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2006.11.29
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カテゴリ: 邦書

 推理作家鮎川哲也が本格推理短編一般公募した結果出版された短編集第11弾。12編収録されている。残りは こちら


粗筋

「イエス/NO」:有賀南
 風魔京太郎という有名な探偵の過去の話。
 大学時代、ある女性を捕まえ、昨夜何していた、どこにいたなど、勝手にホームズ顔負けの推理をした後、去っていく。
 しかし、その推理は根本から間違っていた。
 ……これ、本格推理? と首を捻りたくなる短編。探偵役の推理ゲームで終わる。こちらは何らかの犯罪が起こると思っていたので、訳が分からぬまま読み進んでいる内に終わってしまった。

「屈折の殺意」:佐久間憲司
 ある工場が火災に遭う。中から女性社員の死体が発見された。当初は失火事件と思われたが、死体は焼死ではなく、扼殺だった。警察は殺人事件としての捜査を開始する。
 工場と中の機械には保険がかけられていた。二人の保険調査員が事件を調べる。
 現場の写真を調べたところ、失火当時に工場内にあった機械は、保険がかけられていたものではなく、旧式で屑鉄程度の価値しかないものだった。工場の社長と、機械を製造した会社の社長が疑われる。
 しかし出火当時、双方の社長とも国外にいた……。
 ……社長は太陽光とレンズを使う発火装置を残して日本を発ったのである。希望の日に出火事件が起こるよう、天気予報を何度も確認して日本を発った。
 女性社員は社長の子を妊娠していて、結婚を迫っていた。社長は工場と共に死体を処理することにしたのだ。
 出火が発生した日の前後は天気が悪かった。しかし、一日だけ天気が良かった。犯人である二人の社長はその日を狙って出火装置を設置して、日本を発った。問題は、天気予報が変わること。数日前の天気予報が正確とは限らない。数日前に一日晴れるとされた日が一転して雨天になったり、曇りの日になっていたらどうするのか。帰国して工場がそっくりそのまま残っていたらどうするつもりだったのか。工場を焼き払うだけだったら後日に延ばすこともできただろうが、女性社員の死体があるのでそれも無理。
 なぜ社長は工場の処分と女性社員の処分を一緒にしようとしたのか。個別にやっていれば自由度が上がっただろうから、失敗の可能性も低かった筈である。
 本編もこれ本格推理? と首を捻りたくなるほど地味な作品。レンズの出火装置もこれといったトリックではなく(むしろ時代遅れ)、どこが評価されたのか理解し難い。

「黄金の指」:目羅晶男
 ある大学の教授が、奇跡を起こすある超能力者がインチキだと告発する。テレビ番組に出演し、そのインチキを暴こうとするが、失敗し、大恥を掻く。
 その大学の教授は、学生らと共に新幹線に乗っていた。そんなところに、超能力者が突然現れる。教授はイカサマ野郎とののしりながら後を追う。超能力者はトイレに入った。ドアを開けると超能力者は衣類を残したまま跡形もなく消えていた……。
 ……新幹線のグリーン車が貸し切りになっていて、客は勿論、売り子まで雇われていたというトリックが使われたそうだが、何が何だか分からなかった。

「JKI物語」:司直
 大学教授が殺される。ダイイングメッセージとして「JKI」の文字を残していた。
 事件を依頼された探偵は、妹と共に事件の謎に挑む……。
 ……ダイイングメッセージは「JKI」ではなく、漢字の「水田」だった。「JK」に見える「水」の字を書き終え、「田」の字を書こうとしたところで力尽きたのである。
 教授は水田という助手の論文を自分の名で発表したため、恨まれていた。
 ダイイングメッセージのトリックはどれも作者の自分勝手な解決法が多い。本作品もそれに漏れず、真相を聞かされても「あ、そう」くらいの感想しかない。
 兄妹の探偵コンビというのは面白いが、50枚以下の短編では充分書き切れないのが残念といえば残念。ただ、兄が作家でその父親が警察官という設定はエラリー・クイーンそっくり。警察が家族とはいえ部外者に事件の内容を漏らすとは思えず、非現実的で興醒め。

「完全無穴の密室」:飛鳥悟
 若い女性が密室の中で死んだ。自殺と思われたが、その直前に洗濯機で洗濯していたのが判明する。自殺しようと考えている者が洗濯などする訳ない。殺人の可能性が高い。しかし、密室はどうやって作られたのか。
 被害者の家族は複雑な問題を抱えていた。被害者の父親は妾を囲み、子まで生ませた。被害者の母が死んだ後、その父親は妾と結婚したのである。被害者は妾の子を姉と呼ぶことになったが、仲が悪く、家を出る羽目になる。
 犯人は誰なのか。この事件は同日に近所で起こった轢き逃げ事件と関係しているのか?
 ……犯人は被害者の姉とその夫。夫は被害者と浮気していたのだ。浮気の帰りの最中、車で人を轢いてしまった。夫は轢き逃げする。浮気相手を家に送ると、自宅に帰る。
 夫は妻に事件のことを話してしまう。夫が逮捕されたら父親の会社を引き継げなくなる、と恐れた妻は、事件を隠滅することにした。目撃者である妹を殺すことにする。密室で自殺したように見せかけることにした。
 姉は妹を殺した後、窓から外に出た、窓のロックに紐を掛け、洗濯機と繋げた。犯行時頃に洗濯機の音がしたのは、被害者が使っていたからではなく、犯人が証拠隠滅に使っていたのだ。脱水の際に紐が引っ張られ、ロックがかかるようにと。トリックに使った紐は、妹の遺品として洗濯機ごと引き取って回収するつもりでいた。そのことから犯人ではないかと思われたのである。
 紐がそんなに上手い具合に引っ張られるだろうか。紐が外れたり、紐が切れたりすることは考えなかったのか。
 夫が犯した轢き逃げの事件をもみ消すために、血が繋がっていないとはいえ妹をあっさり殺す姉の心境は理解し難い。また、仲の悪い姉を家に入れる妹もどうか。
 本編の素人探偵は、密室における「盲点の穴」など下らぬ論理を偉そうにほざく。当初は、ロックにかかった紐は換気扇に絡まっていると推理して現場に行き、その推理が間違っていると知って大恥を掻く。読んでいて馬鹿馬鹿しかった。探偵が魅力に欠けると小説そのものの魅力も半減する。

「さわがしい兇器」:矢島麟太郎
 名古屋オリンピックで使う公式ウェアの試験が行われていた。被験者にウェアの試作品を着させ、エアコンルームで寒さや雨にさらし、被験者の身体状態をモニタするのである。
 そんなある日、エアコンルームの天井にある降雨装置を吊っているワイヤーが切れ、装置が落下した。その真下にいた被験者は圧死してしまう。
 エアコンルームは密室で、被験者以外は誰もいなかった。殺されたなら、犯人はどうやって殺されたのか……。
 ……犯人は試験をモニタしていた一人。装置が落下した際、直後に「救急車を呼べ」の代わりに「警察を呼べ」と叫んでしまった為、犯人として浮かび上がった。
 犯人は前もってワイヤーを切っておき、氷で固定した。試験は零下から温度を上げていくので、氷は徐々に溶け、装置は落下する。犯人は落下時までアリバイを作れる訳である。
 氷は極寒なら接着剤の役割を果たせるかも知れないが、重い装置を吊り上げているワイヤーを固定できるほどの強度があるかは疑問。零度以下なら解けないが、割れる可能性があるのでは?
 ただ、トリックは図で解説されていて、そのため分かり易い上、説得力を高めているが……。
 本編は素人探偵が現れ、事件を解決するが、「自分は警察にこの推理を告げるつもりはないし、犯人と対面する気もない」と逃げてしまう。この手の終わり方はせっかくの推理の魅力を半減させる感じがするので、個人的には使わないでもらいたいのだが……。


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解説

本短編集は「暗い箱の中で」のような傑作がある一方、「怨と偶然の戯れ」、「魔術師の夜」、「つなひき」など途中で放り出したくなるものも多く、同じ人物が選んだとは思えなかった。


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Last updated  2006.11.29 16:52:41
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