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2015.08.31
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カテゴリ: 邦書

 世界基督教統一神霊協会(統一教会)の創立者文鮮明の自叙伝。
 自身の生い立ちから、統一教会の創立、そして布教活動について述べている。
 文鮮明本人は、2012年に死去している。


解説

 自叙伝であり、しかも「世界平和に貢献した偉大なる宗教家」に関する書物とあって、都合の悪い事は一切記されていない。
 まるで本人が一度として過ちを犯した事が無い聖人君子であるかの様になっている(もしくは、全て前向きに捉えられる様になっている)。

 ただ、統一教会はキリスト教を名乗ってはいるものの、他のキリスト教宗派からは認められてはいない。
 一部の国では、カルト集団扱いされている。
 そもそも統一教会は、長い歴史の間にカトリックやプロテスタント等に分かれてしまったキリスト教、キリスト教の元となったユダヤ教、そしてキリスト教の原点回帰を掲げて始まったイスラム教の「統一」を最大目標としている新興宗教なので(当然ながら文鮮明の下での統一)、どこからも認められないのは当たり前。
 文鮮明本人も、神学校でキリスト教・ユダヤ教・イスラム教について学んだ経験は無い。聖書を「真っ黒になる程読んだ」だけで教会を勝手に立ち上げてしまっているのである。キリスト教が根付いていなかった朝鮮ならではの荒業である。

 本書では、妻韓鶴子についてかなり詳細に述べているが、これが公式に認めれている限りでは4度目の結婚で、それ以前にも結婚し、子供をもうけている事については一切触れていない。まるで韓鶴子が唯一の伴侶であるかの様になっている。
 統一教会は夫婦愛・家族愛の重要性を訴えているので、創立者本人が結婚・離婚・再婚を何度も繰り返しているという事実が知れ渡るのは拙いらしい。

 幼少期について述べている部分は、太平洋戦争前の朝鮮半島の一般庶民の暮らし振りが分かるようになっていて、興味深い。
 平壌からソウルを行き来する等、南北に分かれてしまっている現在では想像出来ない事も、さらりと述べている。
 ただ、終戦後に「イエス様直々のお告げ」により韓国へ渡って布教活動を始める下りになってからは自慢話や持論がひたすら続き、退屈になる。

 自叙伝といっても、一応宗教家で、布教活動に精を尽くした筈なのだから、多数の人物と関わりを持っていなければおかしい。にも拘わらず、本人以外は殆ど登場しない。したとしても、軽く触れられるだけで、次のページではまるで存在していなかったかの様な扱い。共産国での布教の為に命を落としたされる女性に関しても、突然述べられ(この女性がいつ、どういう経緯で入信したのかは全く知らされない)、数回名前が繰り返された後、一切述べられなくなる。
 あくまでも文鮮明が主役なのである。

 主役を引き立てる脇役として、金日成やゴルバチョフ等の政治家が述べられる。
 本書によると、朝鮮半島の南北統一の動きは文鮮明が金日成と会談した事がきっかけで、冷戦が終了したのも文鮮明がゴルバチョフと会談した事がきっかけらしい。
 南北統一は未だに成し遂げられていないので、文鮮明が南北朝鮮の融和に多大なる貢献をした、というのは誇張し過ぎ。
 ゴルバチョフは、ソ連大統領として、世界各国の「著名人」と会っており(統一教会の仏教・日本版ともいえる創価学会創立者池田大作とも会談しているらしい)、文鮮明はその中の一人に過ぎない。文鮮明との会談が世界情勢を左右した、というのも誇張し過ぎだろう。

 日本では、統一教会というと、数千人の男女が一堂に会して挙式する「合同結婚式」と、それに参加して芸能界を休止した桜田淳子の件で有名。
 しかし当然ながら、本書ではそれに関して一切触れていない。
 その意味でも、本書は綺麗事に終始している。

 聖書を数回読み通しただけで自身をイエス様の再来と見なして教会を自ら立ち上げてしまう思い込みの激しさ、後に北朝鮮となる地域での強制収容所の過酷な労働すらも前向きに捉えられる楽観主義(生き残ったからこそ、楽観的に回想出来るのかも知れないが)、その強制収容所から何とか生還出来る強運振り、教会の資金源の為に様々な事業を立ち上げるビジネスセンス(全て成功したとは思えないが)、成功を全て自分の手柄にする傲慢さ、色々遭ったにも拘らず(遭ったからこそか)90を超える長寿を維持する健康振り、そして自身を賞賛する本書の編纂を許す(というか、指示したのだろう)厚顔無恥振り。
 ある意味、文鮮明の人生は、生き馬の目をも抜く現在を生き抜くビジネスマンの手本にはなっている。
 尊敬する人物にも、近くにいてほしい人物にもならないが。

 ちなみに、自分が読んだのは、信者らしいオバサンらが無料で配布していたもの。
 わざわざ買って読む代物ではない。







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Last updated  2015.09.01 00:24:48
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