません。
焙煎には適切な火加減や時間などがあるのですが、焙煎の話をここでするとあまりに長くなってしまうので、詳しく知りたい方は下記のページも参照してください。
焼き立て新鮮のコーヒー豆を購入したのに美味しくなかった理由(※←このページの「豆の確認、焼く段階」参照)
6、粉じゃなくて、豆で買おう! 焙煎方法も大切なポイント
コーヒーは、いつまでも飲めるものだと思っていませんか?
コーヒーは、保存料、添加物を一切使ってない自然食品なので、当たり前ですが空気に触れると酸化して劣化していきます。
コーヒー豆は見た目にはわかりにくいですが、徐々に劣化してくものです。(他の食品でいうと、腐るということ)
空気に触れることによって酸化していくわけですが、では、豆の状態と粉の状態で空気に触れる面積を比べてみると、粉の状態のほうが空気に触れる表面積が大きくなってしまいます。
つまり、おいしく飲める期間でいえば、豆の状態のほうが長く、粉の状態のほうが短くなってしまうということです。
おいしく飲める大体の目安は、焙煎がされて茶色のコーヒー豆になってから、
『粉であれば2~3週間、豆のままであれば1~2ヶ月ぐらい』と覚えておいてください。
ただ、ひとつ注意点。
このおいしく飲める期間というのは、生豆をどんな方法で焙煎しているのかによっても味の持ちが良かったり悪かったりするので注意が必要です。
お店によっては美味しく飲める期間が短くなる場合もあるので気をつけてください。
どれぐらいの期間おいしく飲めるのかは、購入したお店に確認しておくのがいいでしょう。そして、あまりにも「新鮮!焼き立て!」ばかりを謳うお店は、はっきり言って信用しないほうがいいです。
それはなぜかといえば、焙煎が適切に行えないせいで、
『豆が悪くなりやすい=だから早く飲まないといけない=コーヒーは鮮度が大切』
とおかしな謳いかたをしているお店もありますので。
味の持ちがひどく短い、すぐに香りがなくなる、すぐに膨らまなくなる場合は焙煎が悪いだけですので、勘違いのないように気を付けましょう。
電気でパッと焼いてしまうような全自動焙煎機はこうなりやすい傾向がありますが、
「どんな方法で焙煎をしているか」「ここの焙煎は良いのか悪いのか」については、判断が少し難しいかもしれませんので、焙煎に関してもう少し詳し知りたい方は、下記のページもご覧下さい。
焙煎をしてみよう!焙煎工程ってこんな感じ
7、コーヒー豆の保存方法を知ろう! この4つを避ける
コーヒー豆が酸化し劣化していくことは、6章【粉じゃなくて、豆で買おう!】でもお話しましたね。
コーヒー豆をうまく保存するためには、温度、湿度、空気、光の4つを遮断することが大切です。この4つを遮断するためには、タッパーやジップロック、密閉容器、瓶などに入れて、冷蔵庫で保存すること(長期保存なら冷凍庫でもOK!)
保存瓶とアルトで使っているコーヒー豆袋(アルトの袋は保存瓶と同じような役割ができる)
コーヒー豆を大目に買ってしまったときなどは、小分けにして、日常使う分は冷蔵庫、長期保存は冷凍庫など分けていれてあげてもいいですね。
コーヒーをおいしく飲むためには、家庭での保存方法にもちょっとだけ気を使ってみると、コーヒーライフも随分よくなりますよ。
コーヒー豆の保存瓶などは安くて便利なものなので、コーヒー好きの方はぜひ購入されることをお勧めします。
コーヒー豆の保存瓶
※追記 「真空パックでピッチピチ…だから安心!」って思っていませんか?
コーヒーの香りはどこから来るのでしょうか…?
はい、コーヒー豆(粉)自体が香りを出しているわけです。
では、そのコーヒーの香りを、目に見えないガスだとイメージしてください。
そのガス(香り)は焙煎をされたことによって出てくるものなので、焙煎したての新鮮なコーヒー豆というのは、豆からガスをたくさん出しているわけです。
では、ここで問題。
「焼きたて新鮮なコーヒー豆がガス(香り)をたくさん出しているのだとしたら、
本当にピっチピチの真空パックを作ることできるでしょうか?」
つまり、
豆自身がガスを出し続けているわけですから、パック詰めするときのその瞬間の空気をいくらきれいに抜いたとしても、豆自身がガスを出し続けている限りは、袋はピチピチにはならず時間の経過と共に必ず膨らんでくるものです。
ガスの出る量は、豆の状態と粉の状態を比べると、粉のほうがガスを多く出しています。それはコーヒー豆の表面積の違いで、粉のほうが表面積は大きくなってしまうためであり、粉にしたときには、コーヒー豆の中に含まれる70%ほどの香りが一気に放出されるともいわれています。
「じゃあ、どうやってピチピチの真空パックを作っているのか?」
それはつまり、ガスを意図的に抜いてあげなければいけないということです。
焙煎後に意図的に豆を放置してガスを抜き、ガスがある程度出切ったあとで真空パックにするわけです。
決して真空パックが悪いと言うつもりはありませんので勘違いしてほしくないのですが、ただ、新鮮なコーヒー豆が昔よりも手軽に手に入るようになってきたこの時代に、それも特別な遠隔地にいるわけではない人たちが、本当に真空パックでなければいけない理由を購入者自身がもう一度考える必要があると思うんです。
8、いろいろな入れ方(抽出方法)を知ろう! 一般的な入れ方とマニアな入れ方
コーヒーにはいろいろな入れ方(抽出方法)があるのはご存知でしょうか?
「あるのは知っているけど、どれが一番いい入れ方なのか…」
これはよく聞かれますが、
この質問がそもそも少し勘違いしてしまっている原因でもあります。
例えば、この器具。
『コーヒープレス』や『フレンチプレス』と呼ばれているコーヒーの器具です(お茶用の認識が高い方もいるかもしれませんが…)が、この器具を使ってコーヒーを入れると、コーヒー液の中には必ず微粉(カップの底に残ってしまう粉)が出てしまいます。
これは金属のフィルターでコーヒー粉を濾すので微粉が出てしまうわけです。
ということは、微粉が混ざっているコーヒーが嫌いな人にとっては、この器具は使えないということになります。だって、金属のフィルターで濾している限り、必ず微粉も出てしまいますから。(もし微粉を取り除くなら、布か紙など微粉を通さないものでもう一度濾すしかありません)
コーヒーの入れ方(抽出方法)というものは世の中にはいろいろあるにはあるのですが、それはどんなコーヒー液を作りたいかによって、どんな入れ方をするのかも全て違ってくるわけです。
抽出方法は、あくまでもコーヒー液を作るときのプロセスの一部なので、どれが一番いい方法なのかは一概には決められません。「どれが一番正しい入れ方なの?」ということよりも、「どの方法をどう使うべきか?」を考えるのが大切なわけですね。
ここでも、いくつか紹介しておきますのでご覧下さい。
コーヒー抽出・淹れ方の歴史
・コーヒーメーカーでおしいく作る9つのコツ
・松屋式ドリップ(透明感もあって、十分な強さも出せるオススメの抽出方法です)
・コーヒー淹れ方のコツ カリタ式(三つ穴式)ドリップ
・カリタドリッパーで松屋式ドリップをしよう!(カリタドリッパーで松屋式理論を使って抽出)
コーヒーは熱いうちに飲まないとダメ?
9、器具に合った粉の粗さを知ろう!
細挽き、中挽き、粗挽きって聞いたことありますか?
これは、コーヒー豆を粉にした時の粒の大きさのことを言っているわけですが、
じゃあ、細挽きから、中挽き、粗挽きで変えていくと味はどう変わってくるのかというと、それが想像以上に変わってしまいます。
左:細挽き 中:中挽き 右:粗挽き
簡単にいうと、
細挽きは粒が小さくて細かいので味が出やすい。
逆に、粗挽きは粒が大きいので味が出にくい。
「それなら、細挽きのほうがいいんじゃないの?」
と安易に考えるのは、ちょっと待ってください…
細挽きというのは、確かに味は出やすいのですが、それはいい味も悪い味も出やすいということで、逆に、粗挽きというのは、全体的に味が出にくいので、いい味も悪い味も出にくいということです。
まずは、粉の粗さを変化させたときにはこのような味の傾向があるということを覚えておいて、その上で、使う器具に合った粉の粗さにしてあげるということ大切です。
器具によっては、使えない挽き方もありますので注意してくださいね。(例えば、ペーパーフィルターで細挽きの粉を使おうとしても、粉が細かすぎるとフィルターの目が詰まって抽出できなくなってしまいます。味としては雑みが多く、飲みにくいコーヒーになります)
器具にあった挽き方(粉の粒度)は下記に紹介しますので、目安にしてくださいね。
エスプレッソ:細挽き、または、極細挽き
ベトナムフィルター:細挽き
コーヒーメーカー:中挽き、または中細挽き
ペーパーフィルター:中挽き、または中細挽き
サイフォン:中挽き、または中細挽き
ネルフィルター:中挽き、または中細挽き
コーヒープレス(フレンチプレス):中粗挽き、または粗挽き
パーコレータ:中粗挽き、または粗挽き
ボイリング:中粗挽き、または粗挽き
10、粉の量を多めに使おう! たまには贅沢な飲み方をしてみませんか?
「コーヒー豆は粗く挽いて、量を多く使うほうがおいしくなる」
こんな話を聞いたことがあるでしょうか?
コーヒー豆を粗く挽いたときの味の特徴は、9章【器具に合った粉の粗さを知ろう!】でもお話しましたが、では、粉の量を変えると味はどう変化していくのでしょうか。
時間のあるときは、こんな実験を試してみると面白いと思いますよ。
抽出したコーヒー液
松屋式ドリップ:30gの粗挽きで300cc抽出したものを、3分割したものです。
Aのほうが濃く、Cになっていくほど色が薄くなっているのがわかりますね。
本来、お店などで出されるコーヒーは、このA、B、Cのコーヒー液が混ざっているものが一般的です。
では、A、B、Cの液体では味はどう変化していくのかというと、Aの方は濃く力のあるクリーンな液体で、Cに近づけば近づくほど薄く出がらしのような雑な味になっていきます。そして、Cになると豆によっては舌を刺すようなエグミや違和感があります。
つまり、コーヒーの成分というのは前半に濃くて良い成分が出てきやすく、後半になるにつれて薄く雑味のある成分になっていく傾向があるということです。(豆の品質や焙煎とも密接に関係していますが)
なので、「コーヒー豆は粗く挽いて、量を多く使うほうがおいしくなる」というのは、粗挽きで味が出にくくなってしまう(薄くなってしまう)欠点部分を、粉の量を多く使うことによってカバーしてあげることを狙った入れ方なわけです。つまりは応用編ですね。
そして、ドリップの抽出技術というものは、前半部分にどれだけ濃くてクリーンな液体を作れるかどうかにかかっているともいえるものなんです。
この前半に出てきやすい成分の傾向に、もっと応用を加えているのが8章【いろいろな入れ方(抽出方法)を知ろう!】でも紹介した
松屋式ドリップの抽出理論
です。
それまで僕の中では、「透明感のある味」と「コクのある味」というのは相反するものだとばかり思っていましたが、この
松屋式ドリップ
に出会ってからは、その味は共存できるものだとわかりました。
ちょっと贅沢なコーヒーになってしまうかもしれませんが、たまにはそんな楽しみ方をされてみるのもいいんじゃないかと思います。ぜひオススメしたいドリップのひとつです。
松屋式ドリップを見る
11、水を知ろう! コーヒーには軟水がいいってホント?
こんなことをよく言いますが、そんなことに特別こだわる必要はありません。
あえて言うなら、軟らかすぎる水や、硬すぎる水などの両極端の水、おかしな違和感のある味、匂いが付いている水など、飲んで不味いと感じる水は避けたほうがいいという程度です。それだけで十分に良いコーヒーはできます。
例えば、上海アルト北外灘店で使っている水は、どちらかといえば硬水に近い水になります。
それはなぜかといえば、中国では浄水器を通す前の水はほとんど硬水なので、その水を、
浄水器
に通して、あとは、炭(備長炭や竹炭)、
麦飯石
、セラミックなどを入れて調整しているだけなので、水の成分の質が変わるものではないためです。
もちろん、使うコーヒー豆との相性は必ずあるので、その辺は考える余地はありますが、コーヒーが不味くなる問題は、焙煎が悪かったり、悪い豆が混入していたり、入れ方が悪い場合のほうが多いんです。
それぞれのお店では、そのお店で使っている水の味で美味しいコーヒーができるように調整されているはずなので、どんなお水を使ったらいいか迷う方はコーヒー豆を購入したお店に聞いてみるといいでしょうね。
美味しさのレベルにもよりますが、よほどのことが無い限り、お水でコーヒーが不味くなることはほとんどありません。不味いというレベルになるのは、コーヒー豆が悪いせいだと思います。
・中国の水でコーヒーの飲み比べをしよう!1
・中国の水でコーヒーの飲み比べをしよう!2
※細かい話ですが…
「どんなコーヒー液を作りたいか?」によって、「どんな水を使うのか?」も変わってきます。
それは水だけの話ではなく、どんな豆を選ぶのか、どんな焙煎方法にするのか、どんな抽出方法にするのかなどに関係しています。
最後のコーヒー液を作るまでには辿っていくプロセスがいくつもあり、そのプロセス全てが密接に関係して最高のコーヒー液ができるわけなので、どこかのプロセスの一部分だけを取り出して、良い悪いなどの判断はできません。
そのプロセスが良いか悪いかの判断は、「どんなコーヒーを作りたいのか?」と相対的に見ていかなければいけません。
コーヒーの味はトータル的なバランスで作るもの(水もコーヒーの味を作る要素のひとつ)なので、もしその水しか選べないという場合なら、他の要素(豆の種類や焙煎度合いなど)を変えてあげることによって、できるだけ作りたい味に近づけることができるものなんです。
ただ、コーヒー屋として使いやすい理由のひとつがこのお水だとも言えます。
「水質が悪い=だから美味しくならない」
と説明すれば、ほとんどのお客さんはほぼすんなり納得してくれます。
たとえそれが『焙煎がヘタクソなのが原因』だったとしても、なんとなく納得できてしまうほどに、それなりの説得力で伝わってしまうのがこの水なんです。
コーヒーの味を作る上では、豆の産地や焙煎の方法というのがもっとも大きな要素になってきます。では、その大きな要素だけでほかの小さな要素は切り捨ててもいいかといえば決してそうではなくて、全てのプロセスが密接に関係し、全てのバランスの上で最高のコーヒーは成り立っているものだということなんですね。
最近では、スペシャリティーコーヒーなどが流行っているせいか、焙煎や抽出が軽んじられることもあるのは、ちょっと行き過ぎた安易な考えのような気がします。
■おわりに
『常識を疑え』
コーヒーと出会い、今までの10年間で学んできたことは常識を疑うことだったのかもしれません。
今の世の中は、間違っていることがさも正しいことかのように語られることがあります。良い意味でも悪い意味でも疑うことを知らなかった僕は、コーヒーことに6年間ほど悩み続けていました。
本やインターネットで勉強しても、うまくいかない…
本や雑誌などに載っているようなコーヒーの専門家、プロに聞きに行っても、
「奥が深いから」「何年も修行しないと…」とはぐらかされるばかり。
あるコーヒー店では、話には感動したもののコーヒーを飲んでみたらなんだかパッとせず、でも「有名な専門家が言うことだから、おかしいのは自分の味覚だろう…」と、自分の味覚が未熟なせいだと思っていたこともありました。
肩書きだけは老舗コーヒー店店長として仕事をしていた人間が、どれだけコーヒーのことを理解していたのかといえば、本やインターネットから得た知識を鵜呑みにし、その知識というのも実際には使い物にならない中身がスカスカの知識ばかりでした。
「コーヒーは奥が深い職人の世界、ここまでやってもわからないのか…」
コーヒーのことを調べれば調べるほどわからなくなり、コーヒーを見るのも嫌になってしまった時期もありました。そんな出口のない迷路に悩まされていたときに出会ったのが今の師匠と呼べるN氏でした。
そして、この出会いをきっかけに、僕の中でそれまでバラバラだったコーヒーの知識が一本の線で繋がり、目の前が明るくなったような感覚を受けました。
N氏に対して何がそんなに感動したのか…、それはとても単純なことで、
わらかないことは、目の前で実践して飲ませて証明してくれること。ただ、それだけのことです。
単純すぎて拍子抜けしてしまう話かもしれませんが、目の前で実験して見せてくれるか、見せてくれないかには大きな違いがあります。話だけではわからないようなコーヒーの味も、目の前のコーヒーを飲み比べてみれば、小難しい味の表現など知らなくてもどちらが好みかは誰でも選べるわけです。
そもそもコーヒーは、それぐらい簡単でわかりやすいものだったはずなんですが、いつの間にかコーヒーを学んでいくうちに頭でっかちになってしまい、本当に大切なコーヒーの味から離れてしまっていました。
コーヒーはただの飲み物です。それ以上でもそれ以下でもありません。飲み物としての美味しさがある上で、初めてこだわりなどの付加価値的な楽しみ方も生きてくるものだと思います。
でも今のコーヒーはどうでしょうか。味がわかりにくいことをいいことに、こだわりやウンチクだけが先行し、味は二の次でも許される。どこか辻褄が合わない違和感を誰もが抱きつつも、「奥が深い世界だから…」と言えばなんとなく納得せざるを得ない雰囲気さえ感じてしまいます。
こだわりが悪いとは言いません。でも、決してそれが独りよがりの押し付けになってはいけませんし、こだわりやウンチクをコーヒーの本質的な味から切り離して語られるのは間違いの元です。
味ありきのこだわりやウンチクならまだしも、味がそっちのけにされたこだわりやウンチクは、そもそもの考え方がおかしいのです。でも、残念ながらおかしいから止めてほしいと言っても、これは決して無くなるものではありません。
でも、だからこそ、自分が判断できる基準をしっかり持ち、コーヒーを飲んで見極めていくことからは離れてはいけないんです。
コーヒーの味が判断基準になってさえいれば大きく間違うことはありません。
コーヒーは飲めばわかるものなので、それを飲んでみて好きか嫌いかの好みで判断すればいいんです。まずはそれぐらい簡単なものでいいんです。
そして、良いコーヒーをいろいろ飲んでいくうちに、コーヒーには好み以上の美味しさがあることにもきっと気付いてきます。そうなってきたときには、意識しなくても自然に美味しいものが選べるようになってくるものです。
今思い返してみれば、迷って迷って迷い倒してコーヒーが嫌いになったこともあった6年間は決して無駄なものではありませんでした。この悩み苦しんできた期間があったからこそ、コーヒーというものをもう一度見つめ直すことができたような気がします。
美味しいものとの出会いは格別です。
自分好みの美味しさを見つけて、ただニンマリしているだけで、その時間は特別なものになります。そして、きっとその瞬間は心も身体も内から歓んでいると思うんです。
最高の一杯に出会えたときの歓びが、人に何を与えてくれて、その歓びがどうやって伝染していくのか。
コーヒーを通じて、人との繋がりの大切さがなんとなくわかるようになってきた気がします。だからこそ、もっと美味しいコーヒーを多くの人にも知ってもらいたいし、飲んでもらいたいと心から思うんです。
美味しいコーヒーが飲みたいなと思ったときには、ぜひ読み直してください。
美味しいコーヒーを探している友人には、ぜひ教えてあげてください。
心と身体から歓びが湧き上がるようなコーヒーを、これからもあなたと一緒に見つけていきたいと思います。
あなたにも最高の一杯が見つかりますように。
最後までお読み頂きありがとうございました。
■野村浩哉プロフィール
1978年愛知県生 現在は中国在住
70年間お客様に愛され続けている大阪の老舗珈琲専門店での修行を終え、上海にて独立。老舗珈琲店では前例無き最年少にもかかわらず支店店長を務め、老舗珈琲店のマスターとしてTVにも出演
今までに500店舗以上の珈琲店を調査するなど、独自に研究を重ねたコーヒーを、お店や個人宅などに提供
2003年の上海旅行で上海のコーヒー事情を知り、愕然・・・。
「上海でも、おいしいコーヒーを飲んでほしい!」そんな思いから同年上海へ移住
2004年4月 「上海愛儂蘭貿易有限公司」設立
同年6月 「alt-coffee.com(アルトコーヒー)」にてインターネット販売開始
2006年12月 「工場」兼「実験室」をコンセプトに北外灘店オープン
北外灘店では松屋式ドリップという独特の抽出方法を推奨
現在は、珈琲教室やさまざまなパーティー・イベントへの珈琲提供、店舗へのアドバイザーなども務める中、時間のある限り自らが電動付き自転車にまたがりおいしいコーヒーを伝道中
⇒
上海にうまいコーヒー広めるぞっ!楽天ブログトップへ
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