非常に適当な本と映画のページ

非常に適当な本と映画のページ

PR

Keyword Search

▼キーワード検索

Calendar

Category

カテゴリ未分類

(341)

洋画

(282)

邦画

(85)

邦書

(140)

洋書

(57)

ニュース

(736)

DVD

(8918)

Comments

Favorite Blog

まだ登録されていません
2013.07.31
XML
カテゴリ: 洋画

 1987年に、パラマウント・ピクチャーズ創立75周年を祝う為に製作された映画。
 1930年代の禁酒時代のアメリカで、シカゴを牛耳ったマフィアの大物アル・カポネを追い詰めたとされる財務省捜査官エリオット・ネスの実体験を元に書かれた書籍「The Untouchables」を原作としている。
「The Untouchables」は、1960年代にはテレビドラマ化されている。
 本作では、エリオット・ネスをケヴィン・コスナーが、アル・カポネをロバート・デ・ニーロが演じる。他に、ショーン・コネリーがネスを助ける老警官、アンディ・ガルシアがネスと共に戦う若き警官を演じる。現在ではなかなか有り得ない豪華キャスト。
 本作によりケヴィン・コスナーはスターとなり、ショーン・コネリーは長年付きまとってきた007のイメージを払拭し、アンディ・ガルシアも出世した。
 CGがない時代のアクション・バイオレンスの古典的存在。
 ブライアン・デ・パルマ監督の代表的作品にもなっている。
 原題は「The Untouchables」。


粗筋

1930年代。
 米政府が制定した禁酒法により、闇酒場が横行。犯罪組織は、酒の密造と密輸により莫大な利益を上げるようになる。特に、アメリカ第三の大都会であるシカゴでは、アル・カポネ(ロバート・デ・ニーロ)率いるマフィアが地元警察や裁判所を買収し、実質的に町を支配するにまで至った。
 連邦政府は、この状況を打開すべく、財務省のエリオット・ネス(ケヴィン・コスナー)をシカゴへ派遣。野心家のネスは赴任早々、密造酒摘発で手柄を立てようとする。だが、警察組織自体がマフィアの懐にある状況下では、捜査の情報は全て相手側に筒抜けだった。摘発は大失敗に終わる。
 落ち込むネスは、帰り道で会った老警官マローン(ショーン・コネリー)から、警官の仕事は手柄を立てるのではなく無事に家に帰る事だと悟られる。
 ネスは、翌日マローンを呼び出し、信頼出来る仲間と班を編成する為に協力してほしいと頼む。カポネの実力を知る故に躊躇うマローンだったが、ネスに協力する事を決意。
 ネスとマローンは、警察学校の新米のストーン(アンディ・ガルシア)をスカウト。更に、財務省から応援にきた簿記係のウォーレス(チャールズ・マーティン・スミス)が加わった。
 4人は、市内の密造酒工場(大抵の警察官はその存在を知っていたが、カポネを恐れて見て見ぬ振りをしていた)を摘発。この手柄により4人は「アンタッチャブル(触れない者)」として脚光を浴びる。
 ネスらは、カナダ国境で、酒の密輸に携わるカポネの手下を捕らえる。その内一人はカポネの会計係だった。これにより、カポネを脱税の罪で起訴する見通しが立った。
 ただ、カポネがそれを見過ごす訳がなく、殺し屋のニッティ(ビリー・ドラゴ)を送り込む。会計係とウォーレスは始末されてしまった。
 ニッティは、マローンも襲撃。マローンは、別の会計係に関する情報をネスに託すと、息絶える。
 ネスは銃撃戦の末に、会計係を捕まえる。会計係の証言により、カポネは脱税の罪で起訴される。
 カポネは陪審員を買収する等の裏工作に打って出るが、ネスの活躍により有罪判決を受ける。


楽天ブックス(large)

感想

 1987年に公開された当時は、暴力描写が目に余るとしてR指定を受けてしまったが、現在の視点で観ると、暴力描写は抑制されていて、物足りなく感じる部分も。
 低俗な娯楽作品(と貶す程ではないが)が、時を経ると共に古典になってしまった感じ。これは、映画だけでなく文学にも通じる。シェークスピアも、発表当時は庶民的な娯楽作品だったが、数世紀後の現在は古典となっているのと同じである。それだけ現在の娯楽作品が低俗化している事になる。
 2時間弱の作品なので、カポネとネスの対決は簡素かつスピーディーに展開する。「あれ程シカゴを牛耳っていた犯罪組織の大物がこんな簡単に法の裁きを受けてしまうのか」と呆気なく思ってしまう程。この点は、娯楽作品なんだから、と割り切って観るしかない。

 コスナーは本作で出世するので、作中の彼の役柄には、これ以降に観られる「俺はスターだ。大物だ」といった感じの演技は当然ながらなく、嫌味に感じない。

 逆に、コネリーはまだ007の威光を引きずっているかの様な感じで(それが製作者側の思惑だったのだろう)、役柄以上の存在感があり、主人公である筈のネスと、ネスを演じるコスナーを完全に食っている。ネス対カポネの戦い、というよりマローン対カポネの戦いを観ている気分にさせられる。マローンが死んでからやっとネスが主人公へと昇格している。コネリーが大好き、という人はともかく、現在の感覚からすれば「何故コネリーはここまで大物扱いされるのか」と思ってしまう。

 ストーリーはマローン、カポネ、ネスを中心に動くので、他のアンタッチャブルのキャラの存在感は薄い。ウォーレスは、ある意味ネス以上にカポネを追い詰める人物なのだが(カポネを脱税で起訴出来る、と気付いたのは彼)、早々と退場。ストーンは、射撃の腕前を買われてアンタッチャブルに加わったのに、ラストまでその腕前を披露出来ず、それもほんの一瞬で終わり、ほぼお役御免になってしまう。

 マローン、カポネ、ネス以外で目立つキャラは、カポネの下で動く殺し屋ニッティ。不気味な面構えと、真っ白な服装は印象に残り、カポネ以上の存在感が。ニッティがネスの手でビルから突き落とされて絶命するシーンこそが本作のクライマックスで、後のカポネが有罪判決を受けるシーンは、最早エピローグと化している。

 そんな事から、、主人公(ネス)がメインのキャラではなく、大ボス(カポネ)がメインの悪役でない、という奇妙な事態に。

 ストーリ展開も、史実に忠実だったら有り得ない事の連続である。
 ネスは、酒の密輸を摘発する為、カナダの警察の協力を仰いでいるが、これは有り得ない。
 当時アメリカでは禁酒法が施行され、酒の製造・輸出入は違法だったが(飲む事自体は違法ではない、というザル法)、カナダは禁酒法を制定していなかった。したがって、アメリカでは「密輸」とされていた行為も、カナダからすれば単なる「輸出」。
 アメリカ当局が取り締まりの協力を仰いだところで、カナダ当局が「取り締まる法的根拠はない」と蹴っていた可能性が高い。

 演出にも疑問が。
 ニッティは、マローンをトミーガンで銃撃している。
 マローンは、数回に分けて計数十発被弾したので、即死するかと思いきや、息絶えるまで間がある。
 これだと、通常の人間でも2、3発食らったくらいでは死なない事になってしまう。
 マローンがあまりにも死なないので、本来なら緊迫する場面が、滑稽に映った。

 本作は、抑揚のあるストーリーを持つ、大予算のアクション・バイオレンスでは最後に当たるもの。
 この手の作品が製作される可能性は、現在はない。
 本作の直後に、「ダイ・ハード」が公開され、アクション・バイオレンスといえば暴力描写が最初から最後まで続く「ノンストップタイプ」が当たり前となり、静と動でメリハリを付けるストーリーは時代遅れに。現在は抑揚のあるストーリーどころか、ストーリーが事実上存在しない、という事態に発展している。

 カポネとネスは実在していた人物で、二人が攻防を繰り広げたのは事実だが、本作の内容はほぼフィクションに近い。
 ネスは「アンタッチャブル」を率いてカポネによる酒の密造・密輸を次々と摘発し、その面での成果を挙げてはいたが、カポネに実刑を与えるに至った脱税の捜査は内国歳入庁(IRS)によるもので、ネスは全く関与していない。本作の様に、「奴を脱税の疑いで起訴出来るかも」という情報がネスに伝えられたとしても、「自分は酒の密輸・密造の捜査だけを担当している。脱税は管轄外だ」と聞き流していたと思われる。
 この頃連邦政府はカポネを摘発しようとあらゆる手を打っていて、ネスはカポネ包囲網のごく一部に過ぎず、歴史家によっては、ネスはカポネ摘発に何の影響も与えていなかった、と言い切る者さえいる。
「アンタッチャブル」の派手な活動にカポネか気を取られている最中に、IRSが突き入る機会を得た、というのが実情だろう。

 ネスは、作中では良き夫、良き父親として描かれているが、実生活では3度も結婚している(離婚は2回)。カポネ摘発後、念願の連邦捜査局(後のFBI)への入局を目指すが適わず、職を転々とした後、カポネ摘発の実体験を本にしてみないか、と持ちかけられ、共同執筆者と共に自伝(といっても、ドラマチックに見せかけるために脚色部分が多かったらしい)を執筆。「The Untouchables」として出版される一ヶ月前に心臓発作で亡くなっている。
 著作、そしてそれをベースにしたテレビドラマのお陰で、ネスは実像以上の人物として世間に知られている。
 これは、水戸黄門や、ワイアット・アープにも通じる。
 野心家だったとされるネスの事だから、こうして取り上げられている事に関しては喜んでいるかも知れない。

 カポネは実刑判決を受けた後、刑務所に送られるが、そこで梅毒を発症し、精神に異常をきたす。刑期を終え、梅毒の治療の為入院するが(梅毒治療として民間人で初めてペニシリンを投与されたとか)、病があまりにも進行していた為効果が出ず、マフィアからは「過去の人」扱いされたまま死去している。
 カポネも、ネスと同様、虚構の部分が多いとされる。
 あまりにも名が通っている為、禁酒時代の裏社会の全てを取り仕切っていた大物と思われているが、実際にはシカゴという一都市を牛耳っていたに過ぎず、他の都市ではそれぞれ別の組織が存在していた。シカゴでも無数の犯罪組織が乱立していて、カポネが裏社会の全てを取り仕切っていた訳でもない。

 ニッティも、実在していた人物。本作ではネスに殺されるが、実際にはカポネ収監後に組織を引き継いでいる(カポネという「大物」がいなくても、組織は存続出来た事を意味する)。しかし、仲間に裏切られ、摘発が濃厚になると自殺している。

 映画では、敵味方共に華やかに活躍するが、実際はどの登場人物も惨めな最期を遂げている。
 それが現実というものか。


人気blogランキングへ





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2013.07.31 19:21:26
コメント(0) | コメントを書く
[洋画] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: