育てているのは未来です

育てているのは未来です

浦中くん


 子どもですから刀に興味もなく、薄暗い仕事場で黙々と仕事をしている姿だけが印象に残っていますが、家の中に重要文化財になりそうな重厚な鎧兜が飾ってあったのを思い出します。大人になってから、この浦中六十郎さんが研師の中ではかなり著名な人で、宇和島市の伊達博物館に展示されている名刀や神社に奉納されている刀の中にも、この人の手で蘇ったものが少ないことを知りました。
 同級生は3男であったため後を継がず大阪で大手電機メーカーの機械工になりましたが、若いころには技能オリンピックに出場するなどお父さんの血を引いた名工でした。刀剣研師は長兄の方が継ぎましたが不幸にも若くして亡くなられたため、その後を継ぐ方はいなかったようです。
 なんのきっかけだったか、十代の終りくらいに朴の木で作った白木の木刀を頂いた事がありました。ただの木剣ではなく刀身が木である以外は本物の白鞘の刀と同じつくりで、鞘に収めるとその継ぎ目が分からなくなるくらい精密なものでした。大事にしていましたが、貧乏をしている時にお世話になった方にお礼代わりに差し上げて今は手元にありません。
 思い起こせば、今に至るまでに本当にたくさんの方々に助けていただいたり目をかけていただいたりしていたことばかりです。残りの人生、日々感謝して生きていきたいものだと思います。


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