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2012.03.18
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カテゴリ: 洋画

 かって南アフリカ共和国で実施されていた黒人隔離政策「アパルトヘイト」を、人間・エイリアンに置き換えて皮肉って描いてみせた作品。
 3000万ドルという、最近のハリウッド映画にしては低予算で作成されたが、SFXのレベルが高い事もあり、高評価を得た。


粗筋

1982年、南アフリカ共和国のヨハネスブルク上空に突如宇宙船が出現。上空で静止した巨大な宇宙船からは応答や乗員が降りる気配はなく、人類は宇宙船に乗船して調査を行う。知的生命体との接触に世界中の期待が集まった調査であったが、船内に侵入した調査隊が発見したのは、支配層の死亡と宇宙船の故障により難民となった大量のエイリアンであった。
 乗船していたエイリアンである「エビ」(外見がエビに似ている)たちは地上に移り、隔離地区である「第9地区」で難民として、MNU (Multi-National United) と呼ばれる超国家機関による管理・監視の下で生活する事になったが、文化や外見の違いから人間とエビとの間では小競り合いが頻発し、人間達はエイリアンへの反発や差別を強めるばかりであった。
 そして宇宙船出現から28年後、ついにエビたちを彼ら専用の居住区域である第10地区に移住させる事が決定。MNUの職員であるヴィカスは、立ち退き要請の同意を得るため第9地区を訪れるが、エイリアン(地球名クリストファー・ジョンソン)の家で見付けた謎の液体を不注意により浴びてしまう。
 ヴィカスは、徐々に身体がエビと化していた。これを知ったMNUは、ヴィカスを実験や兵器開発のサンプルにしようとする。そんな事をヴィカスが容認する筈もなく、脱出するが、MNUに追われる羽目に。
 ヴィカスは第9地区に戻り、クリストファー・ジョンソンの家を再度訪れる。こんな身体になってしまった、治せ、と。クリストファー・ジョンソンは、上空の宇宙船(母船)に行かないと治療出来ない、という。そもそも謎の液体は、エイリアンの宇宙船の燃料だった。クリストファー・ジョンソンは、20年かけて母船まで行く為の小型宇宙船を動かす燃料を集めていたのだが、ヴィカスとMNUがそれを何か知らないまま奪い、今回の件に至ったのだった。
 ヴィカスは、燃料の残りならMNU本部にある、それがあれば母船に行ける、母船で俺を治療しろとクリストファー・ジョンソンを急き立て、MNU本部に押し入る。MNUがそんな行動を許す訳がなく、応戦するが、ヴィカスとクリストファー・ジョンソンはどうにか燃料を奪い脱出。
 ただ治療を受けて人間に戻りたいヴィカス。MNUの本質(エビを医療実験体として利用していた)を知って仲間を救わなければ、と奮い立つクリストファー・ジョンソン。
 二人は対立するが、MNUの総攻撃を受けてそんな場合でもなくなり、互いに協力しようとするのだが……。


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感想

 本作の特徴は、全体を架空のドキュメンタリーとして描いている事。
 そんな事もあり、度々作中の登場人物が「その後」のインタビューで答えている場面が挿入されている。
 この演出により、「エイリアンが28年も前に地球に住み着いていた」という有り得ない設定にリアル感をもたらしている。

 登場する人物も、あくまでも「現実の人」として描かれている為、悪人っぽいキャラは登場するものの、善人は登場しない。主人公のヴィカスも、エイリアンに対し偏見を持ち、いざとなったら自己保身の為だけに動くという、ヒーローとは程遠い人物として描かれている。クリストファー・ジョンソンがMNUに捕まって暴行を受けている際、ヴィカスは彼を捨てて母船に逃げようとするのは、典型的な例。
 リアル感を出す事には成功していると言えるが、その一方で観ている側からすれば感情移入出来ない、という問題が生じる。
 主人公は徐々に人間からエビに変化し、その特殊体質を狙われて元勤務先によりモルモットにされるという酷い仕打ちを受けるのに、前後の言動が災いして同情出来ない。どんなに痛い目にあっていても「フーン」と覚めた目で見てしまうのだ。
 ただ、そのヴィカスも物凄い悪人なのかというと、無論そうではない。
 ヴィカスはエイリアンに対し物凄い偏見を持っているが、偏見を持っているのは彼だけでなく、人類全体がそうなのだ(いくら知的生命とはいえ、人間とは全く異なる醜悪な生物に対し何の偏見も持つなというのは無理な注文)。本作が皮肉っている「アパルトヘイト」も、当の南アフリカ共和国の白人らも世界中から非難されるまでむしろ最善の政策だと信じて疑っていなかった(何故世界は我々の政策を非難するんだ、と被害者意識を抱いていただろう)。
 ヴィカスの自己中心的な言動(特に液体を浴びた後)も、状況からすれば当たり前。単なるお役人が、超国家的陰謀に巻き込まれてしまったのである。冷静な、他人に配慮ばかり見せる行動を取っていたら、逆に不自然に映っていただろう。
 登場人物を「人間」として描くのは決して悪い事ではないが(少なくとも評論家は喜ぶ)、度を過ぎるのも問題である。
 人種問題、資本主義、軍国主義、そして単なる人間性のアンチテーゼとしては、よく出来ているが。

 ハリウッドにしては低予算となっているが、それも有名な俳優を全く採用しなかったかららしく、SFXは通常のハリウッド大作と比較しても遜色ない。エイリアンの造形も不気味な程リアルである。
 ラストのエビロボット(人間が中に入って操縦する)によるアクションは、日本のロボットアニメの実写版。何故日本でこれくらいのものが製作出来ないのか、と疑いたくなる。

 ドキュメンタリータッチの映画である為、状況説明はあまりなく(こういう設定だからケチを付けずに受け入れろ、といった感じ)、エビが結局どういうエイリアンなのか、というのも結局分からずじまい。
 クリストファー・ジョンソンは、「3年後にまた戻って来てお前を治療してやる」とヴィカスに言い残して地球を去るが、実際に戻って来るのかは分からない。
 そのヴィカスも、すっかりエイリアンになってしまい、そのままエイリアンに紛れて暮らしている事を示唆しているが、それも確証はない。無論、3年後にクリストファー・ジョンソンが帰って来たところで、また人間に戻れるかも不明。人間に戻ったところで、また何事もなかったかの様に暮らせるのかも不明。
 消化不足なところは嫌いな者は本作を観たら不満だらけになるだろう。


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Last updated  2012.03.18 22:39:26
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