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まき割りをしているのはタイヨウ先生。汗びっしょりで、あたまから湯気がでています。あたまがピカピカ光っているので、子供らはみんなタイヨウ先生って呼んでいます。
初雪が降りました。雪国の村の小学校は、まき運びから一日が始まります。
丸いズンドウ型のまきストーブ。
いよいよ、ボクの出番です。
休み時間になると、みんなボクのまわりにやってきます。手をかざしたり、背中をあっためたり。
タイヨウ先生がこまめにまきを足し、燃えぐあいをみてくれます。
ボク、役に立っているな。
なんだかうれしい。
ボクって、なくてはならないもの。
席替えがありました。黒板にむかって、ぐるりと「コ」の字で、ボクを囲むように机がならんでいます。
かきとりテストで、できる子の順番から席がきまりました。
正面の列はできる子。
ろうか側の列はふつうの子。
窓ぎわの列はイマイチの子。
テストの点数で席が決められるなんて、みんなもたいへんだな。さびしいきもちの子も、きっといるだろうな。
ボクは、一人一人の顔をおぼえていきました。
正面の列の子らが、えらそうに、ちょうしに乗っているように見えます。
かわいそうなのは、窓ぎわの子らです。すきま風がスースー入ってくるから、寒くてガタガタふるえているんじゃないかって、しんぱい症のボクは、ハラハラします。
朝、タイヨウ先生が大きなやかんに水をなみなみ入れて、ボクの上にかけていきます。
じゅぎょうの間にお湯はしゅんしゅんわいて、やかんのふたは、わざとあけておきます。湯気が教室をじゅんぐりあっためてくれます。それで、みんなのひふはツヤツヤ、ピッカピカ。
タイヨウ先生がにこにこ顔でおっしゃいました。
「あしたは給食が休みです。
みんな、おにぎりを持ってきてください。
みそ汁は、まきストーブで作ります。はしを忘れずに持ってくるように。ダシと、みそは、先生がじゅんびします。みんなは、おわんにみそ汁の具を、お母さんに入れてもらってきてください」
はーい!
次の朝、ボクの上に大きなナベがかけられました。
水がたっぷりはってあり、小さく切った昆布が多めに入っています。
昆布ダシがぐつぐつ煮えてきました。
タイヨウ先生がナベのふたをあけて、かつおぶしの大袋をどさっと入れました。
うわあー いいにおいがするー
お昼のチャイムが鳴りました。
みんなが列にならんで、おわんの具をじゅんじゅんに入れていきます。
だいこん、にんじん、さつまいも、かぶ、はくさい、とうふ、あぶらあげ、豆もやし、ねぎ。
タイヨウ先生は、ボクの近くにいすを持ってきてすわりました。
おたまで、ざぶんざぶん、かきまぜます。
みそが入りました。
味見をされると、
「よーし。できた!」
うわあー
列にならび、タイヨウ先生が一人一人のおわんに、よそってくれます。
「いただきます!」
いただきまーす!
「みんなー、おかわりしていいぞー」
はーい。
うん、うん。
おいしいね。
うん、おいしいー。
コンブがとっろとろ!
カブがとっろとろ!
なんて、うまくできたんだろうー。
うちでは食べたことがない味がするな。ほんとだね、みそ汁ってこんなにおいしいんだね。タイヨウ先生なかなかやるな。
じょう気でふっくらしているみんなの顔。
まんぞくげです。
どの子も、きもちよさそう。
たべているときの子供らってかわいいなー。
それぞれ、じぶんの席でおとなしく食べている。
もう、どの席もまんべんなくあったかい。
ボクは、ほこらしいきもちになりました。
2017/01/10
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